まんまるピンクとウニ頭   作:鳩胸な鴨

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御坂妹、登場(まだ時期で言うと禁書2巻)


STAGE:2 雷牙

「なぁーん」

「わにゃっ、わにゃわにゃ」

「ぽよ!」

「……おっかしーなー…。ウチ、猫なんて飼ってたっけなぁ、インデックス?」

 

昼過ぎに補習から帰宅した当麻は、カービィの頭に乗ってリラックスする猫を見て、半目でインデックスを見やる。

やけに清潔感があるあたり、既に体を洗い、ノミやダニを落としたばかりなのだろう。

気持ちよさそうに眠気の波に揺られる猫を指差し、インデックスを問い詰めると。

彼女は悪びれもなく、猫の両脇を抱え、当麻に見せつけた。

 

「お散歩してたら見つけた捨て猫なんだよ!名前はスフィンクス!」

 

もう名前までつけられている。

猫を飼うための設備を整えるような金は、生憎と上条家の悲しい懐事情では存在しない。

そもそも、食費をカービィのコピー能力に依存しきってるくらいには切羽詰まってるのだ。人間やワドルディたちならとにかく、猫なんて飼う余裕はない。

しかし、捨て猫を元あった場所に捨ててこい、というのも、インデックスには酷な話だろう。

当麻は「引き取ってくれる人が見つかるまでな」と言い、カービィに迫る。

 

「………カービィ、猫の餌って作れる?」

「ぽよ?」

「え?猫って、食べれないものあるの?」

「ポップスターじゃどうかわからんが、地球の猫は食べたら命に関わるような食べ物が多いんだよ」

「へぇー…。ナゴはなんでも食べてたんだけどなぁ」

 

実はと言うと、カービィがコックで生み出すような、『夢のチカラ』が詰まった食物ならば、どんな生物でも食べることができる。

そもそも、命を循環させている夢の泉が生み出す「夢のチカラ」が毒になるようなことなど、ダークマター族のような夢のチカラに相反する存在でなければあり得ないのだ。

無論、そんなことなど微塵も知らない当麻は、カービィにかかる負担…本人からすれば、あってないようなものだが…を思い、申し訳なさそうな表情を浮かべた。

 

「カービィが帰るってなったら、ウチは一気に崩壊するなぁ…」

「ぷぃ?」

「ああ、気にしなくていい。お前にも帰るべき場所があることはわかってるよ」

「ボクたちだったら、『ともだちの家に遊びに行く』みたいな気持ちで移動できるから、心配はしなくてもいいと思うよ?」

「………上条さんにクールに決めさせてくれませんかね、エフィリンさん…」

 

異空間を行き来する穴を自在に作れるエフィリンがいる以上、当麻がセンチメンタルになる必要性は皆無だった。

せっかく格好をつけたのに、見事に挫かれた当麻は、がっくりとうなだれた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「…猫を飼うためのあれこれって、結構するんだな。

カービィのおかげで食費がかからないウチだから良かったものの…」

 

当麻はダイエットのし過ぎで餓死寸前の財布を手に、「不幸だ…」と嘆く。

その腕にかかる大きめのビニール袋には、猫を飼うために必要な最低限のものが入っていた。

服という概念が微塵もなさそうなカービィたちとは違い、インデックスの身の回りを調えるための出費もバカにならなかったというのに、その上で猫を飼うなど正気の沙汰ではない。

そもそも、当麻の住まう学生寮はペットの飼育が禁じられている。バレたらタダでは済まないな、と思いつつ、当麻は荷物持ちを手伝うカービィたちに目を向けた。

 

「ぷぃっ、ぽよ、ぷぃーっ♪」

「わにゃ、わにゃっ、わーにゃっ♪」

「ゴキゲンだな、お前ら。そんなにあの猫が飼えるのが嬉しいのか?」

 

当麻の心情など知ってか知らずか、鼻歌を歌いながら、とてとてと歩くカービィたち。

いつになくご機嫌なカービィらに問うと、肩に座っていたエフィリンが代弁した。

 

「どっちかというと、トーマとお出かけしてるのが楽しいみたい。

インデックスがスフィンクスにかかりきりになってるから、退屈してたんだって」

「…ほんと、そういうところはそこらの子供みてーだな、お前ら」

 

最低でも三十は超えてるらしいが、とてもそうは思えない幼さである。

テンションが上がったのか、小躍りしながら進むカービィたちを見て、苦笑する当麻。

と。彼はふと、見覚えのある背中を見つけ、「げっ…」と声を漏らした。

 

「迂回するぞ、お前ら」

「どうしたの?」

「あそこにいるの、ビリビリ中学生っつってな。絡むと碌な事がねぇ」

 

