乙女ゲー世界は悪役令嬢の身内にも厳しい世界です 作:りーおー参式
ポケモンDAY前に何とか投下できたぜぇ
王国の切り札ともいうべきロストアイテムの飛行船である王家の船を、この世界の主人公様であるオリヴィアさんとともに愛の力で起動させたのは、追加コンテンツの攻略対象と思しきリオン君とではなく、
本来であればオリヴィアさんと対立し断罪されるはずだったこの世界の悪役令嬢であり、僕の妹であるアンジェだった。
色々とツッコミを入れたいことばかりなのだが、残念・無念・また来週~なことに公国の艦隊は、王国本土まで迫っていて、このドデカいツッコミどころをイジり倒す余裕がない。
王家の船―ヴァイスと呼称されることになったロストアイテムの修理を、リオン君が発見したロストアイテムに付属していたという小型のメンテナンスロボットに任せて、
僕とパパ上は、謁見の間の近くにある控室で今後の動きをどうするかという話をしていた。
公国が動き始めたなら、その他の周辺敵国もきっと動き出す。そいつらから領地を守るための準備をしなければならないわけなのだが、
パパ上は公爵である以上、王国本土での防衛をする上での要職を任せられることになる。
だとしたら、公爵領に戻って防衛戦の準備をするのは、公爵家の跡継ぎである僕の役割だ。
パパ上だけでなく、僕までこっちに残ったら、公爵領の民の中には、見捨てられたのだと勘違いする者も出てきかねない。いかに公爵家であっても、領地での絶対的な安定が揺らぐと、それだけで政治的なパワーに影響が出てくるはずだ。
「さて、お前は領地に戻って戦の準備だ。バルトファルト子爵が総司令になると言っても、私はこっちに残ってやらなければならないことが出てくる」
「・・・そうですね」
「ずいぶんと物分かりがいいな。お前にだって、公国との因縁はあるのだから、もう少し粘るとまではいかなくても、葛藤があると思っていたぞ」
「正直に言えば、公国との決着に参加したいところですが・・・周辺の国から領地を防衛することも合わせて考えれば、ワガママを言っている場合じゃないと理解しているつもりです」
アンジェが誘拐されそうになったことだけでなく、お茶会での黒騎士との泥仕合や、エルフの浮島でのヘルトルーデ王女との罵倒合戦など、僕自身も思うところはある。
愉快とは言えない思い出に浸っていると、僕の後方にある、この部屋の扉がノックなく開き、誰かが入って来る足音が聞こえた。
「話が付いたところを悪いが、ボンボンには王都の防衛に参加してもらうぞ」
「・・・どういうことですかな、陛下?」
パパ上が非常に訝しげな顔をしながら、部屋に入ってきた人物―この国の国王であるローランド陛下に、発言の意味を尋ねた。
「ボンボンが使っている鎧。あれはバルトファルト子爵のものと同型のロストアイテムで、他の者には操縦できないそうだな」
「そう聞いておりますが、何か?」
「現状で残っている戦力は少ない。子爵の鎧は、単機で公国の艦隊数十隻と鎧部隊を制圧できる力があると聞いた。そうであれば、同型機を手元に残しておきたいと考えるのはおかしいか?」
「お言葉ですが、我々二人が王都に残れば、領地の防衛に不安が残ります。公国以外の国も、そこに付け込んでくる可能性だってあるでしょう」
「ヴィンス、お前の言いたいこともわかるし正論ではあるが、王都ほど危機が切迫しているわけでもあるまい?」
「領地を見捨てろと言っているように聞こえますな」
パパ上の言うように、親子そろって王都に残ったら、領地の防衛を家臣に押し付けたということになってしまう。
攻め込んできた他国から領地を守りきれたとしても、統治者である公爵とその息子が、そこに参加しなかったとあっては、公爵領の統治に少なからず影響が出るだろう。
一方で、王都に向かって、殺意ガンギマリな公国艦隊に加えて、王国の艦隊200隻を沈めた実績のある超巨大型のモンスターが進行中だ。
ヴァイスと名付けられた王家の船、そしてリオン君のアロガンツやパルトナーを中心とした戦力で、どこまで対抗しきれるのかの推測は難しい。
一応、あの乙女ゲーの中での最終兵器が王家の船なのかもしれないが、どれだけの戦力になるのかを、王国の上層部で判断できない以上、少しでも実績のある戦力を手元に置きたいと考えるのは無理もない。
ご都合主義的なチート性能があるのかもしれないけど・・・さて、どう考えたものか。
