破壊神のフラグ破壊   作:sognathus

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シスの暗黒卿の逮捕から数カ月後、その間に銀河では様々な事があった。
シスと密かに繋がっていたドゥークー伯爵の告発と改心、そしてそこから発覚した恐るべき計画……。
気付かないままだったら将来どんな結果になっていたか解らないような陰謀や事件ばかりだったが、そのどれもが未然に発覚し、防ぐ事ができたという最良の結果に終わっていた。

それもこれも全てはある人物の登場を起点としていたのは間違いなかった。
その人物は今、惑星ナブーのとある場所の草原で、穏やかな風を受けながら気持ちよさそうに寝転がっていた。


第3話 生きていた元暗黒卿

「ふぁぁぁ……」

 

ビルスが欠伸をしながら目を覚ます。

 

「おや、ビルス様。今回も随分と早いお目覚めですね」

 

ビルスの隣に佇んで目の前に広がる美しい自然の光景を楽しんでいたウイスがビルスの目覚めを面白そうに笑う。

 

「流石に眠りはしても、此処では眠りにつかないよ。やっぱり本当に眠るなら我が家がいいしな」

 

「それはごもっとも」

 

「……意外に長い事ここにいるな」

 

「そうですね。同じ場所にいるわけではないですが、お世話になってる人は基本的に同じですしね。この星を訪れるのももう何回目か……」

 

「ここが一番居心地がいいからね。でももういい加減する事もなくなったみたいだから潮時じゃないか?」

 

「確かに。となると、ジェダイの方に一言お別れの言葉くらいは送りたいところですね」

 

「あいつらか……僕あいつらちょっと苦手なんだよな。なんか堅苦しいし」

 

「ほほほ。真面目で良い人たちではありませんか。初めて出会った時からいろいろ私達によくしてくれていますし」

 

「まぁ、そうなんだけどさ。んー……」

 

『モール、モール聞こえるか?』

 

 

『は、お呼びですかビルス様』

 

ビルスがテレパシーで呼びかけるとモールと呼ばれた人物が同じくテレパシーで応えてきた。

彼はモール、元シスの暗黒卿で今は拘束されているシディアス卿の恐るべき片腕だった男だ。

シディアス卿の忠実な弟子であった彼が何故ビルスに対して、まるで自分が仕える主の如く礼儀正しい態度を取っているのかは謎だが、とにかくモールはもうシスでない事は間違いないようだった。

 

『僕たちはもうそろそろ此処を離れようと思う。皆に別れを言うのは面倒くさいからクワイ=ガンと……あと適当に偉い奴ら連れてきてくれないか』

 

『……畏まりました。暫しお待ちを』

 

ビルスの言葉に一瞬黙考するような間を見せたモールだったが、直ぐに彼の意を受け実行に移ったようだ。

 

 

「彼も随分大人しくなったのものですね」

 

「ん? ああ、モールか。まぁ確かに最初は敵意丸出しで人の話を聞かない奴だったな」

 

「私は彼がビルス様に破壊されていないことが今でも驚きです」

 

「僕が突き出した手に勝手にぶつかって気絶したと思ったら、目覚めたら今度はいきなり弟子にしてくださいだったもんな」

 

ビルスはクワイ=ガンたちに会って間もない頃、用事があって惑星タトゥーインを訪れた際に後ろからスピーダー乗ったモールに襲われたのだった。

ビルスはそれを飛んできた洗濯物を防ぐ感覚で片腕で制し、(ビルスからしたら勝手に腕にぶつかっただけ)彼が意識を回復すると目の前に自分が持っていたライトセイバーで遊ぶビルスがいた。

それを目にした途端モールは腹の底から怒りが沸上がり直ぐに反撃しようとしたがその時ありえない事態を目にする事になる。

 

ビルスは持っていたライトセイバーを誤って起動させてしまい、その時に光刃が出る方を自分に向けていた為にプラズマエネルギーの高熱をもろに受けたのだ。

本来ならモールをそのビルスの間抜けぶりを哂うところであったが、有り得ない事態はここから始まる。

なんとライトセイバーの光刃の直撃を受けた筈のビルスが単に驚いた顔をして生身の手で顔面すれすれでその刃を止めていたのである。

高熱による穴も空かなければ火傷による煙も出さないその掌の直ぐ側で、無理やりエネルギーの出力を抑え込まれたモールのライトセイバーは彼の目の前でショートして壊れた。

それはモールのこれまでの生涯の中で悪夢以外のなにものでもなかった。

 

何とか動揺を抑えて意識を回復したのを悟られない様にフォースで精神を操ろうとしてもそれは効かず、かといってビルス自身をフォースグリップで攻撃しようとしても、これもまた全く効果はなかった。

モールはこの時世の中には何をしても抗えない力がある事を身を以て体験したのである。

 

その後はというと、なけなしのプライドで抵抗する振りをしつつ自分の精神的タフさ(諦めの悪さ)をビルスたちにアピールした後、すっかり彼の強さに心酔していたモールは破壊神の従順な僕となる事を希望したのである。

 