ビリビリ中学生…もとい、御坂美琴。この学園都市において、数人だけ存在するという「超能力者」の一人であり、そのトップスリーの末席に座す少女。

「超電磁砲」という異名を冠しており、努力によってエリート街道を突き進む、やる気のない当麻とは縁のなさそうな少女である。

カービィがその少女の後ろ姿を見ていると、ふと、その奥に見覚えがある影を見つけた。

 

「ぽよぉ?…ぽよ!」

「お、おい、カービィ!?」

 

それに見覚えがあると気づいたカービィは、抱えた袋をワドルディらに投げ渡し、美琴の方へと駆けていく。

当麻は「面倒ごとになるだろうな」と思いつつ、カービィの後を追いかけた。

瞬間。目の前の景色が爆ぜ、雷光があたりを駆け巡った。

 

「ぐぉっ…!?」

「ぽよっ!?」

 

いつも受けている美琴の電撃よりは弱いものの、しかして、彼女が小手先に放つような、戯れの電撃の威力ではない。

下手をすれば死ぬ。そう思わせる一撃が、黒の影へと迫っていた。

が。影は手に持った長槍を一閃させるだけで、その電撃を霧散させる。

 

「数だけで地頭が悪いな、ゴーグルムスメ。お前らでは私に敵わんと言ってるだろ。

1日に20回も来られると迷惑だ」

 

槍を構えた影は、人とよく似ていたが、よくよく見ればカービィたちに近いシルエットだった。せいぜい、一頭身か二頭身かくらいの違いくらいだろう。

幾何学的模様が走る独特な衣装に、切り揃えられた金髪。

佇む少女の名は、雷牙の三魔官「ザン・パルルティザーヌ」。カービィのともだちの一人であった。

 

「むっ…、誰か巻き込んでしま…」

「ぽよぉ!」

「…っ!」

 

パルルがカービィに視線を向けると、目を見開き、安堵に顔を綻ばせる。

いくら三魔官の長とは言えど、宇宙全体で見れば、まだ年若い少女であるパルル。

彼女は溢れそうになる涙を堪え、駆け寄るカービィに強がって見せた。

 

「ふ、ふん。ずんぐりピンクめ。私に一直線に向かってくるとは、珍しいじゃないか」

「ぽよ、ぽぉよ!」

「そうかそうか。私に再会できたことがそんなに嬉しいか」

 

パルルと再会を果たしたことに、喜びを跳ね回る事で表現するカービィ。

そんな二人のやり取りを前に、当麻はエフィリンに耳打ちする。

 

「あの、人…でいいのか?知り合いか?」

「うん。名前はザン・パルルティザーヌ。

マジュハルガロアって星で暮らしてたんだけど、カービィが壊しちゃったからポップスターに引っ越してきたんだ。

いつもなら、三魔官シスターズって言って、二人の妹と、主人のハイネスが一緒にいるはずなんだけど…」

「…うん。上条さん、カービィのやらかしには口を出しませんよ、うん」

 

不可抗力なのだろうが、星さえも破壊する「星のカービィ」、恐るべしである。

仲間とはぐれて心細かったのだろうな、と強がるパルルを傍目に、尻餅をついた美琴を見やる。

いつもとは違い、額にゴーグルをかけた出立。その姿に違和感を覚えるものの、当麻は攻撃されないようにという保険もかけて、右手を差し出す。

 

「事情は後で聞くとして…。

ほら。立てよ、ビリビリ。汚れちまうぞ?」

「…あなたは?」

「おいおい、上条さんみたいな無能力者なんて眼中にもないから忘れましたってか?

これまであんなに絡んできたってのに、薄情なやつだな」

 

肩をすくめ、美琴に皮肉を告げる当麻。

しかし、本当に当麻のことを知らないのか、しきりに首を傾げていた。

 

「おーい、どーした『超電磁砲』さんよ?」

「…質問します。あなたは、『御坂美琴』の知人ですか?」

「へ?…いや、知人っつーか、腐れ縁?

