乙女ゲー世界は悪役令嬢の身内にも厳しい世界です 作:りーおー参式
2期の開始日決まって良かった、延期になるんじゃないかとヒヤヒヤしたぜぇ
仮面を被った馬鹿王子の乱入騒ぎがあってからしばらくして、公国艦隊の本隊と、リオン君が率いる王国艦隊との戦闘が始まった。
リオン君のロストアイテムの飛行船であるパルトナーを筆頭に、王国軍側の飛行船や鎧が、公国の鎧やモンスター、飛行船を迎え撃つ形になっている。
現時点で妹のアンジェや主人公様であるオリヴィアさんその他が乗ったヴァイスは、やや候補に控えている形なので、出番はまだ先かなと思っていたのであるが、
けっこうな数の公国の部隊が、僕が乗る機体であるアロガンツブロスを見つけた途端に激しい 攻撃を仕掛けてきたりしている。
しかも、リオン君の機体と勘違いしたわけでもなく、明確に僕の機体であることを認識して上での行動だ。
なぜそれがわかるのかというと、
「下劣公を見つけたぞ!」
「のこのこ出てきた外道騎士の黒幕を討つチャンスを逃すな」
「姫様に卑猥な要求をした下劣公の首を取れ!」
というような僕に対する殺意に満ち溢れたセリフとともに、アロガンツブロスに群がって攻撃してくるからである。
望まぬ形で敵のヘイトを買えているらしい。
とはいえ、対多数の戦闘はアロガンツブロスが得意とするところだ。
「ブロス!群がってくる蚊トンボどもを、拡散ビーム弾で叩き落とせ!」
まるで木製帰りのニュー◯イプみたいな台詞を受けて、アロガンツブロスから放たれた、細切れのビーム弾が、公国の鎧部隊を次々と食い破る。
収束させたビームほどの威力があるわけではないが、それでも、現行の技術レベルで作られた鎧の耐久力を相手にするには十分だったようで、敵の鎧はその場で爆散するか、力なく地表に落下していく。
やってること自体は腹部の拡散ビーム砲でジェ◯ン部隊を壊滅させるサザ◯ーのようで、まるでラスボスムーブみたいだと思いつつ、
公国の飛行船艦隊の一部が、パルトナーやその後方にいるヴァイスの方向に船首を向けようとする姿が、僕の視界の端っこに映った。
「そう簡単に、妹の船に手を出させるはずがないだろうが!!」
どうやら、敵さんは、まともにアロガンツブロスの相手をするよりも、こちらの大物飛行船ねらいに切り替えたようだ。
だが、アロガンツブロスの機動力は、鈍重な外見から想像できないくらいに高いぞ。
僕が思いっきりフットペダルを踏みこむと、アロガンツブロスの背部ウイングにあるバーニアが一気に火を噴き、機体が敵の飛行船へ向かっていく。
急な加速に対応し切れなかった飛行船の護衛部隊の脇をすり抜けて、アロガンツブロスは、グレイブの先端を、公国の船のブリッジにぶち込む。
さらに、念押しとばかりに足で艦橋を踏みつけ、その反動を使って次の飛行船に向かって切り込んでいく。
まるで某ル◯ム戦役のシ◯ア専用ザ◯のような動きで、今日の僕はやってることがかなり赤い人テイストだ。
いや、ファミリーネーム的な意味で赤い人なかんじはあるんだけどね。
そこから周辺の敵艦隊を、アロガンツブロスの火力と機動力であらかた沈めたところで、パルトナーのいる味方の主力艦隊の方向から強い光が放たれた。
コックピット内のモニターの倍率を上げて映像を拡大させると、王家の船と呼ばれていたロストアイテムの飛行船であるヴァイスがその光を放っていた。
光は、主力艦隊が相手にしていた公国軍の超大型モンスターを飲み込み、その巨体を徐々に消滅させてしまう。
他方で、味方の機体だけでなく、敵の機体も、動きは止まっているものの、爆散したりはしていないので、サイ◯スターのサ◯フラッシュ的な兵器ではないようだ。
「どういう理屈かわからないが・・・これがオリヴィアさんが、主人公様がもつ、ガチ聖女の力か・・・退魔とか破邪的な能力か?」
僕は眉を顰めながら、ヴァイスの方を見ていたが、ヴァイスから放たれた光は、さらに周辺全体に広がり続け、アロガンツブロスをも飲み込んでしまう。
とっさにコックピット内の計器類を見るが、何ら異常は発生していないようだ。