そう、あのドゥークー伯爵と同じパターンであり、さらに時間的に実は彼の方が先にビルスに取り入っていたのだ。

では何故それにも拘わらず現在に至るまでモールの消息がシディアスに伝わっていなかったのかと言うと、それはモールが暗黒卿だった立場を利用して様々な情報をビルスとジェダイに密かに伝えていたからだ。

結果的にそれがドゥークー伯爵の寝返りや汚職議員の追放、シディアスの逮捕に繋がり、今の平和な世の中に至っているのである。

実は今回の銀河の革命はビルスの力もさることながら、モールによる貢献が何より大きかったのである。

 

とまぁそんな事があってモールは今、何処かの世界の天使や悪魔と同じくビルスの部下をしているわけで、そんな彼が先程のビルスの命を早くも完遂したらしくビルスの前に一隻の宇宙船が降り立ってきた。

 

 

「ビルス様!」

 

金髪の少年が船から降りて嬉しそうにビルスに駆け寄ってきた。

後ろにはクワイ=ガンとオビ=ワンもいる。

 

「主よ、連れて参りました」

 

いつの間にか合流していたモールがスピーダーから降り恭しく頭を下げてビルスに報告してきた。

 

「ああ、ご苦労さん」

 

ビルスは軽く手を振ってモールの労を労う。

 

「ビルスさん本当に行っちゃうの?」

 

金髪の少年、クワイ=ガンたちがあのタトゥーインで見つけた驚異的な才能を秘めたアナキン=スカイウォーカーが寂しそうな顔でビルスに訊く。

その目には僅かに涙が滲んでいた。

 

「ああそろそろ退屈になってきたからね」

 

「残念です」

 

初めて出会った時はビルスを胡散臭い目で見ていたオビ=ワンだったが、今では本当に残念そうな声でビルスに言った。

 

「私もです。貴方の此度の貢献は計り知れない。できれば是非今後も銀河の平和の為に我々に力を貸してほしかった」

 

クワイ=ガンもオビ=ワンと同じく心から残念そうな顔でそう言った。

 

「ふっ、別れを惜しんでくれるのは嬉しいけどね。僕は今旅行中だからね。また別の星に行きたいんだ」

 

「とは言うものの、私達もあなた方には本当にお世話になりましたからね。その事についてはビルス様に代わり私からお礼を述べさせて頂きます」

 

ウイスはそう言って感謝の意を込めてクワイ=ガン達に頭を下げた。

 

「ウイス、別に礼は代わらなくてもいい。クワイ=ガン、ウイスの言う通りだ。世話になったね。ありがとう」ペコ

 

「……勿体ないお言葉です」

 

破壊神に感謝されて何故かモールが瞳を潤ませて感極まった表情をしていた。

 

「……」 「……」

 

その様子をアナキンとオビ=ワンは複雑そうな表情で見ていた。

ジェダイとシスの今までの関係を思うと、未だにドゥークー伯爵やモールの変貌ぶりに動揺を完全に払拭できていないからだ。

 

あのシスが……やはりこの方は神なのだな。

そんな二人に対してクワイ=ガンだけは流石の年季と言うか貫録で、感慨深げにその様子を見守っていた。

 

「ビルス様また会える?」

 

アナキンが少し鼻を啜りながらビルスに訊いた。

 

「会えるさ。ジェダイは思念で会話できるだろう? それは僕にも伝わる。だからどうしても伝えたいことがあれば送ってみるといい」

 

「最悪睡眠中でも私が承りますのでご心配なく」ニコ

 

「おい」

 

ウイスが悪戯っぽい笑みを称えてそんな補足をした。

 

「そうですか、重ね重ね残念ではありますが私達もあなた達の旅を止める権利はありません。これからの無事をお祈りしますよ」

 

クワイ=ガンが微笑みながらビルス達の旅の無事を祈った。

続いてオビ=ワンも彼に別れの言葉を送る。

 

「マスターウィンドゥ、マスターヨーダ、ヴァローラム元老院議長からも感謝の言葉を預かっております。『ビルス様に心からの感謝を伝えると共にこれからの旅の無事がフォースと共にあらんことを』との事です」

 

「ビルス様またね!」

 

「主よ、私はこの身朽ちるまであなたの僕です。ご用向きがあればいつでもなんなりと……」

 

アナキンとモールもそれぞれ別れの言葉言う。

 

「ありがとう。なんだか今までの旅の中で一番ノンビリで来た気がする。また気が向いたら来るよ」

 

「そうですね。また機会があれば」

 

ウイスはそう言うと杖をかざした。

塚の部分が輝きを放ち始め、光が二人を包む。

 

「それでは、さらばだ」

 

ドンッ

 

二人は一瞬で光の柱となって空のかなたに消えていった。

 

クワイ=ガン達はその空を眺めながらビルスによって与えられたこの思いもよらない平穏をいつまでも守り続けることを誓うのだった。




はい。これで「スタウォーズ編」終了です。
最後も半分説明形式でしたが、まぁなんとか当初の予定通り3話で完結する事ができました。

モール卿にはやっぱり生きててもらう事にしました。
筆者が好きなキャラというのもありますが……やっぱり死んじゃうには惜しい気がしたのでw

次の話はもう決まっています。
投稿はまた近いうちに、今月中? という感じですw
それでは!

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