乙女ゲー世界は悪役令嬢の身内にも厳しい世界です 作:りーおー参式
16歳:リオン、アンジェ、リビア、5馬鹿、マリエ
17歳:クラリス、ジェナ
18歳:ニックス、ディアドリー
19歳:ルトアート
20歳:ドロテア、メルセ
23歳:コーデリア(共和国編時点で24歳という言及あるため)
その上で、兄上様が20代前半という言及があるので、今作では21歳か22歳ぐらいの想定で進んでいます。
さてさて、気が向いたときか、誰かに嫌がらせをするときだけ本気出すと評判の陛下の治世が、学園の決闘騒動後も、大きく揺らいではないことを示すために、
のこのこと王都におびき寄せられた結果、僕はローズブレイド伯爵家の御令嬢とお見合いするはめになってしまった。
改めて振り返ると酷いね。
こんな前回のあらすじから始まるアニメがあったら、まったく内容を理解できない自信があるぞ。
貴賓室のテーブルを挟んで、見合い相手、といっても、顔見知りではあるドロテア嬢と僕が向かい合い、互いの脇にはそれぞれ、陛下とローズブレイド伯爵が座るという、半ば保護者同席状態な場ができている。
陛下は何が起きても面白くなることは間違いないと思い、既にニヤニヤしている。他方、ローズブレイド伯爵は頻繁に手を組みかえたり、大きく息を吸ったりと、若干ソワソワした様子だ。
平凡な社畜だった前世とは異なり、今世の僕は顔と血筋だけは、ガチャのレアリティで言えばSRクラスぐらいあるので、これまでもお見合いの前段階の顔合わせ的な場面を何回か経験している。
貴族の中でも爵位が上だと、どうやらお見合いというのは、婚約がほぼ決まった状態でダメ押し的にやるもので、前世で言うようなお見合いは、顔見せなどと呼ばれているらしい。
僕なりの顔見せでの断り方は、いかに僕が妹ラブで、そのために辺境の悪妻を駆逐しているのかを熱く語るというものだ。そうすると大概は向こうからやんわりとしたお断りがくる。
この辺りが、僕が貴族社会の中で、スーパーシスコン野郎だとか、妹のためなら浮島すら笑って沈めるとか、赤い通り魔とか噂される遠因なのかもしれない。
ただ、妹の婚約は解消となり、その話題をぶち込むわけにもいかない。ひとまず、お決まりなフレーズから入ってみるとしよう。
「えっと・・・ドロテア嬢、ご趣味は?」
「ありきたりな質問ですわね」
そんなことわかっとるわ!僕は心の中で毒づき、苛立ちを覚えるが、それよりも早くローズブレイド伯爵の顔が青くなった。
伯爵の顔色が変わるまでのあまりの早さに、つい面白さを感じてしまって毒気が抜かれてしまう。
というか、僕、中身はともかく、スペックは王族の親戚みたいな血筋だよ?いや、媚びへつらう女も嫌だけど、そもそもそれ以前に、その態度は人としてどうなのよ。
まあ、ここからは、断るための口実をしっかり集めるためにも、もう少しだけ付き合ってあげるとしよう。
「それもそうですね。では、学園卒業後は何をしているのですか?」
「はあ、父の領地運営を微力ながらお支えしております。ですが、こんなことをお聞きになりたいのですか?」
本当に刺々しいな。ごめん、そもそも興味がないんだよね。ただ、ここまで態度が酷いと、もしかして、ドロテアさんは僕のことが嫌いなのだろうか。
いや、好感を持たれるエピソードも好かれるエピソードもないんだけどさ。それとも、もしかしたら、国境沿いの監査のときに社会的に消した悪妻の中に友人でもいたのだろうか。
僕のことを嫌う属性といえば・・・この前の決闘騒動のときの観客席にいた女子生徒達の反応から察するに、女尊男卑の思考が強めというか、
男を下にみるべきと考えているタイプには、蛇蝎のごとく嫌われている。淑女の森と呼ばれる団体に属している連中が典型的な例だろう。
ただ、少なくともローズブレイド家があんな団体と繋がっているとは思えないし・・・
ちなみに、ドロテアさんの脇にいるローズブレイド伯爵は、顔を上げていることすらできなくなったようだ。
能面のような顔をしながら俯いている。
なんというか、お気の毒です・・・陛下の治世がどれだけ乱れるかを判断するために、せっかく陛下の不興を買ってまでお見合いをセッティングしたのに、娘であるドロテア嬢はそんなことを気にする様子がない。
もしかして、ローズブレイド伯爵一人がお見合いをさせたかっただけで、ドロテア嬢も断りたいのか!?
