ガルパンサウナ部   作:いのかしら

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天拝の湯行きてぇなぁ

たまたまカルパッチョさん生誕祭に間に合った


駿河健康ランドの裏技(カルパッチョ)

 

 

 

 

 

 馴染みがあり、そして馴染みのない。

 

 

 

 降り立った時の感覚はいつもそうだ。

 

 

 そしてこの感覚は、裾野が広がる富士山を見上げつつ、同じように降りる人々の多くが思っていることではないだろうか。

 

 

 

 

 学園艦は船である。それも大きな大きな船である。その船はもちろん海の上に浮かび、海の上を走り、海の上で授業する。

 

 そんな海と切り離せない関係にある学園艦。では海に面していない内陸県、またはそこを本拠とする私立学園は、どうやって学園艦を運営するのか。

 

 

 簡単な話だ。港を借りるのだ。

 

 

 

 

 そういうわけで規模が比較的ある港には、その地元の学園艦だけではなく、間借りしている学園艦も集まってくる。一方その間借りしている学園艦では、生徒は地元の拠点近くで集める。

 

 そしてその借りる港といっても、地元に近い港を好き勝手に母港扱いできるわけではない。

 

 もちろんそうなれば首都圏に近い港には、いろんな所からの学園艦が殺到するようになり、簡単にキャパオーバーする。

 

 

 

 

 そんなわけで各地の港に割り振られることになるのだが、遠い場所に振り分けられることも多い。アンツィオ高校は、本来の所属、栃木県からはるか遠い、静岡県の清水港を母港扱いとしているのだ。

 

 

 

 

 

 

 そんな母港への寄港日その日が休日と重なる時。学園艦内でいくらでも安くて美味しい食べ物にありつけるアンツィオ生であっても、降り立つことを希望する。

 

 

 アンツィオ生が食費を切り詰めて金をかけるのは、実は化粧品類だったりする。だからこそ、ドゥーチェもあの髪をして目立たないと、仮にも統領(ドゥーチェ)を名乗れないわけだ。皆やってるから。

 自分より目立ち、自分の考え、思考を肩代わりしてくれる人を、アンツィオの人間は好むのだ。あと素直に学内で化粧系の規制がほぼ無いこともある、高校としては珍しいことに。

 あ、でも聖グロも意外と化粧関係緩い説があるけど……どうなんだろうか。

 

 そしてそのための化粧品の調達元は、艦内より外が好まれる。

 そういったものである程度着飾っておかないと、外を出歩けない、生きた姿になれない。意外とそう考えているのがアンツィオ生なのだ。

 

 

 

 

 ただ自分のように北関東出身が多いアンツィオ生では、たった1日2日でなかなか実家に行ってくる、ということもできない。

 比較的実家が近い部類のドゥーチェでも、そう易々とは行き来できない。静岡県の東西の幅を舐めてはいけない。浜松まででも数時間かかる。あとアンツィオ生の財布も。

 

 

 そういった事情から、大体の人はまず静岡の中心部に向かう。

 バスも港からそこそこ本数が出ており、降り立った人を運んでいく。

 

 

 

 

 ただ、自分が使うのは逆方向。清水駅に向かうバスだ。

 

 静岡駅行きは草薙経由と日本平経由の2系統があり、どっちもそこそこ値段がする。だがなんと、清水駅までなら格安のシャトルバスがある。

 

 本数が少なく使いづらい、という点こそあれど、学園艦が寄港しているときには増便される。ちなみに伊豆半島から清水港に着くフェリーのチケットを持っていると、無料になるらしい。

 

 

 

 

 自分たちが寄港して少し時間があり、フェリーの時間からは外れている。バス車内はガラガラほどではないが、席には困らない。

 途中で2カ所のバス停があることもあり、港近く在住の方も利用されているらしい。杖をついた女性が、段差に気をつけながら一歩一歩降りていった。

 

 

 

 

 

 タイル張りの、スペイン階段ほどではないがきれいに整備された駅前ロータリー。そこで降りた人の大半は、跨線橋の階段を通って、通路奥の方の清水駅に向かう。

 特に静岡方面は、一つとなりの興津発がある関係で本数も多い。下手に港からバスを使うより、清水駅乗り換えの方が速かったりもする。

 

 あと新清水から静鉄っていう手もあるけど。

 

 

 

 

 

 

 アンツィオでは一人になる時間というのはかなり貴重である。

 誰かを見つけるやいなや、集まり騒ぐ。そのあり方がDNAに刻まれている人間が大半。そんな学校なのである。

 

 だから寄港するたびに一人でこうしてうろつく人間は、学園内でもかなりの少数派。そして自分は、その少数の側に足だけでも入れておきたい人間だ。

 

 もう片方の足を突っ込んでおくのは、それはそれで好きなのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 さて、この清水の駅前ロータリーでは、バスを乗り継ぐことになる。

 

 次のバスが来るまでは20分ほど。他に向かえる場所があるほどの時間ではないが、ただ庇の下で待ち続けるには長い。

 座れる場所もあるが、少し離れていてそれも日差しの下だ。

 

 

