乙女ゲー世界は悪役令嬢の身内にも厳しい世界です   作:りーおー参式

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誤字指摘ありがとうございました。

スパロボに参戦してほしい機体
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第13話 スキャンダルは忘れた頃に発掘される

父の頼みにより、アンジェ達がバルトファルト君の実家へ療養に出向いている頃、僕は残った監査の仕事の引継をするために王宮に顔を出していた。

引継と一言で言えば簡単だが、僕が持っていた案件は、正攻法で潰すのが難しい案件、要は面倒な案件ばかりであり、その進捗を伝え、これから何をすべきか、課題は何か、突破口となり得るものが何か等の話は相当のボリュームとなる。

一方の引き継がれる側も、当然これまでの仕事に加えて、という形になるので、だいたいは、連日、夜になってから差し入れ持参で行っている。

何日にも渡って続けてきた話が一段落した頃、気持ちが少し緩んだのか、もう数年間、一緒に仕事をしてきた文官がポツリと呟いた。

 

「我々が言うのもなんですが、ホント、色々と大変でしたね・・・」

「僕なんて、一体何のためにこの仕事を頑張ってきたのか・・・もう虚無ですよ、虚無」

 

ゲームのシナリオ上は数年後に起こりうる公国の進行の被害を抑制するため、そして、妹が王妃になってから苦労しないで済み、僕が早々に隠居できる平和な国を作るために、社畜魂を燃やして連日遅くまで仕事をしてきたのが、オリジナルの攻略対象5人全員を数ヶ月で篭絡した女1人のせいで台無しになってしまった。

 

「こんな展開、誰も予想できませんよ」

「それだったら僕達は歴史の転換点に立ち会ったのかもしれませんね」

「自分が現役の間に、そんなところに出くわしたくはなかったです」

 

実に役人っぽい台詞だ。この先のゲームの展開を知らなかったら僕も同じことを思っただろう。

 

「そういえば、”立ち会う”で思い出しましたけど、決闘会場の話、聞きましたよ」

「はて、何のことやらわかりませんね。心当たりが多すぎます」

「おかしいと思ったんですよ、妹さんが大事だって言いながら、私達と一緒にしょっちゅう王都を離れたまま、何か月も国境沿いの貴族領を調査してるんですから。あんな隠し玉、どうやって捕まえたんですか?」

 

世間話の本題はそこだったか。

僕が一緒に仕事をしている部署の文官達の多くは、アトリー家の傘下にいる。

彼らはアトリーの目であり、耳であり、そして、この乙女ゲームの世界にストーカーという概念を自らの身をもって作り出したクラリス嬢の手足でもある。

 

「その質問、同僚としてですか?それともアトリーの間諜としてですか?」

「そんなの両方に決まってるじゃないですか!」

 

少し意地悪く言ったのだが、満面の笑みでサムズアップしながら、全面的に開き直った回答が返ってきた。

こういった情報収集は、向こうの方が一枚上手だな。

 

「だったら秘密です。調査事項がまた1つ増えちゃいましたね」

「あんなに厄介な案件を押し付けていくのに、さらに仕事を増やすなんて・・・その鬼っぷり、ギルバート様はやっぱりレッドグレイブ公爵のご子息ですね」

「父が仕事を増やしていると?」

「とぼけないでください。ユリウス殿下を廃嫡にするために現在進行形で剛腕を振るってるじゃないですか」

「ああ・・・だからバーナード大臣も連日深夜までお偉いさんの会議に出ずっぱりなんですね。でも大臣だってマーモリア家にはきっちり落とし前を付けさせるんでしょう?」

「当然ですよ、でもそれより我々が心配しているのはお嬢様なんです。実は・・・」

 

文官の口から聞かされたのは、あのクラリス嬢がジルクに会えないことが続き過ぎた結果、しばらく塞ぎ込んだ後、専属使用人、つまり亜人の奴隷を囲い始め、日に日に帰宅時間も遅くなり始めている、というショッキングな話だった。

おいおい、いくらこの国の貴族の女の半分以上がケモナー女だとしても、さすがに閣僚級の伯爵家がそれをやったら体面というものが問題にならないのか。

体面・・・貴族の価値観から見た僕はきっと奇人、変人だろうな、うん、パパ上様、ごめんちゃい。

 

「ギルバート様、今、自分にもブーメランになるようなことを思いませんでしたか?」

 

君はいつからエスパーになったのかね。

僕は中身が平凡なリーマンだから仕方ないんだ、貴公子っぽく振る舞おうとしてもどこかでボロが出てしまいかねない。ならばいっそのこと、最初から変わり者だと思われていたほうが好都合なんだ!

