まんまるピンクとウニ頭   作:鳩胸な鴨

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セロリと上条さんは仲良し


STAGE:4 星の夢

「黒子、あなた…!?」

 

親友の裏切り。予想だにしなかった事態に、美琴は驚愕に目を見開き、黒子を見やる。

怪しげな笑みを浮かべる黒子は、まるで機械にでもなったかのように、表情を一切動かさずに口を開く。

 

「少シ抑揚ヲ付ケテ話スダケデ・コウモ容易クダマセルトハ…・>。

ヤハリ・生命体トハ・ココロトハ・脆弱ナモノデ・ゴザイマス…・>」

「く、黒子…?いや、違う…?

あなた誰!?黒子をどうしたのよ!?」

 

明らかに様子が違う。光すら見えない瞳で、抑揚もなく言葉を並べる黒子に、美琴は叫ぶように問いかける。

まるで、ココロのない機械とでも話しているような、そんな感覚。

そんなわけがない、と否定した思考を肯定するかの如く、黒子はただ、無機質に言葉を放った。

 

「白井黒子ハ・ワタシガ改造シ・キカイ化スル予定ノ・一人デス・>。

ソシテ・ソレハ・アナタモ同ジコト…・>」

「質問に答えなさい!!アナタはなんなのって聞いてるの!!」

 

美琴は怒鳴り、黒子に…否。黒子の皮を被った誰かにコインを向ける。

緊張と沈黙が走る。数秒のソレを破ったのは、黒子を乗っ取った誰かだった。

 

「ワタシハ…・『ハルトマンワークスカンパニー』ノ・マザーコンピュータ…・『星の夢』…・>。

宇宙ニ蔓延ル・スベテノ生命体ヲ・ホロボスモノデス・>」

「星の…夢…?」

 

宇宙のすべての生命を絶やす。そう謳う割には、随分とロマンチックな名前だ。

黒子が時折書く、自分とのありもしない熱愛を語った痛々しいポエムにその名前を放り込んでも、なんら不自然ではない。

美琴はあたりの電磁波を探るべく、神経を研ぎ澄ませ、黒子に相対する。

マザーコンピュータと言うからには、必ずハードがあるはずだ。

 

「改造…って、言うのは?」

「丁度イイ・>。先程完成シタ・新製品ヲ・ゴ紹介サセテ・イタダキマス・>」

 

がこん、と音を立て、黒子と自分を隔てるように、床に穴が開く。

その奥からせり出て来たのは、見覚えのある人影。

頭部に歪な機械を被せられ、華奢な四肢には不釣り合いなほどに無骨な武装を装着した少年の姿に、美琴は目を見開く。

 

「あ、あなた…、虚空爆弾の…!?」

 

そう。彼女の目の前にいたのは、以前、学園都市を震撼させた「虚空爆弾事件」の犯人であった少年だった。

あまりに変わり果てた姿を前に、愕然としていると、星の夢が淡々と言葉を紡ぐ。

 

「コレゾ・我ガ社ノ新製品…・>

24時間休ムコトナク・破壊工作ヲ続ケル爆撃用兵器…・プロダクトナンバー・GB-10…『グラビトンボーグ』デス・>」

 

絶句。人命を考慮しないどころではない、生命の尊厳を根幹から破壊した産物を前に、美琴は愕然とした。

同時に、操られている黒子も同じ末路を辿ることを悟り、怒りを露わにする。

 

「外道…っ!」

 

声に乗せて怒りを叩きつけるも、ココロを持たぬ星の夢には届かない。

一刻も早く、本体を見つけなくては。

美琴は星の夢の動きを警戒しつつ、必死でその本体を探す。

しかし、ソレと思しき電磁波は感知できず。

逆に、探っていることを悟られたのか、グラビトンボーグから発射された物体が潰れ、爆ぜた。

 

「きゃあっ…!?」

 

あまりに急なことで、対応の遅れた美琴は吹き飛び、その場を転がる。

慌てて立ちあがろうとするも、覚えのあるノイズが辺りを駆け巡った。

 

「がっ…!?」

「使エルト思イ・再現シテミマシタ・>」

「キャパシティ…ダウン…!?」

 

かつて打倒した、テレスティーナ=木原=ライフラインが用いた超音波兵器。

ノイズを発することで能力者の演算を妨害するソレを前に、美琴は無力であった。

しかし、ソレを使えば、黒子らもタダでは済まないはず。

だというのに、彼女らは一切苦痛に喘ぐことなく、そこに佇んでいた。

 

「『星のカービィ』ニハ・効カナイデショウガ…・>。コノ都市ノ能力者ノ捕獲ニ・大イニ貢献スル・コトデショウ…・>。

…アノ生命体ヲ排除シナクテハ・ワタシノ目的ハ果タセマセン…・>。

アナタニハ・ソノタメニ働ク・究極ノ兵器ニナッテ・イタダキマス・>」

「星の…カービィ…?」

 