 折り返しでバスが出て行くと、日光が燦々と降り注ぐ中、人通りはガクッと減った。そんな中、ロータリーをブラブラする。

 

 

 

 

 

 ロータリーに直接つながる形で、眉を顰めたような形の、上がガラス張りとなっている階段の入り口がある。

 

 

 みなと口

 

 

 そして青を背景とした絵が数枚。

 

 そこにあるのは、ちびまる子ちゃんとエスパルス。駅構内へと続く跨線橋の入り口に刻まれたその2つの絵。

 アニメやサッカーの界隈に詳しくない人でも、その名前だけなら耳にしたことがあると思う。

 

 それらこそ、この街を象徴する存在だ。

 

 

 そしてその一方、やはり艦上のアンツィオ生には馴染みが薄い。高校生になってちびまる子ちゃんを見ている人も稀だし、サッカーはJリーグよりセリエAを見てる人の方が圧倒的に多い。

 

 そうした点でも、この町では母港となっている割には、アンツィオへの歓迎ムードは薄いのだ。県内出身者もかなり少ないし、仕方のないことではあるのだが。

 

 

 

 この街にいて有利なことといえば、戦車道で決勝の舞台の富士駐屯地に比較的近いくらいか。おいそこ決勝なんか行けないだろとか言わない。

 

 市街地も近いし山も近い、さらに観光地も近いから、上陸しても練習会場に難儀する。それも正直良い思い出があまり無い理由だ。

 

 

 

 

 

 水筒の水を飲みながら、うろつくこと少し。入ってきたのは、オレンジの車体をしたバス。

 

 路線バスよりかは、観光バスや中長距離バスのような形だ。

 

そして車体横には、

『手ぶらでGO!』

 

 

 これが目的の車両だ。

 

 

 

 

 いつも通りの場所に止まり、いつも通りに開き、そして誰も降りてこない。またこれも一日フルで使う時は変わらない姿だ。

 

 

 

 なんとなく手前側、窓際の席に座る。追加でお年寄りが数人乗って少しすると、バスはゆっくりと動き出した。

 

 

 

 

 

 静岡の清水駅から北側。ここからは山がかなり海側に迫り出してくるエリアになる。特に線路を高架で跨いでからが顕著で、右側に時折海、左側に線路を挟んで崖、という場所が多い。

 

 少し古めの民家の前を抜け、いくらか商店街らしくなってきたところで、一度、興津の駅前に止まる。

 ここまでおよそ15分。

 

 

 このバスが無料で、かつここから目的地が徒歩15分でなければ、清水から一駅乗ることも考えただろう。

 

 

 

 

 

 また幾人か乗せて、先ほどの道をさらに進む。そして海地最も近そうなところで、細くわかりづらい道に食い込んでいく。

 

 こうした道を見ていると、戦車に乗っていても地上で車に乗るのは難解なものに思える。視界から情報を読み取り、他者の行動を的確に予測し、そして正確に動かす。

 

 いやしかし、そう考えると他車輌から撃たれないだけ、まだやりやすいのかもしれない。でも、それでも、半分近くが顔だけでも見知っているメンバーが操縦している環境と比べれば。

 

 

 

 

 バスは少しばかり日本庭園の趣きのある、入り口の前に辿り着いた。

 

 

 駿河健康ランド。その正面である。

 

 

 

 

 正面のドアではなく、左側の斜面のところから登っていく。わかっていることではあるが、一応バスの時間を確認。毎時30分である。

 

 

 靴は低めのエリアで脱ぎ、左に向かったところのロッカーにしまう。泊まりの人はほぼ帰っているから、この時間帯ならどこでも良いくらいには空いている。

 

 

 

 青いテープで仕切られた二つの列のうち、手前側の方を進み、手続き。会員カードを見せると、先払いのみであっさりと終わる。

 

 靴箱の鍵の代わりに日帰り用のロッカーキーを受け取ると、ここでの休日が本格的にスタートする。

 

 

 

 

 

 

 

 ここは館内だけでも生活できそうなくらい、設備が多い。レストラン類は5〜6個あるし、ゲームコーナにカラオケルームなんてものもある。

 同級生をこの場に呼んだことはないが、きっと何人かは風呂よりそっちに入り浸るだろう。

 

 

 

 そこは放置して、そのまま上の階へ。入り口右より登った先の上には、鏡を挟んで左が象、右が龍。そんな金色の絵が飾ってある

 

 絵、というよりは少し立体的で、そして特に目立つ。

 この……言ってしまえば統一性のなさ。これもまた、陸に来た、と思わせてくれる一つの要素。とはいえその鏡に映る、向かいの机で勉強なりしている面々を見ると、カバンに一応入れてきた課題のことを思い出してしまう。

 

 

 

 あとで少しだけ、進めることにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 直進した先のカウンターで館内着とタオル2枚を受け取り、その奥で指定されたロッカーのところへ。タオルは持参も可だが、無料だし手荷物を減らすためにいつも借りている。

 金属製の扉、その中の下の方に一枚板が用意されているだけ。その中にカバンを置いて服を置き、タオル一枚片手に、そしてもう片手に持参のグッズを入れた袋を携え、扉から中へ。

