乙女ゲー世界は悪役令嬢の身内にも厳しい世界です   作:りーおー参式

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追記
時系列的には番外編の後頃です

前回の投稿直後に投稿された、別世界線で追放された妹様の話を読んで思ったこと

温度差www

そろそろタグにギャグと入れろと言われそう


第41話 味方以外の異次元の発想は脅威そのもの

オリヴィアさんだけでなく、クラリス嬢、ディアドリー嬢、そしてうちの妹アンジェから逃れるために、リオン君と一緒に学園の校舎裏から逃げだした後に、

冬季長期休暇で公爵領に泊まりに来たオリヴィアさんが、なぜかアンジェとイチャイチャ百合百合し始めて、僕の新たな癖が芽生えるなんていう出来事もあったが、

僕は現在、飛行船でバルトファルト領のある浮島に向かっている最中だ。

オフリー討伐で損傷したアロガンツ・ブロスの修理を、リオン君が実家の浮島周辺に建設した鎧工場で実施してもらうというのが主な目的なんだが、

せっかくなら、リオン君を取り込みたいと考えていることを彼の父であるバルトファルト男爵に話しておきたい。

他にも、アンジェから聞いたところによると、リオン君が見つけた浮島には温泉があるという話なので、それも気になる。

ついでに、バルトファルト男爵の正妻であり、王国の男子達から搾取して私腹を肥やし国の安全保障を脅かす屑女の集団「淑女の森」構成員のゾラ・バルトファルトを駆除できれば、

リオン君やバルトファルト男爵からの好感度も稼げると思っていたのだが、基本的に、王都に滞在しており、領地に来ることは少ないらしい。

そんなことを考えながら、飛行船内のブリッジで、領地から持ち込んだ決裁書類のチェックをしたのだが、そこに船長がやってくる。

「若様、間もなくバルトファルト男爵の浮島に到着します」

「了解した、クルー達にも準備をさせてくれ」

「それと、先方に、同じくバルトファルト領に向かう飛行船があるようでして・・・」

「どこの家かわかるかい?」

「アトリー家です」

うわ・・・あのストーカー女、まさかリオン君の実家に押しかけるとは思わなかった。

いや、乗っているとは限らないのだろうが、問題はアトリー家がこのタイミングでバルトファルト領に向かっていることだ。

十中八九、バーナード大臣か、クラリス嬢の意向を受けてリオン君の取り込みを図る目的だろう。

さて、どうしたものか。

厄介なことになったのだけは確実なので、頭が痛い。思わず額を押さえてしまう。

「若様、大丈夫ですか?」

「も、問題ない。それよりも・・・その飛行船、主砲の射程範囲内か?」

「は?」

「一発だけなら誤射かもしれない」

前世で、近隣の敵国がミサイル実験をかましたときに、そんなことを社説で堂々と書いていた新聞があったなぁと思いつつ言ってみた。

「中立派閥を敵に回しちゃダメですよ!」

「・・・分かっている、冗談だよ」

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公国との戦闘参加者への表彰が終わった少し後、王宮内の一室でとある派閥の会合が臨時で実施されていた。

その派閥は、少し前まではオフリー家が属していて、レッドグレイブ公爵家とは対立しているグループである。

「聞きましたか?殿下はまたあの成り上がり者に負けたそうです」

「王位に就けなくてよかった」

「それにしても、あの成り上がり者の態度は目に余りますな。しかも王妃のお気に入りときたものだ」

「目に余るといえばレッドグレイブのバカ息子もでしょう。成り上がり者とつるんでオフリーを潰されるとは思いませんでしたな」

「辺境でドサ回りをしていたと思ったら、例の婚約破棄騒動後に、派手に動きまわりだして、金蔓にすぎないとはいえ、オフリーの武力はそれなりにありましたからね」

「まあ、レッドグレイブの王宮内での影響力は低下する一方ですから、必死に目立とうとしているのでは?」

決闘やオフリー家の滅亡について、どこか他人事で暢気にも聞こえる貴族達をよそに、グループのトップであるフランプトン侯爵は、貴族達の危機意識の無さに肩を震わせていた。

