転生したらセブルス・スネイプだった   作:ねば

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クリスマスは思い出と共に、トラブルはフラグと共に

秋から冬にかけてはイベントが定期的にある。新学期開始から、ハロウィン、クィディッチ開催ときて、あっという間に冬季休暇に入れば旧冬至祭のクリスマスだ。そして私のクリスマスの過ごし方だが、基本的に夜は静かに祈っている。

 

そもそも私は敬虔というわけでもない割に祈っていることが多い。毎月の満月は酒盛りをして故人を偲び、新月の日は蝋燭を灯して黙祷をささげ、祭日は静かに過ごしながら夜には祈る。

 

自分でもなぜこんな習慣がついたのかよくわからないが、大抵の人間はこれを知ると「”意外”にも情け深いんだな」と言ってくる。意外とはなんだ。これほどにも情が厚い人間だぞ、私は。そして、その情が厚いゆえの結果なのだろうか。クリスマスプレゼントの数はものすごいことになっていた。

 

「…増えている」

 

目が覚めて居間に入り、見覚えのない小山を認識した途端、手に握っていたナイトキャップを取り落してしまった。

 

学生時代からの知り合い、薬屋時代の知り合い、また教職を始めてからの知り合いなど幅広い。ホグワーツは人生経験豊富な教員が多いのでこれぐらいの量をもらう人も何人かはいるであろうが、我ながら30代に入ったばかりとしては多すぎるのではないだろうか?

 

まあ、そうはいっても本当に人徳がなせるものかといえばそうではないのだろうな、という判断が現実的なのだが。特に、ここ数年で増えている教え子からのプレゼントであるが、どういうわけか主に酷いセンスの衣服が届くのだ。もしかしたらどこかのタイミングで誰かにもらった超クールなクリスマスアグリーセーターを着たのかもしれない。

 

確かに学生時代にジェームズから贈られたものを堂々と着こなした覚えはある。サンタ帽を被った蛇とクリスマスツリーがでかでかと描かれたピンクのセーターで、さらに「僕はスリザリンだ!」のテキストがあったかな。

 

あれはあれで気に入ったのでドヤ顔で当人に自慢しに行って勝ち誇ってやったのだが、翌年は「僕はスネイク!」バージョンが贈られダッシュで私からのプレゼントを顔面に叩きつけに行ったのも覚えている。『なんで“スネイク”だけは地雷なんだよ』とのリーマスからのツッコミもしっかり耳に残っているぐらいだ。

 

あのピンクの方はどこにやったかな、と考えながら明らかに衣服とわかる袋を先に取り出して中身を引っ張り出す。ぱっと見は普通にシックなデザインに見えたが、ウールのカーディガンの左胸にメッセージが書かれていた。

 

『どうして羊は雨で縮まないの?』

 

こんなもの、いったいどこで売っているのだ?

 

 

職業柄よくもらうものは本。性格を知っている者からは酒や食べ物が届くことも多い。リーマスは以前の私の助言で臨時収入が入ったらしくいいワインを贈ってくれていた。校長からは賢者の石の守りのネタが出来たという手紙の返信と、やはり本。

 

しかも『トリスタン・イズ―物語』だ。原作の例の試練を完全に覚えているわけでもなかったので、問題について『アーサー王伝説』になぞらえて作ってみたのだが…それに合わせてのことだろう。チョイスのセンスがなかなかいい。折角なのでこの日は貰った食べ物や飲み物とともに読書をして過ごすことにした。

 

何度か休憩をしつつ進めるうちに夕方になり、暗くなると蝋燭をつけて静かに過ごす。トリスタンもイズ―もとっくに死に、日付が変わるまで暖炉の前に座わっているつもりだった。そうやってどれほど経ったのであろうか。廊下から足音はしていたが、来客の予定なしに突然扉をノックされて驚いた。

 

「スネイプ先生、どうやら誰かが夜中に歩きまわっているようです」

 

かすれた声はフィルチだ。本を置いて背中を伸ばす。こんな日も仕事とはな。ご苦労様である。私も上着を羽織り、足早に部屋を出て行く。

 

