まんまるピンクとウニ頭   作:鳩胸な鴨

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マルクさんが暴れたせいで2巻が一瞬で終わった。


LEVEL:2 アブノーマル・セレモニー
STAGE:1 道化師


「ぽよっぷぃっぽよーぽっぽよー♪」

 

ぐつぐつと音を立てて煮立つ鍋に、よくわからない歌を歌いながら、調味料をふりかけるカービィ。

すっかり上条家の馴染みの光景になったソレに、形容し難い感情に表情を歪める当麻と、出てくる料理を今か今かと待っているインデックス。ワドルディたちも子供用のフォークやらを手に、くぅ、とお腹を鳴らしながら待っている。

軈て、鍋から料理が飛び出ると、我先にとインデックスがかぶりついた。

その光景を前に、当麻はチャーハン片手に今なお料理を出す鍋を見やる。

 

「相変わらずデタラメだよな、この鍋」

「絵筆があったら、『アーティスト』をコピーして絵から食べ物を出したりもするよ。

絵の具だと『ペイント』になって、そこら中ペンキまみれにするから気をつけてね」

「…上条さんの場合、気をつけても不幸が祟るんだけど」

「……ま、まぁ、カービィが『クリーン』をコピーすれば何とかなるから」

 

カービィのコピー能力は、どれだけ数があるのだろうか。以前、ワドルディを助けた時に見せた、自販機をほおばる能力も気になる。

暇つぶしに、カービィの英雄譚をエフィリンから聞くのも悪くないかもしれない。少なくとも、退屈することはないだろう。

そんなことを考えながら、ワドルディらと食事をかきこむインデックスを見やる。

結局、彼女は上条家で暮らすこととなった。

彼女を除いても、9名もの大所帯なのだ。今更一人増えたとて、気にすることでもない。

寂しい一人暮らしから一転、騒ぎの絶えない、賑やかな家になってしまった。

そんなことを思いつつ、当麻は食べ終えた皿が消える驚きの光景に、苦笑を浮かべる。

 

「なんか俺、カービィたちのことにすっかり慣れちまったな。

そばにいるのが当たり前っつーか…、勝手なことだけどさ、お前らのこと、ずっと昔からの『ともだち』みたいに思えるぜ」

「ぽよ?ぽぉよ!ぽよ!」

 

そんな日常の裏で、悲劇が起きていることには、まだ誰も気づいていない。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「…どういう、ことだ?」

 

ステイルは「三沢塾」と呼ばれる、育成機関の名を騙った魔術師の根城を前に、小さく困惑を吐き出す。

本来ならば、2000人が余裕で収まるほどのビルだったソレは、見るも無残な姿と化している。まるで、獰猛な獣を放ったような、そんな破壊の跡。

生存者など見込めなさそうな瓦礫の山を前に、ステイルは意を決して歩みを進めようとして、止める。

 

「あれは…、姫神秋沙と、アウレオルス=イザード…と、なん、だ?」

 

目的であった保護対象と、そのそばに立つ警戒対象。そして、その前で悪魔のような羽を広げる、謎のシルエット。

先日出会った、カービィという理不尽によく似た出で立ち。またもや宇宙人関連か、と呆れていると。

そのシルエットの瞳が、こちらを向いた。

 

「おっほぉ〜?なんだなんだよなんなのサ、キミィ?ジロジロとボクの方を見て。

『ブシツケ』って言うンじゃなかったっけ、この星じゃあサ」

「…お前、『星のカービィ』という存在に聞き覚えは?」

「はァ〜?ヤ〜ッパリ、ヤツも来てるのサ?

じゃ、ツブシといてセーカイだったってことなのサ。ラッキー♪」

 

言って、ケタケタと笑うシルエット。

道化師とも、悪魔の角とも取れるような、二つ別れした帽子。万華鏡のように、いくつもの色彩を放つ翼膜。

焦点が合わないようで、しっかりと獲物を捉えて離さない瞳。悪魔の顎門としか思えない、笑みを浮かべた口元。

その全貌を視認した途端、シルエット…否。いたずら道化師「マルク」が、一瞬にしてステイルに詰め寄った。

 

「コイツ、オマエの同業者サンだろ?じゃァ、ちゃんと手綱握っとけよな。コンナしょーもないコトで、いちいちカービィに奇跡なんて起こされたら、ボクが迷惑するじゃないのサ」

「なんだと…!!」

「おほ?」

 

マルクがそちらを見ると、オールバックだった髪を乱し、怒りの形相を浮かべるアウレオルスが立つ。

何を隠そう、彼もまた、記憶を屠られたインデックスと絆を結んだ一人なのだ。

インデックスに隠された真実を知らず、今なお彼女を救おうと足掻き、他者を顧みぬ方向へと暴走した男。それこそが、今のアウレオルス=イザードであった。

その彼が成そうとしていることを、「くだらない」と一蹴したマルク。いくら自身が敵わぬ相手とはいえ、到底看過できることではなかった。

 

「貴様、もう一度言ってみろ…!!

