乙女ゲー世界は悪役令嬢の身内にも厳しい世界です   作:りーおー参式

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書いてたら2話分のボリュームになってしまった
コミック11巻のカバー裏www


第40話 人の修羅場は蜜の味と思ったら

「マスター、報告があります」

公国との戦闘から王都の学園に戻り、何故か5人の攻略対象者から”勝ったらマリエとの間を邪魔するな”という意味不明な要求付きの再度の決闘を挑まれ、

数日後に迫った決闘の準備をしていたリオンに対して、ルクシオンが周囲に他の人間がいないタイミングで語りかける。

「どうしたんだよ、あらたまって」

「レッドグレイブ家に潜ませたスパイロボや試作型アロガンツからのデータ等が届きました。戦闘の際の音声の中に、ギルバートがマスターやマリエと同じような転生者であることを匂わす発言がありました。マスターの睨んだ通りですね」

ルクシオンが告げると、子機に内蔵されたスピーカーから音声が流れてくる。

『ははは・・・まさか今世ではビームの撃ち合いをする当事者になるとは思わなかったね』

「てっきり追加の攻略対象か何かだと思ったが、転生者のほうだったか・・・さて、俺に悪印象は持っていないだろうけど、どうやって切り出したものかな」

「データによると、公国戦の表彰式典の際にマスターに接触を計画しているようですので、そこで話をしてはいかがでしょうか」

「それだと周りにも人が多そうだな・・・もっと前に接触できないか?」

「・・・ギルバートですが、今は王都を離れてオリヴィアの地元の浮島にいるようです」

「はぁ!?もしかしてリビアを愛人にしようって動いているとか?」

公爵家が平民であるリビアのために動く理由が思い浮かばないので、それならギルバート個人が動いているのではないかとリオンは推測した。

「いえ、下っ端の騎士に扮して地元の平民女性を食事に誘ったり、各所に一緒に出掛けたりしています」

「ナンパじゃねえか!!!顔も良くて、金があって、それでいて転生者なら、金持ちの美人に手を出せばいいじゃないかよ!マリエみたいに野心を剥き出しにするとかしないのかよ!」

「マスター、嫉妬のあまり、論点がずれていませんか?」

「うるせえよ!俺達貧乏貴族がクソみたいな女と結婚するために血の涙を流しているのに、あの人は婚約者も作らずに平民の女の子を口説いて人生を謳歌してるんだ!こんなの理不尽だろ!」

王国の男性貴族は、学園卒業時までに貴族階級出身の婚約者がいないと、問題がある人物であると扱われて、周囲の貴族に舐められたり、経済的な取引で不利益を受けたりすることがある。

そのため、学園の上級クラス内の下級貴族の跡取り達は、性格、性癖その他人格に問題がある女子生徒に媚びを売って結婚してもらう必要がある。

そんな状況にあるリオンにとっては、ギルバートの行動は他人事ながら腹立たしいことこの上なかった。

「世間体を気にしていない、いえ、気にする必要がないほど実家が強いからでしょうね。学生時代の下級貴族への結婚相手斡旋や役人になってからの辺境の監査などで、一部の界隈からの支持も強いようですし」

「羨ましい限りだな」

「マスターも、私という力を持っているのですから、愚かな新人類どもの目など気にせず、オリヴィアを受け入れてしまえばいいのでは?」

「そ、それとこれとは話が違うだろ・・・」

「やれやれ、告白までされたのに、あれからオリヴィアと2人きりになることから逃げ回っているヘタレなマスターを持つと苦労しますね」

「そういえばギルバートさん、今度、最高級の娼館に連れて行ってくれるって約束、覚えてるかな」

「話題をそらしましたね。そのギルバートですが、現在は現地の女性を口説いている最中ですが、正確に言うと、用事が終わったので、余った時間をナンパに当てているというものです」

「用事?」

「オリヴィアが公国との戦闘で見せた魔法の力を重く見たようです。公爵家で囲い、他の派閥に手出しさせないように、色々と根回しをするために、自ら赴いたようですね」

「・・・遊んでいるようで、仕事はしてるんだな」

「空賊討伐の際に、オフリー家がマスターやオリヴィアを罠に嵌めようとしたことを踏まえて、対策を講じているのでしょう。公爵家がマスター達を取り込むために積極的に動き出したということです」

