乙女ゲー世界は悪役令嬢の身内にも厳しい世界です   作:りーおー参式

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ジルクきゅんとの短めの絡みで今までにないPVがあってびっくり

みなさま、ありがとうございます。


第11話 総集編にも味変は加えたい

 

乗り物が定員だから乗れない、等というまるで骨川ス〇夫のような嫌がらせにより、自力で実家の屋敷にたどり着いたのだが、執事から、荷物を置いてすぐに父の部屋に向かうよう促された。

風呂と食事の後にしてくれたっていいじゃないか。

 

「戻りました。私がいない間にずいぶんと大騒ぎになっていましたね」

「ご苦労。そうだな、何から話そうか・・・」

 

父が大きく息を吐きながら天井を眺めている。さすがに疲れが隠しきれていない。

決闘騒動が始まって今日まで色々とあったのだろうことは想像に難くないね。たまには父の言うことを先回りしてみようか。

 

「王妃派を粛清して、あの馬鹿王子の首を取りに行きましょうか」

「過激だな。気持ちとしては同意するが・・・はぁ、ラーシェルへの抑えを考えれば、あの連中は生かしておかざるを得まい。それに首を取ろうにも、簡単にはいくまい」

「せめて法に触れるようなことをしてくれていれば始末する大義が得られたのに惜しいところです」

「だが、廃嫡は譲らん。落とし前はなんとしても付けねばな」

 

廃嫡か。次期国王からヒラの王族に格下げとなれば、命こそ取られないものの、割り当てられる予算は激減、名誉なんて地に落ちるようなものだ。

地に落ちるか・・・社会的地位を2番目に高いところから崖下にまで叩き落すというわけか。ふふっ、さながらレッドグレイブパパによる地位のレッドフォールだな。

おや、父が厳しそうな眼を僕に向けている。

 

「どうして僕を睨むんです?」

「気のせいか、馬鹿にされたような気がした」

「気のせいです。それで、うちの派閥はこの後、どうするおつもりで?」

「どうするも、こうするも、こうなってしまってはな・・・王宮を焼いたとて、貴族も民もついては来まい」

「アンジェが王妃になることを見越して集まってきた連中もいなくなるでしょうしね」

「細々と動くことはあっても、しばらくは派閥の体制を整え直すくらいしかないだろうな」

 

味方は激減するし、王宮での影響力は低下する。

救いは、領地の運営に影響はないし、決闘騒動の勝者は妹であり公爵家だ。

個人的には、父が反乱を起こすようなことをしなくてよかった。

クーデターが成功したとしても、その場合、父の次に王になるのは僕だ。そんな面倒ごとはまっぴら御免こうむりたい。

報告、連絡、相談して責任を擦り付ける相手がいない仕事なんてしたくないでござる。

 

「そうだ、思い出した。アンジェの代理人だが、お前が囲い込んでいると言う噂が決闘会場で飛び交っていたそうだな」

「ずいぶんと耳が早いですね。根も葉もない噂ですよ。決闘後に礼を言いに接触しましたが、それが初対面です。

ただ、いい機会です。本当に取り込んでしまおうかと。僕個人としても、頼れる戦力は欲しい」

「お前のところにいる、辺境貴族の集まりで囲うつもりか?たまには寄子に旨味を与えて繋ぎ止めることも覚えておけ」

 

これは僕の弱いところを突かれたな。王宮での役人生活のおかげで、案件の通し方や予算のぶん獲り方は学んだが、派閥を率いてコントロールすることは未経験に等しい。

そしてこの弱みは派閥を率いる地位を継ぐ僕には致命的となりかねない。父が僕の役人生活をよく思わないのはこの辺りが原因の1つだろう。

 

「特定の寄子に、あんな強大な力を渡しては、寄子の間に波風が立ってしまいますよ。見方を変えれば、馬鹿王子との婚約を決定的に潰した張本人でもありますから、腫物を押し付ける形にもなりかねません。あとは、本人が命乞いをするために父上に会いたいそうなので、そのときに話を聞いてみましょう」

