乙女ゲー世界は悪役令嬢の身内にも厳しい世界です   作:りーおー参式

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遅くなりました
パソコンが電源入らなくなって1月経ち、捨てようと一回全放電させたあとにダメ元でアダプタつないだら復活したものの、
反応が遅すぎて入力が全然進まず1月、、、
もう買い換えるか、スマホで入力するか、、、


第64話 暴力と権力と心強さと

さて囚われの攻略対象であるリオン君を主人公であるオリヴィアさんに救出させるために、彼女をメンバーに組み入れた救出部隊を王宮に潜り込ませる、という完全無敵な計画を実施するべく、

僕はここ数日、仕込みと囮を兼ねて王宮内を目立つようにうろついていた。

作戦の具体的な内容は、王宮所属の騎士や魔術師に偽装した公爵家の部隊にオリヴィアさんを加えた上で、リオン君を救出させるというものであるが、

その前提として、僕が王宮所属の騎士等を護衛にして王宮を歩き回っても不思議じゃないという実績が必要だ。

自前の護衛を付けることだってあるが、現時点では公爵家と関りが深いリオン君が反逆の疑いをかけられていることから、下手に関係者を刺激しないようにしたほうがいい、

というのを逆手に取り、王宮所属の騎士達を護衛に付けることで、不要な疑いをかけられないようにする、というわけだ。

王宮側としても、派閥争いに直接関わり合いになるつもりはなかろうが、王宮内で敵対派閥同士がぶつかり合って、重大な事態が発生して、管理責任を問われるよりも、

ぶつかり合いの抑止力になったほうがベターだと判断したのだろう。特段、異論なく護衛を付けてくれた、というわけだ。

そんなこんなで僕が護衛を付けて王宮を歩き回っていた、という実績を作った上で、救出作戦当日となった。

屋敷内で王宮の騎士や魔術師に変装した公爵家の騎士達が、着々と準備を進めていたのだが・・・服の上からでもわかるくらいオッパイの大きい、見覚えのない黒髪の魔術師の子がいる。

あれ?あんなにスタイルのいい騎士や魔術師なんて、うちにいたっけ?

いや、変装しているわけだから、服の中に丸めた布でも仕込んでいるのかもしれないね。

準備は万端、いざ、王宮に乗り込むとしよう。ま、数日、王宮をうろついていても、何も起きなかったから、もしかしたら、王宮に潜入して、あっさりとリオン君を救出できちゃうかもしれないね。

・・・そう思っていた時期が僕にもあったよ。

うかつにも、僕はすっかり忘れていたんだ。

乙女ゲー世界で始まった第二の人生は、エロやロマンスなんてほんの一時期わずかにあったくらいで、残りはなぜか血と暴力に満ちていたのだということを・・・

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今日に限って引き連れている護衛が、王宮所属ではないが、外から見ただけではわからないはずだ。

潜り込んだ王宮の中を静かに進んでいく僕ら一行であったが、2方向からの通路が交錯した広間に差し掛かったところで、僕らがやってきたのとは別の道から数人の男達が歩いてきて、僕らと鉢合わせになってしまった。

クソ、もう少し進めばリオン君が収監されている地下牢まで辿り着けたのに。

しかも、出くわした連中というのが、大柄で体重は3桁にもなるであろう肥満・・・いや、ワガママボディをしながら眼光と顔面の油を鋭く光らせた男に、その傘下の者達。

一言で言ってしまえばフランプトン派の連中、しかもフランプトン派の中でもオフリー家とは違って、超が付くほどの武闘派なやつらだ。酒瓶を持っているが、これから酒盛りでもするのだろうか。