「それなら、婚約者の一人でも紹介してほしいもんだね」

「娼館云々よりも先に、それを言うべきだったのでは?」

「それは・・・別問題だろ。男の子として興味があっても悪くはないだろ。それに、前世でも、相手と距離を縮めるために夜の店に連れて行こうとする人はいたからな」

「アンジェリカに鉄拳制裁を受けたのをお忘れですか?あと、オリヴィアに知られたら、また首を締め上げられますよ?」

「やめろよ!?絶対にこのことをあの2人に言うなよ?あのときは本当に怖かったんだからな!!」

オリヴィアから告白されたときに、思いっきり首を絞められたことを思い出して、リオンは背筋に冷たいものが通り抜けるような感覚に襲われていた。

当時は、その直後に、よりダイレクトに命の危機を感じた黒騎士との戦闘があったので、若干印象が上書きされていたが、ルクシオン特性の耐圧性能を持つパイロットスーツの上から首を締め上げられた恐怖はまだ記憶に新しい。

「気が向いたら善処しましょう」

「いや、せめて真剣に対処しろよ」

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さて、僕は今、どこにいるでしょうか。

一人レポーターごっこを脳内でやってみたが、やはり回答者がいないというのは悲しい。

答えを言ってしまうと、我が母校であり、今は妹が在籍しているケモナー学園の校舎裏だ。

妹を人質にしようとした絶許な公国を退けただけでなく、その公国の部隊を率いていた王女の身柄を押さえた功績で、リオン君を子爵に昇進させる表彰式典が終わり、

アンジェの件でお礼を言うのと合わせて、オフリー領での戦闘で損傷したアロガンツ・ブロスの修理を依頼しようと、僕はリオン君を探していた。

ただ、そのリオン君は、こっそりと、会場の外に向おうとするので、その後を追っていたのだが、リオン君の足が思ったよりもだいぶ速かった。

僕も、追いかけていると、色々な人から声をかけられて対応に追われるはめになり、ようやく追いついたと思ったら、そこは、学園の敷地内でもほとんど人がいない校舎裏だった。

「どうしてこうなった・・・」

そして、リオン君は校舎の壁に背を預けながら体育座りをして、空を見上げながら独り言を呟いている。

色々あって疲れているのか、たまにブツブツと何かをしゃべりながら頭を抱えている。

「子爵って何さ!?四位下?俺に一体どんな働きを求めるんだ!」

リオン君、めっちゃ昇進が嫌そうだね。

君に求めてる働き?そんなの単純さ。

まずは、この世界の主人公様であるオリヴィアさんの竿・・・いや、運命の相手となること。

そして、次に、強大なロストアイテムを持つ君と僕とで公爵家の派閥の武力を飛躍的に高めて、かつて以上の巨大勢力にして、ブイブイ言わせることさ。

リオン君の様子は、子爵への昇進を喜んでいるものではない。ホルファート王国でも歴史に残る異例のスピード出世を遂げているリオン君であるが、情報を集めた限り、やはり、立身出世を目指しているタイプの人間ではないようだ。

オリジナルの攻略対象とは異なる、DLCの攻略対象であると思われる彼は、ロストアイテム発見のような冒険者としての活動に重きを置いているのかもしれないね。

そんなリオン君のキャラを知りながらも、ゆくゆくは聖女になる、この世界の主人公ことオリヴィアさんと身分的に釣り合うように、子爵まで昇進させようと、色々と動いていた僕だが、

物陰に隠れながら、物思いにふけている様子のリオン君にかける言葉を考えているうちに、近付いてくる人影に気付く。

校舎裏は見晴らしが悪く、接近に近付けなかったが、リオン君の下にやってきたのは、主人公のオリヴィアさんだ。

なるほど、これは主人公と攻略対象が二人きりになるイベントなのかもしれない。

何を話しているのかはよく聞こえないが、リオン君はときおり照れ臭そうに顔をかきながら、それでもどこか楽しそうに話をしている。

そして、体育座りをしながら、顔を上げてオリヴィアさんのことを見上げている。

視線の高さや角度からすると、おそらくリオン君の視界には、オリヴィアさんの豊かで形が良さそうな2峰の胸部装甲、そして、少し赤らんだオリヴィアさんの顔が映っていそうだ。

ちくしょう、あんなに大きいおっぱいをガン見できるなんて羨ましいぞ!

