まんまるピンクとウニ頭   作:鳩胸な鴨

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ディスカバリーやり直してました。カービィシリーズのBGM、どっかのサブスクで聴けないかな。


STAGE:4 マルク

「…ぶっ壊れたコンピュータに頼るしか能のなかったボンクラどもを潰したんだ。

マルク。そろそろ、お前の『計画』の全貌を教えてもらおォか」

 

研究所を潰し終えた一方通行は、奔走する治安維持組織を見下ろし、隣に佇むマルクへと目を向ける。

マルクは何処からか顕現させたボールに乗り、玉乗りをしながら答えた。

 

「ンなタイソーなモンじゃねーのサ。

宇宙の何処かを彷徨っていると言われる、あらゆる願いを叶える機械仕掛けの大彗星…『ギャラクティック・ノヴァ』。

究極の願望機であるソイツを呼び出すのサ」

 

ギャラクティック・ノヴァ。ハルカンドラより生み出された、あらゆる願いを叶える機械の大彗星。

マルクは一方通行に隠しているが、彼の悪巧みを阻止するべく、奇跡を起こしたカービィによって、木っ端微塵に粉砕された過去がある。

しかし、ギャラクティック・ノヴァには、破壊されても部品さえ残っていれば、次の召喚時に復活するという機能がある。

呼び出すだけで、望みの力が手に入る。

あらゆる探求の全否定にも繋がる願望機。おとぎ話に出てくる、世界を根本からひっくり返してしまいそうな理不尽のからくり。

一方通行は足元が地盤ごと崩れたような感覚に、自嘲気味に笑みを浮かべた。

 

「本来であれば、各惑星にある『夢の泉』から力を繋げ、『ミルキーロード』を作って呼び出すという手間がかかるんだケド…。

ギャラクティック・ノヴァが感知しているのは、『ミルキーロード』の連鎖反応から溢れる『莫大な夢のチカラ』なのサ。

つまり、キミがベクトル操作で『夢のチカラ』を操れるようになれば、簡単にギャラクティック・ノヴァを呼び出せる…と、言うワケなのサ」

「…嘘だったら承知しねェぞ?」

 

要するに、「夢のチカラ」と呼ばれるエネルギーのコントロールさえ出来れば、ギャラクティック・ノヴァを呼び出せるらしい。

もしかすれば、無敵の力を手に入れるどころか、自分の過去…いや、世界すらも改竄できるかもしれない。

しかし、ソレを呼び出す以上、隣に立つマルクにだけは、心を許してはならない。

一方通行はマルクを警戒しながらも、彼に詰め寄る。

 

「生憎だがなァ、俺ァ『夢のチカラ』ってモンの法則を知らねェ。

その願望機を呼び出すどころか、夢のチカラを操ることもできねェよ」

「そこんトコは心配しなくてもダイジョーブなのサ。

今、この都市にゃあ、夢のチカラの塊みてーなヤツらがワラワラいるのサ」

 

マルクは言うと、コンビニで売り子をするワドルディを見やった。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「…実験の主要メンバーが重傷を負い、肝心の一方通行は暴走。

捕獲作戦が実施されるものの、側にいる『マルク』と名乗る謎の生命体が起こす、ブラックホールを始めとした能力の数々に敗れ…。

結果、現時点で用途のなくなったミサカたちは、いくつかのグループに分かれ、各施設をたらい回しにされている…と言うわけです」

 

御坂妹は言うと、カービィが作り出したコーヒーを啜り、息を吐く。

要点をまとめると、マルクという存在によって一方通行が暴走したせいで、実験がストップしてしまっているらしい。

怪我人が出ている以上、喜んでいいのかは分からないが、少なくとも現時点においては、御坂妹らの危機は去ったと考えていいだろう。

 

「現時点で…ってことは、結局は実験が再開する可能性があるってこったろ?」

「はい。妹達にも、一方通行の捕獲を優先事項として設定されていますが…正直に言うと、半分くらいヤケ気味に決定したのではないか、とミサカは邪推します。

しかし、マルクによってデータも着実に一つずつ潰されているようで…」

「んー…。そのマルクっての…、カービィたちはなにか知ってるか?」

 