 

「それはまた心当たりが多すぎて困ります。ただ、クラリス嬢が・・・あまり僕は好かれていませんでしたが、知っている相手がそうなっていくのは気分が悪くなる話ですね」

「ギルバート様にそう言ってもらえるとは思いませんでした。ところで、送別会も兼ねて、皆で気晴らしに一席どうですか?」

「それはいい。僕もしばらく王都の屋敷と王宮の往復ばかりだったからありがたい」

 

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お貴族様どうしで行われる、格式ばった集まりとは異なり、久しぶりに肩肘張らないで済む職場の飲み会が決まり、善は急げと仕事を切り上げた僕達は、王宮からは離れたところにある、飲み屋等が密集しているエリアに向かっていた。

差し入れ用にこっそり持ち込んだ酒類を、飲み屋に向かう道中で、ゼロ次会と称してみんなで飲み、僕達はほろ酔い気分になっていく。

向かう先には、前世で言えば歌舞伎町みたいなエリアだ。いわゆる居酒屋に加えて、特殊接待店舗、陛下が夜遊びで使うような会員制飲食店、ひとときの休憩所等がひしめいている。

 

既にアトリー家の文官達が予約してくれたという店に向かって、僕や文官達数名が歓楽街を進んでいたのだが、いつも職場の飲み会で使っていた店のある通りを、今日に限ってはスルーして、先導の役人が歩いていく。

 

「あれ?今日はいつもの店じゃないんですか?」

「そうなんですよ、たまには違う店を開拓するのも面白いかなと思いまして・・・」

 

文官の答えを聞いて、もしかしたら開拓と称して、いつもとは違う店を僕のために予約してくれたのかな、などと思い始めた矢先だった。

見たくもなかった、とんでもないものが視界に入ってきた。

 

かつては時間をかけて編み込まれたであろう髪型は、肩先で軽く流してウエーブがかるものとなり、身にまとう学園指定のシャツは胸元近くまで大胆に開け放たれ、化粧は濃くなり、目つきが鋭くなったクラリス嬢だった。

 

おいいいいいぃぃぃぃぃ!亜人を囲い始めたとは聞いていたが、ストーカーな中身はともかく、外見は正統派な清楚系お嬢様だったのが、いつの間にかギャル堕ちしてるじゃねえかぁぁぁぁぁ!!!!!!

しかも、絶妙にギャル令嬢フォームを使いこなしてるぅぅ!!

ずいぶんと極端なフォームを両方とも使いこなすなんて、クラリス嬢、やはり外側のスペックは驚きの高さだな、好みじゃないけど。

ただ本当に驚いた!まさか、クラリス嬢がフォームチェンジしてしまうとは思わなかった。

 

しかも獣人系の亜人らを侍らして向かっている先にあるのは、まさに愛を育む休憩所が密集しているエリアだぞ!

 

おい、安いところは施設が全体的に古かったり、衛生面が露骨に劣悪だぞ!金のない学生ならともかく、小金があるなら休憩料金はケチるなよ!

数千円の差で、女の子の反応はもちろんのこと、設備の豪華さとか、シャワーの勢いとか、備え付けのシャンプーとかのランクとか、浴槽の機能とか、アメニティの種類とか全然違うからな!

いや、それはお貴族様なら料金のことは問題ないな・・・って違う!今世ではそういう問題じゃねえ!

 

ダメだ、ゼロ次会の名目で空きっ腹にアルコールをぶち込み過ぎたせいで、酔いが回って思考がまとまらない!