 

 

 入り口近くのかけ湯で全身流してから、右側に広がるシャワーエリアでさらに綺麗にしておく。ドゥーチェ同様地毛なので、細かい手入れは上がってドライヤーしてからでいい。

 

 そうなった時にまず手につけるのは、化粧落とし。この化粧落としにもいくつかタイプがあるが、ミルク系でササっとやってしまう。

 そもそも今日朝一のも、学園艦内は早急に帽子とマスクを付けて駆け抜けるようにしたので、下地に毛が生えた程度のみ。このくらいで落とせるようにしてある。

 それ抜きにしたとしても、今ならよっぽどベタ塗りしない限り、そこまで洗浄力が強いオイルとかは使わなくて良い、はず……

 進学したらまた違うのかもしれない。

 

 

 その後は泡立て器で持参の洗顔石鹸をよく泡立て、塗る。この作業も朝は手早くして出てきたので、ここは本腰を入れる。

 特に気をつけるのは額と鼻、口を中心としたT字のライン。その中でも鼻の穴の脇と下唇と顎先の間、そして顎下の首との間は特に重点的に。

 擦り付けすぎず、かといってムラを少なく、それでいて使用量はできるだけ少なく。らしくない丁寧さと、らしい切り詰め度合い。そのバランス感がなんとも難しい。

 この生活にも慣れてきたのでササっとできる。が、最初に移ってきた頃なんかは、装わねばならない重圧もあって苦労したものだ。

 

 その泡を一度しっかり流す。またこの後もう一度機会を挟むつもりなので、一旦はこれだけでいい。

 

 

 

 

 ここからは髪と身体。

 髪はシャンプーは置いてあるものを、トリートメントは持参のものを馴染ませるが、それは最後でいい。一旦は洗うだけ。身体も保湿系は後々だ。

 

 泡立てはもうひとまわり大きいものを持参。それにしてもこういった泡立て器は、なんだかんだでしっかりしたものを買っておかないと、何回か泡立てているうちに劣化してしまい役に立たない。

 あと泡立て器は、先に少しばかりのボディソープで濯いでおく方が泡立ちが良くなる。そしてあまり擦りすぎずに泡立てた方が、泡もしっかりするし劣化もしづらくなる。

 

 

 

 それを全身くまなく塗り、そしてしっかり流す。しっかり流したと思ってから追加で10秒。手を抜かないことが大事だ。

 

 

 

 この先本番は2段階あるが、そのうち一つはこの後そう遠くない。ボディーソープの泡は濃いめに作っておいたのは、そっちのためでもある。

 

 

 

 

 まず入り口左奥の普通の泡風呂へ。水温はまずまず、ジェットの流れの余波と泡感もあって、ざっくりと温まることができる。

 ジェット感を逃れたければ奥の方に進めばいい。

 

 

 

 

 

 入る前にミニタオルを頭に巻き、その中に髪の毛をすべて仕舞い込む。後々のためにも、ここでしっかり頭の後ろ側までカバーしておくことが大事だ。

 その上でまず脛まで、ついで腿まで、胸まで、そして肩まで時間を空けながら座る。

 

 

 

 朝早くの時間帯だが、休みでもあるし人はそこそこ居る。特に子供連れは多く、元気な子供に振り回される母親が、背中側の通路を足早に進む。

 他には自分たちだけで来ていそうな、2〜3人のグループの子供が、仲良さそうに少しお喋りしながら歩いていく。どことなく少し前の私を思い出させる。

 

 

 そんなことを考えつつ、ある程度温まったら出る。ここの特徴は、まるでテーマパークに来たみたいに、色々と揃っているところなのだから。

 

 

 

 

 

 

 次に、この段階だからこそ入っておきたい風呂は、左隣にある。

 狭い入り口から少し階段を下り、左に曲がった先。そこはこの時間でも、紫がかった色合いをして薄暗い。そして同じような色の、四角い湯船の真ん中に聳える1m弱の柱が目立つ。

 

 その柱に背を向け、湯船に胸の辺りまで浸かり、足を伸ばす。そうすると43度と高めの湯とともに、背中の辺りがピリピリと痛み……ではないが、筋沿いが強張るような、そんな感覚に染まる。

 ラジウム波動泉。名前は放射線とかの若干怖さを纏っているし、柱に取り付けた鉱石に近づいた時の感覚は、どことなくその怖さを増幅させる。だが逆に、そのピリピリ感がゆるくマッサージを受けているようで、どことなく気分がいいのだ。

 

 もっとも身体の芯までゆっくり、ズシンと響いていく感覚もあるので、まだ体力を消耗していない序盤に入っておきたかった、というわけだ。効能としては湯冷めしづらいそうだ。

 

 

 

 

 

 メインのうち一つ、その初めに向かうのは、人が出払っているフィンランドサウナだ。

 11時開催、午前中最後のロウリュイベントが開催された後。この次は15時、さらに昼飯時に近づいていくこともあり、しばらく人はここから遠ざかる。現に他に人はいない。外のサウナマットを置いてある場所の近くに手荷物類は置き、タオルだけ手に向かう。