少しだけ怒りというか妬みが湧き出てくる。

思い返してみると、僕が口説けた女性って、結果論なんだけど、だいたいスレンダーな子が多いんだよね。

貴族以外、要は平民の子を口説くことが多いから、貴族のように栄養状態が良くはなく、必然的に発育が抑え気味な子が多い気がする。

というか、今、気づいたんだけど、オリヴィアさんの顔、ヤバくないか?めっちゃ雌の顔をしている。発情顔と言えるかもしれない。

そんなオリヴィアさんが一歩ずつリオン君に近付いていき、髪を手で流しながら、もう片方の手をリオン君に差し出した。

・・・あれ?もしかして、このままだと人の気配のない校舎裏で危ない展開になるんじゃないか!?

人の目がない場所であるとはいえ、18禁の展開が始まるのはマズいだろうから、止めに入るとするか。

「やあ、二人とも久しぶりだね。それとリオン君、いや、バルトファルト子爵、このたびはおめでとうございます」

パチパチと拍手をしながら、祝福の言葉をかけてリオン君とオリヴィアさんに僕は近付いていく。

お前、どこから出てきたんだ!?と言ってるかのような驚いた表情で、2人は僕を見ている。校舎裏は隠れられる場所が多いからね。

僕が学生の時代にも、密会をしているカップルはいたし、僕も結婚相手が見つからない国境、辺境出身の男子の相談を聞くときに、校舎裏を使ったことも多い。

「ありがとうございます、でも、なんか今さらなんで、リオンでいいですよ」

「そうか、ではお言葉に甘えるとしよう。伝えるのが遅くなったけど、妹を助けてくれて本当にありがとう。あとオリヴィアさんもね。妹を裏切った取り巻き連中と乱闘になったと聞いたよ」

「あのときは夢中だったので・・・」

「それと、2人ともすっかり仲直りしたみたいで、お兄さん、安心したよ」

「はい、ギルバートさんに言われたとおり、首根っこ掴んだら仲直りできました」

両手の指を合わせて輪っかを作り、首を絞める仕草をしながら、オリヴィアさんが満面の笑みで答えてくる。

え・・・?本当に物理的に掴んだの?

一方のリオン君はというと、少し恥ずかしそうに顔を赤らめている。自分がアプローチされたことをばらされて照れているのかもしれないね。

「そ、それはよかったね。リオン君もまんざらではなさそうじゃないか。ちょうどいい、リオン君も子爵になって、これまで以上に注目されるようになるから、変な女が寄ってくる前に、君達、くっついちゃいなよ」

「え、え、ちょっと待ってくださいよ。リビアは平民だから身分が・・・」

「実はオリヴィアさんを、とある貴族の家の養子にする話を動かしていてね」

「はいいぃぃぃぃぃ!?養子?」

まるで細かいことが気になるのが悪い癖なパートナー系特命刑事みたいな台詞をリオン君が吐いた。

まあ、そのリアクションは想定内だ。

「リオン君の結婚相手がまだ決まってなさそうという話を、僕が昔に結婚の面倒を見た連中にしたら、上級クラスにいるクソみたいな女に苦しめられるリオン君を助けたいと手を挙げた連中がいてね。特待生だけど平民出身のオリヴィアさんと仲が良いという話も合わせて伝えたら、形ばかりでもぜひ、養子縁組をということになったんだ」

「それって何かのロンダリングみたいに聞こえるんですけど、簡単にできるもんですか?」

「能力のある貴族ではない騎士や平民を、実力主義の貴族が養子にするって話はよくあるものだよ。それに、僕が王宮で役人をやっていたって忘れてないかい?その頃の伝手と公爵家のパワーを使って、もう根回しを進めているんだよ」

