どれほどの時間が経過したのか。ギアーデ帝国軍、ひいてはレギオンとの交戦が始まってから、戦場ではジャガーノートによるほぼ一方的な蹂躙劇が繰り広げられている。
動力部目掛けて放たれる滑腔砲、脚を容赦なく切り刻む高周波ブレード、決して強度が低いわけではないはずの装甲を破壊する機銃、力なく倒れ伏しているレギオンを遠慮なく踏み潰す四本脚。
恐怖と殺戮の権化であるはずの銀色の亡霊たちは、錆びて煤けた
それも、動員兵力の半分以上のレギオンが、たった10万強のプロセッサーが乗る機体によって。
「拍子抜けやなこりゃ!まさかこれで威力偵察とかやないやろな!?」
東部戦線。中隊規模の
『その威力偵察に10個師団とか20個師団とかの大軍を送り込んでるんだろ!しかしホントうるせぇな!』
『連中に経済なんて概念なんか存在しないわ!戦費を気にする必要もないし!ああもう!レギオンの声がうるさくて気が散る!』
確かにそうだ。帝国のことだ、万一本土から遠く離れて補給が困難になっても、レギオンの維持のために必要な資源が豊富に得られる地域を自力で探し、兵力の増強ができるようなプログラムが仕込まれている可能性が高い。
『しっかしまあ、
ひたすらに突撃行動だけをとり、立ちはだかるレギオンたちを破壊するのみという単純かつ狂気的な戦法。
通り過ぎるだけで次々とレギオンを討ち取る
『今回の攻撃の目的が、私たちの戦闘データを取るための囮作戦なら…………』
赤子を胸に抱えるプロセッサーが駆るジャガーノートが、レギオンとレギオンの
「俺たちの戦法をそっくり真似て、レギオンは正真正銘の化け物に変わるかもっちゅうことや!ちゅうかちっと黙れや屑レギオンども!」
ナンバが呟いた直後、横一列に陣を組む
「…………凄まじいな」
第1区、共和国軍本部の休憩室のモニターから戦場の様子を見ていた一人の将校が呟いた。
驚くのも当然、
「
だが実態は?まさか最前線で戦う彼らが、自分たちも
自分たちが正しいと確信している行動に反対されて86区に逃げられ、
「どうでしょうね?
「まあ、希望をぶち壊される瞬間はもう迫っていますから」
将校はその不気味な囁きに、この上ない悪寒を覚えた。
東方戦線はギアーデ帝国と国境を接していることもあり戦闘能力の低い
『ちっ!また後方のプロセッサーが一人
『何、
もっとも、数秒間に何万発とばらまかれる近距離ミサイルと自己鍛造型の戦車砲弾の弾幕を相手にして一方向突撃戦法、つまり
『まだ80人って……まさか』
『そう。全ての戦場の戦死者の総計だよ』
要するにそれだけ
逆にレギオン側は完全に自動化されたプログラムと高度な敵味方の認識機能、そして人間を遥かに越えた正確無比な攻撃精度を有するにも関わらず、圧倒的に性能が劣っているはずのジャガーノートに絶望的な苦戦を強いられているわけだ。だが、ここまで圧倒的優勢な状況が続けば疑問を呈する者は現れるわけで、
『ねえ、アルゲマイン・ワン。あたしたちって……』
実際に、北部方面で戦うプロセッサーの少女が呟いた。