いや、なんかもう陛下の言い方から察するに、僕がアロガンツブロスで領地に戻る、というのはさすがに今の状況、空気感が許すものではないだろうな。
何せ、本意ではないにしても、せいぜいネームドのモブに過ぎないはずだった僕は、公爵家の跡取りという立場をある意味で最大限に発揮して、暴れ回り過ぎた。
国境沿いの監査をし続けた日々から始まり、オフリー家を討伐したり、聖女と認定されて国中に注目を集めているマリエと血みどろの殴り合いをしたり、ヘルトルーデ王女と口論したり、
陛下臨席のお茶会で黒騎士と見苦しいことこの上ないリアルファイトを繰り広げたりと、リオン君ほどでないにしても、僕の行動は、多くの国民の注目を集めてしまっている。
そんな僕が、公国艦隊が迫りつつある王都を離れて領地に引っ込む、しかもリオン君の鎧と同型のロストアイテムを持って王都を離れる、という行動は、国内の貴族、平民いずれの目にも、敵前逃亡したかのように映るだろう。
仮にリオン君や王家の船が公国を撃退したとしても、僕は逃げ出した臆病者と扱われかねない。
そうしたら、戦後にやってくるであろう、何でもありな混乱期に、イニシアティブを持って立ち回ることはできないはずだ。
公国との決着に執着しているわけじゃないが、かと言って、どうでもいいとおもっているわけでもない。妹であるアンジェが王家の船に乗ることになるっぽい以上、心情的には、残れるなら残りたい。
そうなると・・・答えは一つか。
「であれば、僕が王都に残るので、父上は領地に戻ってください。そもそもイレギュラーな要望なんですから、陛下にもこれくらいのワガママくらい吞んでもらいましょう」
「ギルバート!」
「仕方がない、ってやつです。それに、陛下に貸しを作れる珍しい機会だと思えば少しは面白いじゃないですか」
「だからと言って、お前に何かあったら、私の後の公爵家はどうするのだ?」
「アンジェに婿を取らせるでもいいですし、それが嫌なら父上の隠し子でも引っ張り出してきてください」
「私を陛下と一緒にするな」
「おい、ヴィンス!それはどういう意味だ?」
「心当たりがないのであれば、医師の診察を受けることを進言いたします」
「父上、陛下はスペア作りだけは熱心に取り組んでいるのですから、隠したところから探してくる必要がないのでは?」
「こんな状況じゃなかったら、お前らまとめて不敬罪で処刑してやるところだぞ」
「では、陛下。父上は領地に戻るということでよろしいですね?」
「ああ、好きにしろ。こっちにはもう手段を選んでいる余裕がないからな」
よし、これで堂々と王都に残れるぞ。
総司令官を務めるリオン君を裏からサポートするのは、王妃様とバーナード大臣で分担してやってもらえば何とかなるだろう。どうせ僕にも手伝えっていう話が来そうだけど・・・とはいえ、僕は前線働きも必要だから、色々と忙しくなりそうだ。
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細かい諸々の調整を終え、パパ上は領地に戻る準備をするために、王都の屋敷にひとまず戻ることとなり、一方の僕は王宮の近くにある王国軍の駐留所に向かっていた。
先程まで、王都では公国の奇襲部隊の攻撃を受けている最中で、あちらこちらで爆発音が上がっていた。
リオン君や彼の友人ら、王国軍が対応に当たっていたのだが、そこに僕が加わっていない理由は、駐留所に届けられたアロガンツブロスを受け取るためだ。
駐留所内の格納庫に到着した僕の目の前に膝をついて待機しているのは、赤色をベースに、随所に黒と金色の塗装がされたアロガンツブロスだ。
カラーリングの割合が少し変わったほかに、両肩にあるビームキャノンの砲塔は、オフリー家討伐作戦で魔装と呼ばれるロストアイテムと交戦したときに損傷したのだがしっかりと修復されている。
また、背部のウイングの形状が若干変わっていたり、両腕に鋼鉄の爪がセットされている。なんだか、ジャブ〇ーに潜入する水陸両用のモビルスーツの両手の先にくっついていそうな武装のようだ。
「少しイメチェンでもしたのかな?」
『マスターの普段の戦い方を参考に、武装を改修してもらったよ!』
コックピットに乗り込みながらの呟きに無邪気なAIの人工音声が答えてくれた。
普段の戦い方って、要するに僕の対人戦の動きということか?
