破壊神のフラグ破壊   作:sognathus

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佐渡島のハイヴを攻略(飛ばした)ビルスはそのまま夕呼達がいる基地に戻るかと思いきや、そうはせずその場から動かずウイスに念派で通信をしてきた。
その内容は……。


第4話 突然の平和

「何だ!? 一体何が起こっている!?」

 

「分かりません。全く情報が……!」

 

「あああああああ、あれなんだよ!? あれ何なんだよ!? はあああああ!?」

 

怒号、悲鳴、焦燥、混乱あらゆる感情が篭った声が世界中で木霊していた。

それもそのはず、何故なら今彼らの空の上には……。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……。

 

 

ハイヴが浮かんでいたからだ。

 

ビルスは佐渡島のハイヴを排除したと後に夕呼に残りのハイヴはまとめて破壊すると確かに言っていた。

だがそれが、発言してから一分も経たない内に実行されるとは、当の本人である夕呼流石にも予想できなかった。

 

「これで全部か?」

 

『ええ、地図で確認したのは……はい、大丈夫です。残りはありませんね』

 

 

「そっか」

 

ウイスの確認を受けて、ビルスは自分が集めたいくつものハイヴを今度は地上から見上げていた。

ビルスは佐渡島の暇潰しをした後、ウイスに残りのハイヴがある場所を自分の意識に直接送るように指示をした。

そしてウイスが夕呼に教えてもらった個所を彼に伝え、それを認識したビルスは遠隔操作で今度はまとめてここまで持ってきたのであった。

流石に直径が数千メートルの質量の塊が空を埋め尽くす光景は圧巻であった。

それらの所為で本帝国の上空は全てハイヴで覆われ、その日は晴天であったにも関わらずその時は夜の帳が下りたかのような暗闇になっていた。

因みに無理矢理引っ張られてきたハイヴの中に潜むBETAは、ハイヴ全体がビルスによってボール状のエネルギーに覆われてしまってていた為、直接地上に降りる事も叶わない状態となっていた。

 

「さて、始めるか」

 

ビルスはそう呟くと集めたハイヴをその全てが視認確認できる位置の高さにまで更に上空へと上げた。

 

「よし」

 

ビルスは今度はまるでネジを締めるような仕草で親指と人差し指で何かをつまむ形を作り、それを回す行為を始めた。

 

ヴ……。

 

すると今度は集められたハイヴの中心に黒い点が現れ、ビルスの指の動きに合わせてくるくると回り始めた。

周りに浮かんでいたハイヴも次第に渦に巻き込まれるようにその黒い点の周りを回り始める。

ハイヴをまとめて包んでいた球体が徐々に縮小を始め、空間が圧縮されていく。

取り込まれたハイヴは回転する速度を徐々に上げていき、次第にその形を歪ませながら黒い点へと吸い込まれているように見えた。

 

『これは珍しく趣向があるやり方をしますね』

 

ウイスが珍しそうなものを見た顔でビルスに言った。

 

「こういう風に目に見える形でやった方が。怖く感じるだろうからな」

 

『ああ、なるほど。そういう……』

 

「頭が良い生物程恐怖を脅威と認識するからね。面倒だけど」

 

シュゥゥ…………ヴ……ッ

 

そして数分後、集められたハイヴは跡形もなく消滅した。

何の残骸も抵抗の跡すら残さずに。

半世紀以上にわたって地球を、人類を脅かし続けていたBETAとその巣窟は、こうしてビルスの手によって糸も容易く処理されてしまったのだ。

そのあっけなさは今までの人類の艱難辛苦の戦いの歴史が馬鹿らしくて思えてしつい笑いそうになってしまう程だった。

 

 

『ゆーこ聞こえるか? たった今この星にいた残りのベータをハイヴごと全部破壊したぞ』

 

夕呼の意識にビルスから通信が入ってきた。

夕呼はまだその方法に慣れていないものの何とか返事をした。

 

「え、ええ……」

 

夕呼は呆然としながらそう言ったものの、その返事は人類が未来への生存権をBETAから勝ち取ったにしては実に味気ないのないものだった。

しかしそれは無理も無い事だった。

ビルスが行った事は人類を地球上のBETAの脅威から救った事と同時に、彼女を含めて人類が今まで行なってきたそれこそ言葉では言い表せない程の懸命に生きようとした証を根底から嘲笑うようなものだったからだ。

 

