乙女ゲー世界は悪役令嬢の身内にも厳しい世界です   作:りーおー参式

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6月、お仕事疲れた、、、


第52話 異世界→チート、悪役令嬢→断罪、エルフの森→焼き払う(暴論)

コーデリアが、うちの家の騎士団幹部連中に、出撃の可能性を仄めかしていたせいか、準備はおそろしく順調に進み、僕を乗せたレッドグレイブ家の飛行船は、目的地であるエルフの浮島に到着していた。

ちなみに、今回、僕が引率しているのは、当主の直轄部隊である第一騎士団ではなく、公爵家としての荒事に対応する第二騎士団でもなく、遊撃対応を主とする第三騎士団である。

有事の際にはアンジェの保護までが役割となるので、てっきり第二騎士団に話が行っているのかと思ったので動いているのが第三だと聞いたときには少し驚いた。

もしかしたら、コーデリアと親しい奴がいるのだろうか。カレシか、手玉に取っている男でもいるのだろうか。そうだとしたら、あの腹黒陰険メガネメイドにもなかなか可愛いところがあるじゃないかという気もしてくる。

さて、浮島の港に到着したところで、留守番の部隊を残し、騎士団連中を率いて森の中にあるというエルフの里を目指す僕らなのだが、

当然ながら、港に停泊していたパルトナーに残っていた聖女親衛隊や聖女であるマリエの取り巻きと思しき連中とかち合うはめになった。

まあ、僕の顔を見てみんな一様に怯えた表情を浮かべて視線を逸らそうとしていたのは笑えるよね。

半ば嫌がらせ目的でアンジェやリオン君、オリヴィアさんの行方を聞いてみたのだが、想定通りエルフの里、しかも里の中にあるというダンジョンに向かったという話であった。

そういうわけで、以前にバルトファルト男爵の正妻の使用人をしていて、僕にケンカを売ってボコボコにされた上で顔と股間を焼かれたエルフに腰縄を付けて、僕らは森の中を進むことになった。

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ギルバート達が森の中を進み始めてからしばらく経った後、その行軍を遠くから発見したエルフの男がいた。

森の中で息を潜めながらその集団をよく見てみると、その先頭には、縄でぐるぐる巻きにされた同胞たちの姿がある。しかも、顔面には殴られたためにできたと思われる痣があったり、大火傷をして皮膚が大きく焼けていたりしている。

人間達の集団が、エルフの浮島に来ることは知っていて、一部が村長たちと面会しているという情報は共有されていたが、同胞が捕縛された、という話は初耳であった。

ボコボコにされて縄で拘束された同胞、それを険しい顔つきで連行している人間の騎士達の姿を見て、潜んでいるエルフの男の頭には最悪の事態が思い浮かんでいた。

村長をはじめとした、村の幹部の者達が解析を進め、既に一部の利用を開始している、遺跡地下の研究施設のことである。

とである。

その施設は、今でこそ、種の勢力としては劣勢なエルフが、今の立場を逆転するための切り札となるものだ。それを、この騎士連中に知られたのかもしれない。

先にこの浮島に到着している貴族連中や、聖女とかいう大層な肩書がある者にも知らされてしまったら、その時点で詰みとなりかねない。

そのような事態を防ぐためには、この一団だけでも消す必要があるだろう。エルフという種族の野望を実現するために、手段を選んでいる余裕はない。

遺跡地下の研究施設の力を使って早急に口封じをするべきであろう。

そう結論付けたエルフは、森の中を最大スピードで走っていくのであった。

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ここでひとまず、話は、ギルバート達がエルフの浮島に到着した直後に遡る。

不本意ながら聖女親衛隊の隊長に任じられたために、アンジェやリビアだけでなく、マリエやグレッグ、ジルクらもエルフの浮島に連れてきていたリオンは、エルフの村の広場にいた。

直前まで、遺跡での冒険をするため、その遺跡を管理しているエルフの村の村長と交渉をしていたのだが、村の広場に、里長という肩書を持つ者が来ていることを聞き、村長と広場までやってきたのだった。

