まんまるピンクとウニ頭   作:鳩胸な鴨

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取り敢えず書いた。

一部修正しました。


LEVEL:1 アイディアリズム・ネセサリー
STAGE:1 来訪者


カービィと当麻が出会って、早一週間。

終業式を先日に終え、補習漬けが確定した夏休み初日。当麻は目の前の問題に、悶々と頭を悩ませていた。

 

「わにゃ?」

「……わにゃ、じゃないんだよなぁ…」

 

目の前にいるのは、カービィによく似たフォルムの、なんとも悩みがなさそうな顔をした謎の生命体。

頭のゆるいカービィに必死になってひらがなを教え、目の前の生命体の名称を問うたところ、「わどるでぃ」という、子供が描いたサナダムシみたいな文字列が返ってきた。

この謎の生命体…ワドルディとの出会いは、2日前に起きた事件に起因する。

 

事件と言っても、大したものじゃない。研究員らに攫われそうになっていたワドルディを、カービィが助け出しただけのことである。

生活費を賄うために、自販機の下にある小銭を拾い集めるというプライドを捨てた苦肉の策を、その行為のみっともなさを全く知らないカービィという無垢な協力者と共に実行していた時のこと。

研究員に捕獲され、トレーラーに積み込まれたワドルディを偶然にも目撃。

「わにゃわにゃ」と騒ぎ立て、カービィに助けを求めたワドルディ。いくら能天気とはいえ、状況の判断は的確に出来るらしく、カービィは即座に車を追いかけ始めた。

しかし、カービィのような小さな歩幅で走って車に追いつけるわけもなく。当麻がなんとか車を止めようとない知恵を振り絞り始めた、その時だった。

 

カービィが自販機をほおばったのだ。

自販機を吸い込み、四角いシルエットへと変化したカービィは、凄まじい勢いで缶ジュースをマシンガンのように放出。

それによって車はベッコベコに破壊され、囚われたワドルディは見事に救出された。

ただの缶ジュースでさえも、銃弾もびっくりな威力に変える『無限のチカラ』がどれだけ凄まじいかはわかったことだろう。

助けたワドルディは、全部で六人。その全てが例外なく当麻の自宅に押しかけ、カービィの自宅の墜落による後始末を手伝ってくれている。

それはいいのだ。家事手伝いをしてくれるのならば、別に問題はない。

しかし、問題は別のところにある。

 

食費だ。

 

明日の食事すらままならない当麻の家に八人である。さらには、常軌を逸した悪食且つ大飯食らいのカービィがいる。

教育機関として機能する街たる学園都市に、バイトなどという文化があるわけもなく。あったとしても、大抵違法性が付き纏うという始末。

学園都市の主な収入源である実験協力や奨学金なぞ、無能力者という最底辺にカテゴリーされる当麻に受けられるはずもなく。

結果、全てのプライドを全力投球でドブに捨て、コックをコピーしたカービィに、かき集めたゴミ類を料理へと変換してもらって、なんとか飢えを凌いでいた。

 

「これじゃ、誰が家主かわかんねぇな」

「ぽよ?」

「わにゃ?」

「…悩みがなさそうで、羨ましい限りですよホント」

 

今日も今日とて、ゴミから精製された冷麺を啜りながら、当麻はため息を吐く。

全財産は600円少し。溜め込んでいた袋麺は残らず消し飛び、なんなら台所も未だ復旧の目処が立たない始末。

家のことも、何かを思い立てば必ず不幸が襲いかかる。というより、何もしなくても不幸が襲いかかる。

結果、当麻はほとんどお飾りだけの家主と化していた。

しかしながら、押しかけながらも住まわせてくれる当麻にカービィたちは大きな恩を感じているらしく、何かあれば当麻のために右往左往してくれる。

その善意により、罪悪感がさらに湧き上がってくるのだが、彼らの奉仕に、住居を与える以外の何かを返す手立てがないのも事実。

そんな奇妙な同居人への申し訳なさを胸に秘め、食い終わった皿の処理をどうしようか、と迷っていると。

突如、カービィの自宅の扉から、凄まじい勢いで青緑の小さな物体が飛び出した。

 

「カービィ!大丈夫だった!?」

「ぶへぇっ!?」

「ぽよぉっ!」

 

その物体は、中間点に位置していた当麻に、大きさに見合わぬ猛烈なタックルをかまし、その先にいるカービィへと駆け寄る。

当麻は「不幸だ…」と嘆きつつ、カービィと共に再会を喜び合う、妖精のような出立の生命体へと目を向けた。

 

「あ、さっきぶつかっちゃった子かな?