驚くリオン君をオリヴィアさんから引き離して、僕はリオン君に耳打ちをする。

「もしかしてオリヴィアさんじゃ嫌なのかな?」

「い、嫌じゃないですけど・・・」

何やら煮え切らない反応だ。

性格が良くて、オッパイが大きくて、能力が高くて、オッパイが大きくて、可愛くて、オッパイが大きくて、身分的に問題がないなら何が問題だというのか。

そんなことを考えていると、一つの約束・・・というか提案をしていたのを思い出した。

娼館か!最高級のお店に連れて行くって話をしていたからね。アンジェにバレて思いっきり殴られて、有耶無耶になってしまったけど。

だったら、この反応も仕方ないよね、男の子だもんね。きっと、婚約したら、娼館にいくのはマズいというノーマルな倫理観なのだろう。

僕は、リオン君の肩を組んで耳打ちを続ける。

「娼館の話なら僕も覚えているから、安心するといい。何ならこの後のパーティーが終わったらでもかまわないよ」

「そ、それを要求してたわけじゃないんですけど、男同士の付き合いって大事ですよね」

リオン君が顔を赤くしながら、仕方ないんですよムーブを繰り出してきた。

「偉い人からの紹介がないと入れない店だから、楽しみにしているといいよ」

「それは楽しみですね・・・あと、一つ聞きたいんですけど、アルt・・・」

「あ、そうだ。ギルバートさん」

リオン君が何かを途中まで言いかけたところで、後ろからオリヴィアさんの声が響く。

大きな声ではないが、なぜか心によく響いてくる。空気振動だけではない、声に魔力が乗っているのか、原理は定かではないものの、不思議な感覚を味わっている。

振り向いた先にいるオリヴィアさんは俯いてた顔を上げながら口を開く。

気のせいか、お目目が真っ黒となっていることに加えて、全身から魔力か何かが放出されているのか、圧を感じる。

「もしかして、リオンさんを変なお店に誘ったりなんかしてませんよね?」

オリヴィアさんは、口元こそ笑っているが目は全く笑っていない。その上、こちらに伝わってくる圧はますます強くなっている。

重い!なんだ、この全身の体感温度を一気に下げてくるプレッシャーは!?

首筋から顔面にかけて、鳥肌が立つと同時に、寒気が全身を覆い、変な汗が噴き出し始めている。

「え、えっとそれは・・・」

くそ!僕は恐怖を感じているのか!?うまく声が出ない。

そういえばオリヴィアさんは、リオン君が娼館に行くのは嫌だと言っていたな。何とかこの場は上手く誤魔化さないと別の意味で修羅場になりかねない。

自分の保身と、リオン君の修羅場を回避するべく僕は思考を巡らせる。

だが、その直後に、この場では最も聞きたくなかった声が背後から聞こえてきた。

「兄上、それにリオンにリビアまで・・・こんなところで何をしているのです?」

「アンジェ!?」

後方から聞こえてきたのは、我が妹、そしてこの世界の主人公オリヴィアさんのライバルというか悪役令嬢であるアンジェの声だ。

妹よ、お前はなんてタイミングでこの場に乱入してきたんだ。

アンジェは、僕とリオン君を見て、さらにお目目が真っ黒になったオリヴィアさんを見た後に、もう一度僕を見てから険しい表情を浮かべる。

目がものすごく吊り上がっており、ことと次第によっては、絶対に許さんという顔だ。

アンジェはオリヴィアさんの脇に立ち、その肩に手を乗せながら僕とリオン君を睨んでいる。

「そんなに目を吊り上げたら綺麗な顔が台無しだよ?」

「まさか・・・とは思いますが、リオンを娼館に連れて行く、なんて話をまたしているんじゃないでしょうね」

僕のコメントはスルーで、いきなり話の核心を突いてきた!?

なんとか切り返そうと、脳をフル回転させて言い訳のセリフを考えるのだが、まさかの妹登場に、思考のギアがなかなか上がらない。

そんな状態でアンジェの言葉に先に反応した人間が出てくる。

「ちょっと、それってどういうことですか!」

近くの壁の裏から飛び出してきたのは、ふんわりとしたオレンジ色の髪をなびかせた、ギャル形態を今でも続けているストーカー女であり、この王国の閣僚であるバーナード大臣の娘であるクラリス嬢だ。

