乙女ゲー世界は悪役令嬢の身内にも厳しい世界です 作:りーおー参式
そして、続きが遅くなってすいません、スプラトゥーンが・・・
スプラトゥーン3がパソコンを開かせてくれなくて・・・
「ぶっとべ、バーカ!!!」
高笑いをしながら亜人達を殴りつけ、投げ飛ばし、両手をハンマーのようにして叩きつけるリオン君の様子を、僕と陛下は、喫茶店となっている教室の扉の隙間から覗いている。
このケモナー学園で亜人の奴隷兼使用人が、貴族家出身の男子達より大きい顔をしているのは、女子に対して立場が著しく弱い男子生徒達が女子生徒に嫌われたくないから、というだけにすぎない。
「控えろ下郎ども!このお方をどなたと心得る!ホルファート王国王妃ミレーヌ様にあらせられるぞ!頭が高いんだよ!」
「えっえ・・・なんで・・・?」
どういうわけか、お忍びで学園祭に来ている王妃様が戸惑う傍らでリオン君が、時代劇の放映開始から40分後くらいに印籠とセットで出てきそうなセリフを吐いた。
「リオン君、待って!お忍びなの!こんな所で騒ぎなんて起こせないの!落ち着こう?いい子だからね?」
王妃様が、リオン君の肩をがしっと掴み、半泣きになりながら訴えかけている。
あの王妃様があんなに慌てている姿を見るのは初めてだな。王妃様が僕を見るときはだいたい汚物を見るような目をしているときか、嫌悪感を全開にしているときくらいなのに。ちょっと隣にいる陛下に聞いてみるとするか。
「僕の知っている陛下の奥方様とは同一人物に見えないんですが、あれは影武者か何かですか?」
「いや、たぶん本物だな。たいていの場合はツンツンしているが、極まれにキャパを超えているのを隠せなくなるとあんな感じになる場合もある」
たいていの家臣なら、キャパを超える前に奥さんの仕事を手伝ったらどうですかと言うだろうが、そもそもこの陛下がぶん投げた仕事の後始末をしているのが王妃様なのだから笑えるよね。
「さすが20年近く夫婦をやっているとお互いのことがよくわかるんですねぇ」
「騙し討ちで見合いをさせたことを根に持っているな?」
「あんなことされたら誰だって怨みますよ。ましてやペットになれ、ですよ?」
「お前だって、裸エプロンなんてものを要求してたんだからお互い様だろうが」
いやいや、僕はあくまでお互いが合意の上でエキサイトできるプレイを要求しただけですから。まるで僕が変態紳士であるかのように言うのはやめてほしいものだ。
というか、いま気付いたのだが、亜人を連れてるポンデリングみたいな髪型の女子生徒、あれは実家の敵対派閥の伯爵家出身で、しかもオリジナルの攻略対象の中の一人の婚約者の女じゃないか。
リオン君、よくやってくれた。さすが、追加コンテンツ系攻略対象だ。
「あの女、たしかオフリー家ですよね、色々ときな臭い噂の絶えない伯爵家の・・・」
「そうだな。汚い金をばらまいて伯爵家を乗っ取ったと評判だな。だが、やつらの親玉はあのフランプトン侯爵だ。前にバーナードのやつも、あの家に監査を入れようとしたみたいだが、阻止されてしまったよ」
フランプトン侯爵家は、もともと僕の実家のレッドグレイブ公爵家と敵対関係にあったが、アンジェの婚約解消騒動で、王家、王妃派、レッドグレイブ公爵家の協力関係が崩壊した結果、
相対的に王宮内で最も強い影響力を持つまでに至っており、その原動力の1つが、あのポンデリング女の実家がばらまいている金なのだろう。
「何があったかはしりませんが、アンジェやリオン君達にずいぶんと好き勝手してくれたみたいですね。ちょっとあの女、〆てきます」
「いや、待て。どうやらこの教室にお客さんみたいだぞ。相手をしてやったらどうだ?」
そう言って陛下が廊下の向こうを指さすと、先ほど教室から飛び出していった亜人が、10人くらいのお仲間を引き連れて戻ってこようとしていた。
