破壊神のフラグ破壊   作:sognathus

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細かな導入部分もなくいきなり始まります



「転生したらスライムだった件」編
第1話 神と神(?)


誰も居ない荒野でリムルは一人の破壊神と対峙していた。

彼は言った「僕はビルス、破壊神だ」と。

最初こそリムルはその言葉をウケを狙った単なる冗談と思い吹き出す仕草をしたのだが、ビルスが「では証拠を見せようか」と申し出てくると自分の態度が彼を不快にさせてしまったと思い謝ろうとした。

しかしその自称破壊神はリムルの謝罪に応じでも拒否するでもなく「別に気にしてないから気分転換に闘わないか」と妙な提案をしてきた。

 

彼と出会ったのはただの偶然で、ビルスが美味しいものが食べたいと付き人らしき男にダダをこねていたその側を偶然通りかかったリムルが見かけ、それならうちでとびきりのものをご馳走しようと声を掛けたのだ。

そんな出会いを祝う宴の雰囲気を壊したくはなかったので、リムルはその提案をやんわりと断るのだが、続いて出てきた破壊神の言葉に少し心を動かされた。

 

「君は凄い力を持っているね。正に神そのものと言えるほどだ」

 

「……何を言っている?」

 

不意に自分の力に探りを入れるような言い方をしてきたビルスにリムルは表向きは平静を装いながらも、裡では自分の最古の相棒にして最も頼りになる存在、シエル先生に警戒しろと呼びかけていた。

しかしそこでリムルは腑に落ちないとある疑問に気付く。

 

(いつもだったらシエルの方から俺に警告してきそうなもんじゃないか……?)

 

その疑問を見透かしているようにビルスはリムルに言った。

 

「おい、今は僕と話しているんだから僕を見ろよ」

 

「!」

 

この言葉にリムルは全身に電気が走ったような衝撃を受ける。

さきほどのリムルからシエルへの問い掛けは、圧縮された時間という通常の生物では認識できない刹那の中で行ったものだ。

しかしビルスはそれを確かに認識しているようだった。

しかも自分しか認識できないはずのシエルへの問い掛けにまで気付いているようだった。

 

(えっ、コイツ俺の中のシエルの存在に気付いている?! シエル!シエル教えてくれ! コイツは一体なんだ?!)

 

『申し訳ございませんマスター……。そのご質問にお答えてできる明確な言葉を私は持っていません。恐らくこれは、あのビルスという者がマスターたちが存在する世界の理に含まれないのが原因かと思われます』

 

(なっ)

 

初めて聞くシエルの無念そうな声にリムルは目を見開く。

彼は虚空之神(アザトース)という空間や時空、果ては宇宙を創造までできる、ビルスの言う通り神そのものと言っても差し支えがない力を持っている。

しかしこのシエルの言葉から察するに、彼女の言葉通りならビルスはそのリムルの力が及ばない者という事になる。

 

(俺やシエルの力が及ばないかもって、それじゃコイツは一体何処から来たっていうんだよ……)

 

「おい、いい加減にしろよ」

 

このシエルとのやりとりも時間にして0.1秒にも満たない一瞬だったのだが、それもビルスは認識していたらしい。

ビルスの少し不機嫌そうな声がリムルの意識を今度は真っ直ぐにビルスへ向けさせた。

直接自分達の声が彼に届いていたかは判らないが、少なくとも意識が自分以外にも向いていた事にはビルスは気付いている様子だった。

 

(こりゃちょっと……今までで一番厄介なことになりそうだな……)

 

そういうわけで二人は今、取り敢えず大事になるかもしれないからというリムルの提案で、何かあっても被害があまり及びそうもない荒れ地へと来ていた。

因みに移動自体はビルスの付き人を名乗るウイスという男が謎の技で一瞬でここまで自分達を運んでくれた。

おかげでリムルは改めてビルスとウイスの二人が、シエルの言う通り少なくとも自分が認識できている世界とは別の所から来たという認識がはっきりと持てた。

リムルの仲間たちは居ない。

彼らを巻き込みたくないというリムルの希望は叶ってはいたが、なにより高速思考を用いた二人の間で発生した展開が急過ぎて誰も事態をまともに把握できていなかったのだ。

 

(こりゃ帰ったら皆にどやされるだろうな……)

 

リムルは頭の中で特に自分に不満を漏らしそうな者の顔を思い浮かべながら苦笑すると、小さく息を吐いて正面からビルスに向き合って彼に問い掛けた。

 

「それでビルスさん、一体何がお望みなんだい?」

 

「そんなに身構えなくていいよ。君は僕に良くしてくれたしね。嫌な奴でもなさそうだ」

 

「でもさっき闘わないかとか何とか言ってたよね?」

 

「ああ、それは相手の力量を知るのにはそれが一番手っ取り早いからね。ただ僕としても今回はやりたくてこんな提案をしたわけじゃないんだ。できたらあっちでそのまま美味しい食事を続けたかった……」

 

「はぁ……」

 

こんな所にまで自分を連れてきたというのに、妙に気だるげな態度をビルスが見せたのでリムルも顔をしかめる。

 

「あのー……じゃあ何もなしってことにしない? お互い力を持っている事は分かりましたよって事で、後は戻って皆で楽しくご飯を食べて終わりにしよう!」

 

本当はその通りに事が進んだら彼に対する今後の警戒も兼ねていろいろと考えるつもりだったのだが、惜しくもそんなリムルの心中を知ってか知らずか、ビルスはそこはハッキリと却下した。

 

「それは駄目だ。君は神に等しい力を持っているのに神ではないし、にも拘らず世界の創造と破壊どっちも好きにできるというのは、神である僕としては見過ごせないんだよ」

 

「は、はぁ……」

 

「神がするのは創造か破壊かどちらかだけだ。その力をよりによって2つとも世界規模で好きに使われると……」

 

そこまで話したところでビルスの雰囲気から張り詰めたものをリムルは感じた。

彼はそこで話を区切ったように見せてささっとリムルに近寄ると、秘密話をするような態度でリムルにこう耳打ちしてきた。

 

()()()()怖い方に目を付けられるかもしれないんだよっ」

 

リムルはその時見たビルスの顔を生涯忘れることはなかった。

彼のその時の表情からは明らかに誰かに対しての切羽詰まったような強い畏敬の念が感じられ、今回の彼の突然のこの提案がただのいい加減な思いつきや嫌がらせから来る行動ではない事を察せられた。




終わってない話が2章あるのにまた新しい話……
スイマセン迷走してます
でも書けるとき書かないと自分は駄目な部類な人間なので

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