ここまでのツン100%な動きも、この顔合わせをさっさと終わらせたいからなのだとすれば辻褄があう。
普段から素でこんな人だったのなら・・・それはもう大したものだと呆れるほかないな。
だが、これが前世の合コンだったら、間違いなく地雷、しかも、かなりの大型地雷認定をされた上で、あとは男性陣から戦略的に放置にされるぞ!
君がやってるのは、合コンの初っ端に”今日はどこから来たの?”的なアイスブレイクの質問に対して、家から来た、等と答えて場を荒らしていくような喧嘩の押し売りだからな。
数合わせで来たのかもしれないが、他の参加者が気まずくなるような言動をするのはさすがに許せないね。
とはいえ、ここまで付き合ったのだから、もう切り上げていいだろう。
「せっかく骨を折られたローズブレイド伯爵の顔を立てようとも思いましたが、どうやらお嬢様のお眼鏡にはかなわなかったようですね。そろそろ失礼するとしましょう」
「辺境の貴族達を次々と離婚させたり、亜人の集団相手に単身で大暴れする公爵家の暴れん坊と聞いていましたが・・・実物は顔ばかりで、物足りませんわね」
大丈夫、君の希望を満たさなくて少しほっとしているよ。というか、アトリー家お抱えの文官達に嵌められた時のことをよく知ってるね!?
「顔をほめていただいてどうもありがとう。ですが、辺境の悪妻達を駆除できたのは、周りの同僚達が入念に準備をしてくれたからであって、僕は実家の権威を振りかざしただけなのでね。買い被ってもらっては困ります」
少し嫌味を返すと、わかりやすくドロテア嬢の目元がピクピクと動いて、僕を睨みつけてくる。
だが、僕の関心はドロテア嬢ではなく、その脇のローズブレイド伯爵に釘付けだ。自分の娘の態度の酷さのせいで、うつむいたまま、小刻みに震えていて、憐れみと好奇心で伯爵から目が離せない。
被害者はきっと僕の側なのに、もっと打ちのめされている人がいて面白いから反応に少し困るね。もうやめて、ローズブレイド伯爵のメンタルのライフはもうゼロよぉぉぉぉ!
「では、久しぶりに学園に来たついでに、可愛い妹の顔を見に行きたいので、失礼するとしましょう」
そう言って立ち上がろうとすると、ローズブレイド伯爵がとっさに僕を止めようと腕をつかんできた。
何だ!?最後の力を振り絞ったのか!?
「ちょ、ちょっと待ってください。その・・・娘は少し緊張しているようでして・・・色々と失礼な発言、申し訳ない。ほら、ドロテア、何かギルバート殿に聞きたいことはないのかな?」
すると、ドロテア嬢が視線を少し泳がせながら、何かを考え出した。おや?少し空気が変わったな。
そして、腕を組んで、少し僕を睨みながら口を開いた。
「ギルバート様、私のペットになる覚悟はありますか?」
場が凍り付く、という言葉がある。たぶん今の状況はこういう空気になった場のことを指すんだろうね。
さすがの陛下もニヤつきが止まり、驚きのあまり、口をパクパクさせているし、ローズブレイド伯爵は、顔を天井に向けながらも両手で覆って、現場を直視することから逃避しようとしている。
今、この子はペットって言った?ペットって犬とか猫とか鳥とかのペットのことかな?
それとも、ペットって何か別のものを指すための隠語だろうか。
ないわああぁぁ!さすがに、そんなプレイを楽しむような癖(ヘキ)はないわあぁぁぁ!!