今の今まで研究に従順だった…それも、樹形図の設計者という、スーパーコンピュータが導き出した、違えようのない結論に沿って動いていた一方通行が、反旗を翻した。

一方通行を唆した「マルク」という存在は、確実にカービィらの関係者だろう。

そんな推論から当麻が問うと、カービィは聞き覚えのある名前が出たことに笑みを浮かべ、ぴょん、と跳ねた。

 

「ぽよ!」

「ポップスターの太陽と月を大喧嘩させた犯人って聞いたことあるよ。

ボクもちょっと話してみたけど…、なんていうか、掴みどころがない感じだった」

「宇宙じゃ太陽と月も喧嘩するんだなー、うん…。そっかー…。

……上条さん理解が追いつかないんだけど、どゆこと?」

「ポップスターだと、太陽も月もれっきとした生き物なんだよ」

 

ポップスターでは、あらゆる常識が根本から通用しないらしい。

カルチャーショックという単語では収まり切らない衝撃に慣れ切った当麻は、遠い目で「そっかー」と返す。

太陽と月の大喧嘩。もし、この太陽系で起きれば、大惨事どころではない騒ぎである。

その解決にカービィが奔走したことは、先日相手にしたダークリムロの警戒っぷりから、予想に難くない。

カービィはその自覚がないのか、皆の視線に首を傾げていた。

 

「マルクは性格はアレだが、カービィと渡り合えるほどの実力者だ。

相手取れば、このずんぐりピンクは兎に角、私たちはタダでは済まないだろう。

…しかし、ヤツの真の恐ろしさは、その狡猾さにある」

「…強い上に悪知恵が働くってことか?」

「ああ。その認識であっている。

ヤツのことだ。『一方通行すらも利用されている』と考えた方がいい。ヤツの目論みにとって、なんらかの重要な利用価値があることは間違いないだろう。

その性格上、ロクでもないことは確実。更に言えば、こうして言葉を交わしている間にも、ソレは成就に向かっている」

 

もし、現時点で妨害しても、マルクならば、それすらも利用することだろう。

それ故に、マルクの計画を潰すのであれば、成就寸前に全てを台無しにする他ない。

カービィはかつて、ポップスターを支配しようとかかるギャラクティック・ノヴァの動力部を破壊し、機能を停止させた。

そこまでやって、漸くマルク本人を引き摺り出すことができる。

そのことをエフィリンとパルルが語ると、当麻は笑みを浮かべた。

 

「つまり、最強をぶん殴りゃあいいってのは変わらないわけか」

「そういうことだ」

 

先日となんら変わらないシンプルな結論に、御坂妹は鉄仮面のまま口を開く。

 

「先日からも言ってますが、無謀です。

と、中身がすっからかんなウニに無駄な忠告をミサカは試みます」

「とうま、補習は大丈夫なの?」

「上条さんくらいのスーパー劣等生にもなると、補習に参加してもしなくても成績アップなどという奇跡は起きません!!」

「その悲しい告白はどうなの?」

「コイツら人の話を聞いてねぇ…と、ミサカは苛立ちをあらわにします」

 

相手は『超電磁砲』を三桁近い数殺すことができるとまで言われた実力者。

その強さを実感している御坂妹からすれば、当麻の挑戦は無謀にしか思えなかった。

あいも変わらず、打倒一方通行を掲げる当麻と、それに賛同して盛り上がるカービィらに、御坂妹は呆れたため息を吐いた。

 

「ぽよっ!ぽーよ、ぽよぉっ!」

 

そんな御坂妹の隣を通り抜け、カービィが玄関の扉を開き、空へ向かって叫ぶ。

すると、宇宙で暇を潰していたのであろう、ワープスターが降り立ち、カービィの目の前で止まった。

 

「ぽよっ!」

「カービィは探す気満々みたいだな」

「ぽよ、ぽぉよ!」

「…コイツ、ただマルクに会いたいだけみたいだぞ」

「おいおい、いいのかよ…。敵なんだろ?」

「まぁ、これがカービィだから」

 

