乙女ゲー世界は悪役令嬢の身内にも厳しい世界です 作:りーおー参式
ただ、新刊は冒頭から面白いフレーズが目白押しでしたね。
「粘膜的な接触」www
決闘騒動で敵対したことの詫びと、アトリー家との婚約破棄で勢力が弱まった状態の打開策を兼ねた、マーモリア家による側室押し付け危機に見舞われ、危うくジルクの妹と婚約させられそうになった僕だったが、
公爵家への詫びとして、”騒動の原因であるジルクが高性能な専用機を持参してオフリー家討伐部隊に参加することでケジメとする”、ということでマーモリア家本家をジルクが説得する、という落としどころを見つけることができた。
説得が上手くいく保証はないが、無駄に有能なジルクのことだから、きっと色々と卑怯な手を使い、自分が欲しい成果を持ってくるだろう。
ただ、非常に神経を使う奴らを相手にしたせいで、精神的に疲れたので、屋敷に戻る前に僕は王都内のダンジョンで少し気晴らしをしていくことにした。
あのケモナー学園に通う学生達は在学中から何度も潜ってきたダンジョンであり、僕も何回も潜ったことがあり、浅い階層で弱いモンスターを倒してストレス解消と、魔石や希少金属を見つけて小遣い稼ぎをしようと言うのが目的だ。
一応、お金に困っているということはないのだが、どうしても前世の感覚が残っているせいで、領民達が納め税を原資にしている金を手元で使うのが少し”面倒くさいな”という気持ちになってしまう。
前世の所属部署が総務や経理だったせいで、役所から補助金、要は税金をもらったときの後始末を、どうしても無意識に考えてしまうというわけだ。
報告書やら領収書を矛盾がないようにして、一円単位で揃えるのって本当に面倒くさいんだ!
そんな感覚が残っているせいで、税金感のある金を直接使うのって、微妙に嫌な気分になってしまうから、手元で使う遊び金は役人をしていた頃の給料とか、こっそりダンジョンに潜って稼いだ金を使うという貧乏臭い習慣が身に付いてしまっている。
というわけで、気晴らしと小遣い稼ぎのためにやってきたダンジョンに僕はいるのだが・・・
何やら奥から、大きな物音が聞こえてきて、だんだんとこちらに近付いてくる。耳を澄ませてみると、人の声も混ざっているような気がする。
間もなく僕の視界に2人の人影と、それを追うモンスターの大群が入ってきた。
2人とも非常に小柄だが、全身を覆う甲冑を着ている。子供がどうしてダンジョンにいるんだろう。
可能性があるとすれば、冒険者を目指す子供がなけなしのお金で甲冑を買って、一攫千金を目論んだ、というあたりだろうか。
善人を気取るつもりはないが、目の前で子供がモンスターの餌になるのを見るのは気分のいいものではないか。
「いやあぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「次から次へと、もう何なんですか、ここはあぁぁぁ!」
モンスターに追われながら絶叫している2人を助けるために、右手を上にかざして魔力を集中させると、大きめのスイカくらいの火球がいくつも浮き上がる。
かざした手を振り下ろすと、火球がいっせいにモンスターの群れに向かっていき、ぶつかると同時に大爆発を起こし、モンスターは黒い煙へと姿を変える。
ここ最近は周りを気にしながら、亜人相手にちまちまと魔法をぶつけてばかりだったから、気の向くままに魔法をぶっ放すのは気分がいいね。
それが人助けとストレス解消、小遣い稼ぎも兼ねているとすれば、なおさら気分がいい。
挨拶くらいはしておこうと、軽い足取りで、モンスターから逃げてきて地べたに座り込んでいる2人に近付いていく。
「大丈夫かい?冒険者に憧れるのは仕方ないが、子供だけでダンジョンに潜るのは危ないよ?」
