まんまるピンクとウニ頭   作:鳩胸な鴨

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なんか思いの外筆が乗ったので更新するゾ。


STAGE:3 魔女狩りの王

「ただいまー…って、インデックス?もう戻ってきたのか?」

 

補習を終えた当麻が玄関の扉を開くと、これまたゴミから精製されたであろう料理の山を平らげにかかるカービィとインデックスの姿が出迎える。

リサイクルもここまで極まると、恐ろしいやら愉快なのやら。

インデックスは口いっぱいに頬張ったソレを、凄まじい勢いで咀嚼して飲み込み、笑顔を見せた。

 

「カービィたちに助けてもらったんだよ!」

「ぽよっ!」

「わにゃわにゃっ!わにゃっ!」

「わにゃわにゃ!」

 

インデックスがその報告をするや否や、カービィたちが等間隔に並び、それぞれポーズを取る。

一体なんだ、と思っていると、どこからともなく軽快な音楽が鳴り響く。

当麻たちがソレに目をパチクリさせて慄いているのにもかかわらず、カービィたちはそのリズムに合わせて踊り始めた。

到底、人間には真似できそうもない挙動である。数秒ほどのソレを踊り終えると、カービィらはインデックスの周りに集まり、無事を喜ぶように跳ね回り始めた。

 

「……さっきのは、なんだ?」

「勝利を祝うダンスだから、気にしなくていいよ」

「………宇宙って広いんだな」

 

科学でも魔術でも分かりそうにない光景に、思考を全力で投げ捨てた当麻。

インデックスもよくわかっていないらしく、首をかしげるばかりであった。

 

「……ぷぃ?」

「どうした、カービィ?」

 

ふと、先ほどまで踊っていたカービィがその動きを止め、当麻の背後…正確には、開きっぱなしの扉を見やる。

本日二度目の嫌な予感である。

カービィは険しい顔つきで当麻の股下をくぐり抜け、廊下を見渡した。

 

「なんだよ、怪しいやつでも…」

 

当麻がソレを追いかけると、渡り廊下に一つの影が佇むのが見えた。

自身の背丈よりも少し高いだろうか。修道服というよりも、絵本に出てくるような魔法使いのような服を纏う青年が、こちらを見つめている。

カービィは敵意を感じ取っているのか、ソレを迎え撃つように、姿勢を低くして構えた。

 

「…成る程。神裂を撃退したまんまるピンクってのは、その謎の生命体のことか」

 

青年が軽薄そうな、しかし重々しくも感じられる圧を乗せて、言葉を発する。

カービィにとっては、何のことかさっぱりわからないが、少なくとも敵意を持たれていることは理解していた。

当麻はカービィの隣に立ち、同じく姿勢を低くして、臨戦態勢に入る。

 

「お前、もしかしなくてもインデックスを攫いにきたヤツだろ」

「攫いに?おいおい、何を言うんだ?

アレは元々、僕たち『必要悪の教会』の所属なんだ。攫うもなにも、こちらとしては『保護』するつもりなんだよ」

「……は?」

 

保護。インデックスの話とは食い違った言葉に、一瞬呆けてしまった当麻。

しかし、これまでインデックスを追いかけ回し、果ては斬ろうとした経緯を知るカービィは、変わらず青年を睨め付ける。

 

「気をつけて、トーマ!その人、インデックスを斬ろうとした人の仲間だ!」

「おいおい、人聞きの悪い。斬っても死なないってわかってるから、足止めのつもりで攻撃しただけだよ。

『歩く教会』があるんだから…なんて言っても、お前たちにはわからないだろうし、さっさと退いてくれたまえ」

 

エフィリンの言葉に、いけしゃあしゃあと答える青年。

どうやら『歩く教会』があるという前提で、インデックスに攻撃を仕掛けていたらしい。

当麻は今朝方の応酬で破壊してしまったことを「不幸だ」と小さく嘆いて済ませ、青年の要求を跳ね除けた。

 

「仲間を執拗に追いかけ回した挙句、問答無用で攻撃するようなヤツに、はいそーですかって渡すわけないだろ…!!」

「ぽよっ、ぽよっ!!」

「……仕方ない。なるべく穏便に済ませたかったんだけど…」

 