「里長の言葉を伝えます。もう2度と遺跡に入ってはならぬ。このままでは、古の魔王達の怒りに触れる、と」

里長と呼ばれる、腰が曲がった老エルフの女性の言葉を、また別のエルフの女性が代わりに伝えていた。

そこに、困惑した顔を浮かべながらエルフの村長が、反論をする。

「里長、魔王とは何ですか?そもそも、他の村の者達も出入りをしているじゃないですか」

「里長が何も知らないと思っているのですか?貴方たちが遺跡に大きく関わっているのを里長は知っています。禁忌に触れてはならぬ。エルフの聖地に入ってはならぬ」

占いなどというものには懐疑的なリオンであったが、あの乙女ゲーには出てこない「魔王」が何を指すのかは気になるところだった。

とはいえ、老婆となった里長の言葉には、どこまで信ぴょう性があるかはわからない。どうしたものかと思っていたところに、割って入った者がいた。

「ちょっと!ゴチャゴチャ五月蠅いのよ!いいから、さっさと私を遺跡に案内しなさい!」

勝手に親が作った借金を何とかするために財宝が必要だという、純粋な我欲に駆られたマリエは、占いの話を完全に無視していた。

前世の知識を駆使し、逆ハーレムをつくりあげて、主人公と悪役令嬢を排除し、聖女の地位を手に入れたまでは良かった。

だが、マリエの今世の親は、聖女となったマリエの名前を無断で使って膨大な借金を作ってしまい、マリエはその返済に追われる羽目になってしまった。

そのため、聖女としてふんぞり返って優雅な生活を送っていられなくなり、必死に金銀財宝を探し求めなければならなくなってしまったのである。

そんなマリエの姿を見た里長は目を見開くと、先ほどから自分の言葉を代弁している女性にボソボソと何かを伝える。

「貴女様は聖女様でしょうか」

「あら、わかる?そうよ!私が聖女よ!分かったらすぐに・・・」

「遺跡に入るのは構わないそうです。聖女が鋼の魔王と業火の金鬼を連れてくる。いずれの怒りに触れれば、里は無慈悲に焼き払われる。それが里長がここ数ヶ月で予知した未来ですから」

「魔王?鬼?私にそんな知り合いいないわよ!?」

一方、リオンは、マリエのほうが自分にとってはラスボス、魔王みたいなもんだと思いつつ、古の魔王と業火の金鬼が何を指すものかを考える。

(魔王ってのは想像がつかないが、業火・・・ってことは火とか炎を使うやつってことだよな・・・それで金色の鬼・・・)

そう考えながら、視線を動かしていたのだが、視界にアンジェリカが入ってきたところで、動きが止まる。

先日の公国との戦闘でもファイヤランスを繰り出してモンスターを退治していたことは記憶に新しい。そして、髪の色は輝くような金色だ。

それに、怒ったときはとても怖いことは、疑いのないところだ。

王太子の面前で決闘を申し込んだり、空賊退治の際にリビアとケンカしたような状態になったときに、思いっきりビンタされたことなど、裏付けとなるエピソードがすぐに頭に浮かぶ。

また、鬼の正体が誰なのかを考えている者は、その場に、他にも数名いた。

「火を使う金の鬼・・・エルフの里を焼き払うような、やべぇやつって言うと・・・」

「奇遇ですね、グレッグ君。今、私も同じ方のことが頭をよぎりましたよ」

腕を組み、顎を手で撫でながら、占いで述べられた鬼について考察していたグレッグとジルクは顔を合わせて、すぐにアンジェリカのほうを見る。

「お前達、ふざけるなよ!?誰が鬼だ!里を焼き払うとか、するわけないだろ!!」

ジルクやグレッグから、業火の金鬼が自分のことを指すかのように思われていることに気付いたアンジェリカが、顔を真っ赤にして反論する。

「あ、いや、私達が想像していたのはアンジェリカさんのことではなく・・・」

「そ、そうだぜ!?もっと過激で、専属使用人連中をガンガンに燃やしてた人がレッドグレイブ家にいるだろ!?」

「まさか兄上のことを言ってるのか!?」

「あの方は、理由のない暴力を振るったりはしませんが、その理由さえあれば躊躇なく大暴れすることはアンジェリカさんだってわかってますよね!?むしろ理由を作る側の方ですよね!?」

