星暦2139年2月末。雪が降りしきり、銀世界が広がる北方収容所群の夜。この第109強制収容所に、
「お二人はいよいよ明日、初戦闘ですね……」
さして内容の多くない日記をまとめながら、フェルベールが同室であるフェルディナンドと
「心配はいらないさ。形が違うとは言え入隊した時から戦闘訓練を欠かしてない
フェルディナンドは夜食で膨れ上がった太鼓腹をぽんぽんと叩き、「最初に死ぬのは間違いなく俺だな」と笑い飛ばした。確かに、仕事のない時間は基本何かを食べるばかりで、まともに体を動かしたことのないフェルディナンドにとって戦場は生き難い場所だ。
しかも従軍は今回が初めてで、単独任務であろうが部隊任務であろうがあろうことか自動車の運転さえもできない彼は、まず間違いなく真っ先に死ぬ。
「謂わば逃げることさえ許されない特攻隊。果たして、
真っ白な髭を指先で撫でながら、ジェイン“元”共和国軍中将は呟いた。ちなみに彼が仙人のように顎髭を長くな伸ばしているのは、若かりし日に戦場で受けた喉の傷を隠すためのものである。
「(私が最後に戦場に出たのは、39歳の冬だったな……)」
真っ白な
「その話」
ジェインに背を向けたまま、フェルベールは声をかけた。再び沈黙が部屋を支配する。
「詳しくお聞かせ願えますか?」
フェルディナンドの好奇の視線にまで
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もう60年も昔、共和国のすぐ南にあった東
当時はまだ通信機のほとんどが有線で、無線機の使用を許される部隊が限られていた頃だからはっきり覚えているよ。
特に1月に入って最初の一週間で起こった一連の戦いは地獄の一言で、まるで豆を磨り潰すかのように何万人ともしれない兵隊が死んでいったのさ。
私は当時、39歳という若さで一個中隊を任される大尉として戦場で指揮を執っていたんだが、人事局のミスか私が人種差別反対派だったからなのか、まあ多分厄介払いのつもりだったんだろうな。
割り当てられた中隊って言うのが当時はまだ酷い扱いを受けてた
始めはもちろん怖かったし、正直逃げてしまいたかった。「
それでも、彼らは私を温かく迎え入れてくれた。私が配属された初日の夜に、ただでさえ少ない給料を
特に私の補佐として配属された19歳の女の子……さすがに名前は覚えていないが、明るくて優しい子だった。
配属して最初に声をかけてくれたのも彼女だったし、毎朝欠かさず挨拶をしてくれた。特に凄かったのは人を纏める力だ。声に宿る力、言葉そのものの力が根本から違うのを思い知らされたね。
そして実戦指揮をしてみればもっと驚かされた。何せ彼ら、一言で言い
強すぎると言っても過言じゃない。突撃の叫び声だけで敵を撤退させることさえあったし、歩兵分隊で戦車連隊を壊滅させるようなこともあった。
何故
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「今となっては良い思い出話だ。
ベッドの掛け布団を
「
「ああ。今の今まで、第8区に残して来た家族にさえ明かさなかった、部下たちとの大切な思い出さ」
フェルベールは
運命の出撃まで、残り12時間を切った瞬間だった。