STAGE:1 追放
「……はぁ」
空の上にて。
クラッコに揺られる当麻のため息が、空気の薄いはずである空に消える。
ちらり、とカービィのいるであろう、背後に目を向けると、彼は頬に空気をいっぱいため、必死に両手をバタつかせながら、クラッコの後ろについていた。
端的に言おう。学園都市から追い出されたのである。
ことの発端は、最強を圧倒し、バルフレイナイトを倒したことだった。
最強を失墜させ、さらには未知の生命体を従えて、これまた未知なる騎士を倒した男。
そんな身に余る称号を手に入れて、上条当麻が持て余さないわけがなく。
結果、学園都市中の人間に目をつけられ、日中関係なく襲ってくるようになったのだ。
ひどい時は寮をまるごと吹き飛ばそうと考えたバカが襲いかかり。ケーキを台無しにされた怒り狂うカービィによって、見事に空を彩る星となったのは、記憶に新しい。
デデデ大王もそのとばっちりを受けたことがあるように、食べ物の恨みは非常に恐ろしいのだ。
無論、そんな暴動に近い動きがあれば、理事会も黙ってるわけがなく。
一度、ほとぼりが冷めるまで出て行け、と告げられ、半ば無理やり追い出された。
宿題も進んでいなければ、新学期に登校できるかすらも怪しい。
お先真っ暗にも程があるこの状況で、ため息を吐くなと言う方が無理だった。
「そう落ち込むな。オマエは正しいことをしたのだろう?
ならば、その行いに泥を塗るようなマネはするな」
「別に落ち込んじゃいねぇよ。バス代すら払えない上条さんを許してくれ…」
「心配するな、ウニ頭。オマエは金欠じゃないと違和感がある」
「…もうちょっとオブラートに包むってこと、覚えませんか…?」
パルルは相変わらずの毒舌で、当麻が気にする懐事情をばっさり切り捨てる。
当麻はそれによってさらに疲れたのか、深い、深いため息を吐いた。
ため息は幸せが逃げていくとは言うが、吐き出す幸運すらない。好きなだけため息を吐けることは、利点としてカウントしていいのだろうか。
そんなことを考えながら、隣でくつろぐデデデ大王に目を向ける。
「で、俺たちは今、どこに向かってんだ?」
「メタナイトが拠点にしてる場所だな。
協力してほしいことがあるんだと。
アイツは『ハルバードベース』って呼んでたが…、まさか、ハルバードまでこっちに来てたりしてな!」
「ハルバード?」
「メタナイトの空中戦艦だよ。
カービィを2回も追い払えるくらい、すごく強い船なんだ!」
「ぽよ!ぽおよ!」
「3回目にはぶっ壊されてるって言い方してないか、ソレ?」
ハルバード。メタナイトが所有する、ポップスター唯一の空中戦艦。
宇宙空間でも活動ができる優れもので、かつて、「星の夢」と呼ばれるマシンを打ち倒すのに助力したのも、このハルバードである。
が、悲しいかな。事あるごとに活躍はするものの、同時に事あるごとに墜落するので、もはや一種のお家芸なのでは、と、密かに噂されている。
そんな船の名前を冠しているのだ。確実に、その拠点にあるに違いない。
「…話変わるし、今更だけどよ」
「ん?どーした?」
当麻はハルバードへの思考を一度ぶった切り、背後へと目を向ける。
そこには、インデックスやワドルディたちとババ抜きをして遊ぶ佐天涙子がいた。
「あんたも追い出されたのか?」
「あははー…。実はそうなんですよねー…。
やっぱ、下手にいろいろと首突っ込んだのが良くなかったみたいで。
あのちょうちょを渡せー…なーんて迫られたり?」
「…な、なんか、ごめんな」
どうやら後輩にまで、迷惑をかけまくっていたらしい。
当麻は罪悪感から頭を下げると、息を吐くように「不幸だ…」と呟く。
しかし、デデデ大王の家臣…本人は承諾していない…が一人、佐天涙子はそんなことでは挫けない。
「いえいえ、大丈夫ですよー。
私も美琴さんも、あの実験を知ったら、上条さんと同じようなこと考えたでしょうし」
「堅苦しくしなくていいぞ。結構無理してるだろ、ソレ」
「あ、本当?じゃ、お言葉に甘えて」
「るいこ、早く引かないと、ワド四郎が困ってるんだよ」
インデックスの言葉に、再び彼女らとのババ抜きへと戻る佐天。
なんとも微笑ましい光景である。
そんなやりとりをしていると、クラッコが声を張り上げた。
「見えてきましたよ、大王さま!
