実況パワフルプロ野球 次世代編 -A Future With Light- 作:kyon99
第1話 明日光は橘みずきと出会う。
長くて寒い冬がようやく終わりを告げた。
陽の暖かさが身体全体を優しく包み込むような空気、そして桃色に染め上がった木々達が街に色を付けて新しい春の季節の始まりを告げる……。
しかし、
誰しもが思いもよらぬ新生活が始まるとは思いもよらなかった。
実況パワフルプロ野球 次世代編 -A Future With Light-
「……」
時計の針は六時半を差し、カーテンの隙間から太陽の光が漏れ出したやや薄暗いリビングに一人ポツンと、三人掛けソファに腰を降ろしてコーヒーをゆっくり啜る青年の姿があった。
中性的な顔立ちではあるが血色が悪いのかやや白さが目立つ。少し長めの赤く染まった髪の毛の毛先は目元を追い越すまで伸びきっていおり、そこから時折覗かせる灰色の二重の瞳には生気が見当たらなかった。
青年はコーヒーが注がれたマグカップを広々としたガラステーブルの上に敷いたあるコースターに置くと、丁寧にアイロン掛けされたシワ一つない白いシャツに首元の赤い色のネクタイをしっかりと締め直して、山吹色のブレザーに茶色のパイピングが特徴的な制服を羽織った所に、
「やあ。おはよう、光」
薄暗いリビングのソファに座る青年に向かって眠気十分の覇気のない声で挨拶をした。
名前を呼ばれたのは明日光、十五歳。
そして名前を呼んだのは明日光一郎で明日光の実の父親の名前である。
年齢は三十六歳。
普段はスポーツ用品メーカー大手のミゾットスポーツの頑張店に勤めている。
主な所属部署は野球道具の販売員である。
朝起きてすぐに眠気まなこを提げて一階に降りて集合ポストから投函された新聞紙を家に持ち帰り、リビングのソファに座って、テーブル一面に広げてスポーツ紙に目を向けるのが明日光一郎の日課であり……。
「猪狩守、二試合連続完封勝利で今季二勝目か。いやいや、大した選手だよ。昨日の会議でも新しい猪狩モデルのグローブの販売に手をつけるって言ってたもんな。流石は猪狩世代だ!! 更に来年からは色々と忙しくなるぞー!!」
と、嬉しそうに言う。
「猪狩世代」
二年前の夏の大会からマスコミを通じて野球ファンのみならず世間に大きな注目を集めた。
その筆頭格、『猪狩守』は高校野球の名門校であるあかつき大附属の黄金期を支えた左腕のピッチャーであり、その左腕から解き放たれるストレート『ライジングショット』で二年前の夏の甲子園で見事優勝を果たしたのだ。
その年の秋、ドラフトでは巨人の一位指名を受けて晴れてプロ野球選手となり、昨年はルーキーイヤーにも関わらず十六勝五敗で見事新人王を獲得した話題の選手であり、また同時期にドラフト指名を受けた選手達もそれぞれプロの世界で活躍している。
そんな世代を世間では『猪狩世代』と呼んでいるのだ。
また同時期に、プロ野球界では大きな変化の時が訪れようとしていた。
その名も『Plan 3rd R』。
ドラフトが行われた直後の事、八宝カンパニーの次期社長を務める八宝乙女がそのプロジェクトの名前を口にした。
プロ野球リーグに第三のリーグを作りだす事で現段階のセ・リーグ、パ・リーグの二リーグの撤廃を検討し、今後のプロ野球界の成長を促す事を目標とし、もう一つのリーグを追加する事で三つ巴の状態となれば、今まで以上にペナントレースや交流戦、日本シリーズなどを含めプロ野球、野球界全体がより白熱すると言う考えの元で提案されたプロジェクトだ。
レボリューション・リーグ。
通称レ・リーグ。