言い方からして、ドロテア嬢が、夜にだけ〇〇だニャンとか言ってくれるわけではないだろうし・・・常識的にこんなことをいうなんてあり得ないよね。
ありえない・・・あ、そうか。このような場で何故こんなことを言うのかを考えてみたが、やはり、断りたい、というかこちらから断ってほしいから、心の内にある本心を剥き出しにしてきたのだろうか。
考えてみれば、ローズブレイド家側から顔見せをセッティングしておいて、自分達から断るのは憚られるから、僕を怒らせた上で、断ってほしいのだろう。
ただ、このままだと、ただただドロテア嬢の態度が悪くて、ローズブレイド伯爵は精神的に多大なダメージを受けただけで終わってしまう。
それでは少し気の毒だな。
ここは僕も協力して、こちらから断るための演技をする前に、僕も少し本音というか欲望を前面に出して、全体的に空気を悪くしておいてあげよう。
性癖と性癖をぶつけ合って、お互いに嫌になったから自然とこの話はなかったことになった的な流れになれば、少しはローズブレイド伯爵に恩を売れるかもしれないしね。
「なら僕もお聞きしましょう。ドロテア嬢、僕のために裸エプロンをする覚悟はありますか?」
場が凍り付く、という言葉がある(2回目)。
驚きやショックのあまり、言動が先に続かなくなってしまったときを指す言葉だ。
陛下は僕を不思議なものを見るような目で見てくるし、ローズブレイド伯爵は顔を少し赤くしている。もしかしたら、一瞬だけでも、自分の愛娘がそんな恰好をしている姿を想像してしまったのかもしれない。
そして、ドロテア嬢は、ソファに座りながらも身をゆっくりと引き始め、少し青ざめた顔をしながら、必死に言葉を絞り出すように口を開いた。
「ギルバート様・・・何をおっしゃっているのですか?」
「あ、聞こえませんでしたか、すみません。裸エプロンをしてくださいって言いました」
僕の要望を聞いて、青ざめていたドロテアさんの表情は、みるみるうちに赤く染まっていった。
こちらも、いざ自分がそういう恰好をしたときの姿をイメージしたからなのかもしれない。
「わ、私にそんな破廉恥なことをせよとおっしゃるのですか?」
人に対してペットになれと言った人が、破廉恥とか言っても説得力は皆無じゃないだろうか。
だが、どうやら本人に自覚はないらしい。いいじゃないか、人前でやれと言っているわけじゃないんだから。
「今までの元カノ達にはいつもお願いしているんですよ。でも、さすがにその格好で料理をしろとは言わないから安心してくださいね」
裸エプロンはね・・・男のロマンなんだ。ただ、前世とは違って、もしかしたら、今世ではまだ裸エプロンという概念というかプレイは生み出されてはいないのかもしれない。
これまで関係を持った公爵家のメイド達や、陛下との夜遊びの中で知り合って付き合うようになった子達にはお願いしたことがあるんだけど、いつも驚いていたね。
もちろん、無理やりとか権力を振りかざして強制したわけじゃないぞ!?
こういうのは、女の子の側にもノリノリでやってもらうからこそ楽しいんだ。
ついでに言えば、最初はちょっと恥ずかがっていても、少しずつ楽しんでやってくれるようになる経過を見れれば、なおいい。
もしかしたら、ストーカーという概念をこの世界にもたらしたクラリス嬢と同じように、僕も今までこの世界になかった概念を生み出したのかもしれない。
欠点があるとすれば、その恰好で料理を作ってもらうと、特に炒め物を作ってもらうときには、飛んだ油や食材の水分等が肌に直撃して、場合によっては火傷をしてしまうということだろう。
だから、実際に裸エプロンをしてもらうときには、料理は頼まないほうがいい。衣服ってしっかり皮膚を守るんだな、馬鹿にできないんだな、と理解するきっかけになったものだ。
さてドロテア嬢を見ると、僕のことをまるで汚物を見るような目で見てきている。
頬は心拍数が上がって興奮しているのか、真っ赤になり、目元は少し涙目になっているようだ。
ドロテア嬢は、無言で伯爵の肩を叩くと、力なく首を左右に振り、耳打ちを始める。
そして、伯爵は立ち上がると、静かに頭を下げた。
「ギルバート殿、大変申し訳ないのですが、娘にはまだ刺激の強い世界があるようで・・・今回は・・・」
あれ?普通に断ってきた!?