「最近だって、学園祭での騒動をきっかけにオフリー家を滅ぼしたり、バルトファルトの実家で神官と揉めたと思ったら神殿に殴り込みかけただろ!?」

「だからと言って、兄上も、人里を焼き払うようなことは・・・」

「アンジェリカさん、ここはギルバートさんと何度も衝突をしてきた亜人の浮島ですよ?言うなれば、あの方を爆発させるトラブルの火種が、そこかしこにある、ということです」

「それに、ここには聖女のマリエもいるんだぜ?今、マリエと正面からぶつかるような人は、一人しか思い浮かばねえよ」

「だ、だからと言って、兄上がここに来るなんて話は聞いてないぞ!?」

アンジェリカとジルク、グレッグのやり取りを少し離れたところから観察していたリオンは、占いで言われた魔王が誰を指すのかについて、ルクシオンと話をしていて、結局のところ結論は出なかったのだが、

一方で、鬼、アンジェリカがいうように、このエルフの浮島にギルバートが来る用事はないだろうと思いつつ、ルクシオンに話を振る。

「まぁ、たしかに王都にいるギルバートさんがここに来る理由はないよな」

「いえ、ちょうど今しがた、公爵家の飛行船がこの浮島に到着し、騎士団を率いてギルバートが上陸したようです、マスター」

「なんで公爵家の飛行船がエルフの浮島に来てるんだよ!?まさか、揉めている神殿の聖女のマリエを消そうって考えか!?」

「どうやら、先日、マスターの実家で、ギルバートにケンカを売ったエルフが王都から追放されることになったようで、そのエルフを連行してきたようです」

「ゾラの奴隷達か・・・」

主人公に悪役令嬢、自分を含め、転生者が3名に公国の王族と、役者が揃い過ぎていることに、この先の展開がきっと穏やかなものにはならないだろうという予感がしていた。

そうであるなら、何かが起こる前に、自分と同じ転生者であるマリエと接触して、今後のことについて話をしておいたほうがいいだろうと考えるリオンであった。

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エルフの村があるという地点に向けて、僕達が、鬱蒼と茂った森の中を進み始めてからだいぶ経った頃、行程自体が順調だったこともあり、

経過報告を受けた僕は、今回同行している第三騎士団の幹部らに、雑談を振ってみることにした。

普段、僕と第三騎士団の間にあまり交流がないのは偶然なのかもしれないが、何か問題や課題があるなら、この機会を使い、話を吸い上げて解決を図るか、図ろうという姿勢を見せておいた方が組織全体の管理の上からは妥当だろうし、

今回、コーデリアが事前に出陣の可能性を知らせていたということから、あの陰険腹黒眼鏡メイドが騎士団の中の誰と親密なのだろうか、という好奇心に駆られたからだ。

「今回は、迅速に出撃の準備をしてくれて助かったよ。おかげで、あの”聖女”ご一行に追いつくことができた」

「とんでもございません!今回、出撃先にお嬢様がおられるとのことですので、我々としては全力以上の全力をもって対処するのみです!」

「・・・心強い意志表明をありがとう。ここしばらく、アンジェも大変なことが多かったからね、ありがたいよ」

「もったいないお言葉です!決闘騒動のときも、公国の襲撃のときも、我々はお嬢様の力になることはできませんでした」

「それを言うなら僕だって同じさ。肝心なときに、監査のために長期出張してたり、オフリー領に殴り込んでいたわけだからね。リオン君がいなかったらどうなっていたことか」

「バルトファルト子爵には感謝するばかりですが、何もできなかった我らとしては悔しくもあります。そんな折に今回の話が来たのです。ようやくお嬢様のお力になれる機会がやってきたのだと!!」

・・・あれ?毎回アンジェについて熱く言及しているな。なんだか、アンジェに対してずいぶんと強火の崇拝をしているようだ。まるで、騎士団まるごとアンジェ崇拝してるみたいじゃないか。

「頼もしいね。コーデリア以外にも、こんなに妹のことを大切に思っている家臣達がいてくれてありがたいよ」

「滅相もない!会長に比べれば、我らATFの個々人の思いなど、足元にも及びません」

おい、ちょっと待て。一言の中に何個もツッコミどころをぶち込んでくるんじゃあない!

