破壊神のフラグ破壊   作:sognathus

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パァーン!!

乾いた銃声が聞こえた。


「クレヨンしんちゃん」編
第1話 お稲荷様


ビルスが音がした方向を見ると、なにやら古風な鎧を着た男が馬上から滑り落ちるところだった。

撃たれたのはその男らしい。

 

「おじさーん!!」

 

続いて子供の悲痛な声が聞こえた。

5歳くらいだろうか、丸い頭と餅の様な柔らかそうな頬が特徴的な少年が先程落馬した男に走り寄っていた。

どうやら撃たれた男の子供か知り合いらしい。

男は息絶え絶えの状態で、死が目前に迫っていたのはビルスからは直ぐに判った。

 

「あの男性もう死にそうですね」

 

判り切った事を隣で自分の付き人が言う。

ビルスはこういう時彼が何を言いたいのか解っていた。

神が、しかも自分の様な破壊神が人間の命を助けるなど正直言ってらしくないと思ったが、それでも後味が悪い事は確かだった。

だからなるべく仕方の無い風を装って、彼に命令する事にした。

 

「ま、見掛けたものは仕方がない。このまま知らんふりするのもなんか後味悪いしな。ウイス」

 

「はいはい」

 

付き人は待っていましたとばかりに笑顔で頷き、倒れた男の下へと瞬間移動した。

 

シュンッ

 

「おわぁっ!?」

 

しんのすけの前に突然見知らぬ男性が現れた。

しんのすけ以外の周りの人間も突如現れた謎の人物に慌てふためき混乱した。

顔色がちょっと悪いように見えるがどうやら人間のようだった。

だが、しんのすけはそんな突然現れた男性の事は今はどうでもよかった。

自分の大切な友達が凄く具合が悪そうだったからだ。

 

「ちょっとオジサンそこどいて!」

 

しんのすけは勢いに任せて謎の人物を押しのけると直ぐに撃たれた男へと駆け寄った。

 

「しん……の……すけ? どうした……?」

 

朦朧とした意識で撃たれた男、又兵衛はしんのすけに話し掛けた。

彼には既に自分の直ぐ近くで起こった事すら認識できない程、衰弱していた。

 

「おじさん! おじさん!」

 

見慣れた憎たらしくも可愛い顔が又兵衛の目に映った。

心配と不安で一杯になったしんのすけは、今にも泣きだしそうな顔をしていた。

 

(此奴、泣くでないわ。らしくないぞ)

 

又兵衛は何とかしんのすけを励まそうとしたが、既に笑う事すらできない状態だった。

だが彼は、最後の力を振り絞ってしんのすけにある事を伝えようとした。

自分の命がもう間もない事は判る。

だからこそこの坊主、しんのすけに伝えねばらならない事があるのだ。

 

又兵衛が深く息を吸い、気力を振り絞ってしんのすけに話しかけようとした時、自分の耳にも届くほどのどよめきが聞こえた。

どうやら周りで何か不測の事態が起こったらしい。

 

(よもやこんな時に……。敵襲か?)

 

そんな事を考えていた又兵衛の耳に、今度は良く通った声が群衆を掻き分け、自分に向かって近づいてい来るのが聞こえた。

 

「はいはい。皆さんどいて下さい。この方は神様ですよ」

 

(神……様?)

 

自分はまだ生きている。

死にかけではあるが、まだ息は続いている。

そんな自分にもうお迎えが来たと言うのか。

だがそれだけは今暫く待って欲しい、まだしんのすけに何も言い残してやれていない。

 

抵抗虚しく身体からどんどん力が抜けていくのを又兵衛は感じた。

不味い、早くせねば。

 

「おじさん! おじさん! 大丈夫?!」

 

しんのすけが自分の事を心配して揺すっていた。

 

おお、まだここにいてくれたか。

ならば今こそ伝えねば。

 

これが最後の機会だ。

そう確信して又兵衛はしんのすけの方を向き遺言を伝えようとした。

だが、そんな彼の目に映ったのは、しんのすけが自分に近付く気配に驚いて飛びのき、空いた場所へと代わりに現れた妖怪の様ななりをした異形の者だった。

 

「お稲荷……様……?」

 

又兵衛は驚きに目を見開いた顔を一瞬したものの、ついにその時に最後の力が尽き、薄れゆく意識の中で自分の目の前に突如現れたお稲荷様を少し恨んだ。

 

(すまん……しんのすけ……。だが、お前なら……)




はい、次はクレヨンしんちゃんです。
某劇場版のラストを壊すことにしました。
ほぼラストシーンの登場である事と、破壊行為自体が恐らく無いであろうことを予測するに、多分直ぐに終わります。

こんな事をしながら次のネタ収集に努めようと思った今日この頃でした。

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