「誰が子供よ!私はもう成人済みなんですけど!」
「ち、ちょっとご主人様、助けてくれた人にそんなこと言っちゃ失礼ですって!」
反論してきたほうの子供が、怒鳴りながら甲冑の兜を外す。兜の中からは押し込められていた金髪が飛び出してきて、青い瞳をした整った女の顔立ちが現れた。
そして、青い瞳が僕のことを睨みつけた瞬間・・・
「「あ・・・」」
女が口を開くのだが、僕の顔を見て言葉を失ってしまったようだ。
一方の僕も、まったく予想もしないタイミングで突然現れた顔を見て、次の言葉を続けられなくなっていた。
その代わりに、全身をめぐる血流の圧力が急激に上昇していくのがわかった。
キザなセリフや、嫌味や皮肉よりも先に、怒り、憎しみといった感情ばかりが噴き出してくる。
僕と妹は激情家だと言われることが多いのだが、それは確かに正解かもしれない。思考が巡るよりも早く手が動いていた。
僕は、目を大きく見開きながら腰に携えていた剣を引き抜いて、目の前の女を目がけて、上段から思いっきり振り下ろす。
だが、女はとっさに後ろに飛んで回避し、空振りとなった剣先は地面に突き刺さる。
「クソ、仕留めそこなったか」
「いきなり何すんのよ!」
女は、いきなり斬りつけられたことの怒りをぶつけてくるのだが、僕にとってはどこ吹く風だ。
僕は、あの乙女ゲー世界に転生したことを知った日から、妹の婚約解消からの断罪イベントを避けようと動いていた。
しかし、妹が学園3年目に起きるはずであったそのイベントは、僕が王都を留守にしている最中に、しかも一年生の夏休み直前という2年以上の前倒しで起きてしまった。
その直接的な原因となったのが、僕の前で悪態を付く女、いわば僕の数年越しの願いを粉々にした宿敵ともいうべき相手、マリエ・フォウ・ラーファンだったからである。
「・・・初めましてだな、王国を搔き乱す邪悪な魔女殿?魔を滅するのは騎士の役目、僕はそれを果たそうとしただけさ」
「レディにいきなり斬りかかる騎士なんて聞いたことないわよ!」
「おや、自分が誰からも怨まれない無垢な存在だとでも思っているのかい?」
「だからって無言で剣を振り下ろす!?」
「そうか、魔法で焼かれるほうがお好みだったか。そいつは失礼した」
一度、剣を振り下ろして思考が回復したところでようやく嫌味をぶつけることができたが、相手の女もどうやら怒りのスイッチが入ったらしい。
「ご、ご、ご主人様、このヤバい人は誰なんですか!?」
マリエというラーファン家の女の腕にしがみつきながら、僕のことを尋ねるもう一人の子供は、あの馬鹿王子とジルクが買い与えたというショタエルフの専属使用人か。
あの決闘騒動の後に上がってきた、このマリエという女に関する報告書の中に記載があったのを思い出した。
なんかスパイラルなボールをぶつけてきそうな声をしているな。
「文化祭のときに見たでしょ、カイル!あのアンジェリカの兄貴よ!」
「それって爆炎の顔玉潰しじゃないですか」
「そうよ・・・だから気を付けなさい、ダンジョンのどんなモンスターよりもヤバい相手だと思うわ」
マリエという女が腰を落とし、ショタエルフを後ろに下がらせてかばうような姿勢で身構える。
ほう・・・僕と対面して戦意を維持しているのはさすが、普通の屑女とは大違いだな。国内の超が付くほどの大物の家の跡継ぎ5人を股で囲うだけあって、腹が据わっているようだ。
「女の子相手にぶつける殺意とは思えないんだけど?」
「君にはそれだけの価値があるってことさ」
「派手に遊んでた女性を消して回ってたっていう噂は本当みたいね」
「ずいぶんと角度がついた見方だね、王国への不満の火種を消しただけさ」
