乙女ゲー世界は悪役令嬢の身内にも厳しい世界です   作:りーおー参式

65 / 71
みんな、聞いてほしいんだ、、、
Switch2やってると、あっという間に時間が溶けてなくなるんだ、、、


第65話 真実はちょくちょく人を傷付ける

リオン君を救出するべく王宮に潜入したものの、フランプトン派の面々とかち合ってしまい、さらにその中でも武闘派な伯爵と殴り合いになっただけでなく、殴り合いを、

この王国のトップである国王、ローランド陛下その人に止められてしまうという、とんでもなく恥ずかしい事態になってしまった。

しかも、その場に残っていたら、敵対派閥との殴り合いを続けそうだという酷い理由で、どこぞに向かうのに同行させられることになってしまう。

この人、国王でありながら、仕事を妻である王妃や、僕のパパ上、バーナード大臣を始めとした多くの臣下に押し付けながら、自分は宮中、市中を問わず、様々な女性に手を出している、ある意味で凄腕のお人だ。

他人事のように言っているが、僕だって仕事や面倒事を押し付けられたことは10回や20回じゃ足りない。

しれっと市中にいる愛人の管理をやらされていた時期もあったし、その代価とばかりに、仕事で好き勝手に暴れ回っても大抵のことを見逃してもらってきた意味では、僕も甘い汁を吸っていたわけなんだが・・・

しかも、この王様、他人を巻き込んだ上で、自分にとって都合がいいように物事を運ぼうとする上に、結果的に、本当にそれを実現させてしまっている先見の明を持っているから厄介極まりない。

そんな王様に引き連れられて、僕は陛下の護衛の兵士らとともに、王宮内の中庭を進んでいる。

「陛下、我々はどこに向かっているのでしょうか」

「ふふふ、黙ってついてくればいい。いずれわかる」

・・・この不敵な笑い、ロクなことを考えていないな。会話のイニシアティブを握られるのもちょっと嫌なので、話題を変えるか。

「陛下がそう言うなら、そうなのでしょうね。ところで・・・やり過ぎちゃいましたかね」

「王宮内の壁や柱や美術品を壊されはしたが、いい年した男二人が敵意むき出しで殴り合いをする様を見られて、私は面白かったぞ」

「黒騎士と殴り合ったときに、もう見せたような気もしますが」

「お前やバルトファルトが動くと、公国やフランプトン派が過剰なくらい反応するからな。見ていて飽きん」

「僕らは、まるで見せ物のようですね」

軽い嫌味を添えて切り返してみたが、陛下は口角を上げ、口元を三日月のように歪ませる。よほど楽しんでもらえたのか。

「“あの”聖女様その他との大大大乱闘を含め、お前がずいぶんと派手に暴れ回ったおかげで、フランプトン派の足並みが乱れた。やり過ぎだと騒ぐ連中もいたがな」

なんだろう、僕の怒りを爆発させた死闘が、スマッシュな兄弟みたいな表現になってしまって、複雑な気分だ。

「アレは落とし前を付けただけです。それに王族にだけは手を出していませんよ」

「・・・大義名分さえ整えばやりかねないのは、お前もヴィンスも同じだろ」

「心外ですね。僕はこの国を治める立場をやってくださっている陛下のことに、多大なる感謝をしているというのに」

「厄介事を請け負ってくれていつもありがとう、と意訳したからな。話を戻すが、獄中のバルトファルト子爵からの情報も合わせて、ミレーヌ達はフランプトン派が浮足立っている間に、連中の尻尾を掴んだようだから、後は時間の問題だろう」

「片が付いた、ということですか。リオン君と一緒に、連中のヘイトを稼いだ甲斐はあったようですね」

「ヴィンスもバーナードも、それにミレーヌも、複雑そうな顔をしていたぞ。お前、私に似て女好きなくせに、仲の悪い相手とは、とことん仲が悪いな」

「男も女も、貴族も、亜人も、神殿も関係なく、公正公平なだけです」

「公正なのかは疑問だな」

「お仕えする偉大な陛下の影響を受けたのかもしれません」

「あ、神殿で思い出した。あの聖女様のことだが、お前には伝えておいてもいいか」

あのクソ女、また何かしでかしたのだろうか。怒りが沸々と湧いてくるぞ。

「そう怖い顔をするな」

「・・・フランプトン派に担がれて、王国軍の飛行船200隻と一緒に、領空に侵入してきた公国の連中を迎撃に出かけたのでしたね」

「まだ知っている者のほうが少ないが、その艦隊は壊滅した。公国の艦隊は間もなく・・・いや、もう王国本土に上陸する頃かもしれんな」

「は!?100隻以上の船が沈んで、艦隊の上陸を許したというのですか!?」

200隻というのは国防を考える上でも相当な数だ。王国の敵は公国だけじゃない。周りは敵国だらけの中で、そちらにも戦力を割かなければならない中で、200隻の損失というのはものすごい被害だ。

