「ウホホッ、ウホッ、ウホ」
「ああ、その石で頼むダス。
って、アルマパラパ!勝手に備品を持ってかないとあれほど言ったダス!!」
観光客が屯する海水浴場から少し離れた、小さな島にある洞穴の中。
メタナイト直属の部下…『メタナイツ』が一人、メイスナイトの呆れが混じった怒号が、巨大なアルマジロの背中に響く。
ビクッ、とアルマジロ…踊転甲獣アルマパラパは肩を震わせ、かしゃん、と機械の塊を落とした。
「機械じゃなかったら使っていいダスから!
ちょっとは大人しくしてて欲しいダス!」
「グー…」
「そんな声出してもダメダス!」
「騒がしいぞ、メイスナイト」
メイスナイトがアルマパラパを叱りつけていると、毅然とした声が響く。
彼がそちらを見ると、鉄仮面に蝙蝠のような翼を広げた騎士が、陽光を背に立っていた。
その光景に面食らいながらも、メイスナイトは首を垂れる。
「メタナイトさま、おかえりになられたんダスね」
その名は、孤高の騎士『メタナイト』。
メタナイトは翼に付着した海水を払うように、パタパタと軽く羽ばたかせると、洞窟の奥へと進んでいく。
メイスナイトはアルマパラパが落とした機械を回収し、慌ててメタナイトの後に続いた。
「なにか収穫はあったダスか?」
「ああ…。ただ、事が事だ。報告は全員を集めてからにする。
船員ワドルディ!現在の復旧状況は?」
メタナイトが声を張り上げると、水平帽を被ったワドルディがとてとてと駆け寄り、敬礼した。
「はいっ!ビースト軍団の協力で現在、85%が修復してます!
しかし、フライトまでにあと三週間はかかる見込みです!」
「当初の予定より、随分と進んだな…。
感謝する、ビースト軍団諸君。
こちらもレオンガルフ、キャロライン両名が一刻も早く見つかるよう、善処する」
「ウホ」
感謝するほどのことではない、と言わんばかりに軽く頭を下げ、はにかむゴリラ…剛腕獣ゴルルムンバ。
メタナイトは同じように頭を軽く下げると、作業するワドルディやメタナイツ、更にはビースト軍団らに向け、「集合だ!」と声を張り上げる。
すると、彼らは一斉に作業を中断し、数秒足らずで等間隔でメタナイトの前に並んだ。
凄まじい統率力である。
本来、敵であったはずのビースト軍団さえもまとめ上げているあたり、そのカリスマ性がよくわかることだろう。
メタナイトは咳払いをすると、仮面の下にある口を開いた。
「まずは、ここにいる全員に感謝を。諸君らのお陰で、我らが船…『戦艦ハルバード』の復旧率が八割を超えたと聞いた。
肝心の私が留守にしている間、不満も多く出たことだろう。
その謝罪も含めて、皆に伝えよう。すまなかった。ありがとう、と」
「ウホホッ、ウホウホッ!」
「水臭いぞ、オレたちの仲だろう」と言いたげに、白い歯を見せて笑みを浮かべるゴルルムンバ。
きちんと歯磨きをしているようで、清潔感のある爽やかな笑顔である。
メタナイトは頭を上げると、声を張った。
「では、調査の報告に入る!
『星のカービィ』の居場所が判明した!」
星のカービィ。この場にいる全員の宿敵でもあり、ともだちでもある、無敵のヒーロー。
彼さえいれば、どんな状況でもなんとかなってしまう、理不尽の塊。
そんな頼もしいヒーローの所在がわかったことで、皆はざわつき、嬉々とした声を漏らす。が、メタナイトが少しばかり動くと、急激に静まった。
全員が静まって数秒。メタナイトは言葉を続ける。
「しかしだ!悪い知らせとして、現在、かの悪名高い『マルク』が、カービィ打倒のために動いていることが判明した!
私はこれを止めるべく、カービィのいる『学園都市』に乗り込む!」
「それはメタナイトさま単独で、ということでしょうか!?」
船員ワドルディが問いかけると、メタナイトは深く頷く。
ここにいるメンバーはメタナイトを除き、図体がデカいか、カービィの吸い込みで呆気なくやられるような戦力ばかりだ。
はっきり言って、学園都市に踏み込めば3秒で捕まるだろう。
「かの都市の警備は厳重だ!