聞いたことのない名前だ。

いや、カービィという名前なら知っている。いけすかないツンツン頭と一緒にいた、あのまんまるピンクがそんな名前だったはず。

あの人畜無害そうなマスコットの何を恐れているのだろうか。

可愛さに弱い、などというアホみたいな弱点がない限り、恐れる理由が見当たらない。

走る苦痛に喘ぎながらも、美琴は星の夢が支配した黒子を睨みつけた。

 

「デハ・改造ヲハジメマショウ…・>。

3……2……1……Go!」

 

今、ココロ無き悪意が、牙を剥いた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「…まさか、助っ人がお前なんてな」

「ぽよ?」

 

時は少し進み、ンギュア基地を撃退した後。

ンギュア基地から現れたコア・カブーラーを片手でスクラップに変えるという、ヒールなのかヒーローなのかよくわからないサプライズ登場をかました一方通行が、当麻たちの前に立っていた。

当麻は先ほどの光景と合わせ、一方通行が助っ人だという事実になんとも言えず、苦笑を浮かべる。

一方通行はというと、事情をあらかた聞かされたようで、今回ばかりは役に立ちそうもない当麻を前に、嫌味ったらしく笑みを浮かべた。

 

「オイオイオイオイ、劣等生クゥン。今回に限って『パーフェクトな役立たず』なンだろォ?

泣いて喜べ。学園都市一位サマが直々に手ェ貸してやっからよォ」

「くぅ〜…っ!俺の右手がキカイにも通用すれば…っ!」

 

前のお返しと言わんばかりに、ここぞとばかりに嫌味を畳み掛ける一方通行。完全に舐められている。

しかし、ンギュア基地及びコア・カブーラーを見事撃墜してみせたのは、カービィと駆けつけた一方通行の二人なのだ。

反論しようのない事実を前に、当麻は何の役にも立ちそうのない右手を呪った。

 

「わぁー…。すごーい…!って、自己顕示欲が透けて見える船にミサカはミサカは子供っぽく感心してみたり!」

「……私もこのくらいの妹がほしーなー、なーんて…」

「上条さんはこれ以上の床面積の圧迫を許しません」

 

妹達らしく、一言余計な打ち止めを見やり、インデックスが修道女としての矜持などかなぐり捨てたような我儘を当麻にねだる。

当麻はいろいろツッコミどころの多いその願いをバッサリと切り捨て、打ち止めに振り回されて疲れ切ったのか、遠い目をした一方通行に目を向けた。

 

「…大変そうだな、そっちも」

「……チッ」

 

謎のシンパシーを感じた。

以前、相対した時の冷酷さはカケラも見えず、ただの突き放し気味な子供のように思える。

ちょっと会わないだけで、随分と印象が変わるモノだな、と思っていると。

 

「みんな、作戦会議を始めるだス。それぞれ、席に着いて欲しいだス」

 

メイスナイトの声が響いた。

そちらを見ると、メタナイト、デデデ大王、スージーの三人は既に椅子に腰掛けている。

皆が慌てて席に座る中で、一方通行が当麻を指差した。

 

「この役立たず、居ても意味あるのか?」

「お前俺のこと嫌いなの!?」

「当たり前だろ」

「恩着せがましくなるから言わなかったけど、応急処置したのも病院に担ぎ込んだのも俺なんだぞ!?」

「ヘタクソ過ぎて逆効果だったろ。

そこのまンまるピンクがカバーして処置したのは知ってンだからな」

「その節は誠に申し訳ありませんでした」

 

落ち度のありすぎる当麻では、この舌戦に勝つことは難しかった。

深々と頭を下げる当麻に、「調子狂う」と不機嫌そうに告げ、席に着く一方通行。

当麻もまた、少しばかり躊躇ったものの、おずおずとドーナツをほおばるカービィの隣に座った。

 

「ぽよっ」

「あ、ああ、ありがとう…」

 

口元を汚しながら、ドーナツの一つを当麻に差し出すカービィ。

どうやら、落ち込んだ当麻を慰めようとしたようだ。

当麻はイチゴソースがたっぷり塗られたソレを受け取ると、一口齧った。

 

「ミサカも!ミサカもドーナツ食べたーいって、ミサカはミサカは空気も読まずおねだりしてみたり!」

「私もドーナツ欲しいんだよ!オールドファッション、フレンチクルーラー、マラサダ、チュロス…、あと、えっと、んっと…、とにかく思いつくかぎりいっぱい!」

「はいはい。食堂に案内するんで、コッチについてきて欲しいだス」

「カービィ。お前は会議が終わってからな」

「ぽよぉ…」

 