かつてその重すぎる愛をジルクにぶつけて、あいつのメンタルをゴリゴリと削っていた、この世界で初めてストーカーという概念を作ったと言っても過言ではない令嬢だ。

そんなクラリス嬢が、この場に乱入してくるやいなや、僕を睨んでくる。

しかし、招かれざる珍客の来訪はまだ終わらない。

「そうですわ!せっかくの大事な童て・・・いえ、初物をドブに捨てようだなんて」

クラリス嬢とは別のところから飛び出してきたのは、金髪縦ロールに口元を扇で隠すという、ザ・お嬢様なイメージを体現した女性であった。

王国でも割と有名な彼女は、ローズブレイド家の令嬢にして、以前、僕がお見合いをしたドロテア嬢の妹のディアドリー嬢だ。

「おやおや、ローズブレイドの妹君ではありませんか。アトリーにローズブレイド・・・王国でも由緒正しい家の御令嬢方が、こんな学園の校舎裏まで来てどのような御用ですかな?」

というか、ディアドリー嬢、今、童貞って言おうとしたよね!?聞き逃してないからね!

「お姉様を基準にされるのも違和感がありますからディアドリーでかまいませんわ。それよりも、高度に倒錯した嗜好をお持ちなレッドグレイブ家の御令息から、聞き逃せない言葉が発せられましたので、いてもたってもいられず、飛び出してきただけですわ」

人の性癖をおかしいと罵りつつ、自分の盗み聞きを正当化するなんて、なかなか手の込んだことをしてくるじゃないか。

「こちらも、面倒くさいのでギルバートでいいですよ。ところで、倒錯した嗜好というのは、相手をペットにしたがると噂のローズブレイド側の自己紹介では?」

なんせ、お見合い相手、しかも陛下の前で、ペットになれ!とかいう女がいる家だからね。

「まあ、なんて品のない噂でしょう。悪質な噂を流す輩にはしっかりと落とし前を付けたほうがよろしいですわね」

「いやぁ、僕もタチの悪いデマを流されることがよくありますから、気持ちはわかりますよ。はっはっは」

「それはともかくとして、貴族以外の女性を、それはそれは幅広く手籠めになさると噂のギルバート様と違って、リオン君はまだ学園在籍中の初心な1年生ですのよ。学生にふさわしくない遊興は、最高学年の人間として見逃せませんわね」

「手籠めの意味を誤解しているようですね。僕は双方の合意の下、1人の男と1人の女で対等にイチャイチャしているだけですよ。それに男というのは、けっこう繊細なんです、ちゃんと”練習”をしておかないと、血を残せなかったら一大事ですからね」

ディアドリー嬢がずいぶんと食い下がってくる。

やはりローズブレイドもリオン君を狙っているというのは本当なのだろうか。

聞くところによると修学旅行時に公国の襲撃を受けた際に、リオン君から公衆の面前でずいふんと罵倒されたらしいけど、まさかそれで惚れちゃうだなんてドMムーブしているわけじゃないだろうな・・・

しかも、発言からリオン君の下半身というかDTに興味津々のようだし・・・この女、練習なんてさせずに、自分でリオン君を調き・・・いや、貪るつもりか!?

「少なくとも職業で体を売る相手を買うことを堂々と言うのは恥ずかしいのではなくて?」

「ローズブレイド家の妹君も、艶っぽいのを話す所作は身に付けているようですが、中身はまだ”おぼこ”なようだ。男というのをわかっていない」

「な、なんですって!?」

「いいですか?男というのは、恥を共有して絆を深めていく生き物なのですよ」

「う・・・噂通り、型破りなことをおっしゃるようですわね」

「ディアドリー、真に受けるな。兄上も、持論を男性全員にあてはめないでください」

おっと、僕とディアドリー嬢のレスバに、まさかの妹が参戦してきたぞ。

それにしても兄を後ろから撃つようなことを言うなんて酷いじゃないか。

「というか、詭弁ですよね。ジルクに続いて、リオン君にまで変なことを教えるのやめてほしいんですけど」

・・・クラリス嬢まで参戦してきやがった。

だが、この発言を我が妹は聞き逃せなかったようで、真っ赤に燃えるような瞳が僕の方に向くと同時に、アンジェの右手が僕の顔面を鷲掴みにした。

「兄上、ジルクと一体何をしてのですか?」

「待ってくれ、アンジェ。すぐに暴力に訴えるのは良くないよ」

「では、何か弁解がおありで?」

「そりゃあるさ。ちょっとクラリス嬢、人聞きの悪いこと言わないでくださいよ。ジルクを連れて行ったのは、衣服着用の上、飲食を伴う接待までしかしてくれない店ですよ」

最低限、アトリー家に対する不貞とならないように配慮はしたんだ。そこはしっかりと感謝してほしい。

王都滞在中は週一くらいでキャ〇クラみたいな店に連れて行っただけなんだから!

