まんまるピンクとウニ頭   作:鳩胸な鴨

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ドノツラはやっぱドノツラらしくした方がいいよね。


STAGE:3 妹達

「つまンねェよ、オマエ」

 

ぐしゃり。そんな音と共に、目の前の少女の形をした肉塊が潰れる。

これで何人目だっただろうか。既に殺した感触すら薄れゆく中で、学園都市最強の名を冠する少年…『一方通行』は一人ため息を吐く。

 

無敵の力を手にするため、参加した『絶対能力進化計画』。

それを計算で導き出したスーパーコンピュータ…『樹形図の設計者』は壊れ、使い物にならない状態。結果、殺しても能力が進化するのかが曖昧になってしまった。

しかし、彼はもう戻れない場所まで来てしまった。自らの名前の通り、時間を逆に突き進むことなど、誰にもできやしない。

とても健常とは言い難い精神状態を表すように、濁った瞳を背後へと向ける。

 

「コレまた派手にやったのサ。鉄クサくて敵わんのサ」

「…またテメェか、道化師」

 

道化師マルク。少し前から一方通行に接触を図っている、謎の生命体。

本人曰く、「ここから遠く離れた星、ポップスターに暮らしていた」そうだが、住んでいた星の名前からの連想が容易いほどに腑抜けたツラである。

数度目の接触に呆れたため息を吐き、一方通行はそこらの瓦礫に腰掛けた。

 

「…俺はオマエに構ってるほどヒマじゃねェっつってンだろォが。失せろ」

「オイオイオイオイ、ゴールの見えないチマチマとしたレベル上げにイラついてるガキンチョが、随分とエラソーなクチ利くじゃないのサ。

折角、一発逆転、誰も殺さないハートフルな手でパワーアップする方法を教えてやろーってシンセツで来たのに」

「その御託は聞き飽きた」

 

一方通行は言うと、マルクの顔を掴み、自らの能力の副産物であるベクトルの操作を行う。

神経電流をめちゃくちゃにして殺すつもりだったが、マルクには意味がなかったのか、変化は訪れなかった。

そもそも、神経という器官があるかすら怪しい種族である。一方通行は「ウザってェ」と吐き捨て、マルクを放り投げた。

 

「ヘェ。そーやって、ずぅぅううっと自分のココロもコロすツモリなのサ?

いやはや、地球人はみんな揃ってつまんねー生き方しかできねーのサ」

 

マルクの煽りに、ぴくり、と足を止める。

神経を逆撫でされた、などという表現では飽き足らない。

根っこが普通の少年であるからこそ、心の底からフツフツと湧き上がる怒りに、一方通行はナイフのような目つきをマルクに向けた。

 

「クソ道化師。テメェに何がわかる」

「わかるわけねーだろ。ボクはポップスターの住人なんだから」

「殺す」

 

一方通行は凄まじい速度でマルクに肉迫し、その顔面に蹴りを入れようとする。

が。マルクは突如真っ二つに割れ、その空間にブラックホールを顕現させた。

 

「っ…!?」

 

得体の知れない生物が出したブラックホールに足を突っ込めば、どうなるかわからない。

一方通行は慌てて距離を取り、吸引が収まるまで警戒する。

マルクは真っ二つに割れた体を元に戻すと、ケタケタと笑った。

 

「オイオイ、ボクはキミを怒らせに来たんじゃないんだぜ?

寧ろ、キミを『宇宙最強』にしてやろうと思ってンだから」

 

マルクの言葉に、一方通行は苛立ちを吐き捨てるように舌打ちする。

甘言には必ず裏がある。

仮にも学園都市最強の名を冠する身である一方通行は、マルクが腹に何かを抱えていることは見破っていた。

そして、その上で誘いに乗る価値があることも。

一方通行はため息を吐きながら、マルクに問いかける。

 

「…テメェになンのメリットがある?」

「メリットならありまくりなのサ」

 

────宇宙最強のヒーロー、「星のカービィ」が倒せるってメリットがね。

 

今、最悪の悪党二人が手を組もうとしていた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「…で、ビリビリの妹さんたちや。

なーんで直したはずの扉がまたぶっ壊れてんのか、なんでそんなに同じ顔がいるのかとか、家主の上条さんに懇切丁寧にみっ…ちりと説明してくれませんかね?」

 

その頃、当麻の家にて。補習から帰宅した当麻は、こめかみに青筋を浮かべ、縛られた御坂妹…否、『妹ら』に迫る。

そこにいるのは、まとめて拘束された、同じ顔をした10人。そのどれもが、先日出会った御坂妹と同じ顔をしていた。

 

「個体名『パルルルルルーヌ』の捕獲を命じられたからと、ミサカは先日あなたに答えた回答を繰り返し言ってみます」

「もう一撃喰らいたいようだな」

「個体名『ザン・パルルティザーヌ』の捕獲を命じられたからです…と、目標がキレたらなんだか面倒くさそうなので、ミサカは訂正を試みます」

「一言余計だ」

 