あの洞窟が『ハルバードベース』です!」
眼下には、海水浴場から少し離れた岩山が見えた。
♦︎♦︎♦︎♦︎
ハルバードベース。
仰々しい名前をしているが、ただの洞窟ではないか、と呆れたのも束の間。
彼らを出迎えたのは、学園都市の施設もびっくりなテクノロジーの塊だった。
ワドルディやゴリラ、アルマジロが忙しなく働く現場に、鎮座する空中戦艦。
それらを見渡し、当麻は「はぁー…」と感心した息を吐く。
「…自己主張激しすぎねぇ?」
「ぷぃ?」
「一種のゲン担ぎのようなもんだってメタナイトは言ってたぞ」
ハルバードの船首には、メタナイトの仮面を象った装飾が佇む。
自己顕示欲が限界突破したデザインに、当麻がそう言いたくなるのも無理はない。
このデザインは、かつてメタナイトが革命を起こそうと反旗を翻した際、「どうせなら革命を起こしたのが誰か、わかりやすいようにデザインしよう」と全会一致で決まった経緯があるのだが、その事実を知るのは、ごく一部である。
デデデ大王の言葉に生返事を返し、当麻はハルバードの周りで作業をするゴリラやアルマジロに目を向けた。
「…なんだろう。あらゆる不思議を不思議に思わなくなってる俺がいる」
「デデさんたちといると、不思議って感覚が薄くなってく気がするんだよね…」
勉強という概念がないにしては、明らかに地球より発達した文明に、そんな感想を述べる当麻たち。
と。そこへ、羽をマントのようにして纏うメタナイトが姿を現した。
「ようこそ、我らがハルバードベースへ。
改めて、自己紹介をしよう。
私はメタナイト。剣の道を極めるべく、日々鍛錬を重ねている。
こちらは私の部下、『メタナイツ』が一人、メイスナイトだ」
「メタナイトさまからお話は聞いてるダス、カミジョー・トーマどの。
メタナイトさまの忠臣が一人、メイスナイトだス。よろしくダス」
メタナイトが紹介すると、メイスナイトは当麻に握手を求める。
またエフィリンのようなことになるのではないか、とビクビクしながらも右手を差し出す当麻。
しかし、メイスナイトはメイスの扱いが得意というだけで、特殊能力がある訳ではない。
当麻の心配は杞憂に終わり、無事に握手を交わすことができた。
「ってか、言葉通じてんのな」
「ワタスたちの場合、『ハルトマンワークスカンパニー』から接収した翻訳機によって、会話が可能になってるダス。
ポップスターの言語限定なんで、アニマルたちは喋れないダスが…」
言って、メイスナイトは耳元であろう箇所に付けた、インカムのような機械を指差す。
当麻は聞き慣れない社名を疑問に思いながらも、そんなことを聞きにきた訳ではないと首を振った。
「話が逸れたな。それでは、本題に入るとしよう。
…とは言っても、事が事だ。無用な混乱を招きたくない。メイスナイト、頼む」
「はいダス!」
メタナイトが指示を出すとともに、メイスナイトは備え付けてあったボタンを押す。
すると、がこんっ、と音が響き、当麻らが立っている床が浮遊し始めた。
「な、ななっ…!?」
「わわっ…」
「ぽよ?」
カービィからすれば慣れたものであるが、当麻たちは慣れない衝撃に面食らう。
感覚としては、エレベーターに近い。
ゆっくり、ゆっくりと変わっていく景色と、浮遊する床に感嘆の息を漏らすこと数秒。
同じように、がこんっ、と音を立てて床が止まると、メタナイトは背を見せた。
「こちらだ」
メタナイトは言うと、眼前にあった扉を開き、奥へと進む。それに続いた当麻らを出迎えたのは、簡素な会議室だった。
メタナイトの部下として働くワドルディたちに案内されるがまま、用意された座席に座る当麻たち。
全員が座したことを確認するや否や、メタナイトは話を切り出した。
「単刀直入に言おう。ハルトマンワークスカンパニーが復活した可能性がある。手を貸してくれ」
♦︎♦︎♦︎♦︎
学園都市にて。
ピンクの髪を伸ばした少女…に近いシルエットの生物が、謎のプロペラに掴まりながら、血眼になってあたりを見渡す。
「ない、ない、ない…!どうしようどうしようどうしよう!?」
少女…「秘書スージー」は現在、しでかしたことの大きさに焦り散らかしていた。
端的に言えば、盗まれてはならない物を盗まれてしまったのだ。
悪用されればまずいが、より危険なのは『悪用した者が導かれる』ことだろう。
その末路を知るスージーだからこそ、その焦りは尋常ではなかった。
「な、なんとしてでも取り戻さなきゃ…!
