Eighty Six Platinum   作:御代川辰

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07-2 余韻×逃亡×故郷にさよなら

『対レギオン反抗作戦完了…………全プロセッサーに告げる。敵戦力の殲滅を確認、状況を終了して(ただ)ちに帰投せよ。繰り返す…………』

 

 ハンドラーの発する感情の薄い無機質な声が、同調装置(レイドデバイス)を通じて戦場に立つプロセッサーたちの頭に響いた。反抗作戦開始から実に4時間が経過した頃。共和国への侵攻を図っていたレギオン20個師団は10万数千の精兵と51万以上にもなる数の暴力で激戦の末に殲滅された。

 

「ふぃ~っ……命拾(いのちびろ)いしましたねぇ、“中将殿”」

 

 無数のレギオンの残骸が散らばる北部方面の戦場で、フェルディナンドはジェインをからかうように彼の最終階級を出した。ジェインは呆れたように苦笑いし、フェルディナンドに向けて返す。

 

『何を言っている。君こそフェルベール君とネイリス嬢の晴れ姿を見たいから死ねないと言っていた癖に』

 

 しかし、片や老体、片や肥満体。どちらにせよ運が悪ければ確実に死んでいたことは事実。「自分が真っ先に死ぬ」と語っていた臆病な気風はどこへやら、たった一回の経験でこうまで変わるほどのものではないであろうに。

 

「しかしまあ、いい運動になりましたよ。戦争がない時代ならこの棺(ジャガーノート)はダイエット用品として大人気商品になっていたでしょうに」

 

 レギオンと直接戦闘を交えていないこともあり、どうやらジョークを言える余裕があるようだ。ジェインは笑みを(たも)ちつつもフェルディナンドに強く釘を刺した。

 

『ジョークもそこまでしておきなさい。運良く生き延びた、寿命が延びただけだからね』

 

 それでも折角(せっかく)生き残ったのだ、帰りながら談笑に浸ろうとジャガーノートの進路を転回し基地に戻ろうとした時、ハンドラーたちの声を同調装置(レイドデバイス)が拾った。

 

『最前線部隊!何をしている!今すぐに回頭しろ!戻って来い!』

 

 各方面のプロセッサーたちは最初こそ理解できなかったが、外の空気を吸うためために機体から出ていた者や、最前線のすぐ後ろに留まっていた者たちはすぐに気付いた。

 

「なんか……白金種(プラティーン)の奴らずいぶん遠くに居る気がしないか?」

 

 見れば見るほどに最前線部隊を組むプロセッサーたち、つまり白金種(プラティーン)が搭乗者である機体の群れが遠ざかって行くのが見てとれる。

 まるで、自分たちから逃げて行くように。

 

『今すぐに帰投しろ!どこへ行く気だ!』

 

 ガシャガシャと不快な機械音を立て、国境を目指して外へ外へと進み続けるジャガーノートの群れ。搭乗者総数10万8526人の白金種(プラティーン)は一人たりとも欠けることなく、予備の武装も兵糧すらも持たずに無数の無人機が蔓延(はびこ)る危険地帯へと一心不乱に突っ込んで行く。

 

「おい…………まさか」

 

 この時、プロセッサーたちはやっと気付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「奴ら…………俺たち(エイティシックス)を置いて逃げやがった!」

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