乙女ゲー世界は悪役令嬢の身内にも厳しい世界です 作:りーおー参式
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投稿できない、の悪循環 w
オフリー屋敷にいきなり現れた黒い怪物に追われて、絶体絶命の窮地に陥った僕だったが、間一髪のところでアロガンツ・ブロスが助けに来てくれて、その怪物を殴り飛ばしたおかげで九死に一生を得ていた。
『マスター、助けに来たよ♪』
まとわりついていたステファニーを引きはがして、差し伸ばされたアロガンツ・ブロスの腕を伝い、僕はコックピットに飛び乗った。
殴られた黒い怪物が体勢を整えて起き上がろうとしているのを見て、追撃をかけるべく、アロガンツ・ブロスの拳を怪物に向けて放つ。
例えるなら、ものすごく硬いゴムを殴ったような手応えだったが、殴打の衝撃は黒い怪物、ジルクの話によるとラーシェルの持つロストアイテムである魔装に寄生された元人間らしいのだが、その魔装をぶっとばすには十分だった。
「ブロス、よく来てくれたね」
『エッヘン!アロガンツ・ブロス、できる子!』
調子に乗っちゃう人工知能とか感情が豊かすぎるな。
ジルクの裏切りのせいで、オフリー家のステファニーというクソ女兼足手まといを押し付けられて、魔装から逃げそこなったが、パイロットも乗ってないアロガンツ・ブロスが助けに来てくれた。
この機体自体も、現在の技術で再現できないロストアイテムであるが、パイロット無しで動けるということは、アロガンツ・ブロスに搭載されている人工知能は相当高度なものなのだろう。
そんなことを考えていると、殴り飛ばされた魔装が、先端が刃となっている触手を何本か伸ばしながらこちらを見ている。なるほど、接近戦か。
それにしても、触手がウネウネと動いていて気持ち悪い。
「ここからしっかり反撃していくぞ!グレイブ、セット!」
アロガンツ・ブロスが、背部にマウントさせていたグレイブを手に取ると、その刀身が高熱を帯びて赤く輝き始めた。
繰り出された魔装の触手の群れを次々とグレイブの刃で叩き切ると、傷口から黒い液体が噴き出す。
やけにあっさりと斬れたと思うのだが、数秒すると、黒い液体の流出が止まり、その傷口から新しい先端を持った触手が生えてきた。
この野郎、再生能力持ちか!
心の中で毒づいていると、生え揃ったそれぞれの触手の先端に光が集まり始めて小さな光弾を作りだしていく。
接近戦だけだと思ったら、離れたレンジも対応できるなんて、さすがのロストアイテムかよ!
「スプレッドビームで叩き落せ!」
アロガンツ・ブロスを後退させて距離を取りながら、両肩の砲塔にエネルギーを集めさせ、僕は手元のトリガーを引く。
魔装の触手それぞれから連続して光弾が放たれるのとほぼ同時に、チャージを終えたこちらのビーム砲からも何百という数の光弾が前方に向けて連続して放たれた。
アロガンツ・ブロスと魔装、双方から放たれた光弾はぶつかり合って広範囲で小さな爆発を大量に発生させている。
そのまま、意地の張り合いのようになったビームの撃ち合いが終わると、今度は魔装が化け物らしく深く裂けた口を大きく開けて、エネルギーを収束させ、球体を形作っていく。
「マスター、敵のエネルギー反応が増大中!危険だよ!!」
これ、アレだ!ゴ〇ラとかの怪獣が口からデカい光線を吐く的なやつか!
