乙女ゲー世界は悪役令嬢の身内にも厳しい世界です   作:りーおー参式

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小ネタの内容で想像できるかもしれませんが、アニメの推しの子を一気見しました

あと、最終回の料亭でプロデューサー達が飯食ってるシーン、キンタロスとリュウタロスじゃねーか


第38話 激闘終わってまた一難

「どんだけぇぇぇぇぇ!?」

オフリー領から王都に戻る公爵家の飛行船の中にある僕の執務室で、前世のどこかで聞いたことがあるようなツッコミを叫びながら、机に突っ伏してしまった。

慣れない鎧働き、しかもロストアイテム相手の激戦が終わったと思ったら、当主と後継ぎ不在で無政府状態になったオフリー領の暫定的な管理体制構築の手伝いまで色々とさせられてしまった。

ようやく、それも一段落となり、王都への帰路に就いていたのだが、そんなところに王都のパパ上から手紙が届いており、そこに僕が不在の間の出来事が記されていた。

「な、何があったんです!?」

叫び声に驚いて執務室に入ってきたのは、オフリー領での戦闘でも大活躍だったジルクだ。美味いのか否か判断に困る紅茶を入れたポットを乗せたカートを手押ししている。

性格はクズだが、射撃能力は高いし、頭も回る。さすが、あの乙女ゲーの攻略対象だけのことはある。

決闘騒動の尻拭いを画策したジルクの実家であるマーモリア家、しかもその本家がレッドグレイブ家への詫びとして、最初はこいつの妹を僕の側室に、という話が出てしまい、

それを嫌がった僕に付け込んで、ジルク自らが鎧働きをすることで、家としての精算とすることにした結果、オフリー領での大騒動に巻き込まれて、今に至っている。

「・・・パパ上から手紙が届いてね。とんでもないことが起きたようだ」

「ギルバートさんをして、とんでもない、というのは余程のことなんでしょうね」

「お前が妹の代わりに体で支払うことにした今回の騒動が可愛く思えるような出来事があったようだ」

「その言い方、やめてもらえます!?」

「悪い悪い、冗談だ」

きわめて主観的な話だが、性格の悪さと能力の高さは嫌いじゃない。

はあ、こいつがあの黄色い毛虫に誑かされて、妹と敵対しなければ、数年後には美味い酒を一緒に飲むことも出来たかもしれないにな。

「聞いて驚けよ?」

僕は右手で頭を抱えながら、父の手紙に書いてあったことをかいつまんで教えてやることにした。

妹の乗る豪華客船が修学旅行の途中に公国の艦隊に襲撃され、人質になったアンジェはリオン君が救出したこと。

公国の艦隊は、リオン君のアロガンツと飛行船が、鎧部隊もろとも撃退したこと。

その戦闘で、公国の第一王女を捕獲したとともに、戦場に出てきた黒騎士を撃退したのもリオン君だということ。表向きは、黒騎士撃破は別人の功績にしたらしいけど。

なんとも濃すぎる上に重大な事件を無理やり3行にまとめてみたが、1つ1つがツッコミどころ満載だよね。

「そんな・・・バルトファルトの強さも恐ろしいですが、それよりも、フィールド家の監視を出し抜いて艦隊が入り込んだのですか!?」

「公国の工作がだいぶ進んでいたようだ。公国艦隊に、修学旅行の豪華客船の所在を知らせたのは、アンジェの元取り巻きどもらしい。おかげでフランプトン派閥からは、公爵家の管理責任を問う声すら上がっているとのことだ」

っていうか、裏切り者の元取り巻きの女子生徒って、少し前に、見え見えのハニトラを仕掛けようとしたメイドの子の妹だったな。

「オフリーはフランプトン派閥の財布だったくせに、厄介者を切り捨てるのは迅速だね。僕としては腹立たしいことばかりなんだが、怒りを向ける対象が多すぎて困るという珍しい気持ちを味わっているよ。発端は、どこかの誰かさん達な気もするがね」

「・・・は、派閥の整理が捗りますね」

「大元の始まりは、どっかの馬鹿王子殿と黄色い毛虫達だったな」

「ちょっとそれは不敬ですよ」

ほう、それなら、元王太子と黄色い毛虫と不愉快な穴兄弟達とでも言えばよかったのかな。

「すごいな、たった7人の学生だけでこの国を大きく動かしたんだ、歴史に名を残せるんじゃないか?」

「そ、それよりも、アンジェリカさんの元取り巻きの女子といえば、彼女達の実家の浮島はちょうど王都に向かう経路の途中ですね」

ずいぶんと強引に話題を変えてきたな。

まあ気分としては非常に良くないが、決闘騒動の禊は、少なくともマーモリア家という単位では、今回のオフリー討伐の件で済んだことになっているから、これ以上は突っ込んでも道理が立たないか。