ぱん、ぱん、とまるでガラの悪い看守のように長槍を左手で振り下ろし、右手に打ち付けるパルル。

名前に関しては相当気にしているようなので、弄らないようにしよう、と思いつつ、当麻は尋問を再開する。

 

「あー…。まぁ、嫌だったら解放するから。扉の弁償代払ってくれるなら、俺も文句言わねーよ」

「わーい、とミサカは見かけによらず寛大な心をもっているウニ頭相手に喜びを露わにします」

「見かけによらずってなんだ、見かけによらずって…」

「ウニ頭は突っ込まないんだ」

 

インデックスの無垢な鋭い一言に、当麻はガクっ、と脱力する。

カービィたちはいつも通り、難しい話はよくわからないのか、縛られた御坂妹らを心配そうに見つめていた。

 

「ぽよ、ぽよっ!」

「……わかった、わかったから。耳元で抗議をするな」

 

パルルは長槍を数回転させると、逆手に持ったそれを投げる。

それは器用に御坂妹の拘束を引き裂き、当麻の靴を貫いて床に刺さった。

 

「…拘束は解いてやる。お前たち如き、警戒する必要もあるまい」

「あの、ザン・パルルティザーヌさん?上条さんの靴が消し炭になったんだけど…」

「………すまない」

 

当麻は「不幸だ…」と嘆き、ボロボロと崩れるだけの炭になってしまった靴を覗き込む。

幸い、古い靴はまだ余っている。明日のうちに新品を購入しておこう、と思いつつ、拘束の解けた御坂妹らを見やる。

 

「じゃ、事情を説明するなり、出ていくなり好きにしてくれ」

「…いいのですか?」

「カービィたちが研究員に狙われることなんざしょっちゅうだ」

 

当麻が言うと、御坂妹らは暫し目を瞑ったのち、「それでは」と頭を下げる。

残ったのは奇しくも、先日パルルを襲った個体だった。…勿論、当麻らにその見分けがつくはずも無いのだが。

 

「説明してくれんのか?」

「はい。説明してこの個体を引き渡してくれるかは度外視し、これから何度も押しかけることになるので、一応は説明しておこう…とミサカは必要かどうかもわからない保険をかけることにしました」

「一言余計だな、うん」

 

隠し事ができない性分なのだろう。

そんなことを思いつつ、当麻は御坂妹の話に耳を傾けた。

 

御坂妹…『妹達』と呼ばれる存在は、御坂美琴のクローンらしい。

2万もの数に上る彼女らは、美琴と同じように電撃を操る能力者らしいのだが、最高峰に位置する彼女のクローン故か、性能が劣っているらしい。それこそ平均でレベル2、良くて3の基準値をギリギリ超えるかどうかという程度だと言う。

そんな彼女らの現在の目的は、『絶対能力進化計画』の完遂。

学園都市最強を誇る一位…『一方通行』の能力の進化を促し、人の身で神に匹敵する存在へと至らしめる計画である。

 

学園都市最高峰を誇る『樹形図の設計者』の計算によれば、一方通行が進化するには、最低でも決められたシチュエーションで『超電磁砲』と128回戦闘を行い、同数殺害しなければならない。

しかし、御坂美琴のような能力者を128も用意できるはずもなく。

その代替案として目をつけられたのが、『超電磁砲』の量産計画で生まれた自分たちだったという。

 

既に半数近く殺されているらしく、計画の進行は順調だった。

が。その実験の途中で、研究者や一方通行、妹達にとって、予期せぬ発見があった。

 

仲間を探し、放浪していたザン・パルルティザーヌである。

 

空き地のダンボールハウスを拠点にしていた彼女が、家電をフル稼働させても、一切疲れた様子を見せなかったのを見て、研究員らはその様子をカメラに収めた。

本来であれば捕獲するのが望ましかったのだが、相手は謎の生物。下手に刺激して暴れられては、たまったものではない…という判断だったらしい。

その映像を『樹形図の設計者』で計算している途中に、肝心の衛星が破壊されたという。

なんでも、正体不明の星型の物体が貫通し、砕け散ったのだとか。

 

求めていた答えが出ず、研究者たちは困惑しながらも、冷静に話し合った。

その結果、貴重なサンプルとして、ザン・パルルティザーヌの捕獲と、目的である絶対能力進化計画を同時に進行することに決めた…というのが、御坂妹がパルルを襲った経緯であった。

 

全てを聞き終えた当麻は、怒りを堪えて、震える口を開く。

 

「…お前らも、ソイツに殺されるのか?」

「はい。来月初めには」

「お前は、怖くねーのかよ?死ぬんだぞ?」

「怖い…という感情は、知識としてならインプットされています。『ミサカたちの人生は、そのためだけにあるものだ』…とも」

「ふっ…ざけんじゃねぇぞ!!」

 

当麻の怒鳴り声に、話の難解さに寝ていたカービィたちが飛び起き、あわあわと慌てる。

インデックスがそれを宥める隣で、エフィリンもまた、険しい表情を浮かべた。

 

「難しいことはよくわかんなかったけど…。それでも、その計画を止めなきゃいけないことはわかった!