「だからって、その子達、消されるほどのことをしたっていうの?」
「愛人、亜人を囲わせて、領地運営の財政が傾いてまで金を貢がせて王都で遊興に耽る贅沢三昧をしてきた連中だな」
「それがこの世界の男の甲斐性ってもんじゃないの!」
「反吐が出るような思想だな。それが蔓延るおかげで領主の恨みは王国へ向かう。民が重税を課せられれば領主や王国が怨まれる。税を重くせず領主が貧しくなれば、外国のスパイ工作が入りやすくなる。どう転んでも王国が危うくなるのさ。そんな状態で、王妃になるはずだった妹に火中の栗を拾わせることなんてできないさ」
妹のために悪妻を駆除していた、と言ったところでマリエという女の目元がピクリと動いた。
妹という単語が何か本人の琴線にでも触れたのだろうか。
「つまり、みんなアンジェリカのためにやったっていうことかしら」
「・・・どこぞの他人の屑女の命と家族の命は等価値じゃないのでね。まあ、結局は誰かさんのせいで盛大な無駄となってしまったわけだ。そういった意味では連中は無駄死にかな?」
宿敵との言葉のやり取りで怒りのあまりテンションが上がっていたのか、つい、どこぞの悪役が言いそうな台詞を言ってしまった。
「僕の失敗は問題だらけの君の実家、ラーファン家にさっさとガサ入れをして取り潰して、害虫が学園に入学することを阻止できなかったことだろうかね」
「・・・たしかにあの学園でも酷い女はわんさか見てきたけど、私からしたらアンタもたいがい屑ね」
5股女の台詞とは思えないね。上と下の口は別人格なのかな?さすがに下品すぎるので口にするのは理性で止めておくとするか。
静かに剣をマリエという女に向けた。
「少なくともアンジェは小さい頃から人生をかけてあの馬鹿王子の婚約者であろうと努力していた。その妹を傷付けたお前に、落とし前を付けさせようとするのは自然な感情だろう?」
だが、対峙している女は僕の煽りにも乗ってこないどころか、鼻で笑いながら反論してくる。
「はあ?もっともらしいこと言ってるけど、それって単なるシスコンのお節介じゃないのよ!そうじゃなければ、自分が王妃の兄って立場になれなかったことの八つ当たりね」
おいおい、この女、なかなか面白いことを言ってくれるじゃないか。
何故だろうか、目元がピクピクと動き、血圧がまた上がってきたような気がする。
偶然かどうかはわからないが、案外的を射た返しをしてくるとは思わなかった。なるほど、あのジルクの奴が篭絡された、というのも理解できなくもないな。
「ハハハハハハハ・・・おい女。お前、面白いやつだなって言われたことはないか?」
「何が面白いのよ!でも、そうね・・・王宮にいる、男に擦り寄ってくるばかりの退屈な女とは違うな、とはよく言われるわ」
若干同意できる部分もあるが、男に擦り寄るってのはアンジェのことも含んでいるんじゃないだろうな。
「なるほど、仮にも将来を期待された貴公子達を、ごく短期間で誑し込めるだけの頭の回転はあるようだな。だが、それなら僕の怒りの理由も理解はできるだろう?」
「さっきも言ったけど、アンタが身勝手な屑だってことは理解しているわよ」
「奇遇だね。僕もお前のことを同じように思っている。不本意ながら僕達は気が合うのかもしれないね」
そう言いつつ、僕は掌の上に魔力を集めて、先ほどモンスターの大群にぶつけたのと同じような火球を何個も出現させて、マリエと、カイルと呼ばれていたショタエルフに向けて放つ。
エルフは地面に着弾したファイヤーボールの爆発に吹き飛ばされ、ダンジョンの壁にぶつかって気絶したのか、動かなくなる。
一方で、マリエは甲冑を着ているとは思えないスピードで走り回ってファイヤーボールを回避していた。
