破壊神のフラグ破壊   作:sognathus

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女性キャラ三人一度も出ません空気です


第3話 初めて感じる自分に優しくない展開:始

冬夜はウイスに自分達がビルスの元を訪れた理由を話した。

目的だけ聞けば自分達を害する為に来たとも言えるのに冬夜の話を聞くウイスの顔は常に穏やかで決して途中で表情を曇らせるということもなかった。

 

「――というわけなんです」

 

「なるほど、よく解りました」

 

「ご理解が早くて助かります。それでなんですが、いくつか僕から確認を取らせて頂きたいんですけど……」

 

「ああ、先ず私達が誰かに迷惑を掛けているというのは誤解ですよ」

 

「え?」

 

「確かにこの状態はビルス様によるものですが、こうなったのにはちゃんとした理由があります」

 

「と言いますと?」

 

ウイスは自分達が山賊紛いの山師の集団に襲われた事を話した。

そしてそれに対してビルスが行った事も。

 

「さ、30人を全員ですか……」

 

「正確には28人ですが、ええ皆さんこの通り」

 

明らかに擁護できない者たちだったとはいえ、それでも人間の集団を一瞬で砂に変えてしまったという事実にあっさりとそうだと認めるウイスのドライさに冬夜は柄にもなく久しぶりにゾクリとした。

 

「う、ウイスさん、貴方は先程あちらのビルスさん? の付き人だと言ってましたよね? なのにアイツ……あの人がやろうとした事を全く止めなかったんですか?」

 

「ええ、今回は特にそうする理由もありませんでしたので」

 

「…………っ」

 

冬夜は自分も正当防衛や報復に関しては苛烈なところがあるのは実は密かに認めていた。

だが今目の前にいる男と彼が仕えている人外のように最初から与えるペナルティが砂に変えてしまうという死ありきの制裁はしたことがない。

確かに最終的には無残な結末に至るであろう制裁は自分も行ってきた。

だが自分の場合はそこに至るまでの過程と動機があったし、直接手を下して死を与えた者に対しても迷いこそなかったが決して気持ちの良いものではなかった。

だというのにこの二人は圧倒的な強者でありながら非がある者であったとはいえ、一切の迷いも躊躇もなくこの世から消滅させるという選択を多数の人間に速攻で下したのだ。

 

(やはりこいつらはどうにかしないといけないかもしれない……)

 

冬夜は次の行動の方針を内心で徐々に固めつつ今度はウイス達自身のことを知る為に彼に訊いた。

 

「そ、そうですか……。あ、えっと、話を急に変えてしまって申し訳ないのですが、今度はウイスさん達について質問してもいいですか?」

 

「どうぞどうぞ」

 

会話の主導権を握られ続けていることを特に気にしたようすもなくウイスは微笑んで先を促した。

 

「ありがとうございます……えっと、じゃあ……ちょっと話の内容の一部が前と重複してしまうんですが、ウイスさんはあそこのビルスさんの付き人、つまり従者ということなんですよね?」

 

「ええ、そうですよ」

 

「ということは当然ビルスさんは目上の方というわけで……。あの、ビルスさんとウイスさんはつまりどういった方なんですか?」

 

「貴方がここに来た理由にあった破壊神を名乗る魔物の討伐ですが、破壊神というのは冗談でもなんでもありません本当のことです。つまりビルス様は本当の破壊神で私はあの方のお世話をして付き従う従者です」

 

「……なるほど、本当に神様ということなんですね。あの、ウイスさん、実は僕も神様の何人かと知り合いなのですが、その中に破壊神はいません。一番偉い神様からも破壊神の方がいるとは聞いたことがないわけなんですが、まぁそれはともかくとして、つまりビルスさんが本当に破壊神というのなら彼も僕が知識で知る上級神の一人という事で宜しいですか?」

 

「上級神ですか、そうですねー……。確かにビルス様は偉い神様ですが先ず貴方が仰ったような上級神にはビルス様は含まれません」

 

ウイスの言葉に冬夜は内心安心感からほくそ笑んだ。

 

(良かった。やっぱり神を名乗ってはいても言い方から察するに従属神か良くて下級神止まりだろう)

 

そう彼が浅慮していたところで次の言葉が冬夜にこの世界に転生してから一番の衝撃をもたらした。

 

「ビルス様は貴方の認識の範囲にある神ではありません。あの方は決して並ぶ者はいない唯一無二の破壊神で、ビルス様と同格の神は破壊とは対の創造を司る界王神様だけです」

 

「え……?」

 

この時冬夜はウイスの言葉の意味がはっきり言って全く理解できなかった。

何故なら彼の言葉が真実なら自分を転生させ、ここまで強くしてくれた彼が知る神々の頂点に座する創造神より上の存在という事になるからだ。

 

「え、えっと……あの、それって……あ、あはは」

 

(参ったな。ちょっとこの人の話に着いてこれない。取り敢えずもう自分では正確な判断が難しくなったから直接神様の助けを借りよう)

 

冬夜は軽く動揺し混乱しかかった頭で彼が持っている中でも最高の手札を切り、取得する情報の精度を上げることにした。

 

「すいません、失礼しまた」

 

「いえいえ、大抵皆さん最初はこういう反応をされますから。お気になさらないでください」

 

冬夜はここにきて話の主導権を握られているのに自分からそれを握ろうともせず、かといって常に落ち着き余裕を崩さないウイスの態度に劣等感から若干疎ましさを無意識に感じるようになっていた。