「それもそうだな」

 

僕が結婚の面倒を見た辺境の貴族達は、事実上、僕個人の下に付いている状態になっている。

この辺境の愉快な仲間達の関係者に、年頃の、ケモナーになってない女子がいれば、バルトファルト君と政略結婚させて、早々に取り込んでしまいたい。

しかし、なんといっても相手はあの乙女ゲーの主人公様の攻略対象だ。

恋愛ごとに関しては、できるだけ主人公以外が近付けないようにしたほうが安全に思える。

ついでに言えば、寄子の関係者がバルトファルト君を婿にとって変な野心を持っても面倒だ。

 

「あと、陛下との夜遊びはこれまでにしておけ、あらぬ憶測を呼びかねん」

「そうすると、僕がやっている陛下の女性関係の把握を大臣が自分で行うことになって、アトリー家、というか大臣の夫婦関係が荒れますよ」

「お前は何を言ってるんだ?それは公爵家が気にすることではなかろう」

「弱体化する公爵家が、王宮内に強い影響力を持つアトリー家に恩を売るチャンスですよ。それにアトリー家だって同じラーファンの女の被害者です、裏でしっかり手を組んでおけば、うちにとってプラスになります」

「そこまでしてローランドと夜遊びを続けたいのか!?それよりもお前は領地の運営も、後継ぎ作りすらしてないではないか」

「監査先で領地運営の裏側まで見てますから、机上論は完璧です!それに口説いたメイドや侍女、女官をすぐ異動させてるのは父上じゃないですか」

「全員そろって騎士家か平民出身ではないか!愛人ばかり囲って、ローランドのように隠し子ばかり作らせるわけにはいかん!」

「いやいや、陛下は貴族家出身の女にも手を出しますよ!さすが陛下!」

「もうわかった!王宮勤めは認めてやる!だが非常勤の顧問以上は許さん!あと夜遊びも控えろ!」

 

やった!無職のボンボンにならずに済んだ。

 

「わかりました。あと非常勤なら、今やっている案件の引継ぎがあるので、しばらくは頻繁に王宮に顔を出しますよ」

 

仕事の引継放棄はダメ絶対!引継のお残しは許しまへんでえぇぇぇ!

 

「はあ・・・こうなるなら、お前にもっと領主貴族達を救済させておけばよかったな。正妻を駆除するだけで、お前を支持する勢力があんなに増えるなら、辺境周辺を一気にまとめあげて、お前を新しい王に担ぎ上げることもできたかもしれん・・・」

 

父上がとんでもないことを言い出した。

やめてください、そんな面倒くさいこと、絶対に嫌ですからね。

 

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攻略対象5人との決闘から数日後、指定された時間にリオンは公爵家の屋敷を訪れていた。

使用人から待機するよう言われた部屋の高級そうなソファに体を預けて大きく息を吐いていると、ルクシオンが音もなく姿を現した。

 

「気前よく賭けの儲けを使うのですね」

「これで全部じゃないしな。確実に助かるように手は打っておきたい」

「マスターが命じてくれれば、すぐに私がこんな国、滅ぼして見せますよ」

「その後が絶対に面倒臭くなるからパス。この答えをしたの、何回目だよ」

「そうですか。あとマスターから指示のあったアンジェリカの兄の件ですが、なかなか面白い調査結果が出ましたよ。詳細はこちらをご覧ください」

 

ルクシオンの一つ目が光り、ホログラムの文書がリオンの前に浮かび上がった。

そこには、ルクシオンが調べ上げた、ギルバートについての詳細が記されていた。

 

「詳細はそちらのとおりですが、特筆すべき点は2つです」

「ここにある、辺境の底辺グループの結婚を手助けしたってのと、国境沿いの監査か」

「はい。いずれもアンジェリカが王妃になったときに、災いの芽となるものを摘むためのようです」

「・・・どういうことだ?」

 