どうやら先程は別の場所にいる仲間を呼びに行こうとしていたらしい。一団を率いてきた亜人が、教室の扉のところで立っている僕に向かって近づいてくる。
一団の中には角材やら鉄パイプ等を手に持って武装している者もいる。素手ではリオン君に勝てないと思って、学園祭の準備で調達された資材をかっぱらってきたようだ。
「そこをどいてもらおうか」
「この教室に何か用かな?」
「お前には関係ない」
「残念ながら中にいるのは僕の身内でね。取り込み中みたいだから、遠慮してくれ」
「いいからそこをどけ!」
「これでも僕はこの国の貴族家の人間なんだが、それを聞いても引く気にはならないのかな?」
「どうせあの成り上がりのクズの知り合いだろう!」
亜人は強めの口調で話しながら、僕の肩をめがけて腕を伸ばして突き飛ばしてきた。
この国の亜人は、本当に身分というものを考えずに振る舞うよね。懐かしきケモナー学園在学中にも思ったが、これは、行き過ぎた女尊男卑の副作用か、
それとも身分制という概念を彼らの頭では理解することができないのだろうか。亜人の業界団体とか利益団体とかに聞いてみたいね。
ただ、この時点で先に手を出したのは相手の方ということになる。こうなればやることはこの前の忌まわしきアトリー家の文官達に嵌められたときと同じだ。
陛下の方をチラ見すると、もはや安定のニヤケ顔を浮かべながら頷いている。さすが僕の師匠ともいうべき陛下だ、この後の展開が想像できたらしい。
亜人の伸びた腕を掴んで手元に引っ張り込み、バランスを崩したその顔面に思いっきり頭突きを見舞ってやった。
僕の額に、鼻の部分の骨とぶつかった感触が伝わってきて、すぐに亜人の鼻から血が滴り落ちてくる。
亜人が痛みのあまりに怯みながら、両手で鼻を押さえると、僕はすかさず、亜人の左右のこめかみを掴み、顔面に膝蹴りを連続で叩き入れた。
さらに動かなくなったところで顔面を掴み、ゼロ距離からファイヤーボールをぶつけて自慢の顔を焼いてやる。商売道具というのは念入りに潰してナンボだよね。
「忠告はしたからな?」
亜人の集団に目線を向けて、鼻で笑って煽ってやると、見事に逆上した数人がこちらに向かって殴りかかってきた。すぐに魔力を体内に巡らせて、僕は周囲に炎の槍を出現させながら、後ろを振り向く。
「陛下、ここは危険なので退避・・・あれ?」
さすがに陛下に万が一のことがあっては僕の首が飛びかねないので、ここからの避難を促そうとしたのだが、振り向いた先には既に誰もおらずじまいだった。
おいぃぃぃぃぃ!!!!!逃げるの早すぎるだろ!いや、いいんだけどね!きっと護衛の人が早急にこの場から連れ出してくれたんだろう。むしろありがとう!
気持ちを切り替えて、出現させた炎の槍をこちらに向かってくる亜人達に叩き込むと、炎が深々とその身体に突き刺さって爆発を起こす。
しかし、炎が刺さった亜人の背後から、さらに別の亜人2人が低い姿勢で飛び出してきて、そのまま僕の両足を取りにかかってきた。
咄嗟のことで反応が遅れ、そのうちの1人の顔面に蹴りを入れたのだが、そのままもう1人が右くるぶしの辺りに腕を回して僕の動きを封じてくる。
「くそっ!離れろ!」
しがみついている亜人の脇や背中に蹴りを何発叩き込んでも離れないので、ファイヤボールを背中にぶつけてようやく拘束を振りほどいたのだが、
魔法を放ったタイミングで、今度は、凶器を携えた亜人達が距離を詰めてきていて、僕の頭をめがけて角材を振り下ろした。脳が揺れるような感覚とともに、頭部に熱さと痛みが走り、意識が遠のきそうになる。
「痛えじゃねえか、この腰振りヒトモドキがあぁぁ!!!」
相手を怒鳴りつけ、自身を興奮状態にすることで必死に意識を保とうとする。
突然大きな声が上がって一瞬だけ怯んだ凶器持ちの亜人2人の顔面を、左右それぞれの手で掴み、そのままダッシュして、廊下の壁に相手2人の後頭部を叩きつける。