そんな面々を統率しているのが、目の前にいるファットマンというか、摂取したカロリーの結晶である脂肪を持て余した百貫デブな伯爵である。

そして、先日、あのケモナー学園でマリエと一緒になってアンジェを罵倒していたクソ女のうちの1人の父親でもある。

僕の姿を見つけた途端、ものすごい勢いで僕を睨みつけてきたので、一度は睨み返してやろうかと思ったのだが、たまには趣向を変えてみようと思い付いた。

「熱い視線を送ってもらって恐縮ですが、そっちの趣味はないので諦めてください」

「貴様、ふざけているのか?」

敵対派閥だからか、公爵家のボンボン相手にも遠慮はしないスタンスらしい。

そもそも、マリエとともにアンジェを罵倒した、ということは、ブチギレしていた僕がぶっ放したファイヤーボール連発による報復を受けた、ということだ。

もし5発撃っていたら、サイバーでエンドなカイザーのようにグォレンダ!とか叫んだかもしれない。

・・・敵であれば、男だろうが女だろうが躊躇なく攻撃するあたり、フィンガーフ〇アボムズとかのほうが合ってるとか言われたらどうしよう。

さて、小ボケはさておき、目の前の伯爵としては、父親という立場上、結果的に娘が傷付けられたという因縁がある僕と対峙してスイッチが入ったのかもしれない。

まぁ、僕としたってマリエと一緒になって妹を罵倒した女の身内という時点で敵認定だから、ある意味でお互い様なんだけど。

「煽ってはいるかもしれませんねぇ、どこぞのクソ女がうちの妹にやっていたように。もしかして、双方の派閥の緊張を和らげるようなことを言って欲しかったのですかな?」

「好き放題に暴れて緊迫した状況をまき散らしてきた張本人が言えたセリフか」

「オフリーも聖女も神殿も、ついでに言えばどっかの派閥の面々も、僕の周りにかまおうとするからこうなる。危害を加えられなければ、何もしませんよ」

「その”周り”というのが広すぎるのではないかな。自意識過剰というやつだろう。少し謙虚に振る舞うことを学ぶと良い」

「それなら、どこぞの馬鹿な娘に、自分の行動がどんな意味を持つのか考えてから行動するよう学ばせることを推奨しましょう。そんな知能があれば、という前提ですが」

「貴様!よくもぬけぬけと!私の娘を・・・貴様ぁぁぁ!」

顔を真っ赤にしたメタボリックな伯爵が僕の胸倉を掴むと、僕の身体が一瞬で浮かびあがり、伯爵のところに引き寄せられてしまった。

足を踏ん張る余裕すらなかった。この伯爵、外見はぶくぶくだが、中身は相当鍛え上げてるか、魔法でガッツリと強化しているようだ。

黒騎士ほどの迫力はないから、恐怖を感じるというものではないが、さすがフランプトン派筆頭の武闘派というところか。

あれ?恐怖の基準が黒騎士って、なんか最近の僕って人間をやめかけてたりしないだろうか。

意外と心中は冷静だったせいか、引き寄せられた勢いで僕も手を伸ばし、伯爵の顔面を掴み、ゼロ距離ファイヤーボールをぶち込むときと同じ姿勢を取る。

ヒート〇ンド待機状態というか、MK5・・・マジでこんがり5秒前というような体勢だ。

「は、伯爵!」

フランプトン派の子分の面々が慌てたような声を上げた。

僕が殴り合った相手を燃やすときのポーズを知っているからか、それとも単に自分達の親分が攻撃を加えられそうになって焦ったのか、どちらが理由かはわからない。

ただ、殴り合いをするならわかりやすく向こうから手を出させた方が、後々になって話を進めやすいから、もう少し揺さぶってみるとしよう。

「まったく何を言い出すかと思ったら・・・5股の聖女に便乗して僕の妹に好き放題言ったクズ女に、自分の言動の落とし前を付けさせたってだけなんですけどねぇ。なんか全面的に被害者ヅラしてるのが訳分からなさ過ぎて鬼ウケるんですけどぉぉ?」

まるでどこぞの、夢と魔法の国のネズミに次いで、世界で2番目に有名な黄色い電気ネズミと同じ声をした悪の組織の幹部系メスガキみたいな煽りを入れる。

「黙れぇぇい!!」

顔を真っ赤にして握った拳を僕に向けて放つが、見え見えすぎる動きだ。頭部を魔力で強化して、頭突きで伯爵の拳を迎え撃ってやる。

僕の頭部にわずかに痛みが走るものの、予想外の攻撃を拳に受けた伯爵は、拳をほどいて、手首から先をブラブラと揺らしている。

どうやら向こうにとっては結構痛かったらしい。僕の胸倉を掴む腕もほどけて、僕は少し後ろに下がって距離を取る。

一方、伯爵が痛そうにしている様子を心配してか、配下の子爵やら男爵たちがメタボリックな伯爵の下へ駆け寄ろうとするが、

そのメタボリックな男は、配下の連中に掌を向け、外見からは想像できなかった男気ありげなセリフを吐いた。

「こやつはワシ一人で相手をする。お前達はさっさと行け!」

伯爵が指示を出しながら腕を払うと、子分の貴族達は小走りにその場を離れていく。

酒盛りをする予定ではなかったようだが、どうせロクでもないことを企んでいたんだろうな。

まるで僕らを足止めしている間に何かをしようとしているようだ。そんなことを思っていたところに、僕の聴覚が聞き覚えのある機械音声を捉えた。

(ギルバートちゃん、ちょっとマズいかもしれないわ。あの逃げて行った奴らが持ってるワイン・・・毒よ)