それにしても、裏切り者の実家が割と近くにあるとは、なんという偶然だろう。

ふふふ・・・面白いことを思いついたぞ。

「ねぇねぇジルクきゅん、鎧は貸してやるから少しアルバイトをしないか?」

「え・・・どうしたんですか、ギルバートさん。そんな貼り付けたような笑顔を浮かべて・・・」

「なぁに、パパ上に帰還が遅れた詫び代わりのお土産を用意しようと思ってね。さあ、格納庫に行こうか・・・」

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「まずは、よく無事に戻った。今回は・・・また、その・・・随分と活躍したようだな」

王都に戻り、諸々の報告を終えた僕は、城内にある父の執務室で、細かな報告をしようとしていたのだが、パパ上の表情が若干引きつっている。

公国の襲撃なんていう大事件の後処理が大変なのは理解できるし、表情に疲れが見えることも自然だろうが、半笑いを浮かべているのはどういうことだろう。

「リオン君から譲ってもらったロストアイテム・・・アロガンツのおかげです。アレがなかったら、今ごろオフリーと一緒に化け物の腹の中でしたよ。兄妹そろって彼には足を向けて眠れませんよ」

「・・・まさか、うちの旗艦艦隊が裏切り者の家の当主やら跡取りやらをまとめて連行してくるとは思わなかったぞ」

「公国の艦隊に加えて黒騎士まで撃退するなんて、驚きとしか言えませんね。公爵家で予算を取って、ロストアイテムの発掘支援事業でも立ち上げましょうか」

「奇襲とはいえ、ごく少数、ロストアイテムの鎧1機と、形ばかりの追随機だけで防衛網を突破して領主の館まで到達し、相手の頭を抑え込むだなんて、並の貴族達にとっては悪夢だろうな」

・・・あれ?会話が嚙み合ってないぞ。

単に、アロガンツ・ブロスと数機で裏切り者の家の浮島を襲撃して、魔力シールドを展開して領主の館を制圧しただけなのに。

立ちはだかる鎧は武器を使うまでもなく鉄拳で殴り飛ばすくらいしかしていないのに。

「たまたま近くを通りかかったものですから、せっかくなら父上のご負担を軽くしようかと」

まるで前世の会社にいた、外回りの営業マンみたいな台詞を言いつつ、今後の父上のToDoリストの項目を減らしたのだと説明をしてみる。

「裏切り者への制裁は必要だ、見せしめも時には有効だろう。だが、やり過ぎれば味方以外の連中による結束を招きかねんぞ。余所の派閥から見たら、公国の艦隊を単機で退けられる鎧が2機もいるのと同じだ」

「僕の機体はプロトタイプらしいですから、リオン君の機体ほどの力はないんですけどね」

「部外者から見たら、大した違いはない。恐怖のあまり公爵家を排除しようとする動きが加速しても不思議ではない」

「耳の痛い話ですね」

「まあ、信用すべきではない家を派閥に入れた結果、裏切り者による侵略を招いた私が言っても、説得力に欠けると思うだろうがな」

父上が妙に弱気なことを言っている。侯爵家の派閥に突き上げを喰らったのだろう。

いや、むしろ僕は悪手をやらかしたのかもしれない。

「フランプトン侯爵が勢力を伸ばしているということですか」

「腹立たしいことに裏切り者の切り捨てから、自派閥の拡大までの動きの速さは見事としか言えんな。例の空賊討伐の話が出た時点で早々に動いていたのだろう。おかげで、王宮内で我々の政治的影響力は大きく低下していると言わざるを得ん」