だが、クラリス嬢はまだ納得していないようだ。

「だからって、まだ学生のリオン君を、対価を支払ってそういうことをする店に連れて行っていい、ということにはなりませんよね?」

「おやおや、対価の支払いを受けて、そういうことをする亜人どもを囲っていた誰かさんから、そのようなことを言われるなんて心外ですね」

「ぐっ!で、でも、その・・・いざ、という直前に乱入してきたのはギルバートさんでしょう!?」

「貴女想いの家臣達に嵌められたおかげですけどね?それに、僕が乱入するより前から亜人囲ってたんだから、やることやってない証拠にはなりませんよねぇ?」

つまり、クラリス嬢が囲っていた亜人どもを、僕が繁華街のラブホ近辺で全員ボコボコにした事件より以前に、ベッドインしたことあるかもしれないだろ!?ということだ。

まあ、クラリス嬢の行動は、取り巻き達が厳しく監視、というか諫めていたから、本当に未遂なんだろうとは思うが、面白いから黙っておこう。

「ほほほ、品のない振る舞いが仇となりましたわね」

ディアドリー嬢が高笑いをクラリス嬢に浴びせている。

だが、それで黙ったままの元祖ストーカー様ことクラリス嬢ではなかった。

「それなら品があるローズブレイド家のドロテア先輩はどうしてまだお相手が見つからないのでしょうか。品より先に大事なものが欠けてるなんて噂もありますよ?」

「・・・お姉様にふさわしい男性がいないだけですわ」

騙し討ちみたいな形でねじ込んだお見合い、というか顔合わせで、人にペットになれなんていうのは、人として大事なものが欠けている以外の何物でもないと思うんですが?

ただ、これを言ってしまうと、僕がディアドリー嬢の姉であるドロテア嬢とお見合いをしたことが明るみになってしまうので、このことは黙っているとするか。

ドロテア嬢の話が続くと、いつ僕に飛び火するかわからないから、話題をそらすか。

「ジルクから話をいくらか聞きましたが、少なくとも自分の感情をいたずらに相手にぶつけるのはいかがなものかと思いますけどね」

「ギルバートさんだって私にあんなことしておいて、そんなふうに言うのは酷いんじゃないですか?」

クラリス嬢が意地悪そうな笑顔を浮かべて、とんでもない爆弾をぶん投げてきやがった。

「兄上?あんなこととは、いったい何をしたのか説明していただけますか?」

妹が僕の顔面を掴む力が一段と強まった。

待って、熱い!熱いよ!!家族に向かって、ゼロ距離からファイヤーボールをぶつけないで!

「違うんだ、僕は悪くないんだよ、アンジェ」

「ですから、何が悪くないのですか」

「以前、クラリス嬢が亜人を連れ回しているところに出くわしたんだけど、その亜人達に殴られたんだよ!だから、そいつら全員の顔面か股間を焼き潰したんだけど、そのとき、お酒を飲みすぎてて気持ち悪かったところに、クラリス嬢からボディブローを喰らったんだ。そしたら吐くよね?人間だもの!そのときに逆流した液体の飛沫がかかったらしくて・・・テヘ」

「・・・」

僕を見る妹の目が、まるで汚物を見るかのようなものになっている。酷い話だ、僕は100%被害者だというのに。

そして、そんな哀れな僕とクラリス嬢にディアドリー嬢が追い撃ちをかけてきた。

「あらいやだ、あなたたち、そんなに臭い仲だったんですの?いっそのこと、リオン君は私に任せて、2人でくっついたらいかが?祝いの花くらい送りますわよ」

「僕にだって選ぶ権利はあるんですけど?」

「大丈夫です、ディアドリー先輩。汚れちゃった私に、そんな汚れ気にならないってリオン君は言ってくれましたから、私はそれでいいです」

それは初耳だけど、リオン君、君、なんてクサイ台詞で慰めちゃってんだよ!