(もう争わないで)
オリヴィアさんらしき声が頭の中で聞こえて来た
それと同時に、敵である公国の部隊を憎み、戦おうとする意志ー有り体に言えば戦意とでもいうものが、自分の中から奪われていくのがはっきりとわかった。
周囲の敵機だけでなく友軍機も、動きを止め、手に持った武器を落としていることから、敵味方問わず継戦意志を取り除かれているのだろう。
(もうやめましょう。このままでは、多くの人たちが犠牲になります。戦いを止めてください)
ああ、なんて主人公らしいセリフだ
戦争なんてものは、政治、外交の延長線上の話なんだから、そんなセリフの2つ、3つで簡単に終わるもんじじゃない。
某SE◯Dのピンクの人が戦いを止めろと言って戦闘を終わらせられたのは、戦場で誰よりも高性能な機体と最強のパイロットを従えてたからだし、
某海軍と白髭海賊団の戦闘が終わったのは、◯ビーが戦いを止めましょうと言ったから、というよりも、
疲弊し切った戦場で、最強クラスな実力と満タンな体力のシャン◯ス率いる赤髪海賊団の相手をしながら戦い続けられるなんて考えられるやつがいなかったからだ。
あの乙女ゲー主人公様がこのセリフを吐けるのは、攻略対象という強力な政治力と武力の後ろ盾があるからだ、となるのが、普通の道理だろう。
だが、これは・・・特定の兵器の力で、敵味方問わず精神状態から戦闘不能にさせるなんてのは・・・
「エ◯ジェルハイロウじゃねえかああ!!主人公様の使う兵器じゃねえだろぉぉぉぉ!!!」
気力を振り絞って叫んだツッコミを言い終えるのとほぼ同時に、僕の心の中にはどこからなのかはわからないが、本当に戦いが終わって欲しいという気持ちが入り込んで来る。
「戦いってのは、終わればいいんじゃなくて・・・大事なのは、どう終わらせるか、だろ。クソ・・・」
自分のものではない思考に頭の中身を詰め替えられて、温かい布団の中に放り込まれたときのような猛烈な眠気らしき感覚によって何もする気力がなくなってくる。
『マスター、精神汚染を確認したよ!しっかりして!』
コックピット内にアロガンツブロスの愛嬌ある機械音声が響く。
だが、僕の意識レベルがどんどん低下していくのが自分でもわかるのに、どうしようもない。
そんな状況な中であるにもかかわらず、僕はどうしてか、今と比べればずっと幸せを感じていた時代のことを思い出していた。
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おまけ
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若様が長期間の出張から戻ってきたのは、デカおっぱいぱいせんが屋敷を去ってから半年ほど経過した頃だった。
若様は、屋敷に戻ってきてから、適当な理由を付けてデカおっぱいぱいせんの姿を探し回っていた。
私は、事情を伝えようとタイミングを見計らって後ろから尾行していたのだが、若様は、屋敷の廊下で出くわしたコーデリアぱいせんから、目当ての相手が屋敷を去ったという事実を伝えられ、明らかに数秒間、フリーズしていた。
「・・・そうか。なるほど・・・・彼女にはずいぶんと世話になったから寂しくなるね。ここを辞めて何をするかは聞いているかい?」
「体調が優れないため、療養も兼ねてアルゼル共和国の親戚にところに世話になる、としか私もきいておりません」
「伝言みたいなものは・・・」
「ございません。・・・本当にないんです。私も彼女とはいい友人であったつもりなのですが・・・」
「わかった。長い間の出張で疲れているから、僕は、しばらく部屋に戻って休むとするよ」
「かしこまりました」
コ、コーデリアぱいせんが若様に嫌味を言ったり煽ったりしないだとぉぉ!?
なんてこった!この屋敷内でも、数少ない、若様とレスバができるコーデリアぱいせんが!
しかも、若様が、だいしゅきなカノジョが自分に何も言わずに去っていったショックでメンタル的にグロッキーという絶好のタイミングに追い討ちをしかけなかっただとぉ!!