敵さんは小粒な攻撃を続けても意味がないと判断したらしい。
「フルチャージしなくていいから、こっちもロングレンジモードで撃ち返すぞ!」
「ツインビームキャノン発射するよ!」
アロガンツ・ブロスのキャノン砲に、エネルギーが再び急速に集まり、一方の魔装も自らの身体と同じくらいの大きさの巨大な光弾を形成させていく。
ジャブの応酬が終わったら、今度はストレートでの真っ向勝負というわけか。
相手の知能の高さは知らないが、思考は完全に脳筋ストロングだな。
この世界が、乙女ゲームの世界のはずなのに、僕の周りはどういうわけか少年漫画みたいな展開ばかりだ。
「ブロス!打ち負けるんじゃないぞ!?」
「了解!!」
再び僕が引鉄を引くと、アロガンツ・ブロスの両肩から、二条の極太ビームが魔装に向かって放たれて、魔装から吐き出された巨大な光弾と正面からぶつかり合う。
ビームを発射した反動で吹き飛ばされないようにアロガンツ・ブロスも足を踏ん張らせているが、踏ん張りの強さ故か、足元の地面はどんどん沈んでいく。
エネルギーどうしがぶつかり合った結果、こちらにも衝撃が押し寄せてきており、後方にあるオフリー家では窓が割れ、屋根が吹き飛び、壁もどんどん崩れ落ちている。
そして、こちらの放ったビームは球形の光弾に突き刺さり、押し込んでいくのだが、衝突した膨大なエネルギーどうしは、やがてお互いに形を維持することができなくなったようで、
大きく光ったと思ったら、次の瞬間には大爆発を起こして、アロガンツ・ブロスも吹き飛ばされて、後方のオフリー屋敷に激突してしまった。
さすがの爆発のせいで、機体もコックピットに伝わる衝撃を吸収しきれなかったようで、僕の背中や肩にも叩きつけられたことによる強い痛みが走っている。
「ははは・・・まさか今世ではビームの撃ち合いをする当事者になるとは思わなかったね」
乾いた笑い声をあげた自分の顔が引きつっているのが、鏡を見なくてもわかる。
周囲を見渡すと木々は倒れ、屋敷は既に半壊状態だ。よく見ると、まだ辺りには逃げ惑う人たちもわずかにいる。
さすがにまだ避難が完了していないようだ。
「ギルバートさん!ちょっと待ってください!大臣の避難がまだ終わってないんです!!」
コックピットに聞き覚えのある男の声が聞こえてきた。
全身が埃や泥まみれとなったアトリー家の文官達がアロガンツ・ブロスの足元に集まって文句を言ってきている。
「だったら早くさせてください!こっちも余裕はない!」
戦闘が普通の鎧によるものであれば、被害の出る範囲は限られてくるが、今はロストアイテムどうしのぶつかり合いだ。
多少距離が離れたところにいても、ビーム一つ飛んで来たら即おしまいとなってしまう。
さすがに、大臣にここで死なれるのは歓迎できないな。王宮内でうちの影響力がどんどん低下していて、敵対するフランプトン侯爵の派閥が逆に勢いを強めている中で、
中立、つまり、フランプトンにも与しないバーナード大臣がいなくなっては、侯爵派閥がますます好き勝手し放題になってしまう。これはレッドグレイブ家にとっては都合が悪い。
そうこう考えていると、ビームのぶつかり合いで発生した爆炎も徐々に晴れてきて、再び触手を展開してこちらに向かって来る魔装の姿がコックピットのモニターに映る。
デカいエネルギーを使う攻撃は避けるしかないか・・・アロガンツ・ブロスのビームキャノンなら火力でごり押せるかもしれないが、最悪の場合の影響を考えると控えざるを得ない。
リオン君のアロガンツのように、背部のコンテナに携行火器がたくさん入っていれば戦い方も変わってくるのかもしれないが、こればかりは試作機ゆえの弱みかもしれないね。
舐めプをするつもりはないが、これでは縛りプレイを強制されているような状態か。
「ブロス、ビームキャノン以外で相手を倒せる武装を表示してくれ」
僕の指示により、コックピット内のモニターに1つのウインドウがポップアップしてくる。
グレイブ以外には・・・自爆は武装じゃないよ、ブロス。
自爆を武器と考えているのはオペレーション隕石系の〇ンダムと、ヅラ系ガ〇ダムくらいのものだよ。
そんなことを心の中で突っ込みながら、アロガンツ・ブロスが握ったグレイブで魔装を迎え撃とうと、触手を2本、3本と斬り落としていくが、捌ききれなかった残った触手が、グレイブやアロガンツ・ブロスの腕に巻き付いてきた。
気持ち悪いな!僕は触手プレイも物理的な意味の縛りプレイも真っ平御免こうむるぞ。
「ええい!離せ、この化け物!」
「ようやく捕まえたぜ、レッドグレイブゥ・・・・!」
「どこの誰か知らないが、僕に潰されたクソ貴族の関係者かい?」
「お前らに本隊を潰されたウイングシャークだあぁぁぁ!!」
え?ウイングシャークって、あのステファニーの指示に従ってリオン君にケンカを売って返り討ちにされて、このアロガンツ・ブロスの初陣の相手になったあの空賊団か!?