 

 

 室内はドアの正面にいきなりストーブがドカンと、そして右手側に長方形に部屋が広がっている。ストーブを挟んで反対側には窓、奥川の窓のない方の壁だけ2段ある。

 自分が座るのは、2段ある方の下の段。上の段だと熱すぎて、肌に影響が出てきてしまいそうなのがなんだか嫌だ。

 湿度がかなり高いこのタイミングを選んだのも、実は湿度こそ高いが、温度は低いという話を聞いたからだ。爽やかなアロマの香りは残っているしで、こういった部屋でじっくり座るのが私のスタイル。

 

 

 

 この感覚もまた、アンツィオ生らしくない点だ。なんというか、計画性、実益重視。ノリと勢いとは真逆の存在と言っていい。

 ただそれがあるからこそ、ドゥーチェは私の視点を欲するし、ペパロニの視点も欲するのだ。あの適当を通り越した様は、実は憧れを持って見ているところだったりする。

 

 

 

 こうしている時、考えることは来るたびに違う。真面目に考え事をしている時もあれば、適当なことで無為に時間を潰していたりもする。今なんとなく浮かんだことは、この後の昼飯についてである。

 

 食べずに無理やりやり過ごすか、ここの中で何か食べるか。

 確かにこの中のレストランには、船の上では滅多にお目にかかれないものも多い。この後しばらくここにいることを考えると、腹を空かせたまま時間を過ごすのも宜しくない。

 されどいくら会員割が効いているとはいえ、ここの費用に飯に追加で1000円掛けるのは気が引ける。500円くらいのつまみ系も探せばあるだろうが、300円のパスタの世話になっている人間からしたらね……

 

 それかこのサウナ室には、曇りがちだが窓もある。窓の外はだいたいが屋外駐車場の屋上、あとは海。

 窓の外の車の動き、車から降りる人の動き、その先の動き。それらを色々予測してみたり、ナンバーの文字を読めないから四苦八苦したり。そんなことをしていれば意外と時間は経過しているものだ。

 

 

 もちろん暑くはなる。汗も流れる。しかし痛さとかそういったものはない。そしてこの場で、事前に水を飲んだ上で長時間、10分は越えるよう耐える。

 汗は手持ちのタオルで拭いていく。頭も、髪も、身体も。ただ吸水のため、必要以上に擦らないように気をつけながら。

 その吸水が不要になるくらい汗の出がイマイチになってきたら、そろそろ出る時だ。あまり無理をしないようにする。

 

 

 

 

 入り口近くでまた頭から何度かぬるま湯を浴び、サウナの隣の扉へ。水風呂よりかは、この部屋のようなクーラールームを利用する方が、負荷少なく調子を戻せて良い。

 プラスチックの椅子が左右3つずつ並んだ青色の部屋。他に誰も居ない。その中の一つに適当に腰掛けると、頭の上から冷気が吹きつけてくる。

 

 温い。その感覚から、じんわりと寒さの方へと移っていく。もとから冷えていた椅子の手すりに腕を乗せ、熱を抜いていく。

 室内の青い色味も合わさり、抜ける度合いは早まっていく。こういった部屋を逆に赤く染めてしまった時、長くいられるものなのだろうか。

 ふと一面赤いもの、となった時に、マリナーラを思い出してしまうのは性というものだ。

 

 

 

 

 肌感をまた入り口近くの湯で戻す。冷製パスタが稀なものであるように、冷やし過ぎるのは体に悪い。その後は、外へ。

 

 水風呂の向こうに、露店の空間がある。タイル張り、時折滑り止めにマッサージシートのような小石がぶつぶつした場所がある。その椅子の並びの奥に、金属の骨組みと布の貼られた椅子がある。他は白いプラスチックのものと、いくつかの網目のある布の椅子。

 

 

 そしてあのサウナの環境からして、その一つだけ特殊な布の椅子が空いている。勝利確定である。

 

 

 

 まずは腰掛け、そして右脇のレバーでめいいっっぱい後ろへ倒れる。

 頭、背中、腰、尻、膝裏、ふくらはぎ、そして踵。その全てを体の支えとし、さらに布の弾力もサポートする。身体を溶かして全てを預けてしまう。そうした時、身体の上に布をかけて圧力を加えるなど邪道である。

 

 無限椅子。身体を忘れて、鼓動の揺れと視覚と意識のみになった存在となる。眩いほどに広がる青空、雲ひとつない、狂いなく単色のその姿も助長する。

 この「無」は、なかなか味わえるものではない。学園はもちろんのこと、実家に帰ってもコタツで永遠の時を得られるわけでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 椅子から起き上がると、正面には湯船が広がる。右側に水風呂もあるのだが、そっちより今は湯。

 足先からじっくりと腰より上へと浸かる。水温はそこそこ。

 そしてここの特徴は、海水の湯だということだ。擦り傷とか怪我した時は注意しよう。前に戦車道の練習の後に来た時、切り傷とかに染みてか全身ヒリヒリして、かつその痛みが抜けない、本当の地獄みたいな様になった。

 