「ああ、戻ってきたのは数隻のみだ」

「ずいぶんと簡単そうにおっしゃいますね」

「王が悲壮な表情を浮かべて事態が好転するなら、いくらでも顔芸してやるさ」

悔しいけど、この王様、普段は人間性がアレなのに、たまにカッコいいことを言うからモテるんだろうな。

「それであのクソ聖女様は、僕がトドメを刺すことなく、王国艦隊もろとも海の藻屑になりました、ということで?」

「残念ながら生きて帰ってきたぞ」

「ゴキブリのようなしぶとさですね」

「仮にも聖女様をゴキブリって・・・そういうところがお前は面白いな。だが、対公国の戦力は大きく減ってしまった」

「侯爵や神殿の連中にとっては大失態ですね」

「そのおかげもあって、連中の結束が乱れた結果として、寝返ったり、ミレーヌやヴィンス達に擦り寄ってきた貴族どもも多いぞ」

「血まみれになって、女に狂ったボンボン4人とボス猿聖女と殴り合いをした甲斐がありましたね」

「結果オーライなんだろうが、運に救われた部分もあるぞ」

「日頃の善行の賜物でしょう」

「この図太さは誰に似たんだか・・・さて、待ち人のご登場だ」

陛下がニヤリとした顔で指さした先は、暗がりになっていて、その方向からは10人以上の集団の人影がゾロゾロとこちらに向かってくるのが見える。

一瞬だけ不思議に思ったが、誰なのかはすぐにわかった。

一行を先導するのは、妹の元婚約者である馬鹿王子で、そのすぐ脇にジルクが控えている。

すぐ後ろには、僕の妹であると同時にこの世界における悪役令嬢であるアンジェ、この世界の主人公様であるオリヴィアさん、

そして、あの乙女ゲーの追加コンテンツの攻略対象だと予想しているリオン君が並んで歩いている。

さらに後ろからは、グレッグ、クリス、ブラッドというあの乙女ゲーの元祖攻略対象の残り2人、それに僕がリオン君救出部隊として、オリヴィアさん達に同行させた公爵家の騎士達が続く。

だが、一行が醸し出す空気はかなり不穏だ。

リオン君の左右を、目が吊り上がったアンジェとオリヴィアさんが固めて、グレッグ達と睨み合っている。

こう言っちゃなんだが、目が吊り上がっているときの、うちの妹の顔は迫力があり、かなり怖い。さすが悪役令嬢だ。

あの乙女ゲーを知っている人間として、大いなる違和感があるとすれば、アンジェとオリヴィアさん、悪役令嬢と主人公様が睨み合っているのではなく、

リオン君を挟んで、お互いに背中合わせに、グレッグやクリス、ブラッド、ときたまジルクと睨み合っているという点だ。

なんか、こう、普段は百合百合っぽい雰囲気がありつつ、悟〇とベ〇ータが共通の敵と戦うために、手を取り合っているような感じもする・・・

陛下やその護衛たちが馬鹿王子のほうに向かったのを見て、僕はリオン君たちのほうに向かうことにする。

「やあ、リオン君。怪我は無いようだけど、無事だったかい?」

「はは、なんとか・・・」

苦笑いを浮かべながら無事だと言うリオン君だが、無事ではないよね?主に社会的な意味で。

目が吊り上がった女二人に左右を固められて逃げ場がないようにされて、連行されているような絵面は、常識的に言えば修羅場以外の何ものでもない。

ただ、問題なのは、女達が睨む先が、囲んだ男やお互い自身ではなく、周囲のボンボンどもであるという点だ。

悪役令嬢の兄としては、主人公様とくっつこうとする攻略対象に近付くのは破滅と断罪につながりかねないから、やめてほしいのに・・・

これこそ、”どうしてこうなった!?”というやつだ。

「色々と状況が変わってきたから、君を助け出そうと思ってね。途中までは僕も一緒にいたんだけどね。君を消そうとしていたフランプトン派の連中と出くわしてしまったよ」

「なんか、また殴り合いになったってアンジェから聞きましたけど・・・」

「僕は平和裏に君を救出したかったのに残念だよ、僕は平和主義者なのに」

両手を上げて、首を左右にふって、やれやれという仕草をしていると、そこに妹がツッコミを入れてくる。

「兄上は、平和主義という言葉の意味を誤解されているのでは?」

「見解の相違だろうね。あと、アンジェ。どうしてこの場、いやリオン君の救出部隊に紛れ込んでいたのかは、後ほど、ゆっくりと理由を聞かせてもらうから覚悟しておくように」