「場所は?」

 

「図書館です。しかも、閲覧禁止のところでこれを見つけました」

 

フィルチは自分用のものとは別のランプを持ち上げた。学校で普及されている見慣れたものだ。火がついたまま倒してしまったのか、溶けた蝋が内側にこぼれて白く濁っている。

 

「私が見つけた時はまだ熱を持っていました」

 

「ならば、そう遠くには行っておるまい」

 

手早く部屋の鍵を閉め、フィルチを先にして近道をつかい図書館に向かう。しかし、すごいな、フィルチ。随分な年であろうに、年中城の中を歩き回っているためかすいすいと進んでゆく。すぐに図書館にたどり着き、広い中を見て回る。フィルチが廊下側で誰かを逃がさないようにし、中の確認は私が引き受けた。

 

思った通りというか、もはや人影は見当たらない。ただ、フィルチが言っていた閲覧禁止の棚の通路に蝋が散らばっている。ここにいたのだろう。多分ハリーだろうな、とあたりをつけながら入り口で待つフィルチに「見つからなかった」と伝え、周囲を少し探していなければそのまま戻るようにと言う。

 

主人公補正のかかった生徒を見つけられるとは思わない。そもそも、こんな夜遅くに生徒指導をするのも正直面倒だった。フィルチには反対方向を探すと残して踵を返す。

 

そういえば、透明マントがハリーの手元に来るのは今日か。便利だが厄介な道具が渡ってしまった物だ。ジェームズほど悪戯はしてくれないのがわずかな望みだろうか。そんなことを考えていたせいか、不自然なものに自然に目が止まり、行きでは気付かなかった半開きの扉を見つけた。

 

顔を上げると鎧がすぐ前に。前方を見ると曲がり角。自然に右手が顎に伸びて触る。数秒も考えず、開いた扉から部屋に顔を突っ込んだ。

 

「……なるほど、ここか」

 

机と椅子が窓際に寄せられた古い教室。その奥にはやけに立派な鏡だ。

 

なんだったか、たしか透明マントを手に入れたハリーは図書館で禁止されている書棚に向かう。そこでフィルチに見つかりそうになり近くに隠れた。ここで登場したのがのちの伏線になる鏡だったな。

 

私とフィルチから逃げたハリーはここに辿り着いたはずだが、すでにいない、ということで大丈夫だろうか。見つからないようにすぐに立ち去ったとは思うが。

 

せっかくなので部屋に入り込み、自分が映らない位置から鏡を見つめる。何十年も前に自分が想像したよりも細工は細やかだが派手ではない。映像でみたものよりはずっと美しいというのが感想だ。ちょっといい家柄の家にありそうな古い鏡といった風情である。

 

さーて、「心の奥底の望みを映す鏡」か。こんなもの、魔法界でもめったにお目にかかれるわけじゃない。自分の心情と言うものは自分ではなかなか分からないために覗き込んでみたいのだが、麻薬やギャンブルのように一時の気の迷いが身を滅ぼしそうな危険性も感じるな。自分の心の奥底を知るために危険を冒すべきか。だが、これを流せばチャンスはもうないのではないか?

 

首を傾げ、傾げた首を反対側に傾ける。最後には、ままよ、との気分で一歩を踏み出し、顔を上げた。

 

 

………

……………

 

……………あー…

なるほど………

 

とりあえず私は世界一の幸せ者ではないようだ。

 

しかし不思議なものだな。もちろんいつもの自分を鏡で見るのとは違うし、魔法のかかった動く写真を見るのでもない。現実と非現実があいまいで、なんとなく鏡のオカルトが多いことが分かる気がした。右手を挙げると、鏡の人間も同じ手を挙げた。無表情を引き攣った笑みに変え、手を振ってくる。こちらが手を止めると鏡側の人間も止めた。

 

黒髪に黒い目。それまでは同じなのだが、徹底的に違っていることは、偶像は若い女だった。しかし、改めて見せられると思いの外にショックである。

 