ボクたちも協力するよ、トーマ!」

「無理です。相手は大義名分を得て、治安維持組織からの干渉すら手玉に取るような組織です。

あなたたちが何を言っても聞き入れるつもりはないでしょう」

 

その一言に、勢いづいていた二人が押し黙る。学園都市における治安維持組織はいくつかあるが、その干渉すら受け付けぬと言うことは、抗議は意味を成さないということ。

情報の統制も安易だろう、立場のある敵にどう立ち向かうか。そんな思考の沼にハマりかける当麻たち。

それに対し、パルルは淡々と口を開いた。

 

「トーマ。キサマが『学園都市最強』とやらを叩きのめせばいい話だろうが。バカが思考を拗らせるな」

 

その毒舌っぷりが当麻を殴りつけ、当麻は「うぐぅ」と声を漏らす。

しかし、パルルは変わらず毒舌混じりに言葉を続けた。

 

「『最強』を『無敵』へと変える計画ならば、計画をする有象無象の排除よりも、その『最強』を引き摺り下ろすほうが簡単だ。

キサマは学園都市において底辺を這いずり回る劣等生なのだろう?

そんなキサマが最強を倒せば、その称号にケチが付くことは間違いないはずだ」

「あの、ザン・パルルティザーヌさん?

事実なんですけど、上条さんにキツくないですか?」

「ん?なんのことだ?」

 

自覚はないらしい。

人付き合いが苦手そうだな、と思いつつ、当麻は右手を見やる。

あらゆる幻想を否定し、殺す右手。普通に生活する上では、何の変哲もない右手。

この右手があれば、取り敢えず相手を殴れることは間違いないのだ。

ごちゃごちゃと難しいことを考えるのをやめ、当麻は拳を握る。

 

「無謀です。相手は『学園都市最強』。あなたが首を突っ込んで無事で済む保証は…」

「生憎だな。『助けたい』って感情に自分でケチつけて、誰の手も取れない一生なんざ死んでもごめんなんだよ」

 

御坂妹の制止に、胸を張って答える当麻。

その瞳は真っ直ぐに、御坂妹の目を捉えていた。

 

「お前みたいに『生まれた意味』とまではいかねーけどさ…。

誰かを助けるってのは…、そうだな。言うなれば、俺の『生き様』なんだよ。

これを曲げちまったら、俺はこの先、二度と胸を張って『上条当麻』を名乗れねーんだ」

 

当麻は言うと、御坂妹の肩を掴んだ。

 

「だから、頼む。俺に、お前たちを助けさせてくれないか?」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「……断られちまったか」

 

去っていった御坂妹の背中を、廊下から見下ろし、ため息を吐く当麻。

しかし、その表情は一切落胆がなく、寧ろ平然としていた。

断られることはわかっていた。ならば、勝手に助けるだけだ。

当麻が決意を新たに拳を握り締めていると、パルルが隣に立つ。

 

「どうする?足で探そうにも、この都市は広大だぞ?」

「そこなんだよなぁ…。カービィのワープスターで空飛んで探すとか…」

 

余談だが。ワープスターが当麻の右手に触れても機能を失わないのは、とうの昔に確認済みである。

どこを探せばいいのかはわからないが、空から見下ろした方が、見つかる可能性は高いだろう。

そんなことを思っていると。

 

激しい爆音と共に、どこかの施設の残骸が舞うのが見えた。




マルク…白もやしがなかまになった!
完全に白もやしを利用する気満々。相手もそれに気付いてるが、あえて乗っている…というのも勿論織り込み済みなドノツラフレンズ。まずは一方通行と一緒に『計画』を進めてた研究所を派手に破壊した。主要な研究員はもれなく全員重傷。
お前マジでどのツラ下げてフレンズとか名乗ってるん?

御坂美琴…妹達の存在を知ったくらい。絶対能力進化計画のことはまださっぱり知らない。最近、寮長がワドルディたちを引き連れて見回りを強化しているため、叱られる回数が増えた。部屋にガルルフィが二匹住み着いている。美琴の土下座により寮長が折れ、飼育が例外的に認められて最近ゴキゲン。二匹ともが美琴に懐いているのも、それに拍車をかけている。

ワープスター…樹形図の設計者をぶっ壊した張本人。ステイル戦の時に轢き飛ばした。妹達関連がややこしくなった一因が身内だったことに、当麻は「面倒だから言わなくていいか」と黙秘した。
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