乙女ゲー世界は悪役令嬢の身内にも厳しい世界です   作:りーおー参式

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よし、何とか週一投稿守れた・・・!


第21話 初陣

ケモナー学園の学園祭で、オフリー家の亜人集団を相手に繰り広げた血で血を洗う殴り合いで負った傷は、だいたいオリヴィアさんに回復魔法で治してもらったのだが、やはり大事を取るべきだということで、僕は王都にある実家の屋敷で療養生活を送っている。

ただ、陛下によって、僕が見合いの相手であるディアドリー嬢に裸エプロンを要求したのを暴露されたため、父と顔を合わせても空気がとてもギクシャクする日々が続いている。

父上としても、息子の性癖を告げられて、どう息子に向き合うべきか答えが出せないのだろう。

いや別に癖というわけではないんだけどね。単に男女が盛り上がるためにはどうすればいいか、という議論における一手段に過ぎないんだけどね!

そのうち、裸エプロン公爵とか言われたらどうしよう・・・赤い通り魔とか、爆炎の顔玉潰しとは比べ物にならないくらい恥ずかしい二つ名だな。

めっちゃくちゃマイナス気味で巨大なネジを得物にする大噓憑きの人みたいじゃないか。

 

まあ、とにかく結果的にギクシャクしているということに変わりはない。気を紛らわす意味も含め、自室で書類仕事をしたり、領内の運営への指示出しをしているのだが、解せないことが1つある。

 

「コーデリア、お前がどうして毎日僕の身の回りの世話をしに来るんだ」

 

着替えとかは、もちろん自分でもできるのだが、頭部に巻いた包帯の交換から始まり、室内の清掃、食事の配膳までを、よりにもよって性悪腹黒眼鏡メイドのコーデリアが毎日やっているのである。

いや、他のメイドだっているだろうし、わざわざ彼女が全てをやらなくたっていいはずだ。

 

「若様は、私の立場をお忘れですか」

「アンジェガチ勢兼僕アンチ筆頭だろ」

「それもありますが、私はレッドグレイブ家の上級メイドです。そして、負傷した公爵家ご嫡男である若様の看護を末端の使用人にさせるわけにはいきません。しかも、人員が全体的に足りない中で、上級メイドは、アンジェリカ様がご不在のために比較的業務量に余裕のある私しかいないのです。ご理解できますか?」

「理解はするが大いに不満があるね」

「それに、実家の身分が高くない者に任せては、若様の魔の手が伸びてしまう恐れがあります。その辺りを総合的に検討した結果です」

 

使用人の配置を、僕が手を出すかどうかで決めるのはいかがなものかと思うんだけど・・・

 

「つまり、僕が屋敷に滞在するうちは、君が付いて回るということかな?」

「残念でしたね。ですが、私は若様がほんのりと嫌がっている表情が見られて満足です」

 

コーデリアがさほど大きくもない胸を張りながらドヤ顔を浮かべている。

 

「どうしてそんなことで勝ち誇ったように言えるんだ・・・」

 

僕とお前がセットになっていても、外見だけは超が付くほどのイケメンと性悪眼鏡メイドのラブコメなんかに需要はないぞ。

そうだな、無理やり企画をひねり出したとしても、せいぜい、前世の2時間ドラマのネタ枠的な企画で、金持ちボンボン探偵と性悪メイドの怪奇犯罪事件簿とかをやるくらいだろう。

前世で言えば夜九時くらいからオンエアかなとくだらない妄想をしていると、コーデリアが話題を変えて話を続ける。

 

「ところで、お嬢様を今後、どうされるおつもりですか?」

「別にお前が邪魔だから、アンジェをさっさと誰かに嫁がせるなんてことはしないから安心してくれ」

 

コーデリアも、自分の将来に心配があるのだろう。妹があの馬鹿王子と結婚していたら、なんやかんやで父や僕も実家の権力を使って、彼女をアンジェの近くに置いていただろう。

しかし、現実では、妹の婚約は解消となり、国内がバタバタしているのもあって、次の縁談の話は全く出ていない。

 

「私は真剣にお聞きしているのですが」

「そもそも、アンジェの取り扱いは難しいんだ。その辺りは僕ではなく、父上が決めることくらいわかるだろう?仮に僕に決定権があっても、この国の中で、ということになると、どうしてもあの馬鹿王子の元婚約者という望まぬ肩書が付きまとうからね・・・そんな境遇に妹を置きたくないな」