針の穴に糸を通す精度でこのストーカー女のハートを射抜いてるぞ。

っていうか、なんかいい話みたいに言ってるけど、洗えば落ちる汚れを大げさに言うのやめてもらっていいですか?

「え、クラリス先輩、汚れちゃったってそういう意味だったんですか?」

「そうだぞ、リオン君。こんなタチの悪い女に騙されちゃいけないよ」

「あらあら、みんなして、余裕がないですわね。でも諸々の関係を含めて金で亜人を囲って快楽を貪る品のない女達と、プロの女性に対価を支払って性欲を満たす男達って、何が違うのか教えてくださらないかしら?」

あ・・・

ディアドリー嬢が呟いた台詞を聞いて、ここまで大騒ぎしていた僕を含めた全員が言葉を失う。

今の状況は、一言で言えば、巨大なブーメランがぶっ刺さったようなものだ。

亜人の専属使用人を囲ったクソ女どもをボロクソに言っていた僕だが、リオン君を娼館に連れて行こうとする僕の行動とどれほど差があるのか。

悔しいことに、瞬間的に切り返すことができなかった。

くそ!男をペットにしようとしたり、罵られて相手に惚れるような変態女のくせに、貞操観念だけはしっかりしているから、反論ができない。

なかなかやるじゃないか、ディアドリー嬢。面白いのは、髪がドリルみたいになってることだけではないらしい。

「リオン君、今回は残念ながら僕達の負けのようだ。埋め合わせは別にするよ」

「キニシナイデイイデスヨ」

言葉に感情が乗っていない。本人的には相当残念なのだろう。

一方で、オリヴィアさんはニコニコしているから、まあ良しとするか。勝負に負けても、試合に勝てばいいんだ。

「ところでディアドリー、お前はさっき兄上に、高度に倒錯した嗜好と言っていたが、あれはどういうことだ?」

「それは・・・」

ディアドリー嬢がニヤリと笑みを浮かべ、それをすぐに扇で隠した。

こいつ、まさか僕がドロテア嬢に裸エプロンを要求したことをバラすつもりか!?

冗談じゃないぞ、妹に性癖を知られるなんて罰ゲームにしてもハードすぎる。

とっさにアンジェの手を振り払って、ディアドリー嬢を黙らせようとしたのだが、逆にアンジェに後頭部を掴まれて、そのまま地面に押さえつけられてしまう。

そして、僕の頭上でディアドリー嬢がアンジェにヒソヒソと、僕が隠そうとしていた、ドロテア嬢とのお見合いの一部始終が伝えられた。

話を聞いたアンジェがよろめいて、押さえつけられていた僕は自由になったのだが、アンジェの顔が、頬から耳まで、真っ赤になっている。

そんなアンジェの傍にオリヴィアさんが直ちに寄り添って、背中をさすっていた。君達、本当に仲が良いね。

クラリス嬢とリオン君も、何がヒソヒソ話の内容が気になったようで、ディアドリー嬢から、話を聞いている。

クソ!しっかりと、お見合いの席で裸エプロンを要求したことを知られてしまったようだ。

2人はアンジェと違って顔色は変わらないが、明らかにドン引きした様子だ。

「人の性癖をばらすなんてやってくれますね。相手にペットになれ、なんて言う姉を差し置いてよくそんなことができたものだ」

「それは言わないのが暗黙の合意ではなくて!?」

「裸エプロンの件を妹にばらしておいて、どの口が暗黙の合意なんて言ってるんだよ!?君の姉の恥部をばらまいてこそ、五分五分のお互い様というものだろう!」

結果的に見れば、互いに、知られたくなかった恥部をぶちまけてしまう形になってしまった。

「たしかにそれは男性にだって選ぶ権利はあるわね。男性を何だと思ってるのかしら」

「そうだな。相手が兄上でなくても、そんなことを言われたら文句の1つや2つ出るのも当然だ。ですが、兄上・・・クラリスの件といい、ローズブレイド家のお見合いの件といい、少々戯れが過ぎるのでは?」

あれ?今度はみんなしてディアドリー嬢をディスる流れになったと思ったら、妹の追及の矛先が僕に戻ってきたぞ!?