「そ、それは・・・」

気まずそうな表情をしている妹としては、なぜ僕がこの場で待ち構えていたのかが不思議なのだろう。

どうせ手引きしたのは、博愛主義者っぽい主人公様なオリヴィアさんか、アンジェ命の腹黒メガネメイドだろう。

「あと、オリヴィアさん。協力感謝するよ、ミッション達成、お疲れさま。よく頑張ってくれた。ただ、どうしてあの馬鹿どもが一緒にいるんだい?」

「それについては、私から説明いたしましょう」

後ろから、よく聞く声が聞こえてくる。声の主は言うまでもなくジルクだ。

「せっかく僕がオリヴィアさんと楽しくおしゃべりをしてるのに、邪魔をするな」

「公爵派、ひいてはギルバートさんのお気に入りであるバルトファルト子爵を救出して、貴男に恩を売ろうと思ったのですよ!」

こいつ、下心を丸出しにしやがった!?いや、僕に対する交渉の仕方としては悪くないな。良くも悪くも・・・

良いというよりも、どちらかというと悪いが、付き合いが長いから、お互い手の内はお見通しか。

「要するに、マリエの助命でも願い出ようということか」

「話が早くて助かります。もっとも、結果的に、私達が牢屋に到着したころには、バルトファルトを毒殺しようとしていた侯爵派は、特待生やアンジェリカさん達、公爵家の方々にボコボコにされていましたが・・・」

護衛を付けた上で、不意打ちを仕掛けたのかもしれないが、妹達の戦闘力が高すぎないだろうか。

いや、待て。主人公様とそのライバルである悪役令嬢なら、戦闘力が高くても不思議じゃないのか。

「ですので、救出に貢献した実績を作ろうと、ユリウス殿下の発案により、王族用の隠し通路で脱出しようとして、今に至っています」

あの馬鹿王子・・・王族用の隠し通路をそんなあっさりと他の人間に教えるなよ、と一瞬だけ思ったが、その思考はすぐに撤回した。

なぜなら、陛下が女遊びをするために城下に繰り出すときに、王族用の隠し通路はよく使われているし、そのことは僕やバーナード大臣、お付きの医師ですら知っているからね。

「それなりに考えた上での行動というわけだな。お前らからしたら、こっちの動きがイレギュラーだったと言いたいわけだ」

「つい先日、我々やマリエさんと派手に大乱闘をしておきながら、数日を空けただけでまた殴り合いとは驚きました」

「はぁ・・・わかった。今は議論している時間じゃないしな。アンジェ、オリヴィアさんや護衛と一緒に父上の執務室で待機していなさい。そして、リオン君、それとロクデナシのボンボンどもは、ひとまずとても偉い人をお連れしたから、一緒に来てくれるかい?」

妹とじゃれ合っていたい気持ちをなんとか脇において、仕事に対して真面目な僕は、視線を陛下のほうに向ける。

「へ、陛下!?」

ここまで疲れを見せながらも、ヘラヘラした表情をしていたリオン君だったが、さすがに驚いたようだ。

子爵に任じられたときの式典のときなんかに、陛下の顔は見たことがあるだろうから、”偉い人”の意味がすぐにわかったらしい。

「子爵、ご苦労だった。だが、おかげで内部の面倒事には、”目途”が付いたぞ」

「それは・・・公爵派が勝ったということでしょうか?」

「ゆっくりと話している時間はない。疲れているところに悪いが、一緒に来てもらうぞ」

なんだろう。前世では、人工音声で作られた動画をよく見ていたせいだろうか。赤と黄色のキャラクターみたいに”ゆっくりしていってね”じゃないのか!と突っ込んでしまったのが悔しい。

とはいえ、今はボケている状況じゃないのは確かだ。僕やリオン君は、陛下の護衛達に付き添われながら、さっきまで乱闘をしていた王宮にとんぼ返りすることになってしまった。