青年は言うと、口に咥えたタバコを指に挟み、口から離す。

先ほどまで、胡散臭さすら感じさせるほどに優しげだった瞳が、剣呑な雰囲気を纏う、鋭いものへと変化していた。

 

「ステイル=マグヌス。…と、名乗りたいところだけど、ここはFortis931と言っておこうかな。

日本語では『強者』と言ったところか。ま、語源はどうだっていい。

魔法名だよ。聞き慣れないかい?」

 

源氏名みたいなものだろうか。

そんなことを思いつつ、当麻たちは青年…ステイルの一挙一動に警戒を引き上げる。

ステイルは「古い因習だ」と切り捨てるも、ソレを名乗ったことの重要性を説こうとして、タバコを放り投げる。

瞬間。カービィは大口を開けて、火のついたタバコを吸い込んだ。

 

「「なっ!?」」

 

あまりのことに、目を丸くする当麻とステイル。カービィの口にタバコが消えると、彼はソレを「ごっくん」と音を立てて飲みこんだ。

瞬間、カービィの頭部から激しく炎が舞い上がり、ソレを囲うように冠が顕現する。

メラメラ燃える火炎の力で、炎さえ焼き尽くす。その名も、コピー能力「ファイア」。

 

「ぽよっ!!」

「カービィ!?なんだそれ!?」

「お、おかしい…!?神裂の話では、ヤツは剣の使い手だったはず…!?」

 

言葉を紡ごうとしたステイルでさえも、あまりのことに目を白黒させ、ファイアをコピーしたカービィを見つめる。

当麻もコピー能力のこと自体は把握していたが、まさか火のついたタバコをも吸い込んでコピーできるとは思っておらず、同じようになんとも言えない表情を浮かべていた。

 

「……いや、むしろ好都合だ。炎の扱いなら、僕に分がある!

『炎よ、巨人に苦痛の贈り物を』!!」

 

彼は動揺を切り捨て、詠唱を始める。

手に顕現する炎が渦巻き、薙ぐようにして放たれた一撃。それに対し、当麻は咄嗟に右手を前に突き出し、己に向かう一撃をかき消そうと博打に出る。

結果。幻想殺しに触れた魔術は、あっさりと霧散した。

 

「今のは…?」

「……そうだよ。何をビビってやがんだ…。

あの修道服をぶち壊したのだって、この右腕じゃねぇか…!!」

 

流石に宇宙を救うほどのヒーローたるカービィには劣るが、自らにも抵抗する手段があることを確認し、勢いづく当麻。

その瞳は、霧散した炎の中を駆けるカービィの後ろ姿を映していた。

 

(そんな馬鹿な…!?このまんまるピンク、あの少年が魔術を打ち消すことを見抜いて、放った瞬間には動いていたのか…!?)

 

青年はその事実に驚愕するとともに、もう一度詠唱を始め、炎を手へと顕現する。

正確には、カービィは当麻の行動と結果を見抜いたわけではない。

「トーマならやってくれる」。究極の楽観主義であるカービィにとって、ともだちへの信頼は、並々ならぬものだったのだ。

当麻は歩幅の狭いカービィを追い越し、放たれた炎をもう一度打ち消す。

 

「カービィ、行け!!」

「はぁあああっ!!」

 

カービィが可愛らしい声に覇気を乗せた雄叫びとともに、炎へと包まれる。炎を纏い、敵へと突撃する技。その名も、「バーニングアタック」。

ステイルは身を翻してその技を避け、挟み撃ちの形となった現状に舌打ちした。

 

「チッ…、どちらも厄介極まりないな…!」

 

魔術を打ち消す存在に、世界に20人といない超人である「聖人」をあっさりと下す、得体の知れない謎の生物。

どちらも放っておけば、確実に脅威となる。

幸いにも、あの二人はとてつもないお人好しのようだ。多少の無茶をしても、全力でインデックスを守って死ぬことだろう。

ステイルは軽く息を吸い込み、切り札の詠唱を始める。

 

「世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ…!!それは生命を育む恵の光にして邪悪を罰する裁きの光なり…!!」

 

何か、危ない。

そのことを察したカービィは、即座に弾丸となって、ステイルへと突進する。

しかし、直線的な軌道しか出来ないことを察していたステイルは、軽くしゃがむことでソレを避けた。

当麻も同じく、彼の頬に拳を叩き込もうと駆け寄ろうとするも、避けられたカービィが邪魔してしまい、うまくいかなかった。

不幸はいつだって、肝心なところで襲いかかる。当麻はその事実に顔を歪めながら、鎮火して壁へと向かうカービィを右手で掴んで止め、そばに置いた。

 

「それは穏やかな幸福を満たすと同時に冷たき闇を滅する凍える不幸…!

