破壊神のフラグ破壊   作:sognathus

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宇宙の彼方、地球のある太陽系とは別のどこか。
そこにある惑星のひとつに地球など比較にならない程の巨大な星があった。
その星にも今の地球を支配する人類の様に文明を築き支配する生命体がいた。


第5話 一瞬の平穏

生命体はある観測報告を訝しんだ。

 

『畑に送った機械が消えた』

 

彼らはビルスが居る地球にBETAを送った創造主であった。

創造主が畑に種を蒔く様にBETAを星々に送るのは、それは人間が作物を作るのと同じ。

彼らもBETAを使って星そのものを農耕し、自分たちが必要とするものを収穫する為であった。

 

故に彼らにとってはその星に元から存在してる生命体はただの邪魔な存在でしかなく、害虫とすら認識していなかった。

BETAという地球を今まで危機に陥れていた地球外生命体は彼らにとっては謂わば耕運機であり、攻撃を受けていた人類は耕運機に除去される石ころと同じであった。

 

その石ころを除去していた機械の反応が忽然と消えたというのである。

先住している生命体の意思に関係なくBETAを星々に送っている彼らにとって、送った先でBETAが先住していた生命体の抵抗に遭い作業が遅れることなど常であった。

故に稀にその抵抗が成果を出し、BETAが星から消えたとしても驚く事はない。

その星の近くにある開墾し切った星のBETAの指揮官(重頭脳級)がいずれそれを察知し、新たにBETAを送ればいいからだ。

 

だが今回はそれを察知する間もないくらい忽然と消えてしまった為、その異常性から創造主に直接報告が来るという事態となっていた。

正直言って宇宙というものは広い、人間にとっては無限とも思える世界だ。

そんな空間に存在するちっぽけな星一つに送った機械が無くなったくらい彼らにとっては痛手でもなんでもなかったが、この異常事態は見過ごせなかった。

故に創造主は行動を決断した。

直接状況を確認する為に。

 

 

 

場所は変わって、そんな事は知らないどころか元より興味もないビルス達は基地の一室で夕呼が用意した感謝の意を楽しんでいた。

用意された物は食事。

メニューは紛れもない本物の鶏を使ったチキンステーキと、無農薬野菜のサラダ、そしてワカメスープといった地球を救ったにしては余りにどころか、比較すること自体が失礼と言えるほど控えめなお礼だった。

 

だがそのメニューは実は、基地の幹部の人間でも滅多に口にする事は無い程の贅沢なメニューだった。

BETAの侵攻によって食料自給率が落ちた日本にとって天然の素材を確保するのは他の国より極めて困難な状況となっていた。

それが先日のビルスの活躍により地球上のBETAが一掃される事によってその脅威がなくなったので、夕呼は約束した通り自分の全権限とツテを使って基地の人間でなく、政府や地元の人間にまで協力を仰ぎ、日本全国を駆け回らせてこの食事を用意したのであった。

 

ハッキリ言って味は、ビルスがサイヤ人が居た星で食べたごちそうと比べたら可も不可もないものだったが、それでも一応は彼女の誠意は伝わったらしく、ビルスは特に文句も言う事なく黙って食べていた。

その部屋にいたウイスを除いた唯一人の人間を除いて。

 

「もぐもぐ……しかしアレだな」

 

「どういたしました?」

 

「いや、ここの人間ってさ。何か今まで見てきた奴らと違って妙に堅苦しい、いや? 重苦しいかな? そんな感じだよな」

 

「ああ、そう言われれば確かに。しかしまぁそれも仕方がない事だと思いますよ」

 

「ん? なんでだ?」

 

「ここの星の方々は今まで訪れた星で出会った方々と比べて取り分け苦労されてきたみたいですからね」

 

「ふむ……? ベータの所為か?」

 

「そうですね。私の見立てでは、あのままいけば遠からずここの人類の方たちはベータに負けていたと思います」

 

「まぁそれは確かにな、もぐ」

 

「あの、それ私のチキンだったんですが」

 

「お前さっき食ったろ」

 

「私が食べたのはトマトですよ!? どうやったらチキンとトマトを間違えるんですか!?」

 

「……もぐもぐ」プイッ

 

「ビルス様ひどい!」

 

「……あのー」ムスッ

 