「あんな成り上がり者に負けるとは公国も情けない。黒騎士も老いには勝てなかった、ということでしょうかな。こうなったら我々も手を切るべきでしょう」

一人の貴族が公国のことを笑いながら、周囲に同意を求めたところで、フランプトンはテーブルに拳を叩きつける。静まり返った貴族達は驚きのあまり言葉を失い、長である侯爵に向けて静かに視線を向けた。

「なんとしてもあの成り上がり者を潰せ。手段は選ばなくていい。それがレッドグレイブの弱体化にもつながる」

「し、しかし理由がありません。それに、王妃様が何と言うか!?もはやレッドグレイブの影響力を気にする必要なんて・・・」

「お前たちの頭は飾りか!?あの成り上がり者の裏にいるのはレッドグレイブだぞ」

「だからといって、もうここから巻き返せますか?元から王妃様とレッドグレイブのバカ息子が不仲だったのに加えて、先の婚約破棄騒動で、王家と公爵家の関係も悪化しています。そんな状態ではレッドグレイブと言えども・・・」

「お前達が自分で言っていただろう、成り上がり者が王妃のお気に入りだと。レッドグレイブが裏で糸を引いていて、あの成り上がり者に王妃を篭絡させて、王家との距離を縮めさせようとしていると思わないのか!」

「ラーシェルの奴らから腹黒姫と呼ばれているという王妃様がそんな簡単には・・・」

「レッドグレイブのバカ息子は、陛下の夜遊び仲間だぞ?夫婦が不仲であることは筒抜けだろう。それに、将来を有望視されていた5人のガキが、たった一人の小娘にまとめて篭絡された事件を忘れたか!?」

フランプトンの言葉に、配下の貴族達は思い出す。

当時王太子であったユリウスに加えて、国内で古い歴史と実力を持つ家出身の4人が学園に入学して半年足らずの間で、たった一人の女子によって全員が篭絡されたことを。

そして、それから少しして、その5人を決闘で完膚なきまでに叩きのめした成り上がり者が、いつの間にか王妃のお気に入りになったと言われるようになった。

成り上がり者との決闘で倒され、最も屈辱的な煽りをされたのは、他ならぬ王妃の腹から産まれたユリウスであったにもかかわらず、その成り上がり者が王妃のお気に入りというのはおかしくないかと、貴族達もここで気付いた。

「あの成り上がり者が、何かやらかすたびに利益を得ていたのは他ならぬレッドグレイブだと気付いたか!」

婚約破棄騒動から連なる決闘で、成り上がり者であるリオンが勝利したことで、レッドグレイブは家としての、最低限の名誉を守ることができた。

また、空賊ウイングシャークをリオンとレッドグレイブ家が討伐したことで、レッドグレイブは敵対するオフリーを滅ぼす大義名分を得た。

そして極めつけは、リオンが公国の艦隊を破ったことで、身柄を拘束された自家の令嬢を救出してもらっただけでなく、鹵獲した飛行船や最新型の鎧を提供されている。

「ま、まさか本当に全てレッドグレイブが裏で糸を引いていたと・・・」

「結果が全てを示している。ヴィンスのやつは派閥の再編に注力しているようだから、あのバカ息子のほうだろうな」

「いくら公爵家の跡取りとはいえ、そこまで物事を上手く運べますか?」

「奴は陛下との距離が近い上に、王宮内で役人をやっていたものだから、あちこちの部署にも顔が利く。バーナードの部下をやっていたからアトリーとも近い。そんな男が公爵家の力をチラつかせて動いているのだぞ!」

「そ、そんな大げさな・・・オフリー絡みを除けば、監査の名目で辺境に乗り込んで、辺境で暴れ回ったくらいでしょう」

「それが大問題だとわからんのか!!」

フランプトンが再び大声で吼え、両拳で手元のテーブルを殴りつけた。

周囲の貴族達は驚きのあまり声を失い、室内に一時の沈黙がもたらされる。

「この国が女を過剰に優遇するせいで、搾取され、王国への不満を募らせていた辺境の領主どもが、あのバカ息子のおかげで目障りな妻を排除できたのだぞ!おかげで奴は辺境の領主の中では大層な人気らしい。これがどういうことかわかるか!?」