皆には迷惑をかけるが、どうか私の単独行動を受け入れて欲しい!!」
その言葉に、反対する者はいなかった。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「わにゃ!わにゃわにゃ、わにゃーっ!」
「わにゃわにゃうっせェ」
「わにゃーっ!?」
一方通行の手によって、まるでスクイーズのように伸び縮みするワドルディ。
いくら夢の泉の加護で死なないとはいえ、苦痛はある。囚われたワドルディたちは、同胞が悶えるのを目の当たりにして、ガタガタと寄り添って震えている。
彼らから見れば、一方通行は悪魔以外の何者でもない。
カービィに吸い込まれた方が遥かにマシだ、などと思いつつ、残ったワドルディたちは手に傘を持ってわずかな反抗心を露わにする。
が。フレンズハートの効力が働いていないワドルディでは、焼石に水どころではないだろう。
一方通行はその態度に舌打ちしながら、手に持った傘をベコベコに折って見せる。
「わにゃっ…」
「わにゃあっ!!わにゃ、わにゃわにゃ、わーにゃっ!わにゃっ!!」
「わにゃあああっ!」
「うっせェぞテメェらァ!!」
落ち込んだり、怒ったり、泣き喚いたりとさまざまな反応を見せるワドルディらに怒号を飛ばし、黙らせる一方通行。
それぞれが傘の前で涙を流すあたり、相当思い入れがあったのだろう。
伸ばされているワドルディもまた、苦しそうにしながらも傘を見て泣いていた。
その態度に更に苛ついた一方通行は、まとめてベクトル操作でワドルディらを締め上げる。
「で、どうなのサ?夢のチカラの輪郭くらいは掴めてきたのサ?」
「ああ。シンプルだが、『存在が想定されるすべての次元』を把握してようやく操れるって点だけが厄介だったな」
もう少し。もう少しで、究極の願望機を呼び出すことができる。
操るどころか、こうして伸ばして縮ませるだけでも意識を持っていかれそうな感覚に陥る中。
空から降りてきた星型の物体が、勢いよく地面に突き刺さった。
ちかっ、と、やけにポップな音を立てて霧散する星に、降り立つ数人の人影。
その影は着地するや否や、右手を振りかぶり、一方通行へと駆け出す。
バカだな、と思いつつ、一方通行が棒立ちしていると。
何かが壊れる音と共に、その拳が顔面に突き刺さった。
「わにゃ!」
「わにゃわにゃ!」
「危ないから離れてろ」
助け出されたワドルディらが、その人影に駆け寄り、各々頭を下げる。
それに対し、影…上条当麻は一言だけ告げ、新たに出現したワープスターを指すように一瞥した。
「…あり得ません…。一方通行には、あらゆる攻撃が通用しないはずでは…?」
顔面を殴られて倒れ伏す一方通行を前に、御坂妹が愕然とその光景を見つめる。
ワープスターが飛び立ったのを確認すると、カービィがともだちと認識していたはずのマルクを睨め付けた。
「ヘイヘイヘーイ、しばらくブリなのサ、星のカービィ。
随分と心強いオトモダチが出来たみたいで、羨ましい限りなのサ」
「……ぽよっ」
カービィはマルクの言葉を一蹴するように、姿勢を低くする。
マルクはそれにおどけながらも、歪な形の翼を広げ、ケタケタと笑った。
「コトバはいらないってか!?
そんなら、ボクたちとトコトンあそんでちょーよ!!」
がぱっ、と口腔が開き、光条が空気を穿つ。
カービィは咄嗟に、放たれた光を軽く横に飛んで避ける。
が、いつのまにか起きていた一方通行の蹴りが、その背中を捉えた。
「ぷゃっ!?」
びたん、とビルの壁に打ち付けられ、へばりつくカービィ。
そこへ追い打ちをかけるように、一方通行の足がカービィの後頭部に押しつけられる。
「コイツが『星のカービィ』かァ。
随分と弱っちそォな見た目だなァ」
「油断しない方がいいのサ。ソイツはどんな状況下にあっても、必ず奇跡を起こす。
運命に愛されたヒーローなのサ」
「そォかい。そりゃァ…ムカつくことこの上ねェなァアっ!!」
カービィの背に強い蹴りが放たれる。
カービィは「むぎゅぅ」と苦痛にうめく程度で済んだが、へばりついていたビルには亀裂が走り、倒壊を始める。
一方通行がそれに笑みを浮かべていると、当麻の右拳が、今度は顎を捉えた。
が。一方通行はベクトル操作で、当麻から距離をとり、訝しげに眉を顰める。
「カービィ、大丈夫か?」
「ぷ…、ぽよっ!」
当麻が手を差し伸べると、カービィはその手を掴み、元気よく飛び上がる。
一方通行とマルクが狙っているのは、カービィただ一人。
どんな狙いがあるのかはわからないが、当麻が殴り倒すべき相手は変わらない。
当麻は拳を握り締めると、一方通行へと駆け出した。
しかし、一方通行もバカではない。寧ろ、当麻とは比べ物にならないほどに頭脳明晰であり、その脳細胞の一片に至るまで、当麻を上回っている。
先程の打撃で、当麻の右腕相手に反射が機能しないことを悟っていた彼は、地面を隆起させた。
「オイオイオイオイ、宇宙人相手にヒーロー気取りですかァ?