追加された球団は、『頑張パワフルズ』、『猪狩カイザース』、『キャットハンズ』、『極亜久やんきーズ』、『津々家バルカンズ』、『シャインニングバスターズ』の六球団がレ・リーグとして来季より開幕される事が決定した。
「……」
しかし、明日光はそんな父の言葉にピクリとも反応を示さずにまたコーヒーを啜る。
「そう言えば、光。未来な奴はまだ寝てるのかい?」
「……」
言葉は発さずに、ただ首を縦に振った。
「そうか。そりゃ参ったな。全く、今日から高校生だと言うのに未来は呑気にマイペースな奴だ」
と、半ば呆れ口調で新聞紙に目を通す。
たった今、『未来』と呼ばれたのは明日光一郎の娘の名前であり明日光の妹の名前だ。
明日光と明日未来は双子である。
チク、タク。
チク、タク。
時計の針は七時半を過ぎていた。
明日光と明日光一郎の二人は、トーストに目玉焼きを乗せた簡単な朝食を丁度済ませたところで既に二人の身支度は整っている。
「お父さん、光〜!! おはよう〜!!」
そんな中、リビングのドアを勢い良く開けて元気よく声を張り上げた。
赤毛髪がボサボサと寝癖。
パジャマのボタンも上から三つも止めずに薄ピンク色の可愛らしい下着を覗かせ、
青色のぱっちり二重の瞳に、
キラリと光る八重歯の
明日未来がたった今起きてきた。
「やあ、未来。おはよう」
と、ニコリと笑う明日光一郎。
「……、おはよう」
と、対照的に真顔のまま返す明日光。
「もう!! 朝から元気なさすぎだよ〜。今日は良い天気だから元気よく行こうよ〜」
明日光の背中をバシッと叩き、
ニカニカと笑いながら明日未来は光の隣に座り焼き終えたトースターにストロベリージャムを一面に塗りたくって美味しそうにひと齧りした。
「ねえ、お父さん。今日の新聞とって〜」
「はいよ」
父親から新聞紙を受け取り、真っ先に開いたのはスポーツ欄だった。
明日未来は野球が大好きな女の子なのだ。
「ふむふむ。猪狩守二連勝。オリックスのルーキー猪狩進、一軍初スタメンで四打数二安打……。楽天の太郎丸龍聖は……」
仏仏と、お経のように小声で険しい顔付きをしながら記事を読み上げる未来。
だが、突如。
「ええぇぇえぇぇぇ〜!! 早川あおい開幕から勝ち星が付かずに二軍落ちッ!?」
思わず二人が飛び跳ねてしまいそうな大声が家中に響き渡った。
青色の大きな瞳で一字一句見逃すまいと朝刊のスポーツ記事をくいつくように見ていた明日未来は思わず大声をあげてしまう。
その名前、早川あおい。
猪狩守と同じく『猪狩世代』と呼ばれる同世代の女性の名前だ。
あかつき大附属と同じ地区の開設してまだ数年の無名の恋恋高校出身。
千葉ロッテのドラフト三位の指名を受けたルーキーピッチャーであり、野球界では史上初となる女性選手のプロ野球選手である。昨年のルーキーイヤーではオールスター明けの後半戦から一軍登板し、昨年の成績は0勝六敗一セーブと猪狩守とは対照的にプロの洗礼を大いに受けた。
しかしながら、早川あおいの登板日には土日、平日にも関わらずチケット購入が殺到し完売するなどでその人気ぶりと期待値が伺える程だ。
「あーあ。私、あおいさんの試合観たくてロッテと巨人の交流戦のチケットをお父さんが五枚も取ってくれてたのに〜」
プクッと頬を膨らませた。
「まあまあ。それまでに早川あおいが一軍に復帰するかもしれないし、折角だから六道くん達と観に行ってきて欲しいな」
と、ニコリと光一郎は言う。
「まあね〜。猪狩選手と早川選手との投げ合いだったら面白そうなのにな〜。ねぇねぇ、光もそう思うでしょ〜?」
「……、僕は行かないよ。野球なんて興味ないからね」