あの子を救うことの、なにが『くだらない』と言うのだ…!!」

「知ーらねっ!!ボクはキミのことを知らないし、キョーミもない。

ボクはただ、オモシロオカシク、とびっきりのいたずらを楽しみたいだけなのサ。

なのに、キミが『星のカービィ』を刺激するよーなマネするからいけないんだぜ?」

「何をごちゃごちゃと言っている!!不浄なる悪魔よ、『死ね』!!」

 

アウレオルスが激昂と共に、完成している黄金錬成…この世の理を思うがままに捻じ曲げる術式…を発動させる。

だがしかし、アウレオルスは現在、激しく動揺している。自らの城を一瞬にして飲み込んだ目の前の存在が本当に死ぬかどうかすら懐疑的になりつつあるのだ。

黄金錬成は、その懐疑すら現実へと変える。

つまり、アウレオルスはどうやっても、目の前の悪魔を退けることができない。

 

「な、なぜ…!今なお、詠唱は続けているはずだ…!何故死なない、悪魔ァ!!」

「…え?今のナニ?キミ、マジで何がしてーのサ?」

「……っ、ぬがぁあああっ!!『割れろ』!『砕けろ』っ!『壊れろ』っ!!『千切れろ』っ!!『消えろ』『消えろ』『消えろ』ぉおおおっ!!!」

 

半狂乱になって、現実を歪めようとするアウレオルス。

しかし、本人も気付かぬ間に折れた心では、思うように都合のいい現実を浮かべられるはずもなく、マルクの身には何も起きない。

その後も譫言のように、呪詛混じりの言葉を吐き出すアウレオルスに、マルクは「がぱっ」と音を立て、大口を開けた。

 

「じゃ、このまま大人しく負けてちょーよ」

「あ、あぁ…、ああぁあああっ!!」

 

アウレオルスの絶叫に合わせるように、その口腔から光線が放たれる。

その姿が光に包まれ、見えなくなって数分。光の奔流が終息すると、そこに立っていたアウレオルスは、黒焦げの姿で崩れ、倒れ伏した。

 

「おーほっほっほ!!

いやァ、気分ソーカイ!!カービィのジャマが入らねーのはツマンネーけど、これはこれでカイカンなのサ!!」

「……お前は、なんなんだ?」

 

下品にも笑い声をあげるマルクに、ステイルは構えながら問う。

マルクはそれに対し、悪どい笑みを浮かべた。

 

「ダレが見ず知らずのヤツに答えるモンかよ!チャーオーっ!!」

 

言うと、その場から天高く飛び上がり、夜の空へと消えていくマルク。

ステイルはソレを見上げ、更なる厄介ごとの予感に舌打ちした。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

その頃、夜の街にて。

ふらふらとおぼつかない足取りで…そもそも足はないが…幽霊のように、あてどなく彷徨う少女。

彼女は唯一持っている槍を杖代わりに、どこへ向かっているかも自覚せず、ただ歩いていた。

 

「ああ、親愛なるハイネスさま…。

三魔官シスターズの長という、身に余る光栄を受けたにもかかわらず…。

ザン・パルルティザーヌは今…、情けなくも行き倒れています…っ!!」

 

彼女の名前は「ザン・パルルティザーヌ」。マジュハルガロアという文明にて、最高司祭の側近…三魔官シスターズの長を務める少女である。

長すぎる名前故に、ここでは「パルル」と省略しておく。

例の如く、新世界から地球に飛ばされた彼女は、逸れてしまった主人…神官ハイネスと、同僚であり、義理の妹であるフラン・キッスとフラン・ルージュを探していた。

 

が。文明の程度は低くとも、こんな広大な星に、小さな体一つで探し回るなど、到底不可能なことで。

結果、パルルは今の今まで仲間に会えず、心労からか、ひどく憔悴していた。

 

「せめて、カービィの場所さえわかれば…。ヤツさえいれば、少しは希望が見えてくると言うのに…」

 

カービィさえ見つかれば、取り敢えずの希望は見えてくるはず。

先の一件で居住であったマジュハルガロアが崩落し、彼女はポップスターに暮らし始めてから、まだ五年も経っていない。

しかし、周囲の話から、「何かが起こったら取り敢えずカービィを探せ。カービィと一緒なら、どんな状況でもなんとかなる」ということだけは知っていた。

 

しかし、ここに来て日にちすらわからなくなるくらいには、時間が経っているのも事実。

カービィの足取りは未だ掴めず、更には謎の白衣の連中が襲いかかってくる始末。

パルルは現状を嘆き、何度目かもわからない、深いため息を吐いた。

 

「ああ…。おなかへったなぁ」

 

ザン・パルルティザーヌの明日は、まだ見えない。




マルク…ドノツラフレンズ1号。アウレオルスを襲撃した理由は、「カービィが関わったら面倒なことになりそうだったから」。
アウレオルスが口を開く前に真っ二つからのブラックホールで三沢塾を崩壊させた。
バカンスに来ていた一人で、地球に飛ばされたことに疑問を抱いたものの、いたずらが出来るのであればどうでもいいと即気にしなくなった。
言葉が通じているのは、ハルカンドラの言語魔術によるもの。
地球でも「いたずら」を考え、接触する人間を選定している。今のところの有力候補は白色もやしとメルヘンホスト。どっちも碌でもないことになること間違いなしなので、ギャラクティック・ノヴァに向けてぶっ飛ばすことを推奨する。

ザン・パルルティザーヌ…パルメザンチーズじゃない。ザン・パルルティザーヌだ。
バカンスに来ていた一人。ハイネスらと逸れ、彼らを必死こいて探し回っているが、影すら見つかってない。食べ物は持ち合わせがあったのでなんとかなってる。
知らんうちに『絶対能力進化計画』の進行に有用な生命体だと判断され、研究員どもに目をつけられた。なお、全部返り討ちにしている模様。その気になれば『超電磁砲』も再現できるが、彼女の場合は普通に電撃を放った方が強いのでやらない。
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