Eighty Six Platinum   作:御代川辰

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弐之章 ゲイ・ボルグ特統戦隊
09 Six years later side the Gáe Bolg


深層統合思念体(アンダーコンチュース)接続(コネクション)。接続対象、東部防衛戦線特別(Special)統合(Synthesis)戦闘(Combat)部隊(Unit)各隊員』

 

 照明のない暗い部屋に、一人の真っ白な男が入りながら呟いた。

 

『コマンダー・ゼロより〈ゲイ(Gáe)ボルグ(Bolg)〉各戦隊長に通達』

 

 暗く狭い管制室の席に座る、一人の白金種(プラティーン)の男の無機質な声が響く。

 

『東部防衛線ポイント80、130、177、2にレギオンの侵入を確認』

 

 彼の視線の先にあるのは下に向かう赤のアイコンと上に向かう白のアイコンが浮かぶ黒い画面。

 別の画面には第一から第四の部隊に配属されている機体の個体識別名(パーソナルネーム)、そして各部隊を指揮するハンドラー四名のコールサインが表示されている。

 

『コマンダー・ゼロより第一戦隊“スピア(Spear)ヘッド(Hed)”戦隊長アンダーテイカー(Undertaker)へ。目標ポイント80。到着次第対処、レギオンを撃滅せよ』

 

 男性将校であるハンドラー・ワンの指示に従い、第一戦隊のジャガーノート24機が続々と列を成して出撃していく。

 

『ハンドラー・ワンより第二戦隊“パイク(Pike)ブレード(Blade)”戦隊長シャイニングサン(Shiningsun)へ。ポイント130へ向け、各員出撃せよ』

 

 ハンドラー・ワン指揮下の第二戦隊に所属する24機のジャガーノートも出撃した。

 

『ハンドラー・ツーより第三戦隊“ロング(Long)ランス(Lance)”戦隊長ラース(Wreath)ドレイク(Drake)へ。全機待機を解除、ポイント177に出撃せよ』

 

 女性将校、ハンドラー・ツーの指示を受けた第三戦隊のジャガーノート24機も目標地点へと進軍を始める。

 

『コンダクター・ナインより、第四戦隊“スロウ(Throw)ジャベリン(Javelin)”戦隊長マスクドフェイス(Maskedface)へ。出撃準備を完了次第、順次作戦行動に移れ。目標地点はポイント2』

 

 最後に、コンダクター・ナイン指揮下の第四戦隊のジャガーノート24機がすでに出撃した三つの部隊の後を追うように歩みを進め始めた。

 

『コマンダー・ゼロより第一戦隊、各員点呼。アンダーテイカーから』

 

 そして、コマンダー・ゼロからの点呼の指示とともに、怒涛の勢いで戦隊員たちの返事が響く。

 

『スピアヘッド戦隊長、アンダーテイカー(葬儀屋)了解』

『スピアヘッド第一小隊、ファルケ()了解!』

『スピアヘッド第一小隊、ファーヴニル(毒竜)了解!』

『スピアヘッド第一小隊、ヘリアントゥス(太陽花)了解!』

『スピアヘッド第二小隊長、ヴェアヴォルフ(人狼)了解』

『スピアヘッド第二小隊、ワルプルギス(死者祭)了解』

『スピアヘッド第二小隊、グリフィン(鳥獣)了解!』

『スピアヘッド第二小隊、マンティコレ(獅子蠍)了解』

『スピアヘッド第三小隊長、ラフィングフォックス(笑う狐)了解!』

『スピアヘッド第三小隊、シリウス(天狼)了解!』

『スピアヘッド第三小隊、アルテミス(月の処女)了解!』

『スピアヘッド第三小隊、キャタナイン(噛む者)了解』

『スピアヘッド第三小隊、マーチヘア(三月兎)了解!』

『スピアヘッド第四小隊長、キルシュブリューテ(桜ノ花)了解』

『スピアヘッド第四小隊、レウコシア(白女神)了解』

『スピアヘッド第四小隊、ガンメタルスコーム(銃鉄の梳櫛)了解』

『スピアヘッド第五小隊長、ブラックドッグ(黒犬)了解!』

『スピアヘッド第五小隊、ラ・ベート(野獣)了解!』

『スピアヘッド第五小隊、デンドロアスピス(樹状見取り図)了解』

『スピアヘッド第六小隊長、ガンスリンガー(携銃帯)了解』

『スピアヘッド第六小隊、バーントテイル(焼け焦げた尻尾)了解!』

『スピアヘッド第六小隊、グラディアトル(劔鬪士)了解』

『スピアヘッド第六小隊、アルゴス(英雄船)了解!』

 