 

「……あのウイスさん、もし良かったら一つお願いをしたのですが」

 

「はい? なんでしょう?」

 

「僕、本物の破壊神にお会いできた事に流石にちょっと感動してしまいまして。良かったらウイスさんも一緒に入って頂いて僕の、これスマホって言って……」

 

「ああ、知ってますよ。結構使ってる人いますね。そういえばブルマさんも使ってましたねぇ」

 

「ブルマ……? ま、まぁ取り敢えずご存知でしたら結構です。で、良かったらこれを使って記念にお二人の写真を撮らせてもらいたいなぁって……ダメ、でしょうか?」

 

「ああ、そういう事ですか。ええ、私は構いませんよ。ただビルス様は今寝ていらっしゃいますからねぇ……。ちょっとお待ち下さい」

 

ウイスはそう言うと再び浮遊してビルスの元に戻ると彼に話しかけ、どうするか反応を待った。

冬夜はその間に密かにカメラモードにしたスマホにエンチャントの魔法で『サーチ』をかけ、写真を撮った時に画像から自分なりに詳細な情報を得られるように準備を行った。

 

 

「んにゃ……僕の写真……? んー……なんか妙な奴だと思っていたけど、意外に機嫌を取るのは上手いじゃないか。ん、いいよ。それくらいだったら応えてあげよう。僕一人でいいぞ」

 

「ビルス様酷い! せっかくできれば二人でとお願いしてくれているんですからここは二人で写りましょうよ」

 

「なんかお前が嬉しそうだと面白くないんだよなぁ」

 

「性格悪いですよ」

 

「うるさいっ」

 

そんな感じのいつものやり取りを行った後、ウイスはついに目を覚ましたビルスを伴って冬夜の前に降り立った。

 

「お待たせしました。オーケーですよ」

 

「ありがとうございます! それじゃ早速よろしいですか?」

 

「いいよー」

 

「同じく」

 

「いきますよー。3・2・1……」

 

「ピース」「ぶいっ」

 

 

曰く世界唯一無二の破壊神と神の付き人の二人の笑顔のピース写真という何とも言えない画像を保存した冬夜は早速先ずはスマホを使って情報を調べようとした。

 

『提供可能な情報なし。お使いの端末、及び付与されている力による検索対象への干渉は不可能です』

 

「……」

 

予想だにしないスマホの完全協力拒否のメッセージに冬夜は驚きに目を丸くした。

 

(なんだこれ……。せめて少しは情報を得てそれを神様に送って相談したかったんだけど……これじゃ仕方ないな)

 

冬夜は溜息を吐くと浮かない気分で神様宛の通話ボタンを押した。

 

『おー、冬夜君か。どうじゃそっちの様子は?』

 

「それがあまり進展がなくて困ってしまって……。僕のスマホじゃ何も判らなくて、すいませんけど今から送る画像を見て頂けますか?」

 

『なに……? 君のスマホが役に立たなかったのか……?』

 

この時、神様はほんの僅かだが何故か嫌な予感がした。

ともあれ可愛い孫のような存在の冬夜の願いである。

そんな予感を感じたからと言って無碍に断る気になど到底なるわけもなかった神様は、再び電話口の向こうですいませんと謝る冬夜に慮る返事をするとピロリンというデータ受信音と共に送られてきた画像を見た。

 

『………………』

 

無言だったが冬夜は電話の向こうで神様が息を飲み、彼の雰囲気が変わったのを感じた。

 

「あの、神様どうしました?」

 

神様の耳にはもう冬夜の言葉など届いていなかった。

スマホを握る彼の手は恐怖とも焦りとも判らぬ感情に震え、全身に脂汗をかいていた。

正直、ビルス一人ならまだ何かの見間違いだと一瞬でも現実逃避をしただろう。

しかし彼の付き人であるウイスも一緒に写っていたとなると話は別、というより間違いなく本物であり今起こっていることが現実だということを実感させられた。

 

『……冬夜君』

 

「え……は、はい?」

 

今まで神様の穏やかの声しか聴いたことがない冬夜は初めて聴く彼の重く真剣な声に思わず唾を飲み込んだ。

 

『この画像に写っている方々は今、其処にいるのかね?』

 

「は、はいそうですけ……」

 

最後まで言う前に今度は若干焦りを感じる神様の声が訊いてきた。

 

『何もしていないね?』

 

「え?」

 

『この二人、いや、この見た目が人間でない方の御方には何もしていないね? 何か失礼なことをして不興を買ってなどはいないね?』

 

「え? え? あの、かみさ――」

 

『質問に答えなさい』

 

「……特にこちらからは何もしていません。機嫌も特に悪いようには見えないと思います」

 

『うむ、そうか。じゃあ直ぐにそっちに行くから、君はそのお二人に以降も決して失礼のないように細心の注意を払いなさい。いいかね? 解ったね?』

 

「は、はい……分かりまし……」

 

冬夜の耳に通話が切れるプツッという音が響いた。

神様はどうやら自分の返事を最後まで聞く前に通話を切ったようだった。

 

「…………」

 

冬夜はこの世界で最も慕っていた親代わりのような存在に初めてあのように厳しい態度で接せられ、言葉では言い表せられない程のショックと何とも言えない惨めさを感じるのだった。




話が作り易い感じは相変わらずなので次ももしかしたら早いかも
5月中には(?!)

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