二度とあんなマシンを再起動させてたまるもんですか…!!」
その決意を胸にした直後、彼女はふと、ある場所へと目を向ける。
デカデカと垂れ下がる旗に屋台。そこに書かれていたのは、なんとも鮮やかな色合いのアイスクリームであった。
「…げ、限定フレーバー…。
……はっ!?だ、ダメよ秘書スージー…。そんな、アレを追わなきゃいけないのに、はしたな…、いや、でも…」
こうして葛藤している間にも、距離は開いていく。このプロペラでは、追いつくことは難しいだろう。
しばらく葛藤したのち、誘惑に負けたスージーは地表へ降り立ち、屋台へと向かった。
「すみません!限定フレーバー、3つくださいまし!!」
♦︎♦︎♦︎♦︎
その頃、学園都市にて。
研究チーム全員の重傷によって解体され、人っ子一人いないはずの場所には、騒音が発生していた。
だというのに、何故か機械がそこらじゅうを駆け回り、忙しなく作業を続けていた。
彼らが作り出しているのは、紫色のアメーバのような生物や、白兵戦特化の武装。
果ては、資源を効率よく採取するために開発された、環境機械化兵器。
学園都市において、なんとしてでも唾棄されるべきプロジェクトが、秘密裏に動いていた。
『ザ、ザザ…っ、ザ────…』
と、そこにあるパソコンの画面に、『H』を象ったような、謎の紋様が浮かび上がる。
その直後、スピーカーからは、ある音声が流れた。
『……R…E…A…D…Y……・>』
狂気のマシンによる侵略が、幕を開けようとしていた。
秘書スージー…バカンス目的ではないが、新世界に来ていた一人。アイスの誘惑には悲しいくらいに弱い。
ハルトマンワークスカンパニーが潰れた後は、マホロアが居住としているローアへと転がり込み、後始末として、ネットワークの海に流れ出た???のデータの処理を続けていた。
???…帰れ。頼む、帰れ。絶対能力進化計画を進行していた施設、及び『樹形図の設計者』に寄生していた残骸。かつてほどの力はないが、凶悪性だけはバッチリ残ってる。自信が宿っているレムナントを、予定より一ヶ月ほど早く学園都市に引き込み、アイテム、スクールなどの一部の暗部を、本人たちに勘付かれる事なく傀儡化している。往生際の悪すぎるプログラムである。今は本体、及び母艦を再建中。その傍で学園都市支配を目論み、兵力を整えている。
アレイスター=クロウリー…???を放逐して、利用する方向にシフトした。???もそれをわかってて好き放題してる。暗部があっちに利用されてることも知っててほっといてるあたり、動かない方がマシだと判断したらしい。
佐天を追い出したのは、デデデ大王、カービィを一時的に学園都市から離れさせて、プランの見直しをするため。
御坂美琴…蝶の髪飾りを付けた御坂妹と遭遇。実験が当麻たちによって挫かれたことを聞き、罪悪感と無力感で病みまくって死にかけている。AIMバルフレイナイトにも結構いいようにやられてた過去も相まって余計に死にそう。助けて上条。しかし残念、上条は追放されていた。美琴が闇堕ちしちゃう前に帰ってこれるか、上条…!
白井黒子…佐天が追い出された件についてご立腹。初春と一緒に猛抗議してるが、まったく相手にされてない。ちなみに、テレスティーナとかの問題はとっくの昔に終わってる。
一方通行…退院して、ヒーローに憧れ始める。暗部に入ろうか迷ったが、最近やけにきな臭いので避け、暗部の奥にいる「アレイスター以外の何か」を探り始めた。尚、お相手はそれも織り込み済みな模様。
???…無自覚な致命的戦犯。この章が始まる前から登場している。