会長って何だ!?文脈から推測するに、たぶんコーデリアのことなんだろうけど、あいつは何の会長をしてるんだ?

あとATFってこの世界に来て初めて聞いたぞ!?まるでどこかの勇気爆発するロボットを主軸とする日米連合艦隊みたいな略称じゃねえか!

もう突っ込みすぎて、銀髪の万〇屋の方から、ツッコミのダメ出しをされてしまいそうだよ!?

お、落ち着くんだ僕。

トラブルがあったときは、役員とかの重役連中の権力を使って強引に全てをねじ伏せるか、そうでなければ、一つずつ、丁寧に問題を解きほぐしていけばいいことは、前世の社畜生活で学んだはずだ。

「・・・ATFというのは?」

「はっはっは。わざわざ確認なさるとは、若様もお人が悪い。(A)アンジェリカお嬢様のことが、(T)尊くてたまらない(F)ファンクラブのことじゃないですか」

何だよ、その団体!公爵家の中で、そんな非公式組織ができてんの!?

しかも我らATFとか言ってたから、第三騎士団がほぼまるごと、強火のアンジェオタというか強度のアンジェシンパってことじゃないか。

これ、将来的にお家騒動の下地になったりするパターンじゃないのか!?

「ということは、君ら第三騎士団の誰かがあの腹黒陰険メガネと恋仲ってわけじゃなくて?」

「若様は本当に冗談がお好きですな。コーデリア会長は若様の愛人で、若様はATFの名誉会長じゃありませんか。そんな秩序を乱して手を出すような命知らずはおりませんよ」

そんな勘違い甚だしい噂、そういえばあったねえぇぇぇぇぇ!

最近めっきり聞かなくなったから、すっかり忘れていたよ!まさか、噂が噂として定着しすぎちゃって、公然の秘密(虚偽)として認識されてるの!?

というか、さっきも言ったけど、ワンフレーズにツッコミどころを複数ぶっこむんじゃねえよ!

いつの間に僕は怪しげな団体の名誉会長に就任したんだ!?しかも、妹のファンクラブの名誉会長って、もはやトンでもねえレベルのシスコン認定されてるじゃねえかあぁぁぁぁぁぁ!!!!

僕が名誉会長に据えられることで、絶妙にお家騒動にもならないように人事配置しているあたりが、ちゃんと仕事できててムカつくよ!!

嗚呼、もうツッコミ疲れたよ、パトラッシュ・・・

とりあえず、この短時間で判明したのは、当家の騎士団の1つまるごとがアンジェガチ勢となっていて、当家の陰険腹黒メガネメイドが強い影響力を持っていること、僕がアンジェガチ勢達の集団の名誉会長にいつの間にか就任させられていた、ということだ。

・・・やばい、マリエとか、その取り巻き連中とか、エルフどもとかとバトルする前にずいぶんとメンタルが削られたような気がする。

だが、そんな悠長にしていられたのも、その時までであった。騎士団の進行方向から、一人の騎士が大慌てでこちらに走ってくると、大声で報告を上げてくる。

「森の奥から、大量のモンスターが出現!先頭にいる部隊との交戦が始まりましたが、数が多く、足止めされております!」

襲撃してきたのは、聖女でも、公国でも、エルフでも、綾鷹でもなく、まさかのモンスターでした・・・。、

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前線から報告に来た騎士から状況を知らされて、僕は、モンスターと闘う騎士団の指揮を取り始めたのだが、騎士団はなかなかモンスターどもの集団を突破できないでいた。

いや、僕が知っている、この世界に存在するモンスターとは、外見がずいぶんと違う気がする。なんというか、未確認生物のような不気味さがあって、半人半怪物という感じだ。

個体ごとに姿が違うのだが、共通するのは胴体や頭部は人間っぽい形状をしており、総じていうと爬虫人類とでもいうべきだろうか。ゲッ〇ー線でも浴びせてやろうか。

そして、単体の戦闘力がそこまで高いわけではないのだが、木々が深く茂った森の中から湧き出てくるため、人的損害を最小限にするためには、森の中に積極的に攻め込んでいくわけにはいかない。

