星暦2139年4月15日の昼下がり、サンマグノリア共和国の第二区。第一区から移設された共和国軍司令所兼指揮管制所に併設されている武道場に、複数人の
そしてその様子を静かに眺める、腰まで長く髪を伸ばした壮年の男が一人。
「ウィザリア大佐、休憩時間中だと言うのに精が出ますな」
やがて、稽古を終え防具を
「また86区に滞在していたそうだな。それも今回は護身用の武器も持たず、ノーマン少尉相当官とたった二人で」
やはり気付かれていたか、とヴァーツラフは歯を食い縛る。文明が発達して戦争の前提条件が変わり、白兵戦に至るまでが中距離戦主体であるこの時代。
司令官である佐官ともあろう軍人が、攻撃を受けにくい安全圏から離れること自体が非常識であると言うのに、一体何を考えて行動しているのか。
無論この男にも彼なりの信念があるのは確かだが、それでも命知らずとしか言い
「この国の政策は間違っている。ウィザリア、君もわかっているのだろう?
自分以外の家族親族全てが86区におり、更に自身は基本部隊挨拶以外の目的で前線に出ることがないクガンドにとって、ヴァーツラフの主張は耳が痛いことこの上ない。
後方の強制収容所に閉じ込められている
「…………俺たちは仕打ちをしている側だ。下手に干渉をしても怨みを買うだけだぞ」
そして、「ただでさえ末期の状態なのに」と続けようとしたが、ヴァーツラフは信じられない言葉を口にした。
「そんなことは理解している。レーナも、きっと理解してくれる」
言葉に出された名を聞いて、思わず自分の耳を疑った。
(ヴラディレーナも?お前は何をするつもりだ。理解してくれる?つまりまだ理解していない。まさか……)
クガンドは静かな表情を
「ヴァーツラフ。いつまた最前線に赴くのかは知らないが、お前は今度こそ死ぬ。ヴラディレーナは死なないが、ノーマンとは決定的な確執が生まれる。断言できる」
氷よりも冷たく、刀のように鋭く、針のように尖りきった視線で、文字通り突き刺すように睨むクガンド。
一方のヴァーツラフは自分よりも半分近く年下の男に凄まじい殺気を込めた目で睨み付けられてなお動じる様子を見せない。それはまるで、迷いを断ち切った態度だった。
「危険は承知の上だ。いつまでも高見の見物を続けていては…………
ヴァーツラフもまた、冷たい言葉で返した。
同時刻の86区。大人の大多数が徴兵され寂しい雰囲気が一段と強くなった西部方面第071強制収容所兼戦闘訓練施設で起こった出来事である。
「これ……隠し扉じゃねーか?」
つい二ヶ月前から始まったレギオンに対応するための戦闘訓練をいつものようにこなし、更衣室で着替えていたキール。
しかし、この日ロッカーを開けた時今まで聞こえなかった異音に気付き、自身が使っているロッカーをずらしたところ、その
「もしかして、キールくんのお父さんとゴンくんのお父さんが言ってた…………」
「ああ、この収容所のどこかに秘密の地下室を作ったって言ってたけど……まさか本当だとは」
「この地下室に、オヤジたちが作った“何か”があるんだ……」
その何かとはなんなのか、ゴンサレスたちは気になって仕方がない。子供たちの好奇心は、訓練施設の地下に