今世でこんな自問自答をする場面に出くわすなんて思わなかった。

 

というか、アトリー家の文官達に引継をして、打ち上げで飲みに行く日、飲みに行く時間に、ずいぶんと都合よく出くわしたな・・・いや、いくらなんでも都合が良すぎる。

僕は文官の顔をまっすぐ見ると、文官はとっさに視線を下にそらす。どうやら後ろめたいところがあるらしい。

 

「僕を嵌めやがりましたね?」

「お嬢様をハメさせないためです」

「誰がうまいこと言えと・・・まんまと僕はおびき出された、というわけですね」

「これまでは何とかお嬢様を引き留められていたのですが、もう限界だと現場から連絡がありまして」

 

そう言いながら、文官はクラリス嬢を止めようとしつつも、亜人達に阻まれた上に暴行を受けるクラリス嬢の取り巻きの男子達を指さした。

その中には、先日、決闘会場で遭遇したガチムチ系取り巻き男子のダン君もいる。

 

亜人達はニヤつきながら、反撃してこない男子達を殴る蹴るしており、ケモナー学園でもよく目にする光景が繰り広げられていた。

最初に見たときはびっくりしたよ、奴隷扱いの亜人が、下級とはいえ貴族階級に所属する男子を当たり前のように殴っているんだもの。階級社会の建前はどこに行ったんだという話だ。

 

「我々も、お嬢様に侍る亜人に手を出すわけにもいかず・・・もうギルバート様のノリと勢いと権力で無茶苦茶にして有耶無耶にしてもらうしかないんです!」

「人のことを何だと思ってるんですか!?それに、僕はクラリス嬢がどうなろうと関係ないんですけど!」

「ギルバート様なら傷心で自棄になるお嬢様の気持ちもわかってくれると我々は信じてます!」

 

いつの間にか、文官衆が僕の周りを囲んで、全員そろって首を縦に振る。

お前ら全員共犯かあぁぁぁ!

 

「そもそも、うちの可愛い妹はあんなことする子じゃないですから!」

 

亜人を囲うくらいなら、物理的に首を狙いに行くような子だけどね!

 

「こちとら、大臣に指示を仰ぐ時間も取れないんですよ!誰かさんが激怒状態で王宮を振り回してるおかげで連日深夜まで会議が終わらないんですから!」

「清々しいくらいの逆切れですね!その怒りの矛先は王妃様と馬鹿王子に向けてくださいよ!」

「じゃあ放置すればいいじゃないですか!我々、大臣には、お嬢様が亜人と歓楽街に消えていくのを公爵家の跡取り様と見送りましたって報告しますから!」

「嘘ではないけど、その情報の切り取り方というか角度の付け方はさすがに悪意に満ちすぎでしょ」

 

お互い、酒の勢いでしゃべり続けて、売り言葉に買い言葉状態の応酬が続く。

ただ、決め手となるものが双方にない、と僕は思っていたのだが・・・文官が仄暗い笑みを浮かべて、僕の耳元で囁いた。

 

「ギルバート様が王宮勤めを始めたばかりの頃、騎士家出身だと騙されて亜人を連れてない子爵家の令嬢に手を出しそうになったところを、我々の情報網でギリギリ助けた上に、揉み消したことがありましたよね」

 

それ、もうだいぶ昔のことだよね!?本人も忘れたスキャンダルを持ち出すってアンタら暴露系YouTuberか!

 

「子爵家の令嬢に騙される、ってそちらのお家にも絶許モノなNGワードでしょ!」

「未遂とはいえ、今の公爵様が知ったら、それはそれはもう、たいへんお怒りになるでしょうねえ!」

「嵌めた次は脅すなんて、卑怯ですよ」

「もう堕ちるならギルバート様も一緒に堕ちましょうよ、今なら僕たち文官衆もお嬢様も付いてきますよ」

 

この役人達、僕を道連れにする気か!?ええい、冗談ではない!

僕はこれから主人公と攻略対象を邪魔する連中を排除して、2人をうまいことくっつけて10年先に甘い汁をすうための準備をしなきゃいけないんだぞ!こんなところでポカするわけにはいかん!