 ただそういったこともなくこのしょっぱ苦い所に居ると、肌のツルツル感が増していく。これを届けるべく、顔にも適宜かける。目はしっかり閉じたまま、よく水気を切るようにしながら。あと鼻から思いっきり吸い込まないように。鼻から息を吐きながらやる方がイメージが良いかな。

 

 

 

 風呂の淵に座り、塀を越えて流れてくる海風に身を当てる。それでまた平常モードに身体を戻し、少し水風呂の水で身体を流す。そして忘れずに近くの冷水機へ。

 次はその水風呂よりさらに奥の扉へ向かう。

 

 

 重めの扉の向こうは、こげ茶色の薄暗い空間。床は3×3のスペースに低い壁で区切られている。敷く用のタオルケット片手に、なんとなく一番奥の真ん中へ。

 岩盤浴。他所だと追加料金がかかることもあるようだが、ここは無料。タオルケットをそのスペースにできるだけ広げ、上に寝っ転がる。

 

 

 

 

 サウナのような、どこか刺されるような熱さではない。背中側から腹側へ、包み込まれるような暖かさ。冬場に羽毛布団にくるまり、思いの外暑く汗が滲み出てきている感覚、ってほどではないか。もっと暑いか。

 それでいて枕は丸太を縦割りにした半分の形。硬いし頭の位置が安定しない。だがそれでいい。この状況で枕まで柔らかかったら寝ている。

 

 屋根は寝転がるとそこそこ高く見える。南国の星空をイメージしたマッピングがされ、硬めの砂浜に寝転がった気すらしてくる。

 早起きしたが故のあくびを一つ。そして少しずつでも力を抜いていく。地面に力を預けていく。

 冷水で冷やした分の全身の暖かさをなんとなく取り戻し、いくらか汗をかく。そのくらいまで来たら十分。下に敷いたタオルケットがすぐ吸ってしまうので、思いの外汗をかいてるものなのだそうだ。

 

 

 

 数時間、何回もかけてじっくりいる訳ではなく、この一回だけを楽しむだけであれば、無料で居られる方が気が楽だ。

 

 あっさりと出て、湯船の湯で体の汗を流す。風呂、サウナ類はこの施設に他にもいくつかあるが、今日は気分的にあと一つくらいで良い。

 

 

 

 最後の場所は決めてある。

 

 美白炭酸泉。

 

 この名前してたらそら入らざるを得ないよ。

 

 浴場の中心部を横断し、入り口を挟んでサウナや露天風呂とは逆側の端にある。金色、黄土色に近い湯と並んであるのが、真っ白な湯だ。40度ほどとそこまで熱すぎることもなく、じっくりとその白さに包まれることができる。

 

 さてこの白さ。その源は名前の通り炭酸、微小な泡の粒だ。それがかなりの濃度で詰め込めるだけ詰め込まれており、肩まで浸かると足先はおろか手の指先さえ見えなくなる。

 そしてその泡が肌に張り付き、肌から吸収され、血流に乗って血管を広げる、らしい。肌が残った塩気を抜いてツルツルになってくれるのなら、大変望ましい。

 

 顔に浴びせ、肩にかける。少し上体は軽く出しておき、それを繰り返す。周りに人がいれば泡が抜けるこの作業は躊躇するが、広めの場所で3人しかいないのであれば問題ない。

 ここに心ゆくまで居る。悔いの残らないように。

 

 またここの外へも、窓が取り付けられている。先ほどサウナから見たのとほぼ同じ画角だが、車の位置がある程度入れ替わっている。

 こういった細かいところに意識を向けているほど、意外と長く楽しめる。

 

 

 

 

 

 

 

 奥で鳴っている打たせ湯、隣の黄鉄泉、他のサウナに水風呂など、種類は多い。ただこういう時こそ、自分と相談して見切りをつけることが重要だ。

 汗も体力も消費した。最後にまた頭からかけ湯で流して、ミニタオルで水気を取り、袋を持っているのを確認して、この場を立ち去る。

 

 ロッカーのバスタオルで完全に拭き切る。髪も擦りすぎず、ではあるが、ある程度タオルの乾いている部分を当てるようにする。

 そこから上下の下着と上に薄いシャツ、あと館内着を着て洗面台の並ぶエリアへ。ポーチも持っていく。

 

 今日という一日は、まるごと私のために使える時間だ。その日を彩るのに、私の私に対する自信は最適だ。

 そして私の自信はどこから生まれるか。達成感や満足感から、そういうものもあるだろう。だけれども、一つ侮れないものがある。

 

 

 

 外見だ。

 

 私が綺麗に彩られている。その姿を鏡で見る。

 人からどうこうではなく、私のための化粧。

 義務的ではない、自由の権利としての化粧。

 

 

 

 まずは化粧水を、といっても学生で手が出る範囲の艦内のやつ。これといった香り付きですらないもの。少量ずつ、何回かに分けて肌に浸透させていく。

 

 そこに軽めの下地を、さっと顔に馴染ませる。手に塗りたくると手が吸収してしまうので、液状のまま、中の3本指でまず額と鼻、顎下のT字に塗る。そこから下唇の下など窪みがあるところへ、染み込む前に頬など横へと広げていく。