すべすべして小さな手。自分で見下ろした方はごつごつして大きな手で、血管が浮き立つ上、年がら年中薬草を煮詰めているせいか明らかに何かの色素がこびり付いている。しかし、これはこれで今の姿に当然なものであるため、実際に手だけかつての自分のものになっても気持ち悪いか。

 

「ハロー」

 

挨拶をし、名前を呼んでみる。上手く言えず、数回言いなおした。腕を組み、首を傾げる。ほどき、よっと手を挙げる。

 

「ハロー、スネイプ先生」

 

自分であり自分でない人間が目の前にいるのだ。もはや自分が呼んでいるのか呼ばれているのかよくわからない。折角懐かしい姿を見ることができたうれしさか、自分の奥底の望みを映し出されているために離れられなくなっていたのかはよくわからない。私は自分の中の戸惑いを解消したかったのか、しばらく鏡に向かって話しかけたりなどと遊んでいた。

 

…やはり、『みぞのかがみ』は興味半分で覗いていいものではなかったらしい。

 

翌朝目が覚めたとき、私は医務室のベッドにいた。

 

 

 

今回のことでつくづく学んだのだが、身の危険を感じたことはしていけないという事だ。わかっていた癖にどうしてあんなアホなことをしたのだとはおもうが、原作で見た面白アイテムだぞ。見て使って遊んで痛い目にあうべきだ。

 

しかし、私ももう若者の無条件の運は無いのでそろそろ行動を控えておこう。好奇心は猫をも殺すと言うしな。私でもダメか。

 

定期的にあうリーマスにこの出来事について、映ったものは濁して伝えたところ、彼は「最近ちょっと思ってたけど」とため息をつきながら前置きをしてきた。

 

「セブルス、君は疲れてるんだよ」

 

いくらあのクィリナスの紅茶エピソードが事前にあったとしてもだな…人の2倍人生を生きているというのに、冗談でもなく哀れっぽくこんなセリフを言われたのは初めてで、ある意味それもショックだった。

 

 

 

 

年明けのクィディッチ試合も終われば、夏の試験に向けての勉強が始まる。一般生徒にとっては進級試験なのだが、フクロウ試験、イモリ試験など魔法界で統一された試験を受ける学年もある。この結果が将来の就職先を決めてくるので気は抜けない。

 

教員たちは試験に向かってテスト作りと一緒に統一試験の予想問題を作る。そして、私の作業に追加されるのが折り鶴作り。新年から作り始め、3月頃から教室に置いておき、勝手に取っていってもらう。これをしなければ、私の私物が減っていくのだから仕方ないのだ。それに、私物が減るだけならばまだいいとしても、それがオークションに掛けられるとなると、さすがに教師として黙って見過ごすわけにはいかない。

 

この時期、私は軽く学業成就のパワースポットのような扱いなのだ。何年か祈られ続ければそのうち本当に神にでもなれるだろうか。めざせ、人間版モノリス大明神。

 

新年に入ってからは特に面白い出来事等はなかった。私はあくまでハリーとは通常の教師と生徒という関係でしかないので、いざこざに頭を突っ込まれることも巻き込まれることもない。

 

ハリーはハリーでハリー・ポッターの物語通り、ハリーが体験するいざこざに、ハリーらしく巻き込まれてハリーがハリー・ポッターに成長していることは視界の隅で確認している。

 

さて、何回ハリーと言ったかな。こんなバカな遊びをするほどに暇だった。

 

 

忙しくしているうちに冬が春になり、初夏に入り、試験期間。校長に言われて思い出した時にクィリナスを警戒していた以外は例年と変わりない教員生活を送っていた。全学年の試験が終わった日、生徒たちはようやく勉強から解放されて表情が明るい。ちょうど気持ちの良い夏日で、天気もいいので外に出ている子たちが大勢いた。

 