「レッドグレイブが将来的に巻き返しを図るときの先兵になる、とかでしょうか」

「ぬるいわ!よく考えてみろ!我々が王宮内で実権を握っても、レッドグレイブは自分が助けた領主どもに防衛を放棄させて、簡単に外国の軍勢を入り込ませることができるだろうが!」

「つまり、我々がやったことと同じようなことを仕掛けてくると・・・ですが、成り上がり者と違って公爵家の跡取り相手となると、理由もなく潰すのはますます難しいのではありませんか?」

「ならば、今の我々が抑えているポストを総動員して、レッドグレイブが裏にいる案件を全て潰せ!できなければ、案件を塩漬けにするでも、難癖付けて差し戻すでもかまわん!少しでも足を引っ張れ!それと奴の弱みを徹底的に洗い出せ!陛下と夜遊びに興じているなら、スキャンダルの1つや2つあるだろう」

「我々も調べてはいますが、関係を持っているのが平民や騎士家関係者ばかりで、醜聞としては物足りません」

「ならば、火のないところに煙を立てろ!それと、平民相手でも隠し子くらい出てこんのか!」

「国内を探した限りでは見つかっておりません。関係を持っていた女の中には外国に出た者もいるようでして・・・」

「奴が逃がしたのかもしれん!草の根分けても追跡しろ!他には何かないか?」

怒りのあまり鼻息が荒くなったフランプトンが周囲を見渡す。

派閥内の貴族達は黙って下を向いているのだが、その中の一人が恐る恐る手を挙げた。

「スキャンダルといえるかはわかりませんが・・・アトリーの令嬢が囲っていた亜人を真夜中の繁華街で血祭りにした上で、令嬢とともに嘔吐していた、というトラブルがあったようです。アトリーの家臣も帯同していたので色恋に絡むものではなさそうですが・・・」

「はあぁぁぁ!?一体どんな状況なのだ!?」

「わ、わかりません!確かに起こった出来事のようなのですが、前後の状況は不明なままでして・・・」

「レッドグレイブがアトリーと手を組んだらどうする!詳細をさっさと調べろ!」

先程から怒り続けていたフランプトンも、理解が全く及ばないシチュエーションを聞かされて思考が固まってしまう。

だが、ギルバートの異常行動の報告はさらに続く。

「それとローズブレイド家との見合いがあったそうです、結果的には婚約とはならなかったようですが・・・」

「武闘派どうしで結びつかなかったのは朗報だな。だが、わざわざ私に耳に入れる情報はそれで終わりか?」

「いえ、その・・・続きはあるのですが・・・」

「ならばさっさと話せ!」

「見合いの相手に、あの・・・は、裸エプロンでの奉仕を要求したそうです」

「・・・は?」

フランプトンの思考が再びフリーズし、口が大きく開いたまま激しくまばたきをしていた。

最初は聞き間違いだと思った。いや、思うようにしなければ自分の中にある物事の道理に照らして理解ができなかった。

「レッドグレイブの跡取りは変態か?」

「なんと破廉恥な・・・」

「公爵家の驕りが過ぎるのではないか?」

「いや、それほど突き抜けているからこそ、あのような成り上がり者を許容できるのかもしれん」

派閥内の貴族達が口々に思ったことを話しているが、いずれも予想以上に強烈な情報を聞いて動揺を隠せずにいた。

たしかに、色々な意味で倒錯している貴族は少なくない。

しかし、見合いでそのような要求をしたのでは、全面戦争に及んでもおかしくない。頭のネジが数本、いやネジが全て吹っ飛んだとしか思えない行動であった。

実際にその場ではローズブレイド家側から、ペットになれという、これまたとんでもない要求が事前にあった上での裸エプロンなのであるが、フランプトン派閥の面々はそれを知らずにいるため、もはやギルバートの行動が正気によるものではないと思い始めていた。