視覚で姿を補足できないようにステルス状態になっているだけでなく、僕にしか聞こえない音声を飛ばしてきたのは、リオン君が僕に貸してくれたロストアイテムのクレアーレだ。

遠隔解析にステルス、特定の対象にしか聞こえない音声伝達って、便利すぎるロストアイテムだな。この1台(?)がいるだけで既存の情報戦略が根本から覆りかねないぞ。科学の力ってすっげー!

リオン君が保有していたのは、アロガンツやパルトナーのような物理的な意味での戦力だけではないのか。

さすが、追加コンテンツの攻略対象だな。ゲームバランスが崩壊してもおかしくない・・・いや、既にバランスという意味では崩壊しているかもしれないが。

そんなヤバい攻略対象、こちらに引き入れなければ、枕を高くして寝られないじゃないか。だったら、この主人公様による救出イベントは何としても成功させないといけないな。

「・・・じゃあ僕も一人で相手をして差し上げよう。君達も先に行くといい」

毒入りワインを持ったフランプトン派の子分達が向かった先であり、リオン君が囚われている牢屋のある方向を僕は指差すと、オリヴィアさんや、引き連れてきていた変装済みの騎士達が足早に駆け抜けていく。

そして、その足音に紛れ込ませるように僕は小声でクレアーレに語りかける。

(オリヴィアさん達をリオン君のところにしっかり誘導してくれよ?)

(ええ、任せて!サービスでアンジェちゃんもしっかりと守ってあげるわ)

「は!?アンジェだって!?」

驚きのあまり、しっかりと声を出してしまった。

つい、名前を呼ばれたのに反応したせいか、王宮の騎士や魔術師に変装させた一団の中にいた見慣れない、オッパイの大きい魔術師がこちらを振り向いた。

深々と被ったフードの奥には、髪色こそ黒いが、とても見覚えのある、燃えるような真っ赤な瞳が光っている。

おいぃぃぃぃぃ!!!!!どうして、悪役令嬢なうちの妹が、主人公様による攻略対象救出イベントに同行してるんだよぉぉぉぉ!!!!この作戦は、アンジェには内緒だったはずだぞ!?

激しく動揺する僕だったが、変装したアンジェは数秒ほど僕に目を向けたが、すぐに進行方向を向いて、この場を離れていってしまう。

(じゃあギルバートちゃん、頑張ってねぇん)

何かを押し付けるような言い方も気になるが、妹が、兄をきっぱりと差し置いて、惚れた男のほうに行ってしまったという事実が地味に僕の心に突き刺さる。

既に一度は別の男と婚約していたとはいえ、目の前で天秤にかけられて、僕の優先度のほうが低いと扱われたのは正直に言ってショックだ。

しかし、状況はそんな心境で茫然とすることを許してはくれない。きっと自立したんだ、うん。そう思うことにしよう。そう思い込まないとちょっと悲しいからね。

「本当に一人で残るなんて大した度胸だな。」

そう言いながら、巨漢の伯爵は指をポキポキと鳴らしながら僕の方に向かってくる。完全に戦闘モードというところだ。

「王宮で殴り合いをしようだなんて、フランプトン派というのは野蛮極まりないね」

「殴り合いどころか、黒騎士と何でもありのぶつかり合いをした奴の言うセリフか!」

そう言いながら伯爵が繰り出した拳を、自分の拳をぶつけて弾き飛ばし、その隙を突いて腹に蹴りを入れたのだが、相手は全く怯んでいない。

表面だけはやわらかい感触だが、腹の肉の奥は、魔力による強化と筋肉でバキバキに固い。

これは、前世に存在した力士やレスラーが太っているように見えても、実は筋肉がみっちり詰まっているというのと似たようなものか!