 

 この下地にも日焼け止めなど複数の機能が含まれているものがあるが、ここは基本に忠実に化粧崩れしにくいもの。あと保湿成分込み、との謳い文句もあるものにしている。安いやつを探すなら、最悪保湿クリームで代用する。

 色味は若干オレンジに近い濃いめ。肌ベースに近い色なのでナチュラル感も出しつつ、血色良さを滲ませる。

 

 目の周りは下側のみ、最後には顎の骨沿いとその下、首にかけての部分に塗り込み、まずは休息。

 

 

 

 手に付いた下地をそのまま手に塗り込み、保湿剤代わりにする。手のベタつきなどがなくなったことを確認し、今のうちに髪の毛に手をつける。とはいえ一旦ドライヤーかけるだけだが。

 

 まずドライヤーかけ始める前に、髪を左右両方、前の方のものをある程度掴み、カーラーを取り付ける。束の先まで持って行ってからクルクルと。巻きが左右同じ位置になるよう要注意。

 

 乾きにくい頭の上の重なりから。基本的に髪型と呼べる髪型はなく、上からロングにダランと垂らしている。そのため下手にアイロンとかをガンガンにかけてセットすることなく、櫛を入れつつ上から下へ流すのが中心だ。

 頭の上は温風をかけつつ、手でほぐしていく。それを後ろ方向、つむじの倒れるままに均等に伸ばしていく。

 

 

 そこからドライヤーを上から下へ。上側のところで軽く、ほんの軽く内に巻きながら乾かすと、アホ毛の抑制になる。

 一度濡らすと乾かし切るのに10分以上はかかる。さらに細かくやれば追加で時間がかかる。なので普段は夜でもない限り、髪に手をつけることはない。夜でも遅い時は手を抜くし、忙しい朝にできることではない。

 

 それをここでは後先の時間考えず、じっくりと髪の間を指で漉いていく。しっかりドライヤーの口先を内側に入れつつ、奥まで湿り気をなくす。あとはカーラーを外して揃える。これで頭より上は万全なスタイルに戻れる。

 

 

 

 

 それに目処をつけ、髪にヘアオイルを手のひらで塗り込む。後ろに垂らしている髪も、頭頂部に近いところも。この髪質ゆえに痛みやすいからこそ、これだけは洗うたび丁寧に行っている。

 それをじっくり整えたところには、下地で肌がもちっとしてきているのがわかる。そうして肌のノリが良くなってきたところで用意するのがファンデーション。

 

 保湿は保湿で手配したい、かつパッと仕上げなければならない時が多いから、私はパウダー派。四角いスポンジで左頬を中央から外側へ。力を入れすぎずに、かつ鏡を見ながら確実に。

 若干だが脂性肌の部分があるので、その点でもパウダーの方が使いやすい。夏場はなおさら。戦車に乗ると、通気性も良くないので汗をかきがちなのもある。

 額まで左側を塗ったら、パウダーを付け直し、反対側をじっくり。最後は目と鼻、口周りを半分に折ったスポンジで塗り込み、顔全体のバランスをスポンジで叩いて整える。これを鏡を見ながら、気の済むまでできる。

 

 

 

 ここまでは厚手のキャンバスを用意しただけの段階。ペンを片手に握ったここからがむしろ本番である。キャップを外す前に、鏡越しに顔の中央に縦線をイメージし、それをペンで代用する。

 左右それぞれのバランス、どこをどう描くか。毎回同じようで、なんとなく違う。その違いが一番現れるのは、この眉だと思う。

 画竜点睛を欠く。この言葉通り、人といい生けるものは、目と目の周りに命を宿すのだ。

 

 

 ペンの片側はぐるっと一周ブラシ状になっている。その硬めの細かい毛が生えた部分で、まずは毛並みを整える。

 自分の眉はとにかく細い。別に毛自体が薄いわけではあまりないのだが、生えている根本の範囲がやたらと細い。向きを整えるとただの線にすら見えてくる。眉毛カットの世話になることはない。

 

 まずは先ほど考えていた配置をもとに、その整えた眉の眉尻を伸ばす。同じ側の鼻の穴の膨らみの曲線、目尻、そして整えた眉尻が一直線上に来るように。眉山も今日くらいはハッキリと真ん中やや外寄りに。そして眉の毛の中も眉と同じ色で補強する。

 

 その上で眉を太めに書き足していく。とはいえ太く変に書きすぎると、それはそれでお雛様みたいなものになってしまうので、ペン先の太さと色味を見ながら、額に向かってグラデーションを描くように。メインは黒なので、ブラウン系で補強。

 最後にペン先のパウダーで全体をぼかす。特に目頭側は鼻の一番細いところ向かって指で伸ばす感じで。それでノーズシャドウの代わりにもなる。

 

 こんなところだろう。この多種多様な使い方を一本でできるペンは、持ち歩きする時もササっとできて重宝する。価格帯もだいたいが1000円超えないので、学生でもなんとか手が出るラインだ。

 

 

 