それは彼女の隣にいたラダビノッド司令も同じだった。

未だに現実を受け入れられず混乱する頭を振って、何とか無理をして現状を確認しようとした。

 

「君、地上の……BETAの、ハイヴの存在はどうなっている? どんな端的な情報でも構わない。本当に奴らは消失したのか?」

 

「え……あ、はい! しょ、少々お待ちください!」

 

司令に指示を受けて一瞬で現実に戻ったオペレーターは、急いで国内国外の情報の確認を始めた。

 

 

そして数分後。

 

「司令、まだ正式のものではありませんが、確かに……確かに各国に存在していたハイヴとその周辺に展開していたBETAはその存在が確認できないようです」

 

「……それは本当か?」

 

「は、はい。あらゆる機関の上層部からはまだ直接的な返答はないようなのでその信憑性は流石に保証はできませんが。しかし、各国政府機関から確認できる反応は一様にBETAの存在が確認できないと言う見解では一致しているので恐らく本当に……」

 

「……何という事だ」

 

ラダビノッド司令は全身から力が抜けるのをどうにか堪えながらも、自分の口が緊張からカラカラに渇いて声がしゃがれてしまうのは隠せなかった。

 

「破壊神ビルス……」

 

夕呼はその言葉を改めて反芻した。

彼女はビルスが佐渡島のハイヴを天変地異じみた悪夢のよな方法で片付けた時からその力を疑う事をやめていたが、だがそれでもまだその時点では科学者としての興味を彼に抱いていた。

それは人類の今後の発展、未来、自身の知的探究心を満たす為に彼女が放棄する気もおきない科学者の性であった。

が、それも今のビルスの行いを見て興味を持つこと自体誤りであると自信を戒めるようになっていた。

彼はそういう対象ではない。

夕呼は神と言う存在自体、実体もなくその存在も証明できない抽象的で研究する価値もないものだと今までみなしていたが、この体験によって彼女にとって本当の神とはビルスが言うように自分がどう努力しても理解できない存在なのだとそう改めて納得して定義し、結論していた。

 

 

『そっけない返事だね。まぁいいさ、まだ太陽系にもベータは残っているみたいだしね。そいつらに関してはまた後で破壊してあげるよ』

 

「はは……そう。それは有り難いわね。取り敢えずお疲れ様。また戻って来てもらえるかしら?」

 

『いいだろう。これで美味い飯は食えるようになるんだよな?』

 

「ええ、少なくとも動物性たんぱく質に限っては、確保はしやすくなった筈よ。それに関しては今日中に私の全権限を使って可能な限り実現させてみせるわ」

 

『それは何よりだ。楽しみにしてるよ』

 

プツッ

 

そこでビルスとの意識への直接的な通信は途切れた。

 

「夕呼君、これからどうするつもりだね?」

 

ラダビノッド司令が夕呼に意見を求めてきた。

基地の総司令としては不甲斐なくも見えるがしかしそれも、これまでの行動の推移が全てビルス中心であり、加えて彼女が彼と最も交流し、有力な理解者として認識されていたので当然とも言えた。

 

「先ずは全力で彼の労を労う事を最優先とすべきです。次にその状態を保ちつつ、早急に内外との正式な状況の把握に努め、しかる後に国連で会議をすべきでしょう」

 

「……異論はない。その手配は任せてもらおう。だから君は……」

 

「ええ、お任せください。彼の対応をします。まだ個人的にいろいろ用もありますので」

 

「そうか、すまない。正直今この現実があまりにも突然過ぎて私もまだ少々混乱している。……祝杯をあげる気にもならない」

 

「それは無理もありませんわ。周りは私たち以上に状況を理解しきれていませんもの」

 

「うむ……。取り敢えず人類の危機を脱した祝杯は後ほど事が落ち着いたあげるとしよう」

 

「同感ですわ。こんな味気ない勝利と結末、今直ぐに受け入れろと言うのが無理ですもの……」




一カ月以上放置してすいませんでした。
そしてその割には内容が薄くて申し訳ないですorz
流石にこれ以上手つかずにはできなかったので。

世界的にめでたい事が起きたと言うのにそれよりもビルスの腹具合を心配する夕呼と基地の人々は同情に値すると思いますw

次はいろいろ基地でハッピーなイベントを展開しつつ、ビルスのBETA及びそれの創造主に対する認識や地球外のBETAに対する対処ですかね。
多分後二話くらいで終わります。

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