でも、この機体って某ソウ〇ゲインのダイレクト・アクション・システムとか、某G〇ンダムのモビルトレースシステムみたいな操作方法じゃないはずなんだけどな。
いや、もしかしたら操作補助用に、思考を機体の動きに反映させるようなシステムでも組み込まれているのか?リオン君が発掘したロストアイテムって本当に恐ろしいな。
前世の記憶を思い返しながら、コックピット内のシステムを順次立ち上げていると、遠くから大きめの爆発音が上がった。ほぼ同時に、格納庫内にアラート音が鳴り響く。
「緊急事態!王宮に敵機が侵入した!繰り返す!王宮に敵機が侵入した!動ける部隊は大至急対応に当たれ!」
おいおい、王宮の地下には起動準備中の王家の船があるんだぞ!?陛下達は公国の攻撃が始まった段階で避難しているだろうが、先手を打たれて、切り札ともいうべき王家の船が破壊されたら守れるものも守れないじゃないか。
「ブロス!行けるか!?」
『もちろん!』
くそ!ロクに準備もテストもしないまま出撃しなければならないなんて、本当ならご容赦いただきたいところだ。
チートじみた力を持った人間なら、こういった状況でもなんとかできるのかもしれないが、僕は実家の権力がチート級ってだけで、能力はモブに毛が生えたようなものだ。
そんな人間が、王宮に単機で突撃してきた敵の対応だなんていう、いかにも強敵相手のイベントじみた戦闘に参加しても大丈夫なのだろうかというネガティブな思考が脳裏に浮かぶ。
しかし、もっと前線で総司令官であるリオン君達が戦っている状況下では、王宮近くに残っていた僕が行かないと、体裁的によろしくない。
それに、単機で王宮に突っ込んで来られるような機体を相手にできる者が残っているのかも怪しいし、こういったときに何とかするのが僕を王都に残した理由だと陛下に言われかねない。
出撃しない合理的な理由を完璧に揃えるのは難しいな。これも仕方がないってやつか。
やれることくらい、やってみるさ!魔装クラスの機体と黒騎士並みのパイロットみたいなスペシャルセットが出てくるとかじゃなければ、何とかなるはずだ。
「王宮には僕が向かう!バルトファルト子爵には、応援を頼んでおいてくれ!アロガンツブロス、出るぞ!」
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「王国の雑魚どもが!お前らでは相手にならぬ。道を開けろおぉぉ!」
王宮に単機で突入したのは、バンデルであった。
バンデルは、まず王宮内の宝物庫で厳重に管理されていた、アダマンティアス製の大剣を回収すると、王宮内を突き進み、迎撃に出てきた鎧を蹴散らしていく。
しかし、王国の鎧は、アダマンティアス製の大剣によって一太刀の下に両断されてしまい、バンデルを止めることはできなかった。
そして、バンデルは、ヘルトルーデが囚われていた部屋に辿り着くと、右手に宿した魔装の力で、全身を鎧のような形状に整えた。
「姫様、お下がりください」
バンデルが纏った魔装の握る大剣が振るわれると、部屋の壁はあっさりと吹き飛び、日の光が一斉に差し込んでくる。
刺々しく禍々しい姿をした、機械のようでもあり、生物のようでもあるバンデルの鎧が静かに左手を差し出した。