と、光は未来の顔を見ずに首を横に振った。
「……」
そんな兄妹二人のやりとりを遠目に、無言で光を見つめる光一郎。
その目は少し悲しげにも見える。
「私、決めてるもん!! 絶対に光を連れて行くに決まってるじゃない〜」
「……嫌だよ。僕は行かないよ」
「ダメッ!! 絶対に行くの!!」
「なんでさ」
「二年前の夏の大会ッ!!」
「……え??」
「恋恋高校と山の宮高校の夏の準決勝の試合、私たちとは別で光は勝手に知らない人達と試合観戦に行ったのに〜!! 私とは行ってくれないのは不公平じゃない?」
「いや……。あの試合は僕が自発的に行ったわけじゃないし、それに決勝戦の日は未来が勝手に――、」
「だからこの交流戦の試合は、絶対に光は私と一緒に行くこと!!」
「……」
光の言葉を遮り、未来が強い口調で言い放ち、灰色の目と青色の目が睨み合う。
こうなった場合、絶対に折れないのが明日未来だと言うことを重々承知である明日光はお手上げ状態となり大きな溜息を溢して無言で通学鞄を肩に掛けた。
「あれ? 光、こんな朝早くからどっかに出かけるの〜?」
「……学校だよ」
「学校? 学校か……。あっ!! そう言えば入学式か!! 私たち今日から高校生だったね〜。あはは、私ってばすっかり大事なことを忘れてたよ〜」
と、のんびりな口調で明日未来はトーストの最後の一口を口の中に入れ、両手を合わせて「ご馳走様でした」の言葉を残して自分の部屋へと戻って行き。
それから約十分後。
漸く制服に着替えて明日未来と光は玄関を開けて『聖タチバナ学園』へと歩き出した。
神様、どうか。
この高校生活が平和であります様に、
と、柄にも無く祈ってみる。
人から見る僕はかなり消極的な人間に映るのだろう。
それでも構わない。
その方が僕にとってかなり気楽で良いのだから。
周りと戯れあったり、馬鹿騒ぎをしたり、友達を引き連れて遊びまわるのは大の苦手であり、そう言うことを好む人を僕はその様子を見ては度々呆れている。
騒がずに大人しく、周りと関わらずに色々な本を読んで過ごす事が結果的には誰かを傷つける事なく、誰も傷付かずに過ごせるからだと強く思っているからだ。
此方から馴れ合う事をしなければ、向こうからも決して馴れ合ってはこないのだ。誰とも関わらずに人との縁を作らずに生きていきたい。
僕、『明日光』はそういう人間だからだ。
「でねでね〜。鈴本くんとなつきんはパワフル高校に進学したし、ひじりんは来年、音成女学院に進学希望なんだって〜」
光と未来の二人は、桜が舞い散るパワフル商店街を抜けて頑張駅の改札に定期券を車載機の読み取り部に翳して駅のホームで電車を待っていた。
隣で明日未来は色々な話をしているが、光は黙ったまま返事も返さずに手には小説を持って読み耽っている。
「聖タチバナ学園でどんな楽しい事が待ってるのかな〜? そうだ。光は部活は何に入るか決めてるあるの〜?」
「……帰宅部」
と、ポツリと小声で呟く。
「そこは野球部って言ってよ〜。私は光と一緒に野球がやりたいのに〜」
「僕は野球なんかやらないよ」
と、光はつまらなそうに言った。
「ああ、クソッ!! 軽井沢の馬鹿野郎にじゃんけんで負けるなんてよ!! 今月は新入部員が入って来て色々と忙しいのに!! これじゃいつまで経っても『モテモテライフ』が来ねえじゃねえか!!」
電車を待つ駅のホーム。光と未来の後方に六人組の大学生のグループが立っていた。
ㅤその中の一際目立つ金髪のツンツン頭と随分と柄の悪い目つきが印象的なその青年が怒りを抑えきれずに舌打ちを大きく鳴らした。