「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」

「いっそのこと、お前がもう後を継ぐか?」

「まだまだ僕に大派閥の長は務まりませんよ」

僕の場合、学生時代から、妹が王妃になった後に備えた動きにばかり勤しんでいた。

妹の婚約解消後は生身か鎧かの違いはあるものの、武力によるトラブル解決ばかりしてきたことから、直轄の公爵家内部での支持はあるかもしれない。

だが、派閥という利害を共有する集団の中で、利益を調整して振る舞うために必要なスキルも経験もない。

総務や経理畑の下っ端リーマンだった前世でやってたことなんて、レベルの低い部署間の調整がせいぜいだ。

パパ上がやっているような、国の大幹部を務めながら、派閥内外の利害を、時にソフトに、時にハードにすり合わせつつ、権力を集めていく真似はすぐにはできない。

「そのための経験を積む機会から目を背けていたのはお前自身だがな」

今日のパパ上は追及が厳しいな。

「身内どころか、国内の貴族達の中の至る所に火種があって、どうにかしないとアンジェのことが心配で仕方なかったんです」

国内の領主貴族は王国に心から従っているわけではない上に、外国勢力の工作等の危険を考えると、自分や妹の将来を考えたときに、派閥の親玉として、王宮内部の駆け引きを学んでいる余裕はなかったからね。

僕個人としては、こんな火種だらけの国だとわかってやる気をなくした陛下の気持ちはわからなくもない。

結局、アンジェが王妃になることはなくなったが、こんな火薬庫のような王国を統治しなくて済んだと考えることもできなくはない。

「そのアンジェの婚約がなくなった以上、我々としては、巻き返しを図らねばならん」

「派閥の強化が必要だということはわかってます。だからこそ、僕だってリオン君にちょっかいを出してるわけですし」

「今までは、お前の処遇については、しつこく言わなかったのだが、そうも言っていられない状況だ」

おや?少し空気が変わったぞ。

アンジェの婚約の代わりに・・・ってまさか・・・

「まさか、またマーモリア家と、だなんて言いませんよね?」

「別に具体的な話が出ているわけではない。ただ、タイミングや状況次第で、お前の婚姻というカードを積極的に切るつもりになった、というだけだ。嫌とは言わないよな?」

「亜人連れたクソ女とかではない、まともな相手なら我慢しますよ。もしかして、ここまでの流れってこれを言うための壮大なフリですか!?」

「お前の行動が過激化の一途をたどってるから釘を刺したかったのでな。おかげで言質も取れた」

要するに、裏切り者の家の浮島襲撃を咎める空気を出していたのも、この話をするためだったのか。

確かに、崩壊寸前の派閥を引き継がれたのではたまったものではない。

チートスキルとかがある転生者なら、離反しかけた相手を調べて、急所を突いて引き留め、バラバラになった派閥を立て直して権力を掌握!みたいなことができるかもしれないが、あいにくとそんなものは僕にない。

「最近、あちこちで戦っていたせいか、自分の結婚が家の取引材料になり得ることを忘れてましたよ」

「お前もそうだが、バルトファルト男爵・・・いや、子爵も下手な相手と結婚されると、公爵家としても厄介なんだが、そこは大丈夫か?」

「父上が昇進を推薦してくれたんでしたよね」

「セバーグ、フィールド、アトリー、それにローズブレイドまで推薦に動いている。特にアトリーとローズブレイドでは、娘が子爵にご執心のような」

うわあぁぁぁ。リオン君、大物貴族の家から大人気だね。というかローズブレイドだと!?

「ローズブレイドがどうしてリオン君に?」

「お前と見合いをしたほうではない。下の妹が修学旅行で子爵と同じグループだったそうだ。まあ、窮地を救われた強い騎士に・・・という経過であれば不自然ではない」

「妹ってたしか縦ロールの派手な女でしたね。しかし、家として、お見合いで失礼なことを言ってきながら、公爵家と付き合いのあるリオン君にちょっかいを出すなんて恥知らずな・・・」

「お前もだいぶ失礼なことを言ったのだから、そこはお互い様だ」

酷いな、ペットになれと言われたから、裸エプロンしてくれと言っただけなのに。

っていうか、リオン君の周りの女性を思い返してみると、オリヴィアさんにクラリス嬢、それにローズブレイド家の妹のほうも確かスタイルがいいと聞いたことがある・・・

リオン君の周りのおっぱい偏差値、高えな。

羨ましい、僕の周りには、胸部に豊かな実りを湛えた女の子の影すらないぞ、ちくしょう!

というか、よくよく考えてみれば、肩書だって、将来の聖女様、王宮の大臣の娘、武闘派大物貴族の娘という豪華なラインナップだな。

・・・ここまで来たら、そのうち、王族関係者とか外国の要人とかも出てきそうだ。

王族・・・外国の要人・・・あの腹黒姫の異名を持つ王妃様が、陛下と離縁してリオン君と連合王国に駆け落ちとかされたら洒落にならないねw

この世界が、乙女ゲーではなく、ギャルゲーの世界だったら、リオン君のことを攻略対象ではなく、たまに目に星マークが浮かぶ、色んな女を誑し込む人生二週目のスケコマシだと疑ってたかもしれない。

人生二週目・・・僕や黄色い毛虫ことマリエみたいだな。

・・・あれ?リオン君も転生者?まさかね?