…いや、腐れ縁ってほど付き合い長いわけでも…、なんつーか、ケンカ友達?」

 

当麻が返答に悩むも、取り敢えず知人であることは伝わったのだろう。

美琴…否。彼女にそっくりな少女は、同じ顔の溌剌とした美琴とは比べものにならないほど、起伏の少ない言葉を並べる。

 

「結論を述べると、ミサカは『御坂美琴』ではありません」

「はー…。じゃ、双子の妹みたいなもんか」

「……そうです、と、ミサカは面倒なので、取り敢えず肯定しておきます」

「複雑な事情があんのはわかったわ」

 

起伏は少ないが、やけに素直な性格らしい。

やれやれ、と動かない表情筋で首を振り、淡々と述べる姿に苦笑する当麻たち。

と。彼はふと、パルルの方に目をやり、首を傾げた。

 

「ん?じゃあ、お前はなんで…えっと、パルメザンチーズ…だっけ?」

「ザン・パルルティザーヌだウニ頭!!」

「ご、ごめんごめん…。で、なんでコイツを狙ったんだ?」

 

凄まじい剣幕で迫ってきたパルルに軽く頭を下げつつ、少女…便宜上、御坂妹としよう…は、少しばかり眉を顰める。

どうやら面倒な事情が絡んでいるようだ。

 

「あー…、はいはい。上条さんみたいな一学生には言えないアレね。

ま、取り敢えず…頼む、見逃してくんね?」

「……不可能です。ミサカには、その生命体の捕獲が命令されています」

「そんなこと言わずに!なんでもするんで、そこんところ、どうか!」

 

当麻が手を合わせて懇願する様に、困惑する御坂妹。

パルルもまた、何が何やらわかっていないようで、首を傾げていた。

 

「おい、ウニ頭。何故、見ず知らずの私を庇う?キサマからすれば、私は何の関係もない未知の生命体だぞ?」

「んなこと言われてもなぁ…。

『助けたい』って感情の理由なんざ、俺でも分かんねーよ」

 

その言葉にパルルは目を丸くし、御坂妹は首をかしげる。

しばし、数拍の沈黙が走る。それを破ったのは、パルルの笑い声だった。

 

「ふ、ふふ…。ふはははっ!はははっ!」

「わ、笑うこたぁねーだろ!」

「はは、ははは…っ!いや、すまない…!

ははは、はは…っ、ふ、ふふっ…。

…キサマはカービィのヤツにそっくりだな」

 

パルルは一頻り笑うと、左手を差し出す。

右手に槍を持っているあたり、まだ御坂妹を警戒しているのだろう。

無理もないな、と思いつつ、当麻は左手でパルルの手を握った。

 

「『雷牙の三魔官』であり、その長を務めるザン・パルルティザーヌだ。

ウニ頭、キサマの名を聞いてやろう」

「上条当麻。『上条』でも、『当麻』でもいいぜ」

「トーマ…か。覚えた。よろしく頼む」

 

その傍で、御坂妹はいじけたように膝を抱え、座り込む。

表情は変わっていないが、何処か不機嫌そうに、アスファルトに「の」の字を書いていた。

 

「……ミサカは完全に居ないものとして扱われてるのでしょうか…と、不満を漏らしてみることにします」

「ああ、ごめんごめん。

でも、襲ってこないってことは、見逃してもらえたってことでいいのか?」

「…現時点での撤退が推奨されていたため、行動しなかっただけです、と、ミサカは事実を述べます」

「そーかい」

 

当麻が言うと、御坂妹は立ち上がり、「それでは」と頭を下げる。直後に踵を返したあたり、どうやら、パルルのことは諦めてくれたようだ。

ほっ、と胸を撫で下ろしながら、当麻らは去り行く背中を見送った。

 

「…で、…長いからパルルでいいか?」

「別にいい。メタナイトのヤツや義理の妹二人以外で、フルネームで呼ばれたことなど皆無だからな」

「そっか…。か、哀しいな…」

 

パルルの哀しい告白に、思わず顔を引き攣らせる当麻。

主人もなかなか覚えられないあたり、彼女自身も名前に嫌気が差していそうだな、と思いつつ、当麻は問いを続けた。

 

「…パルルは、どっかアテあるのか?」

「ない。だが、『カービィと一緒に行動すれば大抵のことはなんとかなる』と言うことだけ知っていたから、血眼になってコイツを探していたんだ」

「…なるほどね」

 

言って、当麻は暫し考える。

只今の上条家の住人は、10人プラス一匹。既にかなりの大所帯である。しかし、パルルにこのままアテもない旅を強要するのも、後味が悪い。

当麻は軽くため息を吐くと、カービィを見やった。

 

「…お前が気にしないんだったら、寝床くらいは貸すぜ?」

「本当か!!」

 

こうしてまた、上条家に居候が増えたのであった。




御坂妹…みんなのトラウマ。カービィと関わったおかげで原作よりも生き残る数が増加することが確定。やったね。
この個体は出番がまだなので、10人くらい徒党を組んで、ザン・パルルティザーヌの捕獲を命じられた。一人で要塞のエネルギー担うドリームフレンズ最強に勝てるわけねーだろって思いながら書いた。

スフィンクス…インデックスが拾ってきた。以上。
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