「まあまあ、ダーリン。そんな事言わずにオラがずっと側に居るべ」
その金髪で目つきの悪い青年を宥める一人の女性がいた。
茶色に染まった前髪が波の様にウェーブしているが、ただ一つだけ『時代錯誤』を感じざる負えない『瓶底眼鏡』を携えた女性だ。
「つーかよォ。なんでテメェと大学が一緒なんだよォォォォ!!」
「それは高校時代。あの春の大会で出会ったあの日がオラ達の運命の出会いだったべ」
「あの腐れ縁だったあの『クソメガネ』と漸くおさらば出来たってのによォ。大学生になってまでも災難だぜ」
と、金髪の青年はガックリと嘆く。
「なあ、浩輔。来週の練習試合の相手は帝王大学とやるが、レギュラーはどうするかとか決めてあるか?」
「おい、彰正。今の俺に話しかけるなよ。こっちはこっちで可愛い女の子探しで忙しいんだ」
浩輔と呼ばれた長身の男は、目の前に戯れる女子高校生の集団を真剣な目付きで眺めていた。
だがしかし、
「あらら、浩輔くん? 私の居る前で随分と堂々としてくるじゃない?」
そこに白い肌のスラッとしたセミロングの美女が茶髪の青年の耳たぶを抓って引っ張っる。
「いたたたたたたたたッ!! 痛ェよ!!」
「あははは。先輩も姉さんも相変わらずですね」
耳たぶを引っ張るモデルの様な女性に何処かしら似ている顔立ちの青年が楽しそうに笑みを浮かべて二人のやりとりを眺めていた。
「随分と賑やかだね〜。大学生かな?」
「……ただ、うるさいだけだよ」
明日未来は嬉しそうに、
明日光は面倒くさそうに、
しかし。
光は何かに気がついた。
と、言うよりも何かを思い出した。
(そう言えば、あの金髪の人……。以前何処かで見かけた様な……)
チラッと灰色の瞳が口調の悪い金髪の青年を横目に顔を確認してみると、
その顔には見覚えがあった。
確か名前は、星雄大。
恋恋高校の正捕手を務めていた男。
(まあ、僕には関係のない人だ)
しかし、それをたった今思い出した所で自分に関係のない事だったので本を読む事に集中して電車が来るのを待った。
待っていた電車に乗って約二十分。
頑張地区の南部に位置する聖タチバナ学園前の駅で降りた光と未来の二人は学校に向かって脚を進めていた。
(もうすぐで始まるのか、僕の高校生活が。何もない平和で静かな学園生活が送れますように、もうあの時みたいに嫌な思いはしたくない……)
校門の前に立ち、明日光は目を閉じて祈る。
「ねえねえ、光」
「……??」
横に立つ未来が光に声を掛けた。
「一緒にこの校門を通ろう〜」
「え、嫌だよ」
「え〜良いじゃん。折角の高校生の第一歩くらい二人一緒に踏みたいじゃん。一生の思い出に残るかもよ〜?」
「嫌だよ」
「なんでよ」
「だって気持ち悪いもん」
「光ってさ、たまにストレートで言葉を返す時あるよね〜」
「……」
「もう!! 分かったよ〜」
と、明日未来はスゥーッと息を大きく吸い込んで、
「それでは、私、明日未来は今から高校の第一歩を踏み込みたいと思いまーす!! いっせーの、、、」
チリンチリン。
チリンチリン。
後方からサイクリング・ベルが鳴った。
「えっ?」
明日光と未来はその音の方向へと顔を向けると、此方側に向かって勢い良く二人に向かってくるマウンテンバイクに乗る女の子を捉えた。
「どいて、どいて、どいてーー!!」
「うわああああーーっ!! 危ない、危ない、ぶつかる〜!!」
「……」
(……あれ? この人、何処かで……)
キュイン。
と、明日光は「眼」に力を入れる。
自転車に跨る女性。