雑魚の考えるこたァ、俺にゃァよくわかンねェ…なァっ!!」
一方通行が転がっていた空き缶を蹴り、弾丸のような速度で当麻に飛ばす。
当麻は仰け反ってソレを避け、踊るように身を翻した。
「カービィ!このクソ野郎は俺がぶん殴る!いいな!?」
「ぽよっ!」
カービィに向かって叫ぶと共に、ゴミやら礫やらで構成された弾幕を張る一方通行へと向かう当麻。
しかし、ソレを阻むべく、マルクが彼の前へと躍り出た。
「バカだねぇ…!サスガにメタ能力持ってるヤツを好きにさせるワケがないのサ!!」
マルクは言うと、四つの刃…「シューターカッター」を放つ。
その刃先が、当麻のカッターシャツを裂こうとした、まさにその時。
「カービィ!」
「ぽよっ!」
いつのまにやら、当麻の背に隠れて走っていたカービィが飛び出したのは。カービィは待ってましたと言わんばかりに、その刃をまとめて吸い込む。
瞬間。カービィが光に包まれた。
光が収まると、カービィは金属質のトサカが特徴的な帽子を深々と被り、そこに佇んでいた。
ブーメランで全てを切り裂く、その名もコピー能力『カッター』。
カービィは即座に帽子のトサカ部分を外すと、それを勢いよくマルクに投げつけた。
「ット、あっぶね…ぶっ!?」
マルクは咄嗟にソレを避けるも、帰ってきたブーメランに直撃し、軽く吹っ飛ぶ。
と。その先にエフィリンが開いた異空間への扉が開き、マルクが放り込まれた。
カービィも同じようにそこへ飛び込むと、当麻へと目を向ける。
「そっち頼む!」
「ぽよっ!」
これで分断は済んだ。
エフィリンは出入り口を塞ぐと、御坂妹が待機する物陰へと退避する。
一方通行とマルクを同時に相手取れば、厄介なことこの上ないのは目に見えていた。
エフィリンのファインプレーにより、二人はどうやっても協力できない状況になった。
あとは、当麻とカービィが悪党二人を倒すだけだ。
当麻はこの状況を作り出したエフィリンに感謝の言葉を述べようとして、その口を閉じる。
今は、目の前の悪党を殴ることに集中しなければならない。
彼はなんとか弾幕をくぐり抜け、一方通行の元へと辿り着く。
「らぁっ!!」
当麻は裂帛の気合いと共に、引き絞った右拳をその頬へと放つ。
一方通行はうめき声をあげる暇もなく、後方へとバウンドして吹っ飛んでいく。
倒れ伏した最強を見下ろしながら、最弱は挑発してみせた。
「おい、三下。テメェが酔ってる『最強』の称号、今ここで捨ててもらおうか…!!」
二組のヒーローと悪党の戦いが、幕を開けた。
御坂妹…分断に一役買ったエフィリン、そして髪飾りにとまる蝶と一緒に、戦いを見守っている。一切の攻撃が通用しなかった一方通行相手に渡り合う当麻にビビってる。
メタナイト…現在、猛スピードで学園都市に向かっている最中。
例の如く、水底に沈んだハルバードをサルベージし、なんとか合流できたメタナイツやビースト軍団、ワドルディらに復旧作業を頼んでいる。こんな状況においても、剣の修行は一切欠かさず、挑んでくるゴルルムンバを圧倒している。現在、ゴルルムンバとは124戦124勝。ただ、最近は被弾回数も増えているらしい。
ある魔術師と互角に渡り合い、親交を深めているとか。
ゴルルムンバ…歯磨きゴリラ。ビースト軍団鉄の掟の一つに「歯磨きをしないヤツはおしおきだ!」とあるので、誰よりも真面目に磨いているらしい。ホワイトニングでもしたのかと思うほど真っ白な歯なため、歯を見せて笑うと清潔感がある。
最近、ようやくメタナイトに攻撃が当たるようになってきたことが嬉しいとのこと。再会したらレオンガルフたちに自慢する予定。
アルマパラパ…ハルバード修理の立役者の一人。廃材アートを趣味にしている影響か、細かい作業が得意なので、ワドルディたちに教えてもらいながら機械の修理をしている。鳴き声は「グー」。
修理したものをなんに使うかは全くわかってないらしく、廃材アートの材料にとパクろうとしては、毎度メイスナイトに叱られている。
最近、愛用のダンスドールがちょっぴりおしゃれになった。再会したらレオンガルフたちに自慢する予定。