え?自分は僕にペットになれとか言ってきたのに、僕が普通に振られたのか・・・?!
別に狙ったわけでは全くないのに・・・う~む、解せぬ!
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向こうがとんでもない性癖を披露してきたから、返礼代わりに僕も少し癖を披露したら振られて終わった顔見せの後、僕は陛下と学園の廊下を歩いている。
向かう先は、アンジェやリオン君、オリヴィアさんがやっているという喫茶店の教室だ。
そして、歩きながら陛下がサムズアップしながらポツリと呟いた。
「ボンボン、お前・・・なかなか尖ったものを持っていたんだな、さすが私の弟子だ」
「あんな失礼なこと言ってきたローズブレイド家の側から断られるなんて心外ですね」
「ローズブレイド家の娘は2人とも、変わった好みをしていると噂には聞いていたが、実物は予想以上に強烈だったな。私をドン引きさせるなんて大したものだ。あとは、お前の新しい一面が知れただけでも儲けものだった」
「噂が広がったら犯人は3人のうちの誰かですからね」
「残念だったな、お前の元カノ達がいるだろう。それにしても・・・よし、私も今度、愛する女達に頼んでみるとしよう」
「え!あの王妃様に裸エプロンさせる気ですか!?」
「馬鹿者!愛する女と言っただろうが」
相変わらず、陛下から見た王妃様の扱いが酷いな。王妃様と仲の悪い僕個人としては笑い話として聞けるからいいんだけどね。
「政略結婚も大変ですねぇ・・・って僕が言っちゃいけない台詞でしたね」
「全くその通りだな。学園を卒業してから、お前があんなに国境沿いで必死に働くとは私も予想外だった。気付けば、夜遊び相手以外に女の影すらなかったからな」
「それは十分に女の影が見えると言うような気がしますけど」
「言わなくてもわかってるだろうが、結婚は貴族の義務だぞ。せっかくこの私が、お前が婚約するときのために祝いのメッセージを考えてあるというのに」
前世がある人間には、この価値観がなかなかしっくりこない。いや、理屈はわかるんだけどさ。というか、相手も決まらない今からどんなメッセージを考えているのだろうか。
「それは光栄なことです。どんなメッセージから始まるんですか?」
「ようこそ、人生の墓場へ」
「冒頭から不穏極まりない煽りじゃないですか!」
祝う気ゼロだよね!?
満面の笑みでNDKかましてきてるよね!?
そんな馬鹿話をしている間に、アンジェ達の喫茶店のある教室が目に入ってきた。
すると、その教室の中から一人の亜人が飛び出してくる。そのまま僕達の横を通り抜けて行ったが、顔面に殴られたような傷があるのが目に入った。
そして、続けて教室の中から、笑い声と、誰かを殴り倒したような衝撃音が聞こえてくる。
アンジェ達の教室で一体何が起きているというのだろうか。
急いで教室に向かって、中をこっそり覗いてみると、教室の中で繰り広げられていたのは、口が三日月のように広がり、弧を描くように目を曲げながら、亜人の専属使用人達をボコボコに殴り続けるリオン君による処刑タイムだった。
おいおい、面白そうじゃないか。僕も混ぜてくれよ。
意気揚々と僕も教室に入ろうとすると、後ろから陛下に肩を掴まれて止められてしまった。
「おい、面白い先客がいるぞ」
いつものように顔をニヤつかせて、何かを企むように笑う陛下が教室の中を指さしている。
その先にいたのは・・・なんで王妃様が護衛もつけずに学園の教室に来てるんだぁぁぁ!?
せっかく出した主人公機が既に空気・・・!
エアバイクレースには顔を出さないで空賊退治編に行くか迷い中・・・