「ならば他国をお考えで?」

「それこそ父上のみぞ知るところだ。まあ、あの王妃の出身国であるレパルドに嫁がせるとか言い出したら何があっても止めてやるから安心しろ」

「若様もそういう、何かを壊すときだけは頼りになりますね」

 

このメイドは僕のことをホルファート王国の破壊神か何かと勘違いしているのではないだろうか・・・

 

「ただ、若様もお嬢様も、近ごろ、ずいぶんとバルトファルト男爵とお近付きに見ますが、まさか・・・」

「彼はダメだ!絶対ダメ!」

「も、申し訳ございません・・・!」

 

しまった、食い気味に怒鳴ってしまった。

珍しくコーデリアが怯えた顔を浮かべている。

・・・可哀そうなことをしてしまったな。

せっかくアンジェが主人公様から断罪されずに済んだというのに、横恋慕と嫉妬を向ける相手が主人公様のターゲットと同じになってしまう、なんてことは絶対に避けたい。

理由は、身分差とか、外聞とか、そういったものではない。

この世界が乙女ゲーの世界で、運命の修正力のようなものの存在を否定できる根拠もない以上、主人公様の恋愛を邪魔するようなことがあっては、妹に何か重大な不利益が突如として降りかかる恐れがある。

リオン君は主人公様の獲物なんだ、そこに立ち返って、アンジェがリオンとこれ以上フラグを立てないようにしたほうがいいのだろうか・・・

 

ただ、いつもは腹立たしいコーデリアであるが、彼女の視点は非常に参考になるものだった。

僕は、オリヴィアさんとリオン君を主人公様と(追加コンテンツの)攻略対象、というセットのようなものと見ていた。これはあの乙女ゲーをいくぶんか知っているからだ。悪く言えばゲーム脳ともいえる。

しかし、別の角度から見ると、決闘騒動で窮地に立たされたアンジェをリオン君が救った、お姫様と騎士の物語という視点があるのか。

どうしても、オリヴィアさん達がゲームの中の登場人物だというバイアスが僕にかかっていたことは否定できない。

コーデリアにとっては知ったことではないのに、彼女を理不尽に怒鳴りつけるという最低なムーブをしてしまった。反省しつつ、少し誤魔化してフォローを入れないとな。

 

「驚かせてすまなかったね、びっくりして大声を出してしまった。その・・・リオン君には、もう別の女性を宛てるつもりなんだ」

「バルトファルト男爵のことを取り込むのだろうとは思ってましたが、相変わらずお手が早いですね」

「仕事が早いと言ってほしいね。それにほら、辺境の貴族に公爵令嬢が嫁いだら、名誉以上に負担が大きすぎるよ。僕が廃嫡されて君の実家に婿入りするとかになったら扱いに困るだろ?」

「想像するだけで気持ち悪いですね。実家の居心地が悪くなりそうです」

 

少し元気になって良かった。

・・・よかったけど、気持ち悪いって言われたよ?何この、試合に勝ったけど勝負にボロ負けしたような気分は・・・あんまり酷いこと言われるとさすがに僕も泣くぞ!

とにかく、僕がアンジェの縁談に動く時が来るとすれば、何かしら僕の利益か不利益が関係するときだろう。

これまでの方針と変わった行動になる可能性が高いな。

ダブスタクソ兄貴とか言われたらどうしよう・・・

 

「それと、元同僚達から連絡です。公国の国境付近の動きに近頃変化があるとのことでした」

 

そうか、やっぱりゲームのシナリオは基本的には踏襲されるのか・・・

 

「わかった。妻子については、今までの功績もある。いざとなったらうちの領地に逃げるよう伝えておいてくれ」

「かしこまりました」

 

戦争というものを僕は当然ながら知らない。だが、近い将来、ほぼ確実に公国との戦争は起こる。

その被害をできるだけ小さいものにしようと頑張ってはきたが、戦略レベル以上の規模で僕にできることはなくなってしまった。

戦争は起こるものだという前提で動くことはマストだが、僕は、戦争をも利用して主人公様と攻略対象をくっつけなければならない。言うなれば死の商人ならぬ、死の仲人とでも言うべきなのかもしれないね。

 

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その日の晩、最近にしては珍しく真剣な顔をして今朝までの気まずさなど微塵も感じさせない父が、屋敷内の執務室に僕を呼ぶと、懐から一枚の書状を差し出した。

 

「ギルバート、いきなりだが、お前の初陣が決まった」

「またずいぶんと急な話ですね」

 