さらに、連続で後頭部を壁に叩きつけるとやがて動きが止まったので、次の標的を探そうと振り向こうとしたところで額の辺りに、これまで以上に激しい痛みが走った。
目線を上げると、肩で息をしてこちらを睨みつけながら、振り下ろした鉄パイプを手にしている亜人がいる。
正直、魔力で身体を強化していなかったら、意識をまるごと持って行かれていたと思う。
前世も含めて、金属で頭を殴られたことはなかったが、なるほど、これは確かに当たり所が悪ければ致命傷になってあの学園が殺人事件の現場になってしまうところだっただろう。
さすがにこの攻撃を何発も食らうと命に関わるな、と思ったところで、次の行動を考えるよりも先に自分の体が動いていた。
もう一撃を見舞おうと、鉄パイプを振り上げようとしていた亜人に向かって思いっきり飛び掛かり、顔面に拳を叩き込んでから、もう一度体当たりを食らわせる。
しかし、亜人の側もやられっぱなしではなく、体当たりをくらいながらも僕の胸倉を掴んできている。僕も亜人の上着の首元を掴むが、僕も亜人もお互いを掴み合いながら、バランスを崩して転倒してしまった。
転がりながら何回か上下が入れ替わるのだが、その先には、リオン君達が喫茶店をやっている部屋の隣の教室の扉があった。
成人男性2人の重さと転がり合う運動エネルギーに教室の扉が耐えられるわけもなく、大きな音を立てながら扉が弾き飛ばされ、僕達はその教室の中に転がり込んでしまう。
「きゃあああぁぁぁ!」
教室の中にいた女性の悲鳴が聞こえてくるが、それを気にする余裕はなく、僕達は部屋の中にあったテーブルにぶつかってようやく止まることができた。
だが、まだ余裕は全くなく、少しでも早く相手に対して、次の攻撃を繰り出すことばかり考えざるを得ない。
ぶつかったテーブルの上にちょうど置かれていた空のワインボトルが運良く視界に入り、それを手に取ると、残った力で思いっきり亜人の顔面を力の限り殴りつけた。
当然ながらボトルは粉々に砕け散るが、亜人は膝をついてこちらの方に倒れ込んでくる。
「こいつでトドメだあぁぁぁ!!!!」
その隙を逃さず、亜人の顔面を右手で掴み、トドメのゼロ距離ファイヤーボールを顔面で爆発させると、ようやく相手の動きも止まったようだ。
しかし、僕のほうもボロボロだ。肩で息をしながら、頭から流れ落ちてくる血をちょくちょく拭わないと視界が真っ赤になってしまう。
ひとまず隣りの部屋のリオン君達に合流しよう。確か主人公のオリヴィアさんは回復魔法が使えたはずだ。そう思い移動しようと思ったところで、後ろから声をかけられた。
「ギルバートさん、貴方、一体何をしてるんですか!?」
聞き覚えのある声がした方向に振り替えると、そこにいたのは緑色の攻略対象にして、クラリス嬢の元婚約者のジルクだった。
ん?どうして変装しているのに僕だとわかったんだ?そう思ったところで、足元に変装用のカツラが落ちているのに気付く。どうやらいつの間にか、被っていたカツラが外れていたようだ。
それにしてもまだピンピンしているようだな。てっきりもう既に、アトリー家の手の者に襲撃されているものだと思ったが・・・
「なんだ、ジルクか。どうやらまだ無事だったみたいだね」
「無事って・・・少なくとも今の貴方が言えるようなセリフではないと思いますが・・・」
「・・・それはそうかもしれないな。だが、お前・・・その恰好はどうしたんだ?」
頭から流血して、全身ケガだらけな僕が、ジルクの安否を心配するのは滑稽な話かもしれないな。
そんなジルクは、高級そうなスーツを身に纏い、上着の中からは濃い色のシャツに、強い光沢を放つ緑色のネクタイが見える。まるで、前世の歓楽街にあるホストクラブのホストのような出で立ちだ。
しかもよく見ると、教室の中の内装もまるでホストクラブだ。壁沿いに高級そうなボトルが並び、教室内に並べられたテーブルでは、客と思われる女子生徒と、もてなしをしているイケメン軍団・・・というか、残りの攻略対象4人じゃねぇか!