「リオン君を子爵にしたことで、厄介な家々が寄ってきたということですね」

「歴史に名を残るほどのスピードで、男爵家の側室の三男から子爵に上り詰め、公国の艦隊を黒騎士もろとも撃退する騎士を、放っておく連中のほうがどうかしている」

「あの学園の女どもはクソばっかりですから、安心していたのですが、伯爵家の当主クラスが彼に目を付けたのは厄介です」

「目ざとい奴らは、力を持つ騎士を放ってはおかないと以前、お前に言ったことを覚えているか?子爵の婚姻の件は、お前が何やら動いていることは聞いているが大丈夫なんだろうな?」

「僕が結婚の面倒を見た辺境の領主に、リオン君と付き合いの長い特待生の子を養子縁組させて、くっつけるべく動いています」

オリヴィアさん、結局、修学旅行でリオン君と仲直りできただろうか。

もしまだだったら、強めのテコ入れが必要だろうな・・・公国襲撃という機会を通じて、吊り橋効果で二人に愛が芽生えてくれていたりしないかな。

「特待生か・・・アンジェとも仲が良いようだと聞いているが?」

「それなら、2人には末永くアンジェを支えてもらいましょう」

「・・・まあ、あまり先々のことを言っても仕方ないか」

「リオン君のことは僕が引き続き動きます。父上は、派閥の整理と立て直しをお願いします」

そう、リオン君には、オリヴィアさんという主人公様に捧げる供物、肉バイ・・・いや、番となってもらわなければ困るんだ。近々に探りを入れてみるとするか。

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城を出て、屋敷に向かう馬車の中で僕は考え込んでいた。

内容はもちろん、リオン君の転生者疑惑だ。大きく息を吸って、気持ちを落ち着かせながら、肯定要素と否定要素を整理してみよう。

肯定要素の1つ目は、アロガンツや飛行船パルトナーというロストアイテムを見つけ出して武力を整えつつ、短時間に子爵にまで昇進したという点だ。

アロガンツもパルトナーも、妹がプレイしていたときの課金アイテムにはなかったが、リオン・フォウ・バルトファルトという存在と同時期に実装されたDLC、追加コンテンツという可能性はある。

肯定要素の2つ目は、学園入学後、間もない頃から主人公であるオリヴィアさんを事実上庇護していた点だな。

あの時点では、リオン君自身、いずれは貴族のどこかから結婚相手を探さねばならないから、この世界の価値観からすると、愛人か体目的でない限り、オリヴィアさんを近くに置く理由は乏しい。