ともだちであってもなくても、どこまでも疑うことを知らない、純真無垢の化身。

事実、カービィを欺こうと企てたマルクとマホロアは、こと「欺く」という一点に於いては、看破させることはなかった。

それもこれも、カービィらが想像を絶する楽観主義故に、人を疑うことを知らないからなのだが。

カービィはワープスターに飛び乗ると、当麻を手招きする。

当麻は慣れたように一角を掴み、エフィリンがその肩に掴まる。

と。ソレを真似たのか、御坂妹も同じようにワープスターに乗った。

 

「あれ?ミサカも行くの?」

「先程言った通り、ミサカは優先事項として一方通行の捕獲を命じられています。

逃亡を続ける一方通行を捕獲するためには、あなたたちと行動を共にした方が遭遇確率が高いと、ミサカは判断しました」

「お前っ…!まだ死ぬ気なのかよ!!」

 

当麻が怒鳴りつけるも、御坂妹はその鉄仮面を剥がすことなく、首を傾げる。

これは、何を言っても聞かない。

そのことを悟った当麻は、わしゃわしゃと頭を掻きむしった。

 

「…あくまでお前が死にたがるってなら、俺はお前が『生きたい』って思えるまで、お前を助けるからな」

「そうですか」

 

淡白なやりとりを最後に、ワープスターがなんとも軽快な音を立てながら、空へと飛び立っていった。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「…で。なぜミサカたちは、アクセサリーショップにいるのでしょうか?」

 

数分後。

先程の緊迫感は何処へやら、取ってつけたような煌びやかさが支配する空間に、御坂妹のなんとも言えない声が響く。

その表情は戸惑っているのか、それとも苛立っているのか。あいも変わらず1ミリも変化しない表情筋に苦笑しながら、当麻はアクセサリーを物色した。

 

「もしお前の姉妹が出てきたら、見分けつかねーだろ。

上条さんがなけなしの生活費を捻出して買ってあげますから、好きなの選びな」

「…別にいいです。

ミサカにそういった嗜好品を嗜む趣味は…」

「ぷぃ!」

「あっ、こらカービィ!それはおもちゃじゃないからな!?」

「…人の話を聞かない習性でもあるのでしょうか、このウニは…と、ミサカは露骨に呆れてみます」

 

御坂妹のためにアクセサリーを選んでいる、という建前すらも忘れ、はしゃぐカービィを宥める当麻。

そういった嗜好品を嗜む心が成長していない御坂妹は、訝しげに目についたアクセサリーを手に取る。

と。カービィがそれに向かって、とてとてと小さな歩幅で歩み寄った。

 

「ぽよっ!」

「…これは?」

 

カービィが差し出したのは、蝶の形をした、オレンジ色の髪飾り。

御坂妹からすれば、少し幼稚なものに思えたが、何故か目が離せず、髪飾りを手に取る。

と。そこへ、どこからか入ってきたのだろう、ひらひらと橙の羽を持つ蝶が降り、御坂妹の指先にとまった。

 

「ソレにするのか?」

「……そうですね。これにしておきます。

ミサカはそこまで、装飾品に執着がありませんので」

「あいよ。えーっと…、…600円…。

け、結構痛い…」

 

600円という金額は、上条家にとってはかなりの大金である。

この一言だけでも、上条家の逼迫した懐事情がうかがえることだろう。

当麻はがっくりと項垂れながらも、受け取った蝶のアクセサリーをカウンターへと持っていく。

 

アクセサリーの受け渡しを経てもなお、蝶は掌にとまったままだった。




マルク…一方通行をワドルディ限定の誘拐犯に仕立て上げた。哀れ、ワドルディ。捕まったワドルディは今のところ五匹。みんなマルクに向かって、ブーブーと文句を垂れていたが、結局「わにゃわにゃ」としか言えなかったので、ここぞとばかりに小馬鹿にした。
決定的な嘘を言っている。

ザン・パルルティザーヌ…留守番。暴走気味のインデックスを抑え、上条家をまとめ上げてる。女の子だからと気を遣われて、未だに突き刺さったカービィの家のベッドを使わせてもらっている。カービィは枕からコピーしたディープスリープでベッドを出して寝てる。
ちなみに、持ち込んだ食料はインデックスに食い尽くされた。中には、楽しみにしていたプリンやエクレアもあったので、現在説教中。おしりぺんぺんしてる。

ギャラクティック・ノヴァ…爆発の波動を感じた。

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