目の前を白いブラウスに赤色のネクタイとスカート姿は同じ『聖タチバナ学園』の制服を纏っていて、腕には薄緑色の腕章を付け、水色に染まった髪にぱっちり大きな緑色の目をした女生徒にはどこか見覚えがあった。
(二年前……夏の地方球場に居た人か)
明日光はサッと体を動かして後方へと避ける。
「うぎゃ〜〜!!」
悲鳴と大きな共に、明日未来と勢いのついたマウンテンバイクが校門の目の前で激突した。
明日未来は地面にうつ伏せとなり、マウンテンバイクに跨ったままの女生徒はぶつかった事を気にも止めずに、
「ごめん、ごめーん。どこの誰かは知らないけど、ぼっーとしたら危ないわよ」
と、倒れる未来に向かって声を掛けた。
「あら、貴方はぶつからなかったのね。結構スピード出してたんだけどな」
と、今度は明日光に向かって言う。
あのスピードで良く避けたれたわね、と言葉を足して不敵な笑みを浮かべていた。
「ふふふ〜。実は光はね。『目』がかなり良くて『動体視力』が特に優れているんだよ〜。どんなに早くても瞬時に軌道が分っちゃうんだから〜」
派手に転がったまま立ちあがろうとはしない未来が言う。
「――ッ!? 動体視力……どんな軌道……」
未来の言葉にピクリと反応を示した後、ブツブツと小言のように何かを呟く水色髪の女生徒。
「ふふふ、光はね。それだけじゃないよ〜。動体視力よりも凄い才能を持ってるんだから〜。それはね、真――」
「未来。大丈夫?」
うつ伏せになったままの未来の前に立ち、そっと手を差し伸べる光。
「えへへ、ありがとう。光」
差し伸べられた手をとった未来はゆっくりと立ち上がった。
「あら?」
水色髪の女生徒が首を傾げる。
今更ながら何かに気がついた様子だ。
「その制服。うちの生徒ね」
「はい!! 今日からこの『聖タチバナ学園』でお世話になります〜。よろしくお願します。えっと、先輩ッ!!」
深々と頭を下げる未来。
「先輩……?? あははは、あなた私の事を先輩だと思ってるの?」
「えっ。だって、生徒会長さんですよね〜?」
と、未来が左腕の腕章に目を向ける。
「あ、ああ。この腕章で勘違いさせちゃったみたいね。私の名前は橘みずき。貴方と同じ今年の新入生でこの学園の生徒会長よ」
「一年生なのにもう生徒会長〜?」
「訳ありでね。この学園の理事長が私のお爺ちゃんだから」
「へえ〜。そうなんだ〜。あ、そう言えば自己紹介がまだだったね。私は明日未来。よろしくね、みずきん!!」
と、未来は元気よく自己紹介をして握手を求める。
「み、みずきん……??」
今まで誰からもその呼び名で呼ばれた事が無かったのだろうか、橘みずきは些か呆気に取られながらもその手を握った。
「……」
「それでこっちは無口で無愛想な兄の明日光。私たち双子なの〜」
「そんなの見ればわかるわよ。二人ともそっくりだし。よろしくね、明日光くん」
「……」
不敵な笑みを浮かべて手を差し伸べる橘みずきの手を明日光は無言のまま握る。
こうして、僕は橘みずきと出会い。
『俺の名前は、友沢亮』
『なーーっ!!』
『この天才、猪狩守の本気を君に魅せてあげるとしよう』
『僕はもう決めたよ』
『本当にただの客寄せパンダで終わってしまいますからね』
『球太くんの悪口は言わないでよ!!』
『めんどっちーなぁ』
『前に進める脚があるんだから、此処で諦めるなんてダメだよ』
『オイラは矢部明雄でやんす』
『お前のせいで俺はッ!! 大好きな野球が出来なくなっちゃったんだッ!!』
『……僕は、みずき。君を』
色々な歯車が絡み合って、
もう二度と経験する事ない波乱な日常を過ごしていくことになるなんて。
この時の僕は何一つ知る由もなかったのだ。