--------------------------------------

僕達が案内されたのは、とある王宮内の会議室だ。

陛下に王妃様、バーナード大臣やパパ上ほか、王国の重鎮たちが集まっている。

より正確に言えば、フランプトン派の連中が跋扈するのを良しとしない勢力の主だったメンツが集まっているというところだ。

僕がこっそりとパパ上の脇に移動したところで、呆れたような顔を僕の方に向けながら、パパ上が小声で口を開いた。

「お前が動く必要はなかっただろう」

「将来的に、我々・・・公爵派に彼を取り込む上で恩を売ることができました」

・・・ごめんよ、パパ上。動機の半分くらいは主人公様のための好感度稼ぎイベントをこなす、というものもあったりするんだ。

「ここ数日、静かにしていると思ったら・・・それにアンジェまで巻き込んだそうだな」

「誰かが情報を漏らしたようで・・・それについては痛恨の極みです」

「アンジェはそこまで子爵のことを・・・」

「ことが落ち着いたら、物理的に引き離しましょう」

「それまで王国が残っていれば、の話だな」

パパ上は、顔を正面に向けると、今度はリオン君のほうに視線を移す。

「元気そうだな、子爵」

「な、何とか」

リオン君は、質問に答えながら周囲を見渡している。なるほど、バカ王子やジルク達がここにいないので探しているというところか。

「ユリウス達は別室だ。トラブルに巻き込まれないように、隔離しているだけで、無事だから安心するといい」

「あの子達を守るために匿っているのよ。リオン君と同じです」

陛下と王妃様が直々にリオン君に回答した。

2人としても、今回の王宮内における権力争いに、リオン君を巻き込んだことを申し訳なく思っているようだ。

裏設定では、追加コンテンツの攻略対象であり、強大な力を備えたロストアイテムを保有するのだといっても、組織としては、一人の子爵に過ぎないリオン君を軽く見ていない、という姿勢を示したことになるね。

「俺を呼び出した理由をうかがっても?」

「それは私から説明しよう」

そう言って立ち上がったのはバーナード大臣だった。たしかに説明役としては、陛下や王妃様よりは適任か。

公国の艦隊が王国本土に上陸したり、王国の防衛部隊に甚大な被害が出たことが告げられ、さらに、公国艦隊は空を覆い尽くすほどのモンスターも引き連れていること、

それを主導しているのは公国の第二王女で、公国内にあったと思われる魔笛で超大型のモンスターだけでなく、無数のモンスターをまとめて操っているのであろうという推測が続く。

また、公国以外にも、王国にとっての敵国が動きを活発化させており、国境を任せている軍や領主貴族はその対応に追われているため、そちらにも戦力を割かざるを得ないこと、

王国の主戦力となる200隻の飛行船は、先ほど陛下から聞いたように、マリエとともに返り討ちに遭って、戻ってきたのはわずか数隻であることが告げられると、リオン君がボソッと呟いた。

「まるで悪夢だな」

「数を揃えてどうにかなる話ではないということだ」

パパ上が、リオン君の呟きに答えた。

数を揃えてダメというセリフは、古今東西のフィクションで、擦り切れるほど擦られた表現だ。

そして、このニュアンスの言葉は、量より質、少数の特記戦力による一発逆転満塁ホームラン狙いの作戦をやれ、という話につながっていくための、前フリに等しい。

「バルトファルト子爵、率直に尋ねよう。君なら公国の化け物に・・・君と君のロストアイテムなら、勝てるかい?」

バーナード大臣が目を大きく見開きながら、リオン君に尋ねた。

仮にも一国の大臣が、子爵とはいえ、まだ学生に過ぎない子供に、すがるような表情を向けている。

気持ちは理解できなくもない。めぼしい特記戦力のない王国側が、数の優位も失い、どう対抗すればいいのか途方にくれているんだ。

なんだか、リオン君が、だんだんと、攻略対象というよりも、主人公のような立ち位置になってきているように見えるのは、気のせいだろうか。

「・・・わかりません」

「だろうな。だが、我らは子爵に期待するしかない。君にしか動かせないロストアイテムで倒せないなら・・・」

おや?パパ上、貴男は一体何を言い出しているの?まるで王国側にも、隠し玉があるかのような口ぶりだよ!?

「君にできないなら・・・王家の船を動かすことになる」

「公爵、その話をこの場でするとは、どういうつもりですか?」

ため息をつきながら、パパ上は陛下と王妃様を睨みつけた。王妃様も負けじと視線を細めて、パパ上のことを睨む。

この二人が、こんなに露骨に睨み合いをするのは珍しいな。というか、王家の船って何なんだ?