こいつ!魔力による肉体強化のレベルが思っていたよりも高いな。
思わず感心してしまうが、マリエはそのまま猛スピードで僕の方に向かって突っ込んできた。
握った拳は眩く光っており、魔力を重点的に集中させていることがわかる。
体が小さいことと、魔力による肉体強化のレベルが高いことが合わさり、予想していたよりも速いスピードだったことから、回避よりはガードしたほうがベターだろう。
だが、このときに相手が学生だと油断したのだろうと言われればその通りだっただろう。
「はあぁぁぁぁっ!!」
魔力と気合が込められた拳を、魔力を込めた左腕で受け止める。
魔力強化のレベルが高いとはいえ、あくまでもそれは学生レベルであり、小柄な令嬢の振るう拳なんてたかが知れているものだと僕は考えていた。
しかし、腕に伝わる衝撃は思っていたよりもはるかに強く、僕は身体ごと吹き飛ばされてしまった。
「このっ、なんだこの威力・・・!」
殴られた衝撃で地面を転がり、土ぼこりを上げながらも体制を立て直した僕だったが、対するマリエは素早く背中に背負っているライフルを手にかけようとしていた。
そして銃口をこちらに向けると思いきや、逆に銃口部分を手に取って振りかぶり、銃床部分を僕に向かって振り下ろす。
純粋な近接戦闘ならともかく、魔法という飛び道具込みの戦いの場合に、ライフルのような長い得物の命中率はそんなに高くないことを知ってやがるな。
とっさに剣で受け止めようとするが、振り下ろされた銃床は僕の剣を容易く叩き折ってしまった。
続けてマリエが2撃目を加えるためにライフルを振りかぶろうとしたところで、僕は右腕に持っていた剣を投げ捨てて、銃身を無理やり握ると、これまで亜人の顔面などにしていたように、ゼロ距離のファイヤーボールを爆発させた。
その衝撃で砕けた銃の破片がいくつも掌に刺さって、激しい痛みが僕を襲う。
一方のマリエはファイヤーボールの衝撃を、後方に飛んで緩和しながら、再び魔力を拳に纏わせている。体勢を整えたら、またこっちに殴りかかってくるつもりだろう。
くそ、この女の身のこなしはまるで野生の猿だな!本当に貴族の令嬢か!?野生児だって言われた方が信じられるぞ!?
武器を破壊したまではいいが、僕の方は、右腕は銃の破片が刺さって血みどろ、左腕はマリエの拳をガードした衝撃でまだ痺れが残っている。
学生、しかも女を相手にして、イキり倒しながら口撃を始めたのに、ステゴロの戦いになったら大苦戦だなんて、我ながら、なんとも情けないじゃないか。
だが、認めざるを得ないな、こいつは・・・強い!今まで戦った誰よりも強いモンスターだと思ったほうがいいかもしれない。
残った武器は魔法と・・・あと何かあったか!?
「調子に乗るなよ!ファイヤランス!!」
魔法名を口にして、血みどろの右腕をマリエの方に向けると、炎の槍が僕の周囲に浮かび上がって、マリエへ向かって放たれる。
しかし、敵もそう易々と直撃を受けてはくれない。
甲冑を身に付けているとは思えない速度で炎の槍を回避しつつ、避けられないものは拳で叩き落しながらこちらに突撃してくる。
そこにカウンターを当てようと、しびれの残る左腕で折れた剣を無理やり握り、短い刀身を振り下ろすのだが、僕の懐にまで入り込んだマリエは身体を脇に逸らすことで回避してくる。
「ぶっ飛びなさいよ!」
怒声が飛び、マリエの魔力の込められた全力の拳が、ガラ空きになった僕のボディに突き刺さる。
僕の内臓に、喰らったこともないくらいの強い衝撃が伝わり、唾液と空気が逆流するのがわかる。体の中のダメージが大きく、息を吸おうとしても、上手く吸えない。
だが、一方で、渾身の一撃を叩き込んだマリエの表情に驚きの色が現れた。
何故かって?