その名は炎…、その役は剣…!!

顕現せよ!我が身を喰らいて力を為せ!!」

 

瞬間、熱波が彼らの肌を撫で、そこらの金属を溶かしていく。

やがて、炎は人に近い骨格を形成し、相対する存在を威嚇するように吠えた。

 

「『魔女狩りの王(イノケンティウス)』…!その意味は、『必ず殺す』だ!!」

 

殺意に溢れた炎の塊が、顎門を開きながら、カービィたちを焼き尽くさんと迫る。

しかし、当麻が右手で触れると、やはり霧散してしまった。

これで切り札は防いだ。二人がそう思っていると、霧散した筈の火の粉が再び集い、焔の魔人を形成した。

 

「ぽよっ!?」

「んなっ…!?」

 

ステイルが勝利を確信したように、薄く笑みを浮かべる。

当麻が再び触れて、幻想としての存在を殺そうにも、魔人は再び形成されてしまう。

カービィがファイアの能力で焼き尽くそうにも、倒すことは出来ても復活を繰り返すだけだった。

魔人は右手に炎で形成された十字架を握り、二人を焼き潰すべく、剛腕を振るう。

 

「クククッ…。流石の君たちも、これに打ち勝つことは出来まい!!」

 

ステイルがそう笑うと共に、一撃が振り下ろされる。

なんとか打ち消すことは出来たが、発生した風が二人を弾き飛ばし、距離をつくった。

 

「じゃあ、暫く相手しておいてくれよ。

10万3000冊の魔導書を回収した後に、君たちを本格的に叩き潰すからさ」

「畜生っ、待ちやがれ!!」

 

当麻が忌々しげに発した、まさにその時だった。

 

「ヤァ、カービィ。随分とマァ苦戦してるミタイダネェ」

 

耳の生えた卵のようなシルエットが、彼らの前に現れたのは。

カービィはその姿に目を丸くし、当麻はカービィの友人にしては、やけに軽薄な言葉遣いに微妙な表情を浮かべた。

 

「…『魔女狩りの王(イノケンティウス)』」

「オイオイオイオイ!!ケッサクもケッサク、ハラ抱えてワラっちゃうヨネっ!!

ルーンを刻んで発動するタイプのカビ臭い術なんてキリフダにしてるド田舎魔術師なんテ、ボクのアイテじゃないヨォ…!!」

 

復活した魔人がシルエットに迫り、咆哮しながら、十字架を叩きつける。

しかし、次の瞬間。人の背丈の数倍はある、あまりにも巨大すぎる剣が、魔人を二つに引き裂いた。

 

「カービィ!コイツは『ルーン』って文字で顕現してル魔術ダ!ダカラ、ルーンの近くにしか生み出すコトができないんダヨォ!

要するに、近くにあるルーンを消しちゃっタラ、もう二度と復活しナイヨォ!!」

「ぽよっ!!」

 

カービィはその言葉に力強く頷き、渡り廊下から飛び降りる。

当麻が驚愕の表情で、ステイルが余裕の笑みでソレを見ていると。

どこからか飛んできた星型の物体が、落下するカービィの体をキャッチした。

 

「な、なんだ、アレは…?

