破壊神のフラグ破壊   作:sognathus

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ビルス様のプリンが粉々になってしまいました。
無理もありませんが、そんな事を気にも止めない赤い髪の少女はまだ諦めていないようです。
なんと迷惑千万な……。


第6話 九滅一生

さやか「あ」

 

この時さやかは凄まじく嫌な予感がした。

特に誰が怪我した訳でもないが、それでもその後に訪れた沈黙と、ビルスの姿を見比べて何かヤバイと直感したのだった。

 

ビルス「……」

 

ウイス(これはいけない)

 

珍しくウイスは額に汗を滲ませていた。

あの時は魔人が全部食べてしまった事により機嫌を損ねたが、今回は訳が違う。

目の前にありながら、それを邪魔されたのだ。

彼の気性を考えればその怒りがどれほどのものか容易に想像が出来た。

 

杏子「っち!」

 

奇襲に失敗した杏子がダメもとで追撃しようと更に進み出ようとした。

 

ほむら「佐倉杏子!!」バッ

 

マミ「っ、佐倉さん!?」

 

まどか「え?」

 

それぞれが不意の事態に反応を見せるなか、ビルスは未だに沈黙していた。

 

ビルス「……」

 

ビルス達が持つ神の気は大きく二つの特徴がある。

一つは基本的に神族以外は察知する事はできないという事。

そしてもう一つは、どんなに力を込めてもその力が目に見える脅威、戦闘力として表面化しないという点だ。

ここで重要なのは二つ目で、これは基本ビルスがどんなに怒っても、気配だけでは間接的には彼の恐ろしさが伝わり難い事を意味する。

それが正にこの状況だった。

 

皆それぞれ行動する中、ビルスに渦巻く確定的な破滅の力に気付いているものはその場ではさやかとウイス以外いなかったのだ。

 

杏子「そこを、どけ!!」

 

ガガッ

 

杏子は遠隔操作で武器を回収する途中で槍の形状を変化させ、障害物を発生させてマミやほむらが応戦する隙を与えなかった。

 

マミ「うっ……く!?」

 

ほむら「待って!!」

 

二人が何とか障害物を防いで杏子を止めようとしたがもう遅かった。

上手く二人を躱した彼女は必殺の一撃を今度は敢えてビルスのみに絞る事で最低限の目的を果たそうとしていた。

 

杏子「……ッはぁ!!」

 

渾身の力を込めて放った槍が彼女の力に応えてまた形状を変化させ、通常では有り得ない離れた間合いからビルスに向かった。

 

杏子(獲った!)

 

杏子は確信した。

後は槍の穂先がビルスの顔面を捉え、穿つことが出来ればひとまず目的の一旦は終える筈、だった。

 

ピタッ

 

だが、そうはならなかった。

槍の穂先はビルスの頭に到達する前に彼の指先によって目の前で止められたのだ。

 

あまりにもの反応の早さに杏子は目を疑った。

だがこの後、彼女は更に驚愕の事態を目にする。

 

止められた槍が一瞬で全て、彼女が握っていた柄の端まで砂となって消えてしまったのだ。

 

杏子「なっ!?」

 

あまりにも予想外の事に杏子は動揺して後ずさる。

同じく後ろから彼女を止めようとしていたほむらとマミも同様の反応を見せていた。

 

マミ「え」

 

ほむら「……」ゾク

 

槍が消えても指を突き出したままでいたビルスがゆっくりと顔をあげた。

表情こそ無表情だったが、彼の目は怒りの色で染まり、黄金の光を放っていた。

 

ビルス「……よくもやってくれたな」

 

初めて聞く威圧的なビルスの声だった。

 

ほむら・マミ・杏子「……っ」

 

ビルスが特に何をしたわけでもないのに既に三人はその場から動けず、恐怖で委縮していた。

 

まどか「あの……ビルス、さん?」

 

さやか「まどか、ダメ!」

 

状況が理解できずにビルスを宥めようとするまどかを誰よりも早く危機を察知していたさやかが止める。

 

ビルス「プリンを用意してもらっておいてなんだけど……キレたぞ。もうこんな星は太陽系ごと破壊してやる……」

 

ほむら「……くぅ、……待っ……」

 

相変わらず冗談の様なセリフだったがほむらはもう信じていた。

ビルスが本当に宇宙を破壊できる神だという事を。

理解こそできないが直感が彼の力が本物であると告げていた。

 

ビルス「ふぅ……完全に……」

 

ビルスが精神を集中させる。

軽く星を纏めて消せる程の力を。

後はそれを放つだけだった。

 

彼は破壊の神ではあるが残酷ではない。

力を放ってもそれがその星に住む生命の最期を告げるものであると、誰もが気付く前に消滅しているだろう。

そういう意味では彼はまだマシな種類の神と言えるのかもしれない。

 

カッ

 

ビルスが目を見開く。

これでまどか達の最期は決まるという、その時。

 

ウイス「いけません!」

 

ウイスが滑り込むようにビルスの前に立ちはだかり彼を止めるものかと思いきや、持っていた杖を振りかざしビルスの前に無残に散っていたプリンをテーブル瞬く間に復活させたのだ。

 

ビルス「……んん?」

 

途端にビルスの表情が変わり、先程まで纏っていた恐ろし雰囲気もあっという間に消えていた。

 

ウイス「どうぞ、まだ無くなってはいませんよ」

 

ビルス「おおー」

 

先程までの険悪な表情とは打って代って嬉しそうな声をあげるビルス。

その声を聞いただけでその場にいたウイス以外の人間は肩から力が抜けるのを感じた。

 

ウイス「いやぁ、ただ壊れただけで良かったです。これが前みたいに食べられてしまっていては、もうどうしようもないところでしたよ」

 

よほど焦っていたのか額の汗を拭いながらウイスはホッとした表情をした。

 

さやか「……わたし達助かったの?」

 

まだ不安そうな顔のさやかが同じく泣きそうになっているまどかを伴い聞いてきた。

 

ウイス「ええ、なんとか。安心していいですよ」ニッコリ

 

その笑顔にさやか達はもちろん、今しがたビルスを襲わんとしていた杏子まで安心して崩れ落ちるように膝を付いた。

 

杏子「はぁ……はぁ……一体なんだってんだよ……」

 

肩で息をしながら自分を落ち着けようと努める杏子に近づく影があった。

 

杏子「ん……?」

 

まだ動揺が収まらない杏子は何者かと顔を上げて確認しようとしたが即座に後悔した。

 

ほむら「それはこっらのセリフよ」

 

マミ「お話、聞かせてもらえるかしら?」ニコッ

 

片や無表情、片や笑顔、どちらも怒りとは無縁の顔をしていたが、その目は明らかに憤怒の炎で燃えてる二人が杏子を見下ろしていたからだ。




ウイスさん素敵!
杏子は次回で説教のティロ・フィナーレを食らうといいと思います。

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