ごめんね。カービィを見つけてうれしくなっちゃって」

「いやいや、上条さんはこの程度じゃ全然音を上げませんよ…って、ん?」

「……?どうかした?」

 

こてん、と首を傾げる生命体をまじまじと見る。妖精と動物を掛け合わせたような、神秘さを感じさせる風貌。

まるで羽のように広げた耳は、片方だけ欠けている。

当麻の顔ほどの大きさもないような小さな存在だが、人間と同程度の知性を感じられた。

 

「……話せるの、お前?」

「元いた場所の言語と似てたから、こっそり辞書とか読んで…なんとか?」

 

当麻の問いに、なんとも曖昧な返事を返す彼。

カービィはその周りで「エフィリン!エフィリン!」と全身で再会の喜びを表現するように、ぽんぽんと跳ね回っていた。

 

「エフィリン…っていうのか?」

「うん。ボクの名前はエフィリン!カービィのともだちだよ!

キミは…えっと、なんていうのかな?」

「上条当麻。上条でも、当麻でもいいぜ。よろしく、エフィリン」

「トーマ!トーマ!」

「うん、じゃあ、トーマって呼ばせてもらうね。よろしく!」

 

当麻は右手を差し出し、エフィリンに握手を促す。

エフィリンがその手に触れた瞬間、何かが壊れるような音と共に、びたん、とエフィリンが顔面から落下した。

 

「ふぎっ!?」

「あっ、すまん!?」

 

どうやら、エフィリンの浮遊能力は幻想殺しで打ち消せるらしい。

そんなことを思いつつ、落下したエフィリンを左手で起こすと、彼は鼻っぱしらをさすりながら、首を傾げた。

 

「今の、なんだったの?」

「あー…。カービィとワドルディには効かなかったんだけどな…」

 

言って、当麻は自身の右腕に宿る「幻想殺し」についての説明を始める。

とは言っても、超常を無効化するという、あまりにもシンプルな能力なので、そこまで時間はかからなかったのだが。

それを聞いたエフィリンは、「ボクが落ちちゃうくらいだから、すごい能力だね!」と興奮気味に、当麻の能力を褒め称えた。

能力を褒められた試しのなかった当麻は少しばかり面食らった後、照れくさそうに話題を逸らした。

 

「…と、ところでさ。エフィリンはなんでウチに来たんだ?カービィを探してたのか?」

 

当麻が問うと、エフィリンは少しばかり難しい表情を浮かべ、口を開いた。

 

「それもあるんだけど…」

 

その時だった。カービィの自宅周りの瓦礫を片付けていたワドルディ二人が、「わにゃわにゃ」と騒ぎ始めたのは。

 

「わにゃ、わにゃわにゃ!」

「わにゃ!」

「どうしたお前ら?今、エフィリンの話を聞いてるから静か…に……」

 

当麻が騒ぎ立てるワドルディらを落ち着かせようとすると。

ヤケに煤けた布団みたいな物体が、彼らの上に乗っかっていることに気づいた。

 

「……おなかへった」

「は?」

 

よくよく見ると、その煤けた布団は、ヤケにゆったりとした修道服であり、それを纏うのは、まだ十代前半のあどけなさがある少女。

ワドルディに担ぎ上げられた彼女は、なんとも澄んだ目で、当麻に飯を乞うていた。

魔術と科学が交錯する運命の出会いは、なんとも微妙なファーストコンタクトであった。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「はぐはぐっ…!はー…むっ、ん、んぐっ、んぐっ……ぷはぁっ!

まんまるピンクさん、ありがとう!