もちろんその中には、ラーファン家出身の謎の女に誑かされ、僕の妹との婚約を解消して、僕の当初の目的を台無しにしてくれた元王太子の馬鹿王子の姿もある。
言ってやりたい文句と嫌味は3つや4つじゃ収まらないためか、自然とそちらを睨みつけてしまう。
そこに気付いたのか、ジルクは僕と馬鹿王子の間に体を挟み込んで視界を遮りながら、自分達の催し物の説明を始めた。
「マリエさんのプロデュースで喫茶店をやっているのですよ。・・・他のお客さんもいるので、そんな怖い顔で睨まないでください」
「そうか、ちなみにそのマリエという女はいないのか?」
あたりを見回すが、室内いる女性生徒は客と思しき者ばかりで、報告書にあったマリエ・フォウ・ラーファンの特徴と一致するような人物は見当たらない。
「今は外しています。それよりも、学園祭に来て専属使用人と殴り合ってるなんて何があったんですか?」
「あっちにいる紫色の元婚約者、オフリーの女の奴隷どもが大人数でリオン君を襲撃しようとしてたんでね。止めようとしたら、今度は僕を襲ってきたから返り討ちにしたのさ」
「その割にあなたもだいぶ傷だらけになっていますけど?」
そう言いながらジルクは、さりげなくおしぼりを手渡してくる。さすが気が利く奴だな。血みどろになった顔を拭くと、蒸気の上がるおしぼりの熱が、顔面の傷に染み渡る。
少し息も整ってきたし、今度こそ、リオン君と合流するとしよう。
「さすがの僕も多勢に無勢だったからな。おしぼり、どうもありがとう。まあ、その・・・お前も夜道には気を付けろよ」
「頭の片隅に置いておきましょう。それよりも、貴方が叩きのめしたそこの専属使用人を連れ帰ってもらえますか?」
「ああ、わかった。邪魔したね、それとマリエとか言う女に、そのうち落とし前を付けさせるから、首洗って待ってろと伝えておいてくれ」
「そんなこと私達が黙って見ているとでも?」
「だったらお前らが頑張って大人しくさせておくことだな」
僕の目的を根本から台無しにしてくれた恨みは絶対に晴らしたいが、優先順位の問題として、今は他にやるべきことが多すぎる。
僕は、気絶している亜人の髪を掴んで、そのまま引きずりながら、ジルク達の喫茶店を後にすることにした。
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「マリエさん、もう出てきても大丈夫ですよ」
ギルバートが、マリエプロデュースのホストクラブ風喫茶店を出て、隣の教室に入っていくところを確認したジルクは、店内のカウンターの方に向かって呼びかけた。
亜人の専属奴隷と殴り合いながら教室に乱入してきたギルバートを見た瞬間、ジルクはとっさにマリエを店の奥に隠したのである。
マリエを囲う5人の中で、ジルクは、ギルバートの危険性を最もよく知っている。
顔を合わせれば、マリエに対して、何を仕掛けてくるかわからない。
国境周辺地帯の監査の最前線からは退いたと聞いたが、相手は公爵家の跡取りで、権力にも、武力にも事欠かない。一方で、今のジルク達は廃嫡されて後ろ盾といえるようなものはほとんどない。
有事の際に惚れた女を守り切れるか考えるだけで恐ろしかった。
そんなジルクの想いを知ってか知らずか、カウンターの裏から、隠れていたマリエが周囲を見回しながら、少しずつ顔を出すと、ジルクを問い詰める。
「ありがとうジルク。それにしても、あの顔面血だらけの殺意ダダ洩れなイケメンは誰!?」
「アンジェリカさんのお兄さんですよ」
「あの女に兄貴がいたの?」
「ええ。私が知る限り、バルトファルトよりも恐ろしい方です。公爵家の赤い通り魔なんて二つ名があるくらいですから」
「何そのおっかない仇名!?しかも、あのロストアイテム持ちの地味男よりもヤバいの?」
「ええ。目的のためなら、手段を選ばない時がある方ですから。私達は全力でマリエさんを守るつもりですが、あの方が本気で襲って来るのは考えるだけで恐ろしい」
ジルクの顔色が少し青くなっているのを見て、マリエは、その発言が真実性を帯びていることを感じ取る。
(あのジルクがここまで言うなんて・・・手段を選ばない・・・キレたときの兄貴もそうだったわね。気を付けないと・・・)
普段は大して危なくもないが、一度怒りのスイッチが入った途端、何をするかわからなかった、前世の兄のことを思い出したマリエであった。
専属使用人が出てくると、兄上様のバイオレントシーン開始の確率
が上がります・・・
コミカライズ最新刊のオマケ漫画の兄上様が草w
この話を書き始めた数日後に発売されたコミカライズ8巻で、突如、兄上様に百合豚属性が追加され、一気にみんなのネタの肴になった感がありますね・・・
さて、次回は、みんな大好きだけど、兄上様にとっては宿敵の王妃様とご対面でございます。