この部屋でビルス達に同席している唯一の基地の関係者、白銀武が不機嫌そうな顔で口を挟んできた。

 

「ん? どうしたたける? そのチキンいらないのか? だったら僕が……」

 

「ビルス様それひど過ぎです! たける君のも貰うならそこは私に譲るべきでしょう!」

 

「そういう事言ってるんじゃないです! なんですこれ!? いろいろあって起きたら目が覚めたらまたいろいろしてやろうと思っていたらBETAはもう地球からいなくなりましたって! なんか僕だけ取り残されたようで馬鹿みたいじゃないですか!」

 

「それは事が起こってる時に起きなかった君が悪いんじゃないか」

 

「僕の意識をすっ飛ばしたのはあなたでしょう!?」

 

「いえ、それ私なんですけど」

 

「まぁ、お蔭でいろいろと成長したみたいだし。良かったんじゃないの? それでもまだ君は僕に文句言うのかなぁ?」ジロッ

 

「う……それは、まぁ……」タジッ

 

武はビルスに痛いところを突かれそれ以上文句を言えなかった。

彼はビルスが基地に戻って程ない頃に意識を回復し、ウイスの術によって得たすべての記憶、経験、知識によって昏倒する前と比べて別人に更に人間的に成長を遂げていた。

桜花作戦、それによって果てるはずだったかけがえのない人たち……。

そしてその中に含まれていた鑑純夏。

武は、あの液体に満たされた容器の中に保存されていた脳が自分の恋人である鑑純夏だという事も既に理解していた。

彼女がまた前と同じように自分と触れ合うには00ユニットという仮初の器と呼べる身体がいるという事も、そしてリハビリが必要だという事も……。

全ての事実を知った上なので意識を回復してからも武は夕呼を攻めるような事は決してしなかった。

寧ろ彼女を生かしてくれていた事を感謝し、そして女性と科学者の間で苦悩していた夕呼の苦労を理解する事によって、逆に夕呼のこれまでの苦労を武なりに労ったりまでした。

 

夕呼はそのすっかり大人になった武の態度に呆気にとられ、終始言葉を出す事ができなかったが、最後に彼が改めて自分に礼を言うと少し顔を赤らめて(気の所為かもしれないが)珍しく素直に笑顔で応じた。

その光景を背後で見ていた冥夜達は明らかに惚れ直している様子だった。

彼女達もまた武の人間的な成長を目の当たりにする事によって、新たに恋心を燃やしてしまったらしかった。

勿論彼には純夏という大事な女性がいることは理解していたが、それでも堂々と勝負して負けを認めるまで諦めないとその場にいた全員は密かに心に誓っていた。

 

「ま、まだやる事はあるしね。太陽系にもまだベータはいるみたいだし、そいつらも破壊しない事にはここも完全に安全になったとは言えないだろうし」

 

「えっ、そ、そこまでやってくれるんですか!?」

 

「そうしないと今食べている以上に美味いチキンが食えないみたいだからね」モグモグ

 

「結局は食べ物ですか……」

 

ウイスが呆れたようにため息を吐いた。

 

「楽しみと言ったらこれと戦うことくらいしかないからね。寝るのは半分作業みたいなもんだぁ……にゃぁっ?」

 

「ビルスさんありがとうございます! ありがとうございます!」

 

武はビルスの言葉に感激してその手を握り何度も彼の手を振った。

その感激振りにウイスは温かく微笑んでいたが、ビルスは若干引いていた。

 

「熱くなって叫んだり涙流して感謝したり騒がしい奴だな……ん?」

 

 

シュッ

 

その時部屋と扉が開き、ラダビノッド司令と裕子が入ってきた。

 

「失礼する。ビルス殿、ウイス殿、お食事楽しんで頂けてるかな?」

 

「楽しんでいるに決まっているでしょ。どれだけ苦労したと思っているのよ」

 

落ち着いて鷹揚に言う司令に対して夕呼は少し不機嫌そうに言った。

どうやらまだこの食事を用意するのに使った疲れが抜けてないらしい。

 

「まぁまぁだよ。少なくとも最初に食べたあの変な肉よりかは大分マシだ」

 

「はは、それは何よりです」ニコッ

 

「ふん……」

 

「せ、先生……」

 

「……ビルス殿」

 

ビルスの反応に笑って応じていた司令がふと真面目な表情になって言った。

 