すっごく美味しいんだよ!!」

「ぽよ、ぽよぉっ!」

 

大食漢が二人に増えた。

コックの能力が今日も今日とてフル稼働しているな、と思いつつ、凄まじい勢いで食事にありつく少女と、先程朝食を終えた筈のカービィが、夢中になって自分の作り出した料理をかきこんでいる姿を、なんとも言えない表情で見つめる。

当麻は視認するだけで胃もたれしそうなその光景に呆れながら、口を開いた。

 

「……腐った焼きそばパンとか野菜のカケラから精製されたってのに、よく食うよな、お前ら」

「カービィのコピー能力は『そういうもの』って思って考えるのをやめた方が楽だよ」

「うん、思い知ってる」

 

どうやら、カービィのデタラメさは仲間内でも共通の認識らしい。

軈て料理を食べ終えた少女は、満たされた腹をさすりながら、「ごちそうさま〜」と吐息混じりに吐き出した。

 

「満腹だから胸がちょっとくるしいんだよ…」

「ジュース飲むか?さっきのに比べたら、あんまり美味かねーと思うが」

「いただきまーす」

 

当麻は先日、最低限の食事程度はなんとかしようと街をかけずり回って偶然にも拾った、謎のドリンクを手渡す。

少女は笑顔でそれを受け取り、ものの数秒で飲み干した。

瞬間。彼女は目をかっ開き、勢いよく立ち上がった。

 

「すごいすごい!なんか、すっごく元気があふれてくるんだよ!?」

「……大丈夫か、これ?劇薬だったりしないよな…?」

「えぇ…?トーマってば、そんなものを見ず知らずの女の子に飲ませたの…?」

 

当麻が困惑を口に出すと、それに呆れたエフィリンが、少女の持つドリンクのラベルを見やる。

それに見覚えがあることに気づくと、エフィリンは「ああ」と声を上げた。

 

「なぁんだ、ただの元気ドリンクか」

「うぃっ!ぽよぽよ…、ぽーよっ!」

「…うん。とにかく、元気になるドリンクなのはわかった」

 

「飲むと元気になる」という、名前そのまんますぎる元気ドリンクの効能を、全身で表すカービィ。

武装無能力集団…いわゆる、劣等生たちによる不良グループ…に殺されかけながらも手に入れた甲斐はあったらしい。

食事に加え、元気ドリンクを摂取した彼女は、すっかり元気を取り戻した。

 

「ありがとうなんだよ!

えーっと…んーっと、妖精さんに、ウニ頭さんに、まんまるオレンジさんたちに、まんまるピンクさん!」

「う、ウニ頭……」

「…取り敢えず、自己紹介でもする?」

 

何度整髪料を使っても、このツンツンの髪型しか似合わない彼を的確に表現する言葉に、軽くショックを受ける当麻。

その傍で放たれたエフィリンの一言で、総勢10名の自己紹介が始まった。

…約6名、「わにゃ」としか言えないことには目を瞑りながら。




来ているワドルディは300人。カービィが確認しているだけでも、そのうち6人が救出済み。

ワドルディ…もはやお馴染みの「わにゃわにゃ」。バンダナを付けた妙に強い個体は現在、獣王レオンガルフ(ソウル・フォルガに憑依されていた影響か、言語能力が異様に発達している)と共に、ビースト軍団を含むともだちを助けるべく、学園都市に運び込まれる同胞を助けて回っている。その途中で暗部に襲われたが、普通に二人で返り討ちにしたらしい。
そんな噂を聞いて希望を持ちながら、今日もワドルディたちは、ビースト軍団たちと一緒に「わにゃわにゃ」、「わーにゃー」、「わにゃっ、わっにゃ」と、バリエーション豊かな「わにゃ」で助けを求めます。労働がない分、割と余裕はあるみたい。

エフィリン…空間転移能力がうまく作動しなくなり、帰るに帰れなくなったため、その事を伝えようとカービィを探し回っていた。
分たれていた片割れが「それではご覧ください!」というトラウマボイスを耳が腐り落ちるほど聞かされまくったため、よく似た言語である日本語を習得するのはそこまで難しくなかったらしい。

インデックス…お馴染みのヒロイン。本来であればベランダに干されていたはずが、ベランダに突き刺さったカービィ宅の煙突にホールインワン。結果、やけに煤だらけの焦げ臭い汚布団になった。
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