 

「ああもう!わかった、わかりましたよ!!でも今回だけですからね!」

 

もう僕のほうもヤケにになってきた気がする。

文官衆が音もなく拍手をしているのを見ながら、僕は飲みかけのストロングなアルコール飲料の残りを一気に喉奥に流し込んで、気合を入れた。

そして、手元のカバンからサングラスを取り出して目元を隠し、シャツの胸元を空けて、髪をオールバックにまとめ上げた。

今いる場所からして、どっからどう見てもまっとうな仕事をしてない輩に見えるだろう。

 

「なんで変装グッズなんて持ち歩いてるんですか?」

 

呆れた表情をした文官の一人が聞いてくる。

「陛下の教えに決まってるじゃないですか」

 

市井でのお忍びデートの機会はいつやってくるかわからないので、常に準備しておくべし、というのが陛下の持論だ!むしろ、陛下は、たまに仮面まで持ち歩いているからね。どれだけ準備万端なんだか。

 

さらに酔いが回ってきて顔がポカポカする。空きっ腹にねじ込んだアルコールに胃を焼かれるような熱さが実に不快だ。そんなバッドコンディションの中、僕は腹をくくって、ダン君達に暴行を加える亜人達の下に向かう。

 

「おいおい!人間モドキがずいぶんと調子に乗ってるなぁ!」

 

若干千鳥足で暴行現場に乱入してきた、一見すると反社の構成員かチンピラみたいな風貌の輩を見た亜人達の顔が一瞬だけ強張った。

すぐに目線で合図をして、最も近くにいた一人の亜人がこちらに向かってくると、無言で僕の顔面を殴りつけてきた。毛深くて生暖かい拳が頬に当たり、痛みより先に気持ち悪さ由来の不快感が全身を走り抜ける。

 

しかし、拳は当たっただけだ。

僕は魔力で体を強化しており、ダメージはほとんどない。殴られた衝撃で変装用サングラスは吹き飛んだけどね。

そして、この瞬間、亜人の専属使用人が僕を殴りつけた、という事実が生まれた。

同時に、亜人に殴られた相手が誰であるのか、すぐ近くにいるクラリス嬢の取り巻き達が認識したらしい。大きく口を開けながら、顔を青くしている。

 

「見た?」

 

取り巻きの男子達が大げさに首を縦に振る。

震えている男子もいる。所属だけ見れば、アトリー伯爵家の使用人が、公衆の面前で、レッドグレイブ公爵家の跡取りに暴行を加えた、ということの意味をわかっているのだろう。

 

「ねえ、これから始まるのはお宅とうちの抗争かい?それとも繁華街の酔っ払いの喧嘩かな?喧嘩じゃないかな?喧嘩だよね?」

 

男子達はなおも首を縦に振っている。そうか、喧嘩か。あと先に手を出してきたのはそこの亜人だからね、覚えておくように。ふふふ、どうしてだろう、笑いが止まらない。

ケモナー学園在学中も、さすがに僕を殴りつけてくるような専属使用人はいなかった。

普段から、僕達男子を見下し、あざけ笑うように見てきた亜人というファンタジー種族を、一回は〆てみたかったのだがようやくチャンスが回ってきたようだ。

 

「おい、何を笑ってる!」

 

殴られたのに、いきなり笑い出した僕を見て気分を害したらしい亜人が何か吠えている。

五月蠅いなぁ。その獣臭い口を閉じようか?

僕は無言のまま手を伸ばし、そのまま亜人の顔面を鷲掴みにする。

 

「ファイヤーボール」

 

静かに僕が呟くと、亜人を掴んだ掌に大きな火球が一瞬だけ現れて、すぐに亜人の顔面を焼き尽くしながら爆発した。

さあ、レッドファイトを始めようかあぁぁぁぁぁ!

 




※兄上様は現在酩酊による興奮状態ですw

せっかく少しだけ主人公と絡めたのに、またまたアトリー家の面々に捕獲された・・・
一応、次回か次々回にはまた主人公と絡める予定・・・
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