「バンデル・・・貴方がどうして、公国に渡した魔装の右腕を!?」
「この老いぼれの最後の奉公です。さあ、お乗りください。先遣隊の攻撃が続いている間に脱出いたします」
バンデルの鎧がヘルトルーデを守るように手に乗せて、蝙蝠のような翼を広げると、ヘルトルーデのいた部屋を飛び出していく。
そんな中でパルトナーの姿を見つけたバンデルであったが、その瞬間、突然、自分の上空が影で覆われて暗くなったことに気付く。
「ところがぎっちょん!!!」
どこからともなく声が聞こえ、視界が暗くなった瞬間に、バンデルはとっさに大剣の刀身を盾のようにしながら、上空に向けた。
その行動は思考によるものというよりも、本能が察知した何らかの危機に対応しようとする、無意識のものであった。
次の瞬間に、大剣と、それを握る右腕に、非常に強い衝撃が走る。なんとかその一撃は耐えることができたものの、さらに大剣に加わった第二の衝撃を受けて、機体ごと地面に叩き付けられてしまう。
「きゃあぁぁぁっ!!!!」
ヘルトルーデの絹を裂くような悲鳴が響き渡る。バンデルは、ヘルトルーデを乗せた左手をなんとか庇った姿勢で着地することができたものの、何が起こったのかは理解できていない。
周囲には大量の土埃が舞い上がり、視界が遮られているのだが、上空を見上げて、鎧による奇襲を受けたのだと理解した。
見上げた先にいるのは、かつて自分を破った王国のロストアイテムの鎧に酷似した機体だ。機体のカラーリングや細かい意匠は異なっているものの、胸部に描かれた家紋はバンデルも知っている有名なものであった。
「よそ様の本拠地に乗り込んできてお姫様を救出なんて・・・もしかして、リオン君のファンなのかな?」
「やはりその声・・・下劣公!貴様かぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
黒騎士にとって最も憎い相手であるリオン―その黒幕とも噂され、主君であるヘルトルーデに対する無礼な発言を繰り返しただけでなく、自身とも醜い取っ組み合いを繰り広げた怨敵であるギルバートの声を耳にして、黒騎士は咆えたのであった。
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アロガンツブロスの誘導のおかげで、かなり早い段階で王宮への侵入者の捕捉そのものはできていた。
また、敵の目的地がヘルトルーデ王女の部屋であるという当たりも付けることはできたものの、王宮内部を進んでいったのでは間に合わないと判断して、
中東テロリスト系野◯ひろしのようなセリフとともに上空から奇襲を仕掛けることにした。
敵機が飛び出してきたところに、グレイブを振り下ろしたのを防がれて、即座に敵の大剣の刀身に蹴りを叩き込んだまでは良かったのだが、問題は相手の機体だ。
見れば見るほど、オフリー家討伐作戦の際に交戦した魔装にそっくりだ。蝙蝠っぽい翼に、トゲトゲ付きの爬虫類のような尻尾が生えているのに、機械っぽさも混ざっている。
ついでに、左腕で覆うようにヘルトルーデ王女を抱えている。何だよ、お姫様を助けに来たナイト気取りか?