なるほど、それでリオン君の親分的な扱いを受けている僕と、そんな僕らと戦わせようとしたオフリー家、というかステファニーをしつこく狙ってきたということか。
「やれやれ、それだったら逆恨みもいいところですね」
聞き覚えのある嫌味な男の声が聞こえてくると同時に、上空から放たれた弾丸がアロガンツ・ブロスに巻き付いている触手を打ち抜いた。
一瞬の出来事に何が起こったのかを理解できずフリーズした魔装に向けて、アロガンツ・ブロスの自由になった拳を何度も叩きつけ、最後にもう一発、魔装の顔面を殴りつけると、
踏ん張りがきかなくなった魔装がよろめいて、ふらふらとしながら後ろに下がる。
それとほぼ同時に、ジルクの乗る緑色の鎧が大型のライフルを構えながらアロガンツ・ブロスの近くに降りてきた。
「どのツラ下げてここに来たのか聞いておこうか、ジルク?」
「言ったじゃありませんか、ギルバートさんなら乗り切れると信じてる、と」
「・・・失ったポイントの穴埋めをしに来たと素直に言ったらどうだい?」
「上司を助けに来たのですから、査定はしっかりお願いしますよ。ところで奴を仕留める方法はあるのですか?」
「大臣がまだ安全圏に逃れきれてないから両肩のキャノンは使えない。グレイブなら仕留められるが、触手が邪魔だ」
「・・・でしたら、奴の隙を作ってください、触手は何とかします」
「その隙が作れないんだよ!来るぞ!ブロス!シールド展開!」
態勢を整えた魔装が触手の先端から光弾を放つ。
アロガンツ・ブロスの前方に発生させた魔力シールドでそれを防ぎ、ジルクは機体を上昇させて光弾を回避する。
やはり、光弾をばらまかれるとヤバいな。接近戦をしかけるしかないか。
再度、グレイブで魔装に向かって斬りかかるが、やはり大量の触手が邪魔をして、有効打を入れることがどうしてもできない。
「そんな槍じゃ何回やっても無駄だぞ、レッドグレイブウゥゥ!」
「たまたま手に入れた力でそこまでイキり散らすのは、逆に見ていて笑えるなあぁぁ」
「お前らを消せればいいんだよぉぉぉ!」
グレイブをぶんぶんと振り回して、触手に巻き取られないように攻撃を続けるが、そうするとやはりまともにダメージを与えることが難しい。
他方で、相手の触手の先端に生えている刃物がアロガンツ・ブロスの装甲を削る回数は増えてきており、一言でいうならば劣勢と言わざるを得ない。
相手側に、こちらの装甲を一撃で抜けるような突出した攻撃力のある武装がなかったのが唯一の救いだろうが、このままだとジリ貧だろう。
「あはははは!ざまあないわね、通り魔男!アンタ達の誰かが消えるだけで気分がいいわ!いや、せっかくなら化け物もろとも、廃嫡緑野郎もみんな一緒にくたばりなさいよ!!」
今日一日で僕を最も不快にさせたクソ女の声があたりに響いた。
半壊したオフリー家の屋敷の近くで、ステファニーが嬉しそうに手を叩きながら笑っている。
あのクソ女あぁぁぁぁぁぁ!!!!
余裕がなくなってきて、煽り耐性が下がっている自覚はあるが、さすがの僕も触手の大群との斬り合いから目を離すことはしない。だが・・・
「そこにいたか、オフリイィィィィ!!!」
魔装、というか、魔装の中身となったウイングシャークの男が、ここにいる全員の不幸を喜ぶステファニーに意識を向けたようで、触手の動きが鈍る。
魔装というロストアイテムに喰われて、戦いに集中するよりも、目先の怒りに意識を奪われたようだ。
本人にそのつもりは欠片もないだろうが、よくやったぞ、クソ女。
この隙を逃すまいと、アロガンツ・ブロスが魔装の片足を両腕で抱え込み、僕はコックピットのフットペダルを一気に奥まで踏み込む。
「ブロス、最大パワーでひっくり返せ!」」
「了解、アロガンツ・ブロス、最大パワー!」
魔装の足を持ち上げつつ、背部のウイングバーニアから激しい炎が噴き出すと、出力を最大まで上昇させたアロガンツ・ブロスはツインアイを輝かせ、魔装を抱えたまま浮き上がる。
魔装はアロガンツ・ブロスに足を取られたままとなっており、後頭部と背中から地面に倒れ込む形となってしまう。
「今だ、ジルク!」
「ええ!わかってます!」
アロガンツ・ブロスが傍にあったグレイブを回収しつつ、その場から離れると、ジルクの緑色の鎧は手にしていた大型ライフルを投げ捨てて、腰にマウントしてあった小型のマシンガンらしき武装を構えた。
そこから連続して放たれた白い物質は、仰向けに倒れた魔装や周囲の地面に命中すると、その粘着力で魔装を地面に抑え込んで動きを封じる。
トリモチみたいなものか!?〇ンダムでコロニーに穴が開いたときに使ってたようなやつだ!