 スピアヘッド戦隊24名の他三戦隊全員の個体識別名(パーソナルネーム)が点呼され、総勢96人のプロセッサーの出撃が確認された。

 

シャイニングサン(輝く太陽)よりハンドラー・ワン。敵の規模と位置確認を』

 

 正面切ってレギオンへと向かうプロセッサーの一人である第二戦隊パイクブレード戦隊長、シャイニングサンが静かに問う。

 

『ハンドラー・ワンよりシャイニングサン。現在位置から1500メートル先、12時の方角に3個大隊が布陣、その400メートル手前に4個中隊が迎撃準備中』

 

 ハンドラー・ワンを名乗る将校は笑い声を堪えているかのような、明らかに侮辱を込めた態度でプロセッサーたちに告げる。

 

『まあ、この数相手だと……化け物揃いのゲイボルグ特統戦隊も流石に全滅かもなぁ?』

 

 直後、ハンドラー・ワンの言葉を上書きするようにコマンダー・ゼロからの指示が下る。

 

『コマンダー・ゼロより、ゲイボルグ特統戦隊各員へ。今回のレギオン側部隊の構成は斥候型(アーマイゼ)尖兵型(クーゲルルンド)戦車型(レーヴェ)近接猟兵型(グラウヴォルフ)戦列突撃型(グーテルティア)長距離砲兵型(スコルピオン)豆戦車型(アイデクセン)の7種だ。長距離砲兵型(スコルピオン)の狙撃に注意して撃滅せよ』

 

 コマンダー・ゼロがレギオンの詳細の情報とともに指示を告げると、ハンドラー・ワンは小さく舌打ちをし、ハンドラー・ツーは不機嫌そうに息を吐いた。

 この時勢において86区民(エイティシックス)、特に戦場に立つプロセッサーに対して味方するような白系種(アルバ)は忌避される。

 特に白金種(プラティーン)は大多数が86区へ、さらにそのほとんどが国を捨てて逃げ出したために86区民(エイティシックス)からも白系種(アルバ)からも極めて印象が悪い。

 

『ほらほら行け行け!ぶっ壊れて死にやがれ豚ども!』

『豚は豚らしく、屠殺されて来なさい!』

 

 ハンドラー・ワンとハンドラー・ツーの罵声が響く。

 しかし、この罵声もコンダクター・ナインの言葉で上書きされた。

 

『白トリュフ二つの言葉は無視。指示はこちらに任せて、レギオンの撃破に集中せよ』

 

 そして、ゲイ・ボルグはついにレギオンの侵攻部隊と会敵した。同時に、アンダーテイカーの耳を通じて奇妙な声がハンドラーたちの頭に響き始めた。

 

(…………始まったな)

 

 コマンダー・ゼロとコンダクター・ナインはこれから始まる地獄絵図を思い浮かべ、静かにほくそ笑む。

 

『何だ、この声は……?』

『何?何なの?』

 

 ハンドラー・ワン、ハンドラー・ツーは突然聞こえ始めた幻聴に困惑している様子だ。

 

『タスケテ……』『イタイ』『ウワアアアアア!』

『シニタクナイッ!』『カアサン……』『イヤダアアアアア!』

『パパーッ!』『ウランデヤル!』『タスケテクレェッ!』

 

 性別、年齢、人種、精神状態の一切を問わず、あらゆる人間の()()()が少しずつ頭の中に流れ込むのが理解できた。

 

『黙れよっ……黙れ!うるせえんだよ豚が!』

『いい加減に黙りなさいよ!うるさい!』

 

 すでにこの世にいない人間たちに向けて、空を切る拳のように罵倒を放つ二人のハンドラー。

 そして、二人に聞こえる断末魔の声は徐々に大きく、徐々に増えていき、ついに。

 

『『あああああああああああああああ!』』

 

 ()()二人の人間が廃人となった。

 

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