・・・たしかに若様が、足元をフラフラさせながら自室に入っていくあたり、対応を誤ると不慮の爆発が起こりかねないわね。
仕方ないわ、何をどう説明するのかをノートに書き出して整理してから、あの話をしに行くとしますか。
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コーデリアから聞かされた事実を何とか受け止めて自室に戻った僕であるが、もちろん精神的に動揺している。
動揺なんてもんじゃない、めちゃくちゃ凹んでいる。尋常じゃないくらい凹んでいる。
だが、そんな異常事態だからこそ、客観的に状況分析すべきだと、理性を総動員して僕は自分に言い聞かせようとしていた。
そう、単に僕は女にフラれただけだ。
フラれてメンタルにダメージ受けただけだ。
一方で、実家に経済的にも社会的にも悪影響は発生していない。
もちろん、家族の安全が脅かされたわけでもない。
ただただ、僕個人が、精神的なショックに見舞われてるというだけ。
仮にも前世も含めれば、フラれたことなんて何回もある。
心の隙間は、別の恋愛とか大量の仕事で埋めれば、そのうち時の経過とともに、心の傷口は埋まるものだと分かっている。
優先順位を見誤るなよ、僕。
妹があのケモナー学園で断罪されないこと、
それにより、実家もろとも僕ら家族に被害が出ないこと。
これが今世の僕に取っての最優先事項だ。
「よし。切り替えよう」
天井を眺めつつ、大きく息を吐いて自分に言い聞かせたところで、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
入室してかまわない旨を伝えてから扉を開いたのは、マリエだった。
ただ、いつもと違うのは、何やら難しい顔している点だ。
うーん、大人として、子供に余計な心配をかけさせてはいけないね。
某ゲンドウのようなスタイルで執務机に両肘をついて、椅子に深く腰掛けて対応してあげるとしよう。
「しばらくだね、お土産をたくさん買って来てある。コーデリアに預けてあるから、みんなで食べるといい」
「若様、先輩のことなんですけど・・・」
おっと、いきなり核心にダイレクトアタックをぶち込んできちゃったぞ、この子。
だが、この子を公爵家の使用人として引き取ってまだ数年だ。
それまでは、実家であるラーファン子爵家でまともな教育すら受けていなかったのだから、
礼儀作法というか接遇が、今のようなプライベートな空間で不十分だったとしても、大目に見てあげよう。
この子にとっては、この家のみんなが家族のような存在なのかもしれない。
なら、今は話しやすいようにしてあげるのが大人の余裕というやつだろう。
「彼女にも事情あるのだろうさ。もちろん、寂しくないと言ったら嘘になるがね」
「そ、そうじゃないの・・・たぶんなんだけど、実は・・・」
そこまで言ってマリエは俯いたまま黙ってしまった。
何やら使い込んだノートを腕に抱えていることから、ここに来るに際して、この子なりに話したいことをノートに整理してから、この部屋に来て、喋っているのだろう。
彼女の今の立場を、前世に即して例えると、上司に対してあまり良くない報告をしなければならない部下、といった感じかな。
そうであるなら、上司である僕としては、部下を緊張をほぐして、話しやすい雰囲気を作ってやるべきだろうね。
「マリエ、安心するといい。これでも僕は公爵家の跡取りだよ?いい大人だよ?滅多なことじゃ大声を出したり、慌てたりしないさ」
「ほ、本当ですか?」
「ああ、安心して話してごらん」
「わかりました・・・たぶんですけど・・・ 先輩、若様の子供を妊娠してr」
「ぬわにぃぃぃぃぃぃ!!!!!????」
衝撃の事実を聞かされて、左右の両拳を執務机に叩きつけて天板をカチ割りながら立ち上がってしまった。
おいおい、ちょっと待ってくれ。衝撃的すぎる情報で何か、頭のリミッターみたいなものが吹き飛んだ気がするぞ!?
左右に真っ二つに割られた執務机を飛び越えて、マリエとの距離を詰める。
マリエは、驚いたのか、とっさに後退しようとするが、そうはさせじと両肩を強く掴む。
「ひぃぃぃぃ!?」
マリエは涙目になりながら、驚きのあまり、腰を抜かして、抱えていたノートを落としても、それを拾うこともせずに震えている。
さすがに、事が事だけに、僕も平常心とか、大声を出さないとか言っている場合じゃあない。
だが、驚きというのは、時に受け手の側を慮らずに、波状攻撃を仕掛けてくるものだと、僕は忘れていた。
「マリエ!どういうことだ!?詳しく話すんだ!本当にあの子は・・・」
途中まで言いかけながら、僕は言葉を詰まらせてしまった。
それは、衝撃的な情報の第二波が僕の目に入ってきたからだ。
1つ目の衝撃が僕を揺るがせている間に、2つ目の衝撃を喰らわせるって、まるで二重の極みじゃないか。
そんなことを考えながら僕が見ていたものは、マリエが落としたノートである。
正確に言えば、そのノートに書かれた文字。
忘れもしない。この世界の文字とは全く異なるそれは、僕の前世で常に目にしていた、日本語だったからだ。
あまりの驚きに、僕もキャパを超えたのか、逆に冷静になってくる。
「まさか・・・君も転生者なのか、マリエ?」
「え・・・?私も、って・・・わ、若様も!?」
なんだろう、今世のターニングポイントが奇襲を仕掛けてきたかのようじゃないか。