相手の機動性が僕よりも高い上に、お互いに武器もない状況なら、拳による攻撃でトドメを差してくる、その箇所は、プライドを潰すための顔面か、急所が集まるボディを狙って来ることに賭けて、わざと懐に入らせたからに他ならない。
そして、僕は前世の死因が腹部を刺されての失血死だったから、外に出るときは常にボディには鉄板を仕込んでいる。
マリエは、僕が魔力で強化した腹部と厚みのある鉄板を殴ったことから、さすがに拳にもダメージがあったようで、ようやく隙ができた格好だ。
「ようやく捕まえたよ、王国を揺るがす魔女殿?」
僕のボディに突き刺さった腕を、ようやく握力の回復した左腕で掴む。
だが、僕の左腕はマリエを捕まえるのに使用中で、右腕は血みどろの大怪我で、武器になるものもない。
いや、育ちのいい坊ちゃんだったらそう思うだろうし、僕の外側は、この乙女ゲー世界でもおそらくトップクラスの外見を持つ大貴族の家のお坊ちゃんだ。
ただ、その中身は社畜根性の染みついた平凡な一般人だ。そして、前世で読んだことのあるマンガやアニメでは、こういうときに繰り出す最後の切り札というのは決まっているものだ。
「え?」
ニヤリと笑った僕を見て、マリエの顔が強張っていた。おそらく僕の口角は大きく上がっていたことだろう。
乙女ゲーの世界で、少年マンガの奥の手を繰り出すのは禁じ手なのかもしれない。だが、それでも僕はまだやらなければならないことがある。手段を選んでいるような余裕のある立場じゃない。
残った魔力を体の一点に集中させて歯を食いしばり、僕は最後の一撃を繰り出すべく、自分の頭を、マリエの頭目がけて振り下ろす。
ゴチン!という音が頭蓋骨越しに響いてきて、お互いの頭部がぶつかった。
その衝撃で、僕は後ずさりしながら、仰向けに倒れ込んでしまった。衝撃のせいか、視界の目の前がチカチカと光っていて、思考もボンヤリとしている。指先くらいは動くが、その他は眼球や口くらいしか動かないだろう。
一方のマリエは、うつ伏せに倒れ込んだまま、指先や足先がピクピクと動いているようだ。
どうやら、相手にも大きなダメージを与えることはできたようだが、これで倒せているかどうか・・・
いや、立ち上がられたら再び大ピンチだ。頼む、立ち上がらないでくれ・・・
情けない話の繰り返しになるが、いい歳こいた男が、女性、しかも学生相手にここまで痛めつけられて戦闘不能になりかけたダメージを受けたなんて、墓場まで持って行って隠蔽したい。
「・・・たいの!」
うつ伏せになっているマリエが何かを呟いている。
「私は・・・今度こそ幸せを手に入れてやるのよ・・・!」
今度こそ?まだ15、6歳くらいのはずなのに、何を言っているのだろう。
だが、こいつも、また、ずいぶんと身勝手な言い分じゃないか。
「人の幸せを踏みにじってまで幸せを掴もうとするなら・・・恨まれる覚悟くらいはしておくんだね」
「アンタも・・・そうじゃないのよ」
「否定はしないさ」
だからこそ、僕だって、一部のクソ女や亜人、敵対派閥の連中からは、顔玉潰しとか通り魔とか、不名誉極まりない二つ名までもらっているんだ。
「せっかく王子様達を落としたっていうのに・・・」
おいおい、まるでゲームみたいな言い方だな。
・・・ん?ゲーム?そういえば、さっき、この女は”今度こそ”って言ってたな。
「こんなところで・・・悪役令嬢のクソ兄貴なんかに邪魔されてたまるかってのよぉぉぉぉ!」
マリエは叫びとともに、地面を拳で殴りつけると、膝立ち状態で、肩で息をしながらも、僕を睨みつけている。
しかも、魔力で再び身体を強化しているのか、光が体の各所を覆っている状態だ。
絶体絶命の危機に、意思と根性で立ち上がるって、まるでこいつが主人公みたいじゃないか。
いや、ちょっと待て。こいつ、さっき僕のことを悪役令嬢の兄って言ったな。
アンジェのことを悪役令嬢だと言って、15,6歳で今度こそ幸せになるって・・・まさかコイツ!
「おい!お前、アンジェが悪役令嬢って言ったな!?お前、もしかして・・・転生者か!?」
「え・・・ってことはアンタも!?」
マリエの表情が怒りから驚きへと変わり、力が抜けたのか、ペタンと座り込んでしまう。
「お互い、気に入らない相手だろうが・・・一度、情報を共有しても損はないと思うんだが、どうだろう」
「・・・そうね。話くらいは聞いてあげるわ」
まさか僕以外に転生者がいるとは思わなかった。
ゲームのシナリオを大きくぶち壊した同郷の女・・・先の展開が全く読めなくなってきたな。
マリエさんの生身の戦闘力は、たゆまぬ訓練の成果と山中での野生動物との命の取り合いを通じて高まっているものとして、設定しております