 次は本題と言ってもいい、目の周り。普段は指でサッと仕上げてしまうのだが、チップで強めの発色を目指す。

 まずは眼球の上の骨の下側、その瞼の範囲全域にベージュを広げる。裏に隠れてしまいそうな部分も、目を細め瞼を広げつつ塗る。ここにムラを作ると立体感が損なわれるので注意深く……

 そこから濃いめのブラウンを目尻側、端のみに、少しはみ出す形で引く。ここの端をあげ過ぎると吊り目に、下げ過ぎると垂れ目に見えるので、横に。目全体を大きく見せつつ、端はしっかり締める。

 そして黒目の上側はラメが入ったシャドウで縦に。光の反射で真ん中を盛り上がらせる。

 

 

 次は目の下側。目頭から目尻3/4くらい、笑った時に見える範囲まで。目のキワを少し空けつつ、そこから眼球の入るところの骨ギリギリ少し上まで。そこをある程度、特に黒目の下をピッシリとアイシャドウで埋める。

 そこから濃いめのシャドウでさっきの骨のラインを補強。これで涙袋の出来上がり。この上下の合わせ技で目のクッキリハッキリ度をガンガン高める。

 

 ここからはアイライナーに切り替え、まつ毛のキワに線を引いていく。特に目尻側を重ね塗りしておけば、最低限の形は整う。

 そしてビューラーでまつ毛をアゲる。根本から挟んでいき、順次手前側へ。まつ毛も眉毛と同様にガッツリ目立つタイプではないため、5〜6回に分けてしっかりと逆立てる。マスカラも根本からしっかりしておけば、目はバッチリ隙なし。

 

 

 鏡越しに変わっていく自分の姿。特に目が変われば、全体の印象はだいぶ違ったものになる。

 そして形作るためにじっくり時間をかけたという自負。自分で自分の好感度をアゲるには、これが一番良い。

 ここら辺のコスメ、ガチで拘らなければ、最近は地上の百円ショップ、ドラッグストアでも十分に揃えられたりする。実際高めにしてるのはアイブロウくらい。下地とかファンデとかアイシャドウとか、安めに揃えられるものは手に入れている。

 稀に艦内でも自前生産などを謳って安めなのもあったりするが、そもそも売ってる機会も量も限られているしね。

 

 

 

 

 次は先ほどのアイシャドウのうちで、そういえば一応4色割れてるのを使ってるけど、一番薄めの色で鼻の一番凹んでいる一点に塗る。ここも光らせてそり立ってるように見せる。鼻は大きく見せすぎないよう、光らせつつ影も挟んでいく。

 特に鼻の先、ここに鼻の穴の少し上、そこの溝沿いに鼻の頭に向けて濃いめのシャドウを塗る。鼻全体を目立たせつつ、キュッと締めて小さく見せる、これが小顔に見せるコツ。

 

 

 あとチークは2種類のものを使っている。頬骨の一番出っ張ったところに濃い色、その周りに薄い色を塗ってぼやかせば、血色に近づく。

 伸ばす時は水平気味に横長に、なんとなーく左右で規模感が揃えばオッケーだ。

 

 

 そして口紅はまず乾燥防止のリップクリームを、いつもに増して重点的に塗り込む。それを唇で広げてから、上にベージュ系の口紅を塗り込む。

 このリップは前実家に帰った時に、保湿として必要と言い纏めて買ってもらったものを、細く長く使っている。こういう細かい積み重ねが財布に効く。

 

 口紅は意外と伸ばしづらい。しっかりリップクリームを敷いておかないと、唇を傷つけかねない。特にこういった風呂上がりはなおさら。またそれを唇を動かして広げたりしていく。

 全体的にムラなく広がり、下手に飛び出てる範囲も無い。ただこのままだと口紅のみケバく見えるので、鏡の下のティッシュを4つに折って上下の唇で挟む。それを強めに擦り付けて、剥がして捨てる。口紅を肌に馴染ませるには、これが一番早い。

 これで全てが終わる。

 

 

 

 

 

 

 綺麗。

 

 

 その心持ちが素直に芽生える。それでよい、それがよい。

 今日の朝からの一連の動き。ここに来る準備から今の今まで。軽装なのにポカポカし、満足感が湧き上がる。そう、このためにある。

 

 化粧は服を選ぶのと似ている。人に「こう見られたい」「こう捉えてもらいたい」ということを、どうしても考えてしまうものだ。

 だがそれにとらわれすぎないで、鏡に映った自分を少しでも良いと思えるような、自分のための化粧。この先もう少し余裕ができたら、ネイルとかもやってみたい……戦車道の邪魔にならない範囲で。

 

 

 

 

 化粧を終えてその荷物をカバンに戻し、もう一度鏡の前に立つ。このときだからこそ、肌の感触は間違いない。そして化粧の乗りも。だからこそ、不安も何もない今日一日が生まれるのだ。

 

 せっかくの機会だ。目に焼き付けられる限り、見ておくとする。時たまにしか会えない友人と会う時を、記憶に残そうとするように。

 

 

 

 