移動用の礼装…、にしては…、周囲を漂うエネルギーがあまりにも膨大すぎる…!?」

 

ステイルが困惑を露わにする傍で、呆然とする当麻。

と、当麻とカービィの瞳が合う。

カービィは「任せてくれ」と言わんばかりに、頼もしさを感じさせる眼差しを送ると、そのままアパートを旋回するように、ワープスターでの移動を開始した。

 

「…いや、しかし、君だけになったというのも好都合…!『魔女狩りの王』!!」

「ッソ…!」

 

攻略法を教えたあの卵モドキは気になるが、今は明確な脅威たる当麻を排除しなくては。

そう判断したステイルは、物量に物を言わせて、復活を繰り返す魔人で当麻へと襲いかかる。

当麻はカービィが止めてくれると信じ、右手以外の箇所に炎が触れないように立ち回る。

生憎、格闘術の心得や護身術などをこれっぽっちも収めていない身としては、軽快な立ち回りなど出来ない。

が、右手で触れるだけで攻撃を無効化できる以上、時間稼ぎは出来る。

当麻が横目で卵モドキへと視線を送ると、彼は愉快なショーを見ているかのように、ニマニマと笑みを浮かべていた。

 

「なんだよ、アイツ…?」

「よそ見してる場合か!!」

「っぐ、ぁああっ!?」

 

しかし、意識の逸れた一瞬で、魔人の一撃が凄まじい風圧を巻き起こし、当麻を吹き飛ばす。

そのままとどめを刺すべく、ステイルは魔人へと指示を飛ばした。

 

「灰は灰に…、塵は塵に…!!吸血殺しの紅十字…!!

魔女狩りの王(イノケンティウス)』、殺せ!!」

 

ステイルの声と共に雄叫びをあげ、十字架を振り下ろす魔人。

当麻が右腕を掲げようとするも、体の下敷きになって、上手くいかない。

間に合わない。当麻が冷や汗を流した、その瞬間だった。

 

「はぁっ!!」

 

火だるまになったカービィが、魔人を掻き消したのは。

カービィは着地すると、当麻の無事を確認して、「ぽよぉっ!」と笑みを浮かべる。

しかし、このままではまた復活してしまう。当麻がそう警戒し、ステイルが高を括っていると。

 

魔人はそのまま霧散し、姿を消した。

 

「………は?…いや、まさか…?

まんまるピンク、お前っ!!アレだけあったルーンを消したのか!?一体、どうやって!?」

「忘れチャッタ?カービィが今コピーしてるのは、炎すら焼き尽くす『ファイア』ダヨ?

ンなモン、ゼーンブ燃やしチャッタヨォ」

 

卵モドキの言葉に、ステイルは愕然と目を見開き、手を震わせる。

破いたり、水に濡らすならまだわかる。しかし、燃やすとなれば話は別だった。

 

「馬鹿な!?あのルーンは『魔女狩りの王(イノケンティウス)』を顕現させるためのもの!!火を司るものだぞ!?」

「ダァ・カァ・ラァ、ソーイウのも含めテ、『ゼンブ燃やす』ッテ言ってンダヨ」

「あ、ありえない…。なんなんだ、このまんまるピンクは…!?」

 

ありえない存在。あってはならない不条理。

まるで、『理不尽』という概念がそのまま闊歩しているようなデタラメさだ。

しかし、ここで諦めてはならない。

ステイルは己を奮い立たせ、もう一度、炎を手に作り出そうとする。

が。ソレを阻むように、距離を詰めた当麻が、拳を引き絞った。

 

「俺を忘れんなよ」

「………ッ!!」

 

瞬間。放たれた拳が、ステイルの頬を捉え、意識を吹き飛ばした。




マホロア…バカンスに来ていた一人。新世界で使えそうなものがあったら、今度の悪巧みに利用しようと思っていた。今回、カービィに手を貸したのは、「ステイルがカービィに勝ち誇ったドヤ顔してるのが、カービィの理不尽さを知らなかった昔の自分を見てるみたいで気に食わなかったから」らしい。デデデ大王ほどではないが、カービィのことをライバル視しているようだ。
尚、自らの野望については一切諦めてない。学園都市も魔術結社も利用する気満々である。

ステイル…カービィの真の恐ろしさを味わった、可哀想な人。カービィの話を聞いて、イノケンティウスのルーンを原作の三倍くらい貼り付けていたが、残らず燃やされた。
ボルケーノファイアはとにかく、ドラゴストームとか、ドラゴニックファイアだったらもっと悲惨な結果だったと思う。イノケンティウス、根本からぶっ壊れちゃう。
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