「その声・・・まさか黒騎士かい?王宮に単機で突っ込んで来るなんて、リオン君の真似をしたつもりかな?」
「外道騎士と同じ鎧・・・ふん、奴の黒幕としてはピッタリな醜悪な鎧だな」
黒騎士と魔装モドキ・・・いや、魔装のフォルムのまとまり方というか整い方からすると、オフリー領で交戦したものの上位機種のように見える。考え得る限りで最悪の組み合わせが、本当に攻め込んできた。
冗談抜きに、今まで戦った敵の中で最強だろう。トンデモない奴が乗り込んで来やがったという他ないぞ!
想像だが、攻略対象であるリオン君が、然るべきイベントの末に倒すというのが、ゲームのシナリオなのだろう。
となれば、僕がここで戦っても、噛ませ犬扱いっぽい負けイベントで終わる可能性が高い。
いや、考えるんだ、僕。自分より格上の相手に、真正面から戦わないと行けないルールも義務もないはずだ。
思考を巡らせているところに、相手が大切そうに抱えているヘルトルーデ王女の姿が再び目に入った。生身の王女をコックピットの中に入れずに、抱えている。
普通の鎧ならお姫様一人をコックピットに入れるくらいできるだろうに・・・
そういえば、ジルクが以前に言っていたな、魔装はパイロットの命を吸って稼働すると。
だとしたら、黒騎士のやつ、王女を守りたくても、コックピット内に収容することはできないってことか!黒騎士にとってのミッションが王女の救出であるなら・・・やりようはありそうだ!
「ブロス!ビームを散弾モードで発射だ!」
僕の指示を受けて、アロガンツブロスの両肩の砲塔から、細かな散弾状になったビームが放たれるが、黒騎士の魔装は、上空に飛び上がってビームを回避する。
「逃がすな!無理に当てなくていいから、とにかく回避行動を強要させ続けろ!!」
『了解!』
ビームの散弾が、上空の黒騎士の軌道を辿るように連続で放たれると、魔装は、蝙蝠のような翼を羽ばたかせて飛行しながら、機体を上下左右に移動させて、ビームの雨を潜り抜けていく。
ビームによる魔装の追尾をアロガンツブロスの人工知能に任せ、僕は黒騎士の魔装の一点を注視していた。そう、魔装の左腕に抱え込まれたヘルトルーデ王女だ。
彼女は必死に魔装の腕にしがみついていたが、少しずつ機体の高速度での回避行動に耐えきれなくなってきたのか、時折、魔装が回避行動のために急旋回した際に何度か振り落とされそうになっていた。
そして、そのたびに黒騎士はビームを回避するのではなく、大剣でガードしたり、背中で受けたりして、体勢を整え直し、王女が落下しないように立ち回っている。
やっぱりそうか!黒騎士め、ヘルトルーデ王女を抱えているせいで、本来の動きが取りたくても取れないようだ。僕が取るべき行動の道筋が見えてきたぞ。
「ビーム斉射止め!もう一度、グレイブで突っ込むぞ!」
連続した回避行動を強制されて、魔装の動きが僅かに鈍くなったところに、アロガンツブロスがグレイブで魔装に斬りかかる。
魔装が再び大剣でこちらの攻撃を受け止めるが、アロガンツブロスは斬りかかった勢いで魔装にショルダータックルを叩き込む。
機体のマイクがヘルトルーデ王女の悲鳴を拾うものの、そんなことにはお構いなく、僕は追撃の手を止めることはしない。
もう一度、グレイブを振るい、黒騎士の大剣で受け止めさせたところで、右腕をグレイブから放し、ヘルトルーデ王女を抱えた魔装の左腕を目がけて、腕部のカギ爪を伸ばした。
大剣はグレイブを抑えるために使ったままである魔装は、防御することを諦めて後方に飛び退く。
「下劣公おぉ!貴様、わざと姫様を!!」
「僕の妹を誘拐しようとした連中に文句を言われる筋合いは無いね!これが、ワロスってやつかな?」
「外道の黒幕とはよく言ったものだ、このクズが!」
「何度も言わせるな、僕の妹を危険に晒した時点でお前らは有罪だ、このハゲ頭!」
「俺の家族を殺した王国のやつらに復讐するためなら何でもしてやるわ!」
「だったら、お互い何でもアリで殺し合うってことでいいだろうが!」
黒騎士が僕の狙いに気付いて激昂しているが、そんなことに一切構うつもりはない。
もともと、侵略してきた相手に手心を加える必要はないし、そもそも僕は悪役令嬢のお兄ちゃんだぞ!悪役ムーブをすることに何の問題があろうか。いや、無いはずだ!