「ふんっ!」

蹴りを見舞ってから体勢を整え直す前に、伯爵が掌底を繰り出したのを、顔の前で両腕をクロスさせてガードするのだが、ウエイトと筋力が掛け合わされた運動エネルギーは、僕を簡単に後ろに吹き飛ばした。

勢いに押されながらも、転ばないようになんとか体勢を維持しつつ、僕は、右腕に魔力を集めて、火球を作り出す。

「親子ともども焼け焦げろ!」

魔力を集めたのは短時間だったから、いつものような大きな爆発を起こせるようなファイヤーボールではないが、生み出した火球を相手の伯爵に向けて投げ付ける。

だが、伯爵は、自分に向かって迫る火球を避けようとすることはなく、魔力で強化した太い腕を振り払って、ファイヤーボールを弾き飛ばしてしまった。

弾かれたファイヤーボールは王宮内の床に落ちると炎を上げながら爆発し、床材を砕いて空気を震わせるとともに、それなりに大きな穴を生み出した。

おいおい、これでもダンジョンに出てくるモンスターとかエルフや獣人の専属使用人くらいなら何人も焼いてきたくらいの威力はあるはずなんだが・・・

まるでどこかの旅団の団長が、ナイフに塗った自慢の毒が相手にほとんど効いてなかったときに呟いたようなことを思ってしまった。

「お前・・・私を単なる肥満男だと侮っていたな?」

「肥満のついでに、口が臭くて脂ぎってると思っているよ」

「何だと!?」

「臭いというのは自分では気付きにくいからねぇ。まずはブレスケアから始めたらどうかな」

「おのれぇぇぇ!!!」

鬼のような形相を浮かべたファットマンな伯爵は、こちらに襲い掛かってきてその太い腕を振り回してくる。

攻撃をまともに受け切ることは難しいだろうが、幸いなことに相手のスピードは、マリエの攻撃のような高速とは程遠いので、回避することは難しくない。

バックステップでかわしつつ、適宜、相手の後方に回り込んで壁際に追い込まれないようにする、という流れだ。

だが、思っていた以上に相手に体力があったというのも事実だったりする。

けっこうな威力のパンチを連続して繰り出してきていたから、すぐにスタミナ切れになると思っていたのだが、なんやかんやで何分も連続して攻撃を続けてきている。

それでも息が上がっている様子もないので、見た目のフォルムがだらしないというだけで、武闘派の名に恥じないようにフィジカルをしっかりと鍛えて強化しているのかもしれない。

「さて、どうしたものかねぇ・・・」

回避運動を続けながらつぶやいたのだが、ふと前世で読んだ、某元人斬り系維新志士が明治時代にヒロインの道場に転がり込んで主夫になってたマンガを思い出した。

そういえば、あの中でも同じ運動量だったとしても、体への負荷、特に動きを生み出す足への負担はデカいやつのほうが大きいというくだりがあった気がする。

よし、やってみるとしますか。

「おのれぇぇぇ!!!ちょこまかと逃げ回りおって!!」

なおも空振りとなる大ぶりのパンチを繰り出し続けながら、伯爵が叫んだ。

しかし、最初の頃と比べると攻撃モーションの際の身体のブレが大きくなっている気がする。踏ん張るための足の疲労が蓄積しているのかもしれない。

よし、ここがチャンスだな。

僕を目がけて振り抜かれた拳を、回り込みながら回避しつつ、すれ違いざまに、軸足になっていた右足の膝裏に蹴りを入れてやると、既に大きな負担がかかっていたせいか、伯爵は簡単に膝から崩れ落ちる。

すかさずボタンを引きちぎって上着を脱ぎ、伯爵の首から上の全体を覆うように被せた上で、上着を両手で押さえ付けた。

視界を塞ぎつつ、酸素の供給を絞った形になったところで、中からもごもごといった声が聞こえてきたが、無視して鼻の辺りに渾身の膝蹴りを叩き込む。

呻き声がするが、こういった耐久力が高い相手に対しては、一度掴んだチャンスを逃さず、倒すまで攻撃を叩き込むというのが王道だ。

僕も息を切らせながら、連続して膝蹴りを喰らわせて、相手の鼻の骨とか前歯が折れたような感触はあったが、まだ激しく動いている以上、手は緩めない。

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「バルトファルトを助けようと思ったが、牢屋の前に思わぬ番兵がいたようだな」