内容を要約すれば、少し前に王都を出発したバルトファルト男爵、つまりリオン君に合流したのちに、ウエイン準男爵領周辺を根城にする空賊を討伐しろというものだ。

しかも、丁寧に陛下の直筆の署名まである。これは、裏に何かがあると言っているに等しい。

ウエイン準男爵・・・たしか、あのオフリーの寄子だったよな。そこにどうしてリオン君が・・・

 

「王宮でこっそり渡されてな。オフリーが艦隊を動かす準備をしているらしい。ローランドがここまで動いたあのであれば、何かを掴んでいるのだろう」

「学園祭で手ひどくやられたばかりなのに、ずいぶんと強気ですね」

「その報復もあるのだろうな。男爵のロストアイテムは強力だが、いかんせん、数と権力で勝る伯爵家が相手となると厳しかろう」

「となると、彼を取り込もうとしてる僕への、陛下なりのフォローですかね」

 

父が若干うつむき、嫌そうな顔を浮かべる。

 

「敵対派閥への牽制にもなるし、ちょうどいい機会だ。たまにはこっちが陛下を利用してやる。それに、この国の貴族どもは、結局のところ、強さを示さなければ従わない。お前が辺境で悪妻を刈るのを悪いとは言わないが、宮仕えばかりでないことを証明することもお前に必要だろう」

 

おそらく貴族連中というのはうちの寄子となる家も含まれているのだろう。

アンジェの決闘騒動で付き合いが細くなった家も少なくない。自派閥の力が弱体化する中で、トップの跡継ぎがもやしっ子じゃ話にならないと言いたいんだろうね。

この空賊討伐をきっかけに、巻き返しをはかるきっかけを父が欲したとしても不思議ではないな。

ただ、強いやつにしか従わないって言葉だけ聞くと、もうこの国は、修羅の国であるかのように聞こえてしまうから困るね。

 

そんなちょっとだけアホなことを考えていると、いきなり乱暴に扉が開き、アンジェが室内に入ってきた。

僕たちを見ながら肩で息をしている。相当急いでここまで来たのだろう。

 

「アンジェ、礼儀のことはあえて言わないよ。何があったんだい?」

「はい、実は・・・」

 

僕達はアンジェの口から、学園で起こったこと、つまり、ウエイン準男爵領内の空賊騒動をオフリー家が裏から関わっていること、そこにリオン君やオリヴィアさんを巻き込もうとしていること、

オリヴィアさんの部屋がオフリーのドーナツ頭とその取り巻きによって荒らされていたことを聞かされた。

 

決まった。オフリー。お前ら、ぶっ〇す☆

 

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オフリーの企みを聞き、王都に滞在している公爵家の飛行船のうち3隻が討伐に赴くこととなり、今、僕は旗艦的な位置づけの飛行船のブリッジにいる。

 

王都を出発してからそれなりに時間がたっている中で気付いたのだが、船長は公爵家に長く仕えている歴戦の飛行船乗りだし、クルーの練度も高い。さらに、鎧のパイロット達にもベテランが多い。

これ、公爵家の跡取り様というボンボンに、空賊退治の功績を上げさせるために、特別に編成された部隊なんじゃないだろうか。

後でさらに何隻か増援を出す準備をしているという話だし、それらも合わせれば、前世で言うところの勝ち確な戦いになりそうだ。

ただ、主人公様やリオン君が心配だからとアンジェまで乗り込んできてしまった以上、父としては、これでも足りないと考えているのかもしれないね。

 

「若様、そんな怖い顔をしなくても、我々がしっかりと初陣をお飾りいたします」

 

きっと外部から見ると、僕は険しい表情をしていたのだろう。船長が僕の緊張をほぐそうと、声をかけてきた。

 

「ありがとう、船長。我が家に長年仕えてきた君達を当てにしていますよ。現場の君達を信頼して、指揮等に余計な口出しをして邪魔するようなことはしないから安心してくれ」

 

頭をよぎるのは、前世のアニメや漫画で、調子に乗ったボンボンが、机上論と権力を振りかざして現場に迷惑をかけた結果、負け戦となるという展開だ。

だから僕は、今回は、ブリッジの船長席の横から、要所要所で、決裁のハンコを押すような役割を果たすのが主要な役割だと考えていた。

ついでに言うなら、アンジェの話や陛下の討伐命令発出から察するに、オフリーが色々と企んでいるようなので、リオン君が武力のみで解決できないところを、実家の権力で連中を黙らせればミッションコンプリートだと思っている節がある。しかし、我が家お抱えの飛行船の艦長はかなりの脳筋タイプなようだ。