罵り合いながら、距離を取ろうとする魔装に向けて、アロガンツブロスが地面を抉りながら、脚部を振り上げる。
その衝撃で地面の土や石の破片、礫が前方に巻き上げられて魔装を襲うと、黒騎士は、ヘルトルーデ王女の落下を危惧したのか、魔装の右腕で握った大剣の刀身を盾にすると同時に、機体を丸めて、王女を守る姿勢を取った。
よし、僕はこのタイミングを待っていたんだ。
「肩部ビームキャノン、収束モードでぶちかませえぇぇぇっ!!!」
僕が叫びながら引鉄を引くと、先ほどの散弾状のものとは異なる、膨大なエネルギーが圧縮された極太な二条の光が、両肩の砲塔から放たれると、動きを止めた魔装を飲み込み、大きな爆発が起こった。
「これで魔装が始末できていればいいんだけど・・・」
遠距離から飛行船をシールドごと撃沈させられる長距離用のビームを、かなり近い距離から命中させたのだから、大きなダメージを与えることはできただろう。
とはいえ、相手はロストアイテムである魔装、しかもオフリー領で戦ったやつよりも性能が高そうだ。直接攻撃で致命傷を与えたわけではないから、息の根を止めるのは厳しいかもしれない。
アロガンツブロスにグレイブを構えさせて奇襲に備えながら、僕は爆発により発生した煙が晴れるのを待っていたが、間もなく、煙の中から魔装のフォルムが姿を現した。
どうやら、アダマンティアス製の大剣を地面に突き立てて盾にしながら、全身を縮めるように丸めて膝をつき、ヘルトルーデ王女を守ろうとしたようだ。
両掌で王女を囲い、なんとかアロガンツブロスのビームを防ぎ切ることができたものの、魔装の両肩は大きく抉られて、そこから赤黒い液体がこぼれ落ちている。
「さすが、王国を震え上がらせたロストアイテムの大剣だ。まさか、直撃を喰らっても五体満足とはね」
「貴様とは・・・拠って立つものが違うのだ!」
どこぞのソ〇モンの悪夢みたいなことを言いやがって。どちらかと言うと、お前は、鉄球を振り回す宇宙海賊で
ジョーカーなシャッ〇ル同盟じゃないのか。
「だからさぁ・・・いい加減に自分だけが被害者なんだ、みたいなツラするの・・・やめたまえよ」
「バンデル!私を降ろして!そうすれば、貴方なら負けないはずよ!」
「いいえ、姫様。こやつは、姫様を降ろしたら、まず最初に貴女に狙いを定めるでしょう」
「惜しいな。流れ弾に見せかけるくらいの演出くらいはしてあげるよ」
「おわかりいただけましたか、姫様。外道の黒幕というだけあって、この男は我らを貶め、傷付けるためであれば、手段を選びませぬ」
「君みたいなむさ苦しい禿げ頭に理解されても、欠片も嬉しくないねぇ!」
魔装はゆっくりと立ち上がり、大剣をこちらに向ける。
よく見ると、損傷した両肩の傷が塞がり始め、内部から肉が盛り上がってきている。大ボスには定番の自己修復機能ってやつか。
地力で下回っていても、なんとか優位に立ってきたが、ここからが第二ラウンドというところか。
おまけを書こうと思ったら本編が9000字になり断念しますた