 さて、この後は一度風呂に入り続けた体を休ませる時だ。出口そばのエレベーターの奥、そこにある階段を登ると、すぐ近くに休憩スペースが広がっている。

 休憩室では、カーペットの上に座椅子やクッションがあちこちに並んでいる。幸い今であれば座椅子もクッションも好きな方を選べるような環境だ。

 

 先ほどのサウナの間、昼食について思いを巡らせていたが、やはり食べないことで落ち着いた。財布と帰宅後の冷蔵庫の中身、そして近所に展開する出店の状況を勘案した上で、である。

 とはいえ汗をあれだけかいた後何もエネルギーを取らないのでは、流石に体に悪い。

 

 ということで、スペース内の自販機で甘めの炭酸ドリンクを1本購入。少し高いのはあるが、ここに居る限りは仕方がない。座椅子に座って足を伸ばし、髪を背もたれに挟んでないか確認してから、一口。

 

 

 喉を爽やかに抜ける。初手は刺激の方が強くても、次から少し振ってガスを抜いてから飲めば染みていくように飲める。

 たいしたものである。

 

 

 あとは半分ほど残しておいて、暫し休息の時。

 呼び止められるような人も事情もない。ただ座椅子の背もたれを少し倒し、首を固定して目を閉じる。

 

 寝るわけではない。化粧して寝るのは流石に論ずるに値しない。時折目を開き離れた壁を見て、また飲み物を一口。ケータイや本など目と頭を使う内容を放置して、気が向くまで暫しの休息。

 手の指先、両足の踵、腰、背中、頭の背面。接地箇所全てで力を抜く。

 

 

 

 

 

 

 

 とはいえ、鞄に入れていた課題がある。結構な時間をただの休息として過ごした後、階段近くの空いてる机で明日以降に向けての課題に取り掛かる。

 疲れなり眠気なりを抜き切った後。こういう時こそ考えるものはサクサクとスピーディーに進む。そして持参のものは全て終わらせる。

 

 この時間でも鏡を見に行けば残っている美しさ、そしてやらなければならないことの残りがない安心感。忙しない生活を送る学生にとっての至福とは、こういった時を指すのではないだろうか。

 いや、明日からの練習の準備がまだあったが、それはここからではしょうがない。

 

 

 

 その後追加で少し休むと、陽が落ちてくる頃になる。帰りにも用はあるので、流石に帰途に着くことにした。

 時間は目論見通りバスが建物の前に定時で入ってきている。バスを待つ列に並び、真ん中ほどの席の窓側を陣取る。

 また行きの道と同じく、山と海に挟まれた道を抜ける。行き先は日もほぼ落ち切った清水駅。

 

 バス降りた駅の通路反対側に薬局があるので、今日使った分とこの先分の化粧品を補充。普段と同じものももちろんだが、時折新商品が出ていることもある。

 値段と色味と相談しながら、今回はアイシャドウの5色に分かれているタイプを、境界をぼかすのに使えるだろうと買ってみることにした。

 折角なら口紅の新作も買おうとしたが、自分に合う色味のがあったものの、ちょっと価格的に厳しそうなのでやめておいた。口紅で1300は……

 

 この時間にもなるとあまりアンツィオ生らしき人は見ない。ただすでにここの品物もある程度売れているようで、売り切れのものも少しある。やはり陸上の品の方が人気は根強いようだ。

 

 ポイントカードもしっかり持参済み。そしてまたバスで港へ帰る。帰りは通勤帰りらしい人と静岡から帰ってきた学生とでごった返しているが、だいたいいつもこんなものだ。

 

 そのバスからの流れで学園艦に戻ってから、今日は少し遠回りしながら堂々と道を歩こうと思う。今日も吹いてくる海風を受けながら。

 

 気持ち。少し背筋を伸ばすのに役立ってくれるもの。

 自分の良さは自分の良さ。

 

 自分と周囲が溶け込んで曖昧になりやすい世界だからこそ、その間に2本くらいピシッと線を引く。そのための時間は、ガッツリまとめてとっておくことが必要だ。

 

 私はまた、ドゥーチェの部下のカルパッチョとして、アンツィオの一員として、精一杯動くのだから。

 

 

 

 

 

 

 それにしても、チーズの乗ったものが食べたい。

 

 

 

 





【ミカさんの一言サウナ】

『岩盤浴』

やぁ、こんにちは。今回紹介するのは岩盤浴だね。

岩盤浴とは、温められた岩盤の上に寝ることで発汗を促していくもののことだね。ゲルマニウムとかラジウム鉱石など、独自の岩盤を用いて健康作用をもたらしているところもあるよ。

特徴としては、サウナよりかは室温が低く、長時間過ごしやすいこと。また横になって過ごせるから、体がリラックスした状態で楽しめることかな。専用の服を着て入ることが多いから、浴室内を汗とかで汚しにくくできることもあるね。

サウナが肌の表面を熱していくのに対して、岩盤浴では体の深部から温めていくわけだね。どっちが好きかは人それぞれ。

この岩盤浴、比較的初心者も負担なく楽しめるものなんだけど、別料金が掛かる施設が多いんだ。今回の駿河健康ランドは珍しく別料金がないから、こういう施設で楽しむのが一番だと思うよ。


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