「よ、よし・・・あの馬鹿息子が、その・・・異常嗜好の持ち主だと噂を流せ」

「か、かしこまりました」

「ただ、我々の品位を損なわないようにしろよ」

オフリーという金はあれども素行の悪い貴族を飼いならし、反主流派を束ねてきた剛腕の持ち主である、フランプトンも、さすがに、口にするのも憚られる性癖の内容に、舌鋒が鈍化せざるを得なかった。

ギルバートの行動が、元々、自分達にとって障害になるものばかりだという認識はあったが、フランプトンにとって、それ以上に不気味なのは、行動の異質さであった。

時に、苛烈な振る舞いを厭わないところは、公爵であるヴィンスの昔の姿を彷彿とさせるところがあるものの、女性関係の奔放さや辺境の領主への肩入れは、フランプトンには理解ができずにいた。

人間は、理解ができないものに対しては嫌悪と恐怖が湧き上がるものであるが、フランプトンにとっては、ギルバートの行動も、決闘騒動で公爵家側に付いた上に予測できない暴れ方をするリオンの行動も、ともにおぞましいものであった。

「繰り返しになるが、まずはあの成り上がり者から潰せ!奴さえどうにかなれば、公爵家と王家を繋ぐものもまたなくなる」

公爵家を直接攻撃するには、さすがにまだカードが不足している。

だが、武力はあれども政治的な力の乏しいリオンであれば、潰すのは難しくないだろう、そして、それがレッドグレイブに対するダメージに繋がると考えていた。

「レッドグレイブが勢力を立て直して反転攻勢に出る前に、王宮内から排除するとともに、これ以上武力面の勢力拡大を防がねば、我らに未来はないことをゆめゆめ忘れるな!」

フランプトン侯爵家も、王家に連なる家、言い換えればスペアだが、スペアの中にも差はある。

レッドグレイブは言うに及ばず、ラーシェルとの国境を任され、王妃の娘との婚約関係があるフレーザー侯爵のような、王家との強いつながりがあるわけでもない。

何もしなければ、ずっとこの先も反主流派であり続けただろう。

だが、将来にわたって盤石になると思われた公爵家の政治的影響力は、降って湧いたような王太子の婚約破棄騒動をきっかけに、一気に衰えた。

この機を逃せば、次のチャンスはいつ、否、チャンスがあるかどうかすらわからない。

これまではオフリーを介して公国と繋がっていたが、そのオフリーが滅んだ今、これまでよりも直接的に公国と手を組んででもレッドグレイブを王宮から排除しなければ、いずれ巻き返されてしまう。

成り上がり者を潰し、立て直しの兆しが見えるレッドグレイブを再び弱体化、そして排除して、自分の権力を固めるためには、ここが”賭け時”なのだとフランプトンは腹を括った。

「ヘルトルーデ殿下をお連れしろ」

指示に従い何名かの貴族が席を立つ。

残った貴族の何割かは指示に不満がありそうだ。敵国の王女と、派閥のトップが直接接触してしまっては、最悪の場合にも言い逃れはできない。退路を確保しておきたいと考えていることはすぐに想像がついた。

だが、それを見ながら、フランプトンは再び思考を巡らせる。

(ヴィンスめ・・・あの成り上がり者が危険だと、いや貴様の息子ともども、なぜ自由に泳がせている。あえて見逃しているのか?だとしたら、ロストアイテムもろともに、なおのこと忌々しい)

「我らの敵は、黒騎士付きの公国艦隊を単機で退けるロストアイテムの鎧、それが2機もいるのだ。さらに後ろには、正規の公爵家の戦力も控えている。それらを一気に相手にしたくなければ、命がけで調略に励め!」




試作型とはいえ、アロガンツがもう1機あったり、兄上様がローランドとズブズブなので、フランプトンおじいちゃん目線では兄上様のことがとても目障りです

冒頭のオマージュ元は原作web版の最終決戦時の兄上のシーン兼原作兄上様の最終登場シーンですw
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