アンジェの表情はドン引きのあまり無そのものになっている。

身内、特に妹という僕に近い立場にいる、ちょっと怒りっぽいけどそれ以外は比較的モラリストなアンジェからすると、僕の行動は受け入れがたいのだろう。

「どれも不幸な事故なんだ。だが、結果的には、うちも、アトリー家もローズブレイド家も、恥を共有したことで、何とな~く、対立路線は採らずに協調方向で付き合う雰囲気が出てるから!!結果は出してるよ、きっと!!!」

「・・・おいたわしや兄上・・・そこまでの大立ち回りでさぞお疲れでしょう」

やめて!その〇殺隊で日の呼吸使う剣士が、鬼堕ちした兄を憐れみながら言い放ったようなセリフ言わないで!

「レッドグレイブ家は内部でゴタゴタし始めたから、私達は行きましょうか、リオン君」

「そうですわね、兄妹の語らいを邪魔しちゃいけませんし、パーティーが始まるまでゆっくりとお話しましょうか」

僕が自分の成果を妹に対してプレゼン・・・というか釈明してる間に、クラリス嬢、ディアドリー嬢が、それぞれ両脇からリオン君の腕を掴み、この場を立ち去ろうとする。

それを見たアンジェは、とっさにリオン君の首根っこを掴んで、強引に2人の令嬢から引きはがして、2人とリオン君の間に立ちはだかった。

「おいクラリス、ディアドリー。リオンはうちと付き合いがあると式典が始まる前にも言ったはずだぞ。面倒はこっちで見るから、お前達は戻っていいぞ」

そう言うと、アンジェ、クラリス嬢、ディアドリー嬢の3人が無言のまま睨み合いを始めてしまった。三すくみの状態とでも言うべきだろうか。

アンジェに自覚があるのかはわからないが、兄目線からだと、完全にリオン君にフラグ立っちゃってるじゃん!!

それでもって、なんでオリヴィアさんはアンジェの後ろに立って、タッグを組んでるみたいな感じになってるの!?

まるで、目的を達成するまでは一時的に手を組む主人公とライバルキャラみたいじゃないか。

何なの、この修羅場!リオン君というDLCの攻略対象ルートって、オリヴィアさんに立ちはだかる人物が多すぎじゃないか!

まずいな、下手に主人公様に対立すると、また断罪フラグが発生しかねないから、少なくとも早くアンジェのフラグだけは潰しておかないと・・・

とはいえ、妹の機嫌もよくない以上、下手にこの3人の中に介入すると、攻撃の矛先がまた僕に向く可能性がある。

僕の脇にいるリオン君も、ずいぶんと居心地が悪そうにしている。

さて、どうするか・・・

僕は、前世が下っ端社畜の凡人だ。チート能力なんてない。あるのは、太すぎる実家の権力と、実家の力で手に入れたチートアイテムくらいだ。

そう、僕は特別な力を持った人間なんかじゃない。

そんな僕が、主人公様や悪役令嬢の中に入ってことを収めようなんて自惚れも甚だしいというものだろう。

ならば・・・僕は意を決して、リオン君に声をかける。

「逃げよう!残念ながら、あの女性陣は、僕らの手には負えない!」

そう言って手を差し出すと、すぐにリオン君が僕の手を取ったので、僕らは一目散にこの場を逃げ出した。

「アンジェ!リオンさんがギルバートさんと逃げました!!」

「何だと!兄上!!どこに行くのですか!!!」

後ろのほうから主人公様であるオリヴィアさんと妹の声が聞こえる。

悲しいかな、なんで僕は男の手を取って、妹から逃げているのだろう。

ゲームの流れで言えば、3年間ある中の、まだ1年目の3分の2が終わっただけだというのに、この半年近くは相当濃密な時間だったように感じる。

しかも、馬鹿王子をめぐってオリヴィアさんと対立せずに済んだ妹が、追加コンテンツの攻略対象であろうリオン君をめぐってオリヴィアさんとライバル関係になりそうだ。

一難去ってまた一難とはこのことだろう。

クソ!やっぱりこの乙女ゲー世界は、悪役令嬢の身内に厳しい世界だ。




安芸高田市長のレスバと煽りが面白すぎて、取り入れられないか悩む
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