「ん? なにかな?」

 

「これは公式なものではありませんが、烏滸がましい事を承知で申し上げます。全人類を代表してこの横浜基地司令官国連軍准将、パウル・ラダビノッド、改めてビルス殿に地球の危機を救って下さった事に厚く御礼申し上げます」

 

司令はそう言うと深くお辞儀をした。

後ろに控えていた夕呼もそれに倣い、それを見ていた武も慌てて隻を立って、頭を垂れた。

それだけでない、その様子をモニターで見ていた司令部の人間も離れた指令室からモニタ越しにお辞儀を、あるいは敬礼をビルスに贈った。

 

それに対してビルスは少し鬱陶しそうに手を振りながらも気は悪くしていない様子で応じた。

 

「ああ、そう畏まらなくていいって。別にあのくらい僕にとっては雑草を抜いたようなものだから」

 

「ざ、雑草……ですか……」

 

司令はその言葉に流石に唖然とする。

自分たちが散々辛酸舐めさせられてきたBETAを目の前の異形の物は、それを排除したことを雑草の除去と同列だと言ったのだ。

 

その動揺の仕方に流石にウイスも気を遣ってこう注釈してきた。

 

「あまりお気になさらないで下さい。本当にビルス様にとってはそのくらいの感覚で、あなた達に配慮する考えも浮かばないくらいの事だったんです」

 

フォローになっているのかどうか分からなかったが、司令はウイスの言葉を受けて苦笑いしながら感慨深げに言った。

 

「なんと……副指令からは聞いていましたが、貴方は本当に神なのですね。ふむ……並ぶどころか及ぶことすら叶わない事が決まっている存在……。なるほど、それならあの行いをそう断言されるのも納得できます」

 

「そうだよ。だからあんまり余計な事は考えない方がいい。僕の機嫌さえ損ねなければこの星には何もしないからさ」

 

「……あなたは人間と言うものもよく解っていらっしゃるようだ。分かりました。そのお言葉深く我が身に刻んでおきます。そしてそのような事が起こらない事もこの場で確約致します」

 

「……それが賢明でしょうね」

 

夕呼が感情が籠ってない声で同意した。

何があっても干渉できない、夕呼にとってビルスと言う存在は既にこの時点で興味の対象から外れていた。

 

「それで、次になんだったかしら? 地球外のBETAも片付けてくれるんだっけ?」

 

「まぁね。それもすぐやってあげるよ。でも、ああそうだ。またウイス話があるってさ」

 

ビルスがそう言い終わると、ウイスが微笑みながら武の方を見て口を開いた。

 

「武さん」

 

「あ、はい。俺ですか?」

 

「ええ、そうです。もし、宜しければあなたの恋人の方、元の姿に戻して差し上げますが?」

 

「え!?」

 

「……っ」

 

その言葉に武が目を見飛以来て驚愕し、夕呼も武ほどではないが明らかに動揺して声を貰いそうになった。

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「ええ、あなたに術を掛けた際に私もあなたの記憶を垣間見てしまった事に対するサービス……いえ、償いですね。これでゆるし……おっ?」

 

ガバッ

 

「お願いします! ほ、ほんとに……おねが……ありが……」

 

ある意味武がこの世界に来た本当の目的とも言えた。

その本懐が遂げられようとしている事に、武はついに感激のあまりまだ純夏が元に戻ったわけでもないのにその場に感謝しながら泣き崩れた。

 

「ほほ、分かりました。そんなに感謝されなくてもいいですよ。では後ほど」

 

「……」

 

夕呼はその様子を複雑そうな表情で眺めていた。

その時……

 

ガチャッ

 

「申し訳ございません! 失礼します!」

 

伝令と思われる兵士が血相を変えてノックも無しに部屋に入ってきた。

どうやら火急の報せの様だった。

 

「どうした? 何か?」

 

司令が冷静な表情で落ち着いて尋ねる。

尋ねられた兵士は尚も動揺を隠せずに落ち着かない様子で答える。

 

「う、宇宙……ち、地球の近くに未確認の物体が……!」

 

BETAが地球から一掃されてまだ間もないと言うのに、新たな危機は予兆もなく突然現れた。




いい感じにまとめられそうです。
恐らく次で最後です。
ビルス様がんば……いや、程々に。
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