なぜそんなことを知っているかというと、私も外に出て日向ぼっこか釣りでもしようかと思っていたのだ。けれども、あまりにも生徒たちが多すぎるのでやめてしまった。せっかく楽しんでいるのに、無愛想な教員が水を差すなんてかわいそうだからな。気分によっては普通にぶち壊しに行くのだが。

 

外でゆっくりすることを諦めた私は、学校が終わる前に可愛い子供たちの姿を堪能することに決めて校内をうろついていた。改めて言うが私は子供が大好きなのだ。休みに入ると数か月間は大好きな子供と触れ合うことができないため、この期間にできるだけ満足しておきたいのだ。

 

遠目で集団を見たり、すれ違った子とは挨拶や会話をしたりし、これはダメだろう、というような状況には生徒指導をする。

 

そうやって練り歩いていたとき、見慣れた小さな三人組が深刻な表情で廊下に佇んでいた。仕事の山が一息ついて機嫌が良かったこともあり、彼らの様子に少々からかいたくなり、そうっと背後に近づく。

 

以前にはジェームズたちに”蛇足”と言われた私は、気配も足音もなく近づくスキルを持っている。断じて蛇に足は無いから”だそく”だとかいうのではないぞ。獲物を狙う蛇のような近づき方って意味だ。

 

「……スネイプが………たんだ。ダンブルドア先生が顔をだしたら、魔法省じゃきっとキョトンとするに違いない」

 

「でも、私たちに何ができるって……」

 

そこまで言いかけて、ハーマイオニーはハリーとロンの後ろで手を振っていた私に気付いた。彼女が息を飲んだことで男子二人が振り返り、その時には私は胸の高さに上げていた右手を下ろしきっている。

 

「こんにちは」

 

通常モードであいさつをしたのだが、相当ふざけている時ではないと声の調子も変わらない私は随分素っ気ない言い方をしていたはずだ。

 

「試験明けの晴天だ。こんな日に室内にいるものじゃない」

 

「僕たちは…」

 

ハリーはそこでどう言おうか迷っているようだった。三人で顔を見合す。

 

「残りの日数ぐらい、学校生活を楽しんでおくことだ」

 

それ以上は野暮だろうと思い、立ち去った。

 

そして、私がこのフラグに気付いたのは夜遅く。試験の採点をしている時だった。

 

 

 

昼間のフラグに気づいて間もなく、私は30秒で支度をして部屋から飛び出した。スネイプ先生が「賢者の石」のクライマックス後半に登場したかと言えばそんなことはない。それは分かっていて、本来ならぐっすりと寝ていても良いのだが、11歳の子供だぞ、子供!世の児童文学は無茶をさせすぎだ。まず入って一発目にあの三頭犬がいるんだからな!

 

抜け道を使えるだけ使いながら夜のホグワーツをダッシュした私はようやく四階の例の廊下の扉の前にいた。まずは、部屋を出る時にポケットに突っ込んできたオルゴールのネジを回しておく。ついでに音量拡大魔法で、少しだけ音の響きを良くした。これで前回みたいにドアを開けた直後に襲われるということはないはずだ。

 

扉の鍵は初めから開いていた。つまり少なくともクィリナスは先に来てるな。おじゃまします、寝起きビックリ大作戦です。そっと開いた扉の奥、ケルベロスが睨んでいた。

 

おうふ!と思ったのもつかの間、私と共に入り込んできたオルゴールの音が聞こえると、瞬く間にケルベロスは眠気に襲われたようだ。敵意剥き出しでつり上がっていた眦がさがり、瞬きを繰り返すようになったと思うと頭を垂れて座り込む。寝息を立ててグッスリと眠り込んだのを見て、部屋に乗り込んだ。さすが、弱点ということはある。

 

入口近くには巨大なハープ。クィリナスが突破に使ったものだろう。彼がすでに行ったということは確実なものになったし、ケルベロス近くの扉が開いたままになっていることも、ハリーたちグリフィンドール三人組が通過した証拠だ

 

犬の生臭い空気をかぎたくないゆえに息を止めハネ扉の中を覗きこむ。暗い。記憶によると、中にはつる状の悪魔の