 

「若様がいくら辣腕でも鎧乗りながら飛行船の指示を出すのは無理がありますぜ?」

「鎧に乗りながら?僕はお飾りっぽくブリッジにいて、船長の指示の追認と責任取りをするんじゃないのか?」

「そこらの木っ端貴族ならそれでいいんでしょうが、若様は将来のレッドグレイブ家当主です。相応に武勲というものが必要になるでしょう」

 

おいぃぃぃぃぃ!!!僕も鎧の先頭に出ろってこと?

たしかに、プロトタイプアロガンツを連れて来てはいるけど、また模擬戦を2千回こなせてないぞ!?

 

「はあ・・・できるだけ、歴戦の鎧乗りの邪魔をしないように心がけるとするよ」

「ドーンと大船に乗った気でいてください」

「そもそもこの飛行船が、文字通り相当大きいじゃないか」

「さすが若様、ちゃんと突っ込んでくれてありがとうございました!」

 

船長が大声で笑い、その声がブリッジ内に響く。

ダレてはいないが、誰もが緊張しすぎてもいない。

命を懸けた戦いが日常のものであることを前提に、他のクルー達も、適宜、ほどよくリラックスできている。

 

「緊張のほぐし方が上手いね。女性にモテるだろう?」

「若様と違って顔の作りがイマイチなもんでして、嫁さん一筋です。さて、そろそろ目的の準男爵の浮島があるエリアなんですけど・・・」

 

照れ隠しのような笑みを浮かべ、鼻の下を指の側面でこする仕草をする船長は、雰囲気がとても男前に思えるね。

だが、双眼鏡であたりを見回す彼の表情が瞬時に厳しいものとなる。

 

「若様!あちらを!」

 

席に備え付けてある双眼鏡を僕も手に取り、船長が指さす方向を見ると、数隻の飛行船と、見覚えのある大型飛行船パルトナーが交戦しているのが目に入ってきた。

しかも、パルトナーの甲板では、左手にバトルアックスを持ったリオン君のアロガンツが、空賊のものと思われるカスタマイズされた鎧に切りかかっている。

空賊の鎧も抵抗しようとしていたが、アロガンツはすばやく斧を振り下ろすと、あっけなく空賊の鎧は腕を切り落とされ、アロガンツは右手で空賊の鎧の首元を掴む。

 

やはり、既存の鎧とアロガンツでは素のパワーが違いすぎるね。まるで相手になっていないのが双眼鏡越しでもわかる。

アロガンツはそのまま首元を握りつぶしつつ、首を持ったまま鎧を甲板に叩きつけた。さらにバトルアックスや右の拳で乱暴に鎧を殴りつけ続けると、パイロットであろうスキンヘッドに隻眼の男が鎧から抜け出してきた。

 

どうやら勝負あったようだね。しかし、リオン君の戦い方・・・力任せに相手を痛めつけるやり方は、まるで八つ当たりをしているかのようにも見受けられる。

ここまでの戦いで何があったのかはわからないが、彼への接触は慎重に行ったほうがいいかもしれないね。

 

「船長、勝敗は決したようだ。僕らの出番はなかったね。小隊を幾つか出して、周囲の残党を警戒しつつ、パルトナーにコンタクトを頼む」

 

僕の初陣は、何やら波乱の幕開けとなりそうだ。




次回か次々回だろうけど、ジルク以外の5馬鹿と絡むのって初めてなことに今さら気付いた・・・


〇曜日2時間ドラマ劇場「ボンボン探偵と眼鏡メイド」

番組解説
主人公のギルバートの実家はものすごく金持ちで、ボンボンの彼が道楽で開いている探偵事務所には、今日も妖しげな美女から、猟奇的な事件解決の依頼が舞い込んでくる。

下心満載で調査に乗り出すギルバート。
ただ、結局いつも謎を解くのは身の回りの世話を実家から頼まれて事務所にやってくるメイドのコーデリアで、ギルバートは実家の脛をかじって調達した莫大なお金を事件のトリック暴きの検証に使うだけしかしていないのであった・・・


すいません、買いてる途中に、風都探偵を見て、変な電波もまとめて受信してしまいました・・・
アニメで動くダブルがかっこよすぎたのと、マダオボイスのUSBメモリが健在で大満足です。
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