迂闊に攻め込んでしまったら、木々の死角から不意打ちをくらう可能性が高い上に、鎧のような機動兵器は飛行船に置いたままだから、攻め込めずにいるというわけだ。

当然、僕としてはこの状況が非常に面白くない。

この正体不明の化け物どもが、エルフの集落のほうにも湧いている可能性だってある。つまり、アンジェ達のところに危険が迫っている、否、危険に晒されている可能性だってある。

騎士達は強火のアンジェガチ勢だけあって、士気も高くよく戦っているのだが、生身での戦闘であることや化け物どもの数の多さ、地形的な要因などから、すぐにこの場を突破して、アンジェがいるであろうエルフの村に辿り着くことは難しそうだ。

特に大きな要因は、敵の数と地形だ・・・化け物の数を減らせれば・・・死角がなければ・・・

さて、どうすればいいか・・・ん?もしかしたら・・・

対策を考える僕の頭に、妙案が舞い降りた。ゲームの演出なら、頭の上に豆電球が浮かんで点灯する的な閃きと言ってもいい。

そうだ、小難しく考えるからよくないんだ。答えは簡単だった。やるべきことが固まったら、あとは、ある意味、僕の転生特典とでもいうべき、実家の太さというか、権力の強さと暴力を振りかざせばいい。

指揮を補助する幹部らの横を、僕は無言のまま通り抜けて、前線に向かって歩き出す。

「若様!危険です、お下がりください!!」

「これ以上、手間と時間をかけているうちに、この先にいるであろうアンジェに何かあったらどうするんだい?公国の襲撃のときと同じ轍を踏むつもりかな?」

「だ、だからといってどうなさるのですか!鎧部隊の増援がもうすぐ到着するはずです、それまで・・・」

「前線の騎士達を下がらせるんだ。突破口は・・・僕が開く!」

目を大きく見開いて、騎士団の幹部の両肩をがっしりと掴む。

同時に、僕の背後にファイヤランス、しかも特大の炎の槍を何本も浮き上がらせた。

それを見た騎士団の幹部は、僕が何を考えているのかを察したのだろう。

「む、む、む無茶を言わないでください。それにここはエルフの浮島です、いくら若様であっても・・・」

「責任は僕が取る。というか、モンスターを討伐するのは、騎士の役目だろう。それでガタガタ言われる筋合いはない。むしろ、こんなに大量のモンスターを間引きもせずにいた管理不行き届を突き付けてやりたいくらいだ」

「そ、それはそうですが・・・」

「もう一度言うぞ。うちの騎士達を下がらせろ」

つい、口に出した声が低くなってしまった。僕を囲む騎士団の幹部らの表情がいっせいに青ざめて、後ろに下がる。

僕の背後のファイヤランスがさらに数を増やし、より大きくなったことも合わせて、彼らもヤバいと本能的に感じたのだろう。

だが、それでいい。たっぷりと魔力を注ぎ込んだ、特大のやつを化け物どもにブチかましてやろう。

目と鼻の先に、危険にさらされているかもしれない家族が、妹がいて、解決する手段も思い付いている。ならば・・・迷うことはないはずだ。

「退避ぃぃぃぃぃ!!」

「総員、今すぐ下がれえぇぇぇぇ!!!」

「若様が爆発するぞぉぉぉ!!!」

腹の底から発せられた後退命令が戦場に響き渡る。命令の必死な声色から事態の重大さを感じ取った騎士達は、急いで僕の後ろへと下がり始める。

ある意味、たったこれだけの言葉で、この先に何が起こるのかを察して咄嗟に行動に移すことができる騎士達は、よく訓練されている、というか、よく僕のことを分かっていると言っていいだろう。