まだ僕がパパ上から聞かされていない王家、王国の秘密の類の1つなのだろうが、200隻の飛行船を失った状況下でも、逆転できるような兵器ということか。

ソーラ〇イ、コ〇ニーレーザー、イオ〇グヌッソ、サテライト〇ャノンのような広範囲殲滅兵器あたりが思い付くが、船ということならヤ〇トのような超高火力を持ったロストアイテムの船というところか。

なるほど、そんな奥の手があるなら、国境沿いの貴族もろとも、国内の貴族達を歪んだ女尊男卑な婚姻政策で弱体化させ続けても、王国の安全保障は揺るがないのかもしれないね。

「今、動かさずに、いつ動かすと?この状況で出し惜しみは感心しませんな」

「公爵家だって、リオン君から、ロストアイテムを譲り受けているでしょう」

「うちが出し惜しみしているというのは聞き捨てなりませんね。ご存じのとおり、オフリー討伐作成の際に、ラーシェル由来とおぼしきロストアイテムと交戦していて、今は修理中なだけです。僕自身がロストアイテムで前線に立ってますよ」

「それにしては、最近は生身で暴れることのほうが多いようだけど?」

「みな、止めよ。それに、ヴィンス、お前も分かっているはずだ。王家の船は資格を持つ者が揃わないと動かない。そして・・・私とミレーヌでは動かせなかった」

パパ上、僕が王妃様と睨み合いになったところを陛下が止めに入った。

たしかに、今は僕らと王妃派で争っている場合じゃないことは間違いない。いつもは昼行燈のような人だが、やはり締めるところは締められるところが、劇場版のジャ〇アンのようにカッコいい。

というか、陛下と王妃様では動かせない、というのはどういう意味だ?

陛下の言いぶりからすると、動かせる可能性はあったが、何かが不足していて、起動しなかったという解釈がしっくりくる。

王家の船とやらが、あの乙女ゲーに出てくるのかどうかは知らないが、国の重鎮であるパパ上が知っているということはゲームにも出てくると考えるほうが自然だね。

あの馬鹿王子がメインの攻略対象であることを合わせて考えれば、起動キーになるのは王族の血統あたりか。

僕が、思索に集中して、現実から目を逸らしていたところで、いきなりリオン君が立ち上がり、一歩前に進むとトンデモないことを言い出した。

「陛下、お願いがあります。王家の船を使わせてください。それと・・・マリエとあの5人の力が必要です」

おいおい、何を考えているんだ、リオン君!?しかも、馬鹿王子だけじゃなくて、ボンボン4人も必要というのはどういうことだ?というか、なぜリオン君が王家の船の情報を持っているのか。

辺境の男爵の3男として生まれた彼が、王家の船なんていう、僕すら聞かされていない国家機密を家族由来で聞かされたとは考えにくい。

いや、待てよ?彼の持っているロストアイテム・・・アロガンツやパルトナーの中又はそれらが保管されていた場所に、王家の船に関係する何らかの情報が記録されていたということなら、一応の理屈は通る。

とはいえ、馬鹿王子以外の、オリジナルの攻略対象の他4人にも資格があるということは、王家の船に必要な資格としては、王族の血統には限らないのだろう。

つまり、王族プラスアルファの、やや緩和された血統要因が最低条件ということになるね。

そして、あの5人のボンボンとマリエにはあって、陛下と王妃様にはないもの、というのが王家の船の起動の鍵になるのだろう。

考えるんだ、僕。アンジェを捨てた馬鹿王子を筆頭にしたボンボンどもと、陛下達の違い・・・アンジェを捨てた・・・あ!

そのとき、僕の脳内に一筋の光が走った気がした。これは、謎は全て解けた!とか、そうか、わかったぞ!犯人はあの人だ!というようなシーンと同じやつだ!

「要するに、リオン君が言いたいのは、陛下達と違って、マリエ達の間には愛があるから、それで王家の船を動かせる、ということかい?」

「おい、ボンボン!この場で言っていいことと悪いことがあるだろう!」

「いや、たしかにそうかもしれませんけど、ここにいる重鎮たちは、きっとみんな同じこと思ってますよ!?」

陛下と王妃様が、パパ上やバーナード大臣、その他の重鎮たちの方を見るが、みんな一様に俯いて視線が合わないようにしている。

会議室の中が、今までになかった重苦しすぎる空気に包まれた。

しまった!謎が解けたことにぬか喜びして、つい本当のことと言う名前の爆弾をぶち込んでしまった!

「残念ながら、王家の船は貸せないわ。それにマリエは・・・神殿が処刑すると発表しました」

僕の方を睨みながら、王妃様から、会話の流れを強引に戻しつつ、僕としては、つい、ざまぁと思ってしまった情報が告げられたのだった。




共和国編が開始して良かったですね、偽姉ちゃんの登場が楽しみですw
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。