破壊神のフラグ破壊   作:sognathus

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短いので次に投稿する話と合体させるかもしれません。


第13話 イリヤのお願い

「うわっ、なんだこれ」

 

先ほどの悲鳴の主がどんな者かふと気になったビルスは、バーサーカーのマスターの元に行って彼の姿を確認するなり思わず吹いていた口笛をと切らせ怪訝な顔をした。

バーサーカーのマスター(間桐雁夜)は目に見えて瀕死の状態で、その様はビルスからすれば既に破壊され朽ちるのを待つだけといった具合であった

間桐臓硯によって刻印蟲を仕込まれたその身体はボロボロで、バーサーカーの現界維持の役目を何とか果たしながら僅かに運動機能を保持しているだけ。

よくまぁこんな状態でまだ生きていられるものだとビルスが呆れた顔で彼を眺めていると、ちょうどその時にイリヤがアーチャーを除いたその場にいた者達を引き連れてやって来た。

 

「ん? なんだお前達、戦ってたんじゃないのか?」

 

「今宵はいろいろあり過ぎて興が削がれたのでな。それにイリヤ(レディ)から受けた願いもある」

 

「はぁ? レディ?」

 

こいつ何言ってんだと無い眉を吊り上げた表情をビルスはしたが、ランサーにエスコートされているかのように手を繋いでいたイリヤを見て直ぐに察した。

 

「おいお前、また助ける気か? 無駄だと思うけどコイツは……」

 

「ランサー、今回の闘い、勝者は誰かしら?」

 

「は?」

 

唐突に敵対していた相手にイリヤが放った言葉にビルスは思わず訊き返す。

しかしそんな言葉をかけられたランサー(伊達男)恭しくイリヤの手を取りながら跪き、頭を垂れて返事をした。

 

「それは勿論セイバー、キャスターのマスターであるレディ(イリヤ)で御座います。虚を突かれ、まともに抗することができずに瀕死になった者へ賜った温情、このランサー痛く感服いたしました。そしてこの、ますます混迷せんとする場において、尚も再び傷ついた者を助けようとなさるその慈愛と度量、その揺るがぬ個を貫くお姿は間違いなくこの場の支配者、つまり勝者であると私は確信しております」

 

「うん」

 

何ともくどく長い口上であったが、それはイリヤの自尊心を十分に満足させたらしい。

彼女はふんすと聞こえてきそうな自信に満ちた顔でビルスをみやると「どう? 文句はないでしょ?」とでも言いたいように勝ち誇った笑顔を見せた。

しかしビルスも負けてはいない。

彼は意地悪い顔をしてイリヤに「で、どうやってアイツを助けるんだ? 残念だけどアイツは手の施しようがないぞ」と言った。

 

「えっ」

 

この言葉を聞いたイリヤは焦った様子で直ぐに傍らのランサーに目で助力を求めた。

気遣いに長けたランサーはその意を難なく汲み、速やかに既に虫の息になりつつあった雁夜に近寄って救命をしようと試みたが、直ぐにビルスの言葉が真実であることを悟った。

 

「これは……」

 

雁夜の惨状に渋面するランサー、その表情はまるで伝播するように彼の後に付いてきた面々へと移っていった。

その重苦しい雰囲気にイリヤも何かを感じ取って、雁夜を見る者達と彼を交互に見返しながら誰かが少しでも希望が持てる言葉を言ってくれないかと期待したが、残念ながら皆の答えの内容は大方共通していた。

 

「イリヤ、これは……。彼はもう自分の命すら保つのも無理です。あそこで消えかけているバーサーカーの現界を維持する為に魔力を吸われているのもありますが、最早魔力の供給(パス)を切ったとしても手遅れでしょう」

 

「うん、そうだなこれは……」

 

「余も同じ見解だ。ここは速やかに楽にさせてやるのが情けかもしれんぞ?」

 

「そんな……っ!」

 

皆の悲しい答えを聞いた途端に目をうるませショックを受けるイリヤ。

ついには彼女は虫が良い事だとは自覚した上で、ビルスのズボンを掴みギュッと抱きつく。

 

「嫌だぞ?」

 

「……お願い」

 

「嫌だ。それにアイツを助ける事になんの意味があるんだ? 僕がふっとばしたあの黒いのはなんか話が通じなさそうだし、コイツだってそうだ。コイツ、死にかけているけど執念みたいなものが消えていない。軽い考えで助けるのは間違いかもしれないぞ?」

 

「…………」

 

その言葉にイリヤは俯いたままビルスから手を離すと、呻く雁夜の元に近付いてかがみ込み、痙攣するように震える彼の手を自分の小さな両手で握った。

瀕死ではあったが自分達を襲ってきたサーヴァントのマスターに対する警戒心からイリヤを引き離そうとセイバーが動こうとしたが、それをランサーが手で制した。

目で強く抗議するセイバーであったが、それに対してランサーは彼女に自分のマスターを信じろとでもいうように真剣な表情で見返す。

勿論彼も何か不穏なものを感じ取れば直ぐにイリヤを助けるつもりだった。

そんな様々な思惑や行動がされる中、渦中の人物であった間桐雁夜は、もう自分の間近にいる者達の存在すら感じ取れなくなっていた。

既に視界もぼやけ、痛みに抗しながら同じく死にかけているバーサーカーへの魔力供給も生命の限界から途切れようとした時、彼は不意に自分の手に小さな温もりを感じた。

その感触と大きさと温かさは、彼が命を捨ててでも助けたいと願うとある少女の事を思い出させるのに十分なものだった。

故に彼は思わず、そして何処か救われるような心地でつい口にした。

 

「…………桜ちゃん…………か……?」

 

普通に考えればそんな事はあり得ないという事は分かり切っていた。

けどもしかしたら、自分の予想もつかない奇跡でも起こって、今こんな情けない姿を晒している自分を心配して彼女が涙で顔をグシャグシャにして駆け寄っているのかもしれない。

もしそうならどんなに良いことか。

夢にしても最期に見る夢にしては……。

 

いや、夢では終わらせたくなかった。

だから彼はもう一度口にした。

息を吸い込んで自分の無力をせめて侘びて無念の裡にせめて無様な姿で彼女に侘びたかったから。

 

「さくらちゃ……ご……」

 

「ビルス様、お願いします。助けて下さい」

 

「…………」

 

初めて見るイリヤの真剣な眼差しにビルスは僅かに目を細めた。




やっと出した fate の続き。
とか言いながら話は短く、続きと合体させるかもしれないとか、こんな短い話を投稿して活動報告で言った事を守ったつもりなのか思われそうですが、誠に申し訳ない。
それでもちょっとはモチベ上がってきたので。
もう今月も僅かですが、言ったことは……善処します。orz

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