騎士達の退避が完了し、僕と化け物の間には遮るものが何もない状態―いや、正確に言えば、豊かな自然というか膨大な森の木々を除いて、遮るものがない状態になる。

「もろとも・・・邪魔は・・・消え失せろ!」

頭上に掲げた手を、正面に向けて振り下ろすと、僕の背後に浮かんでいた、何本もの特大の炎の槍が、正体不明の化け物の群れのど真ん中とその周辺に突き刺さった。

直後に、炎の槍が爆ぜて大爆発が起こり、化け物や森の木々が炎の中に飲み込まれていく。距離的に爆発の直撃を免れた化け物や樹木も、撒き散らされた炎や熱風に晒されて燃え始めたものもいた。

「やべぇ、若様ブチギレ案件になってる」

「さすが名誉会長。お嬢様が絡むと人が変わるな」

「お嬢様のためなら手段を選ばない妹ラブの強さ・・・あの鉄面皮な会長が股開くだけはあるな」

「あんな激しい感じで、会長のことをわからせているのか!?」

「いや、何かを破壊したりすることに関しては通常営業じゃね?」

後ろのほうで炎の大爆発を目の当たりにした騎士達が思い思いの感想を呟いている。

いや、股開かせたことも、わからせたなんてないからな!?というか、その鉄面皮の使い方って誤用じゃなかったか?

心の中でツッコミを入れながら、僕は炎が上がり続ける、かつて木々が生えていたところを進んでいく。

焼死を免れた魔物がたまに襲い掛かってくるのだが、火傷のダメージがあるのか、機敏な動きをしている個体はいない。

また、木々がことごとく燃えているため、幹の裏や樹上を使った奇襲が不可能となり、直接的な攻撃をせざるを得なくなったのだろう。動きそのものが先程までと比較して単調だと言わざるを得ない。

それでもなお、攻撃を加えてくる化け物は剣でぶった切るか、ファイヤーボールをぶち込んでいく。

そして、先に進み、まだ木々が燃えてないところまで進んだところで、再び背後に浮かべたファイヤランスを、化け物の集団や樹木に向けて投げ付け、化け物と森の木を燃やしていった。

よし、概ねイメージどおりだ。やり方は少しだけ乱暴だったかもしれないが、これを繰り返していけば、アンジェがいるであろうエルフの村に到着するまで、そうそう時間はかからないだろう。

だが、僕が焼き尽くしきれなかった化け物の討伐はしっかりやってもらわないと困るし、僕ばかりいい格好をしてたら、アンジェのことが尊くてしょうがない騎士達にとっては、不服を感じるかもしれない。

それなら、少しモチベーションを上げておくか。

僕は、後ろからついてくる騎士達の方を向き、大きく息を吸って、彼らに語り掛ける。

「レッドグレイブ家の騎士諸君。君達の奮戦、素晴らしいの一言に尽きる。だが・・・妹を助けるのはお兄ちゃんの特権だ、僕がアンジェを救い出すところを、指を咥えて見てるがいい!それが嫌なら・・・死ぬ気でついてこおおおおおおい!!!」

腹の底からひねり出した大声で騎士達の嫉妬を煽り、僕は化け物どもが密集しているところに、三度目のファイヤランスを叩き込んだ。

化け物や樹木がさらに吹き飛ばされて進めるようになったところを、僕は全力で駆け抜けていく。

「誰か若様を止めろぉ!」

「わ、若様、シスコン自重してくださあぁぁぁい!」

「いや、若様に手柄を独占させるなぁぁぁ!!」

「若様に好き勝手させたら、また会長から地獄の説教だぞ!」

「よっしゃあ!今度こそ俺達でお嬢様を助けるんだ!」

後方からは、若干不穏当な声も混ざってはいるものの、やる気に満ちた声を張り上げながら騎士達が僕を追ってきている。

こうして、僕らはエルフの村に向けて、邪魔な化け物と森を灰へと変えながら進軍していくのであった。

次回

エルフの村に乗り込んだ兄上様ご一行であったが、遺跡探索中にリオンとともに姿を消したマリエ以外にも、火種となる者は残っている。

エルフ、聖女親衛隊、そして公国・・・果たして、エルフの村は焼き払われずに済むのか。

次回「黒き絶壁」

(サブタイは嘘です)




ヤバそう、かつ、ほどほどにダサい異名を考えて業火の金鬼となったが、もっと絶妙にダサい二つ名が思い浮かばなかったよ、、、
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