破壊神のフラグ破壊   作:sognathus

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牙の様な鋭い歯が一人の少女を今、獲らわんとしていた。


「魔法少女 まどか☆マギカ」編
第1話 急な真実


「――――!」

 

マミは自分の最期を認識できなかった。

力を消耗し勝利を確信した刹那に起こった敵の反撃だったからだ。

ソレは本当に一瞬でマミまで迫り、後は何の匂いもしない空っぽの口腔がその入り口を閉じてしまえば終わるだけだった。

 

だが――

 

シュインッ、ドン!

 

「きゃっ!?」

 

突如目の前にテレポートをして現れたビルスとウイスにマミはその場から弾き落とされてしまった。

 

「「「え?」」」

 

ポカンとした顔で突然現れた人物を見るまどかとさやかとほむら。

 

ガッ……プ

 

 

「おや」

 

巨大な歯はマミを捉えることなく、マミを弾き飛ばした事によってその場に入れ替わる形となって現れたビルスを襲っていた。

妙だったのは、本来は咥えるどころか食いちぎる筈だった化け物の口がビルスの頭を咥えただけで終わっていた事だった。

ガチンやゴチンといった衝撃を拒否するような硬い音こそ聞こえなかったが、マミを襲った化け物がいくら力を入れてもその歯はそれ以上進行することが出来なかった。

 

「……」

 

ピクッと暗い口の中でビルスの額に青筋が立った。

その時点で化け物の最期は決まった。

 

「!?」

 

パッと、マミの身代わりを襲った魔女が一瞬で消滅した。

またもや信じられない事が起こり驚きの声をあげるまどか達、その衝撃はまどかの傍らにいた白い生物、キュゥべぇも例外なく感じたらしく、顔こそいつも通りだったが珍しく驚いた声を上げた。

 

魔女が消滅した事によって構築されていた異空間は崩壊し、徐々に元の世界へと戻っていった。

そして、四人の少女と神と付き人だけが残った。

 

 

「あなた……は」

 

何が起こったか未だに分らないでいたまどかは、ただただ奇妙な二人組を見つめるばかりだった。

 

「っ、そんな事よりマミさん大丈夫?」

 

さやかも同様だったが、すぐ傍に自分たち以上に呆然としていたマミがいた事で誰よりも早く彼女の安否を確認した。

 

「え? あ……あ……」

 

さやかに声を掛けられて、ようやく目の焦点があってきたマミは、今しがた自分の身に起ころうとした事を想い出し、震えながら泣き始めた。

 

 

「失礼な奴だったな。いきなり人の頭を咥えるとは何事だよ」

 

「まぁ、あれは私もフォローのしようがありませんでしたね。元々誰かを襲おうとしていた様でしたし、さして問題もないでしょう」

 

ビルス達はビルス達で特にまどか達に注意を向けることなく、今しがた自分達に起こった不快な出来事にご立腹の様子だった。

 

「で、ここは何処なの? また地球っぽいけど、町並みを見る限りサイヤ人がいた世界と文明はそれほど離れていないように見えるけど」

 

「また別の地球といったところでしょう」

 

「ふーん、そっか。それじゃ暫く見物して何も無さそうだったらさっさと次に行こうか」

 

「了解です」

 

そうやってビルス達が早々に踵を返して何処かへ行こうとすると――

 

 

「ま、待ちなさい!」

 

少女たちの中でただ一人、かろうじて始終落ち着きを保とうと奮闘していたほむらがビルス達の背中に声を掛けた。

 

 

「うん? なに?」

 

「い、いきなり現れて……あなた達一体何者なの?」

 

「僕はビルス、破壊の神だ」

 

あっさりとビルスは身分を明かした。

当然だが、その言葉は到底ほむら達には信じられなかった。

それは無理もない事だった。

ついさっきまで魔女というただでさえ異質なものと対峙していたというのに、次は破壊の神が現れたからだ。

 

確かに見た目も明らかに人間ではないし、魔女と違って意思疎通もでき、その力も底がしれない。

だが、だからと言っていきなり自分は破壊の神です、では無理があるというものだった。

 

「ば、馬鹿言わないでよ……そんなの信じるわけないでしょ……」

 

「さっきの見ただろ? 僕が破壊したんだ。あれを見てもまだ信じられないのかい?」

 

「確かにあれには驚いたわ。でもね――」

 

「やめろ!」

 

ほむらが比較的まともなビルスの説明にも一歩も理解を示そうとせず、更にまくしたてようとした時、さやかが大声で彼女を静止した。

 

「美樹さやか……邪魔しないでくれるかしら? 今は、この……」

 

話の腰を折られた事が不満そうな顔でほむらはさやかを睨んだ。

 

「いいや、だめだ。お前があの人達を怪しむのも解るよ? でもね、あの人達はマミさんを助けてくれたんだ」

 

「なのにお礼を言うどころかいきなり疑って嫌な思いをさせるような事を言うなんて、わたしは見過ごせないね!」

 

「さやかちゃん……」

 

「さやか……あなた……」

 

「ほむらさん、私からもお願いするわ。取り敢えずここは矛を収めてくれないかしら? 」

 

ようやく落ち着きを取り戻したマミもほむらを鎮める為にさやかに加勢した。

 

「ほむらちゃんお願い。わたしも今はそんな事言っちゃダメだと思うよ?」

 

「まどか……」

 

マミに続いてまどかも加勢に入ったところでようやくほむらは険を収め始めた。

 

「ごめんなさい。ちょっと冷静さを失っていたわ」

 

ほむらはまどか達を一瞥すると、ビルスの方を向いて謝罪した。

 

「ふぅ……もう少し態度が悪いままだったら星ごと破壊していたところだよ」

 

「へ? 星?」

 

脅し文句にしてもスケールが違うとか以前に、一般的感覚からしたら幼くも思えるその言葉にさやかが思わず反応した。

 

「星……」

 

まどか達の傍らにいたキュゥべぇも反応したが、彼の反応はさやかとは明らかに違い、ビルスの言葉に戦慄するような感じだった。

 

「そう、星」

 

ビルスはそんなさやか達の反応を気に事もなく、あくまでそれが事実である事を依然として主張した。

 

「や、やだなぁ。えーと、ビルス? さんだっけ? マミさんを助けてくれた事には感謝してるけど、いきなり星を破壊とかは言い過ぎだよ」

 

ビルスの発言を場を和ますための冗談だと勘違いしたさやかが苦笑しながらそう言った。

 

「おや、冗談だと思っているのですか?それは意外ですねぇ」

 

今まで面白そうに事の展開を見守っていたウイスがここで口を挟んできた。

 

「え? それはどういう事です?」

 

「だって、ほら。そこにいらっしゃる白い方。その方もビルス様程ではありませんが、似たようなことをしているんですよ? そんな方と一緒にいるというのにビルス様の言葉を疑うなんて意外と思う方が普通ではないでしょうか?」

 

「え?」

 

「……」

 

ウイスに掌で指され、皆の注目を浴びた白い方、キュゥべぇは珍しくその時冷や汗を一滴流した。




はい、クレしん編の最後の話がなかなか浮かばなかったので、新しい話を書きながら浮かぶのを待つことにしました。
長らくの未更新と今回のこの暴挙どうかお許しください(土下座)

というわけで「まどマギ編」ですがやっぱりここから話を始めることしました。
一番印象的だし、ある程度役者もそろってるし事実を暴露したら面白そうなので(暗黒嘲笑)

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