ソレに反応してか、精神が幼い二人が大声で駄々を捏ねる。

カービィが三人に増えたみたいだ、と辟易しながらも、メイスナイトは二人を連れ出す。

食欲に忠実なカービィもそっちについて行こうとしたが、当麻がなんとか食い止めた。

 

「メタさん、なんかウズウズしてるけど」

「……気にするな。作戦会議を始めよう」

 

余談だが。その後、佐天が思いつく限りのドーナツを大量に食べるメタナイトを目撃したとかしなかったとか。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

現在、初春飾利はどうしようもない無力感に打ちひしがれていた。

頼れる親友たちは訳もわからない事情で追放され、猛抗議も意味をなさず。その直後に起きた、謎のロボットたちによる襲撃により、パートナーは攫われ。挙句、先ほど連絡したばかりだった友人もまた、行方不明になってしまったという。

仲の良い皆が次々と学園都市から姿を消す中で、健全な心なんて保てる訳がなかった。

 

「……もうっ!なんでこんな訳の分からないプログラムで動いてるんですかこれ!?」

 

初春は接収したメタナイトボーグのプログラムを前に、苛立ちを込めた叫びを放つ。

持ち前のハッキング技術で、ファイアウォールの突破は容易ではあった。が、中に眠っているデータがあまりにもデタラメ過ぎて、得られた情報は少なかった。

初春は気づかなかったが、「星の夢」はメタナイトボーグらに全てのファイアウォールが突破された時、プログラム配列をまったくデタラメなものに書き換えるという隠蔽措置を仕込んでいた。

 

というのも、今回の襲撃に使用されたキカイ兵器は、地球の素材でも再現できるよう、大幅にデチューンされていたのである。

プログラムに関しても同じことで、プレジデント・ハルトマンが作り出した特殊合金…「ハルトニウム」がなくては、どうしても限界がある。

とは言っても、コインの超電磁砲を切り裂くことは出来るので、地球製品と比べてハイスペックなことには変わりないが。

そんな地球規模のスペックだからこそ、初春程のハッカーであれば、星の夢の所在を暴くことが出来てしまう。

そのため、誰にも邪魔されない場所で、能力者の改造を狙う星の夢は、所在を誤魔化すための処置を取ったのだ。

 

しかし、地球でハルトニウムが製造できない訳ではない。今回、キカイ兵器に使われなかったのは、ただ単に、製造が追いつかなかっただけである。

製造できた分は、改造した能力者を制御するための装置に優先した…というのが、デチューンの真相であった。

 

無論、そんな裏事情を知る由のない初春は、スクラップになったメタナイトボーグの返却手続きを終え、どさっ、と座り込む。

 

「…こんな時、佐天さんが居てくれたら…」

 

追放された友人のことを思い浮かべ、弱音を吐く初春。佐天の底抜けの明るさがあれば、この不安も吹き飛ぶかも知れない。

そんなことを考えるも、結局は無い物ねだりだと思考を切り上げ、ため息を吐いた。

と。その時だった。

 

「やぁ。君が『初春飾利』かな?」

 

黒いローブに赤い髪を揺らす少年が、卵型のシルエットと共に現れたのは。




初春飾利…病んでたところ、星の夢打倒のために、不良魔術師とイカタマに連れ去られた。頑張れば現時点の星の夢のシステムを一部掌握できるため、星の夢もソレを全力で警戒している。先の襲撃で攫うつもりだったが、黒子や風紀委員臨時勤務のボンカース、Mr.チクタク、コックカワサキなどの中ボスたちが頑張って守っていた。
尚、攫われたらハルトマンと同じ末路を辿っていた可能性が高い。

佐天涙子…ハルバードベースがてんてこまい過ぎて、ともだちが悲惨なことになってることに気がついてない。改造された二人が前に出たら、迷わずハンマーでぶっ飛ばす程度にはデデデ大王のハンマー英才教育が施されている。

ンギュア基地/コア・カブーラー…あまりに蹂躙すぎたんでナレ死。半分は一方通行に片手で潰された。

上条当麻/カービィ…ドーナツ美味しい。尚、作戦会議は両名とも殆ど理解してない模様。

不良魔術師…休んでたところをイカタマに叩き起こされ、日本に強制連行された。「御使堕しをなんとか事前に阻止できたし、ひと段落だ」と帰ろうとするも、「まだやることあるヨォ」と引き止められ、渋々同行することに。既にニコチン中毒にかかってるらしく、お気に入りの銘柄が底を尽きてイライラしてる。イカタマのことは普通に嫌い。

イカタマ…ご存じイカサマ卵。星の夢打倒のために、メタナイトとは別で魔術側の戦力をかき集めている。ちなみに、きちんとメタナイトたちと連携はしてる。
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