ただ、最近はリオン君自身がオリヴィアさんから距離を取ろうとしていたので、その意図というのは推測が難しい。

まあ、おっぱいが大きくて、性格もよく、可愛い主人公様を積極的に自分のモノにしようとしていない点ではマリエと大きく異なるか。

否定要素はいくつもあるが、最も大きいのは決闘騒動で、当時の王太子と不愉快な穴兄弟達という元祖攻略対象を敵に回してアンジェを助けた点だろう。

ゲームのシナリオでは、公爵家は落ちていく一方のはずだから、アンジェを助けて、公爵家に接近するメリットは大きくないだろう。

彼が敵対的な行動を一切取っていない以上、急ぐ必要はないだろうが、いずれ、タイミングを見計らって探りを入れておいた方がいいかもしれないね。

色々と考え込んでいると、馬車は公爵家の屋敷に到着していた。

時間もだいぶ遅いので、出迎えの使用人達を労って僕は早々に自室に向かう。

自分のベッドで休めるのも久しぶりだな、数日はゆっくり過ごしたいものだと思い、部屋の扉を少し開けたところで、僕はあることに気付いた。

そう、屋敷に戻ってきてから、あの腹黒陰険眼鏡メイドことコーデリアの姿を見ていないんだ。

出迎えの使用人達の中にもいなかったし、夜も遅いのでもう休んでいるだけかもしれない。

ただ、あの腹黒メイドとは、良くも悪くも付き合いは長い。あいつが何も仕掛けないとは思えない。

きっと、僕のメンタルを地味に大幅に削る小さな嫌がらせをしてくるはずだ。

以前も、僕が屋敷にこっそり戻ってきたのを察知して、僕の部屋で待ち伏せていたことがあった。

今回も同じことをしてくる可能性は十分ある。

開けた扉をもう少し開いて、自室の中を見回したかぎり、人の気配はない。

もちろん、光源は廊下の明かりが僕の部屋に差し込んだ分しかないので、部屋の隅々まで見たわけではないが、前回、コーデリアが潜んでいた場所にはいなさそうだ。

ゆっくり部屋の扉近くにある照明のスイッチに手をかけて、部屋を明るくするが、人影は見当たらない。

やっぱり僕の考えすぎだろうか。

いや、きっとあいつなら、僕が疲れ果てて肉体も精神もボロボロのタイミングを見逃さないはずだ。

とすれば、どこかに隠れているのだろう。

改めて部屋の中を見渡して、目についたのは衣装棚とベッドだった。

だが、さすがにコーデリアがいくら陰険で腹黒で嫌味だからと言って、それでもアンジェに長く仕えるまともな淑女であることは間違いない。

だとすれば、未婚の女性として、男性のベッドに入り込んでいるということはさすがにないだろう。

衣装棚も、察知した僕が、外側からテープを張られたりしたら、外に出られなくなってしまうので、そんな悪手を打つことはしないだろう。

となると・・・そうか、部屋の扉の裏か!?

それなら、外からは見えずに、しかも、ほぼ自動的に僕の後ろを取ることができる。

謎は全て解けた!ふふふ、今回は僕の勝ちだな。

ニヤリと勝利の笑みを浮かべながら、ドアノブに手をかけて、部屋の扉をさらに開いていく。

そして、もう少しでほぼ全開という寸前で、扉がソフトに押し返された。ビンゴ!やはり扉裏に潜んでいたか。

「おやおや、金具が壊れでもしたかな?」

わざとらしい独り言を呟きながら、何度か扉を押し込み、そのたびに部屋の扉が押し返される。

きっと扉の裏では、扉と壁に挟まれて苦々しい顔をした腹黒陰険眼鏡メイドがいるに違いない。そんな愉快な絵面を想像しながら僕は、扉の裏を覗き込んだ。

ふう、結論から言おう。

誰得?

扉の裏では予想通り壁と扉に挟まれた腹黒メイドがいた。ここまでは良かったんだ、ここまでは。

しかし、予想と大きく異なっていたことがあるとすれば、扉を押し返していたのは、彼女の顔や肩などではなかったことだ。

扉を押し返していたのは、妹や主人公様のように豊かに実ってはいないものの、人並みには実った彼女の胸部装甲だったんだ。

両手で、金属製のトレイを持っていて手元が塞がっており、トレイが扉にぶつかって音を出さないようにするために腕で扉を押し返すことができなかったのだろう。

腹黒メイドの顔は少し紅潮し、ほんのり涙目になりながら、僕を睨んでいる。その感情は羞恥か、それとも怒りなのかどっちなのだろうか。

ついつい、改めて扉を押し込むと、胸部装甲が少しだけ変形し、再び扉を押し返した。

うん、これはやっべえことになった。

魔装に追いかけられていたときと同じくらい冷汗が滝のように僕の背中を流れ落ちる。

「こ、これは事故だ、不幸な事故じゃないか!むしろ、こんなところに隠れてるお前だって悪いだろ!?」

僕の全力の釈明に全く耳を傾ける様子のない腹黒メイドは、手元の金属製のトレイを握りしめながら、一歩一歩、僕に近付いてくる。

「いや、ちょっと待て。その手のトレイを離すんだ。悪かった、僕も悪かったって!知らなかったんだよ!!だから、トレイの淵はやめよう!淵はすごく痛いから!!」

しかし、僕の必死の釈明は聞こえているはずなのに、コーデリアの歩いてくる速度は変わらない。

「暴力に訴えかける前に金銭的な解決に向けた協議をしようじゃないか。だから、ほら・・・っていうか、そんなに実ってるなん」

僕の弁解の言の途中で、無慈悲な腹黒メイドが振り下ろした金属製のトレイの底は、僕の頭部を上から叩きつけ、その衝撃で僕は顔面を床に強打する羽目になってしまった。

「この件は、公爵様・・・いえ、お嬢様に報告いたします!」

待って!それが一番困る!

やっぱりこいつ、僕が嫌がることを最もわかっていやがる!

せっかく命がけの激戦から帰ってきたっていうのに、待っていたのは、こんなショボいラッキースケベなんて、酷い!




あと数回で2巻というか、アニメ一期部分がようやく終わりますね
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