リオンの問いに対して、ルクシオンが一つ目を左右に振り、馬鹿にしたような口調で説明を続ける。

 

「マスター達のような辺境出身の貴族が学園で虐げられれば、いずれ王国への反抗心を抱きます。特にあの学園での3年間は、辺境の下級貴族達に王国への憎悪を育むには十分すぎます。そこを助けた結果、付いた異名が辺境の愛のメシアです」

「そりゃ、あんな扱いだからな。俺は今回で一抜けするから関係なくなるからラッキーだな」

「さすがマスター、クズっぷりが安定していますね」

「反乱を起こす連中よりかははるかにマシだろ」

「そういった勢力に対して、より直接的に動き始めたのが、国境沿いの監査です。国王の肝いりで編成された部署で貴族達の行財政監査を行うようになります。そこでは、監査の名の下に、王都で散財する領主の正妻達の悪行を晒し上げて、次々と離縁させていくようになりました。ちなみに正妻達のその後の消息は不明です。実家に連れ戻されて一生軟禁、というところでしょうね」

「え?そんなことできるか?」

「散財の結果、国境の守りを危うくした、という大義名分の下、国王や公爵家の威光を振りかざしたようです。正妻達の中には、マスターの殺害を目論んだ淑女の森構成員も多く含まれます。力のある貴族しかできない強引な手法ですが、悪妻と縁を切れた領主達は、国境沿いの防衛力を強化するとともに、王国への忠誠を高めています」

「親父のところにもガサ入れに来てほしいもんだな。それにしても、どれもこれもアンジェリカさんのためっていうのが凄いな」

 

ルクシオンから聞かされるギルバートの行動原理をリオンは理解できずにいた。それと同時に、妹のために、こんなにも大立ち回りをするのは異常に思えた。

 

(あの乙女ゲーで、アンジェリカさんの兄が出てくることはなかった。それなのに、この行動は”キャラ”が立ちすぎているな、まさか・・・)

 

「マスター。ギルバートは、マリエと同じく、転生者だと思っていますか」

「その可能性は否定できないな。だが、アンジェリカさんの”兄”としての行動としては、筋が通らなくもない」

「ええ、マスターが侵攻を予告する公国以外との国境沿いも固めていますし、重度のシスコンであるという話がありますので、溺愛する妹のための行動としては説明がつきますね」

 

5人の攻略対象をわずか数ヶ月で篭絡して逆ハーレムルートを完成させたマリエのことをリオンは思い出す。

 

(悪役令嬢の兄・・・攻略対象としてはよくあるパターンだな。あの乙女ゲーは課金要素が充実していた、俺の死後に有料でコンテンツの追加があったらどうだ?それなら急なキャラ立ちも理由が付く・・・かもしれないな)

 

奇しくも、リオンとギルバート、2人がそれぞれを追加の攻略対象だという推測に辿り着こうとしていた。

 

「ちなみに、マスターは一部の貴族から、ギルバートが囲っている秘密兵器だと認識されていますよ」

「え!?何でだよ!」

「マスターが決闘の際に、アンジェリカと敵対した王太子ユリウス以下5名を精神的にも、物理的にも完膚なきまでに叩き潰したことを、ギルバートが現場で大喜びしていたようです。それを多くの生徒達が目撃しています。また、ギルバートが躊躇なく王都の悪妻を消していく様と、マスターの容赦ない戦い方に共通点が見出されているのでしょうね」

「ルクシオン、俺、金だけ置いて帰りたい」

 

この後のレッドグレイブ公爵との面会が不安で仕方ないリオンであった。

 




次回でようやく三者面談

コミカライズの作者様Twitterにあった、
コミック9巻表紙裏SSですっかりいじられキャラになってしまった人ってヘルトルーデだよね?
まさか兄上様じゃないよね!?
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