とはいえ、魔装もそこから逃れようと大暴れするので、ジルクも執拗にトリモチ弾を連続して発射している。
一方の魔装も状況は理解したらしく、先端だけトリモチに覆われていなかった触手から光弾をいくつも放つと、ジルクの鎧の頭部や脚部を吹き飛ばし、ジルクは地面に向かって落下していく。
だが、よくやったぞ、この隙はしっかりとモノにしてやる。
「あんなものがあるとはね。いいものを持ってきたじゃないか」
「上司から敵を捕獲するための装備を持って来いと言われていましたからね、あとはお任せしましたよ」
「まったく可愛げのないやつだ。ブロス、グレイブセット!ジルクの死を無駄にしないためにも、突っ込めえぇぇぇぇぇぇ!!!」
両手でグレイブを構えたアロガンツ・ブロスが、上空から、地面に倒れ込んで身動きができない魔装に向けて突撃する。
触手から大量の光弾が放たれるが、コックピット周辺はしっかり守っているし、枢要部の装甲は2、3発が直撃したくらいでは致命傷にはならない。
光弾のいくつかが両肩のキャノン砲に命中して、砲塔が吹き飛ぶが、今さらもう遅い。
アロガンツ・ブロスの真っ赤な刀身をしたグレイブが、魔装の胸部に突き刺さり、そこから苦痛に満ちた声が上がる。
魔装は苦痛から逃れようと、もがこうとしているが、トリモチに抑え込まれてロクに動けないでいる。
「ぐあぁぁぁぁぁ!!熱い!熱いいぃぃぃ!」
「ブロス、やれぇぇぇぇぇぇ!!!!」
『了解!インパクト!!』
グレイブの刀身が赤く光り、電光が走ると、魔装の全身が膨れ上がり、一瞬動きが止まった後に、黒い液体を大量に噴き出しながら魔装は吹き飛んだ。
周囲には黒い液体がぶち撒かれているものの、魔装そのものについては、見渡す限り、跡形もない状態だ。
地面に落下したジルクの鎧のところまで移動すると、どうやら行動不能になっている。
仕方ないので飛行船まで運んでやろうと、ジルクの鎧を担ぎ上げる。
「やれやれ、ようやく終わったな」
「やれやれ、じゃありませんよ。勝手に殺さないでもらえますか?」
「屋敷内であの化け物をこっちに押し付けたことに比べれば可愛いもんだろ」
「相変わらず、酷い上司ですね。ですが、まさかロストアイテムとまた戦うことになるとは思いませんでしたよ」
「・・・マーモリアの本家にはよろしく伝えておいてやる。ありがたく思えよ」
「ちっ、ゴキブリみたいにしぶといわね、アンタ達」
上司と部下のハートウォーミングな会話に入ってきたのは、最後の最後で初めて役に立ったステファニーだ。
魔装のぶちまけた黒い液体で、頭から足先まで随所が真っ黒になっているのに、毒を吐くために、アロガンツ・ブロスの近くにわざわざやってきたなんて、見上げた根性じゃないか。
それに、あれだけ化け物に追われたのに、こんなに減らず口が叩けるお前のほうが十分ゴキブリ並みの生命力だよ。というか、こいつ、自分のやったことの罪の重さを理解してないよな。
この世界の主人公であるオリヴィアさんに嫌がらせをした報いくらいは受けさせておく必要があるな。
アロガンツ・ブロスでステファニーの頭部を掴んで、持ち上げて移動を開始する。
そのまま、すぐ近くに湖まで移動して、頭部から手を離すと、ステファニーは水面に落下して大量の水しぶきが飛ぶ。
「な、何すんのよ!」
「その汚い全身を綺麗な水で洗い流してやろう、ついでに心も洗い流せればいいな、という僕の親切心が分からないなんて、心が貧しいやつは気の毒だね」
「湖に落とすのが親切だなんて初めて聞いたわよ」
「さすがの私でもこんな真似は思いつきませんでしたよ」
「じゃあジルク、鎧から降りて、ずぶ濡れのステ・・・ブステファニー嬢を飛行船まで連行してこい」
「ステファニーだよ!」
「貴男という人はなんて卑劣な・・・」
周囲でクズ2人がワーワー言っているが、よくよく考えてみると、今回の戦闘はこの屑2人とのコラボレーションになってしまったから複雑な心境だ。
初めは単なる討伐戦になると思ってたのに、想像もしなかったくらいの大騒ぎとなったが、ようやくここでの戦いも終わりか。
さすがに疲れたので、王都に戻ったら、少しは心身ともにゆっくりしたいな。
あ、でもリオン君とオリヴィアさんはどうなっただろうか、心配だ。
それにアロガンツ・ブロスも修理しないといけないだろう。
あれ?結局、王都に戻ってもゆっくりできない?
なお、兄上様はまだ公国による修学旅行襲撃を知りませんw