破壊神のフラグ破壊   作:sognathus

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いきなり正体を暴かれ一筋の汗を流すキュウべぇ。
予想外な展開に皆が動揺する中、ビルスとウイスの二人は当然そんな事を気にする事もなく、相変わらずマイペースに話を進めるのだった。


第2話 ひどい話

「同じ事? キュウべぇが?」

 

マミがウイスの言葉に驚き、キュウべぇを見ながら言った。

 

「それってどういう事?」

 

「破壊ですよ。その方はあなた達で言うところの異星人です」

 

「きゅ、キュウべぇが?」

 

「あなた何でそれを!?」

 

理由は違えど、同じ反応をした二人がウイスに聞き返す。

 

「……」

 

「そうです。正確な名称はインキュベーターでしたね」

 

インキュベーターという言葉を聞いてビルスの耳が僅かにピクリと動いた。

どうやら何かを思い出したようだ。

 

「ああ。宇宙を救うとかいう使命の為にちょろちょろしてる連中か」

 

「ビルス様、言い方が失礼ですよ」

 

「事実じゃないか。それに僕はああいうこそこそした奴が嫌いなんだ」

 

「ちょ、ちょっと待って。さっきからあなた達は一体何を言っているの? 後、ほむらさんは何か知っているの?」

 

「事実ですが?」

 

「事実よ……」

 

マミの質問に即答する二人だったが、何故か雰囲気に明確な違いがあった。

ウイスはともかく何故ほむらはそんなに暗い顔をしているのか。

最初にウイスが言った言葉をあまりにも急な話による驚きから、失念していたマミが疑問に思った。

 

「事実って……言ってることがあまりにもちょっとアレで理解できないんだけど……」

 

「まぁ分かりやすく言えば誰かを不幸にする事でエネルギーを収穫し、それを使って宇宙を救おうとしている慈善団体の方ですよ」

 

「ふ、不幸に?」(もしかしてほむらさんが暗かったのって……)

 

「慈善?」

 

「ああ、破壊というのはエネルギーを収集する過程でよく最後の方になると、目的の為に訪れた星が消滅することが多いからですよ」

 

「え?」

 

もう全く話に付いていけなくなっていたまどかが今度こそ本当に訳が分からないと言う顔をした。

星が消滅するってどういう事だろう?

 

「……」

 

「まあ、驚くのも無理はありませんね。基本的にこちらから核心に迫らない限りそちら……キュウべぇさんでしたか、は答えることはありませんからね」

 

「ふんっ、嘘は言わないとはよく言ったものだよ。ただ聞かれない事には基本答えないなんて陰湿だ」

 

再び何故か機嫌が悪くなっていたビルスが口を挟んできた。

 

「ビルス様……インキュベーターと何かあったんですか?」

 

「別に。大分昔に僕にエネルギーを分けてくれなんて言ってくるから、その時たまたま気分が良くて分けてやったんだ」

 

「ほう、それはビルス様にしてはお優し……気が利きますね」

 

「お前、それどっちにしても僕の事を馬鹿にしているぞ?」

 

「ほ、ほほほ。それでどうしたんです?」

 

「そいつ僕が実際に分けてやる前にどれくらい欲しいのか言わなかったからさ、適当に分けてやったわけ。そしたらさ『お、多過ぎやめっ――』とか言って消滅したんだ。礼も言わずに」

 

「はぁ」

 

「何処に行ったのかって気にしながら寝てたらそいつがまた来てさ『君のおかげで僕の仲間が殆ど消滅してしまった。なんて事してくれたんだって』文句言ってきたんだ」

 

「……それで?」

 

「態度にちょっとムカっっと来ちゃってさ、そいつの星ごと太陽系いくつかまとめて破壊して――」

 

「あ、あの銀河系の消滅は君の所為だったの!?」

 

表情こそ変わっていないが、明らかに動揺した驚きの声をあげるキュウべぇ。

さやかとまどかは何とも思わなかったが、裏の顔はともかく、ある程度彼と行動を共にした事があるマミとほむらはその動揺した声に若干意外そうな顔をした。

 

「あれ? お前仲間同士で情報を共有する能力なかったっけ? なんでその事を知らないんだ?」

 

「多分最初に君から送られたエネルギーが強大過ぎて一時的にその能力もショートしてしまったんだと思う。そりゃそうだよあんな暴力の塊とも言っていいエネルギー、あの時の僕らがどれだけいたとしても無理だよ……」

 

今度は明らかに意気消沈した声で愚痴の様に呟くキュウべぇ。

マミとほむらは、こんなに明らかな感情を示す彼を見たのは本当に初めてだった。

 

 

「挙句の果てにちょっと機嫌を損ねたからって僕の星どころかまとめて太陽系をいくつも消滅させちゃうなんてさ……誰がそんな結末想像できたっていうのさ……」

 

(い、未だにこの人たちが何を言っているのかよく解らないけど、こんなに目に見えて落ち込んでいるキュウべぇを見るのは初めてね……)

 

(あれ? こいつ私が知っているインキュベーターと違う……?)

 

「それは、何でもかんでも保身の為に説明を後回しにする君が悪いんだろ?」

 

「ぐっ……あの時交渉の礼儀作法を学んでいれば……。ショートさえ起こらなければ……」

 

「ま、それなりに反省してるみたいだからもうこれ以上君に何かするつもりはないよ」

 

「そ、そう」

 

「それで今は何してるんだい?」

 

「え?」

 

「またエネルギーを集めてるんだろ?」

 

「……」

 

「ああ、確か人を不幸にしてなんとかって……」

 

「!!」

 

「え!? そ、そうなのキュウべぇ!?」

 

(え、何この展開……)

 

「いや、それはあくまで宇宙の存在を保持する為で……」

 

「宇宙のバランスを保つ仕事は僕と創造の神がやってるから君は特にそういう事はしなくていいんだよ?」

 

「えっ」

 

「なんかエネルギー集めて宇宙が消滅しないように気を配ってるみたいだけどさ、はっきり言ってそれくらい創造の神がいつも調整してるから問題ないよ?」

 

「……」

 

「そして余計なところは僕が破壊する。これで宇宙のバランスは保たれているんだから」

 

キュウべぇは再び押し黙った。

だが今度の沈黙は驚きや様子見によるものではなく、虚しさから来るものだった。

自分が今までしてきたことはなんだったのか?

ある程度誘導的だったとは言え、自分から契約の意思を示した人間から常に一方的に理不尽な(QB主観)敵視もされてきたというのに……。

特にその事が使命をこなす上で障害になっていたわけではなかったが、それでも長い間同じ経験をしていると、流石に多少は不快にも感じていた。




あれ? なんかQBに同情的な流れになってきたような?
自分でもどういう話になっていくのか分からなくなってきましたw

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