「確かに・・・俺達の姿を見られたら、バルトファルトを助けるどころか、あの乱闘に巻き込まれかねないぜ」

「現役の伯爵と殴り合いをする暴力と権力はさすがだけど、仮にも公爵家の跡取りと現役の伯爵の戦いだというのに、美しくない」

「戦いは相手を叩きのめすためのもの、というスタイルは、さすがバルトファルトの黒幕というべきだが・・・何というか、エグいな」

「ギルバートさんの戦い方がえげつないのは今に始まったことではありません。ですが、この場では力強いですね。物陰に隠れながら、牢屋に潜り込むなら今でしょう」

リオンを救出し、ギルバートに恩を売ってマリエから手を引かせようと集まったジルク達5人であったが、ある意味で期待を裏切らない残虐ファイトに、若干引き気味になっていた。

「え?見つかったりしないか?」

「おそらく、ギルバートさんは、今の膝蹴りに活路を見出して一気に仕留めるつもりで、意識を集中させているはずです。殺気を向けたり、物音でも立てない限り我らに気付くことはないでしょう」

「相変わらず、無駄にギルバートさんへの理解度が高いな」

「陛下も一緒になって夜遊びに付き合わされていたからでしょう」

「根本的なところで同族みたいなものじゃないのか」

「ジルク・・・前から卑怯だとは思っていたが、乳兄弟がアレと根本が一緒というのは、俺も引くぞ」

「・・・解せませんね。と、とにかくさっさと行きますよ」

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さて、僕は、伯爵がこのまま動かなくなるまで攻撃を加えるつもりだったのだが、さすがに上手くはいかなかった。

伯爵は力づくで上着を振り払うと、鼻や口から大量に血をこぼれさせながら、腰に携えている剣に手をかけようとしたので、少し驚いた僕は後ろに下がって距離を取る。

お互いに息を切らせながら、しばらく睨み合いが始まる。

「外道の飼い主・・・下劣公とは・・・よく言ったものだな。騎士の風上にもおけん」

「その体型で騎士を語るとかって、ギャップがありすぎて鬼ウケるんですけどぉ?」

伯爵が両手で剣を握り、迎え撃つ僕は両手それぞれに大きなファイヤーボールを生み出し、双方が対峙する。

これは・・・何か物音がしたり、何かが崩れたりしたときに、それをきっかけにしてお互いが動く、というシチュエーションか。社畜なリーマンだった前世からは考えられないね。

しばらく無言で睨み合いをしていて、何かの切っ掛けを待っていた僕らだったのだが、思いもよらない声が聞こえてきた。

「お前達、王宮の中で何をやっているんだ。敵対派閥どうしで仲良くしろとは言わぬが、少なくとも私に面倒をかけるな」

聞きなれた声に僕は瞬間的に膝をついて、伯爵は声の主を見て膝をつき、顔が真っ青になってしまう。

当然ながら僕はファイヤーボールを消したし、伯爵も剣をしまっている。

僕と伯爵を迷わずに跪かせる人間なんて、この国では、当然ながらごく少数だ。

呆れたような表情で僕らを見ている、豪奢な服を纏い、大勢の護衛を連れているこの男こそ、ホルファート王国国王、ローランド陛下その人に他ならない。

「ここは王宮だぞ」

「・・・申し訳ございません」

「お見苦しいところをお見せしてしまい・・・」

「何があったかは知らんが、ここは双方、収めろ」

「はっ!」

「かしこまり・・・ました」

伯爵は目元をピクピクと動かしながら頭を下げた。正直に言えば納得できないのだろう。

だが、仕事に熱心ではなくても、女性関係にだらしなくても、お飾りの国王だと言われても、僕を夜遊びに何度も付き合わせるようなロクでもない人間だったとしても、

目の前の人間は、この国の権威であり、最高権力者だ。

「あと、ボンボン。お前は私と一緒に来い」

「え?」

「お前達だけを残して行っても、別のところで第2ラウンドを始めかねないからな」

「そ、そんなことしませんよ、たぶん」

「これ以上、王宮内を破壊するんじゃない。ほら、さっさと行くぞ」

なんだろう・・・女好きだと思われるのは甘んじて受けるけど、本当にそんなに血の気が多いと思われてるのだろうか・・・解せぬ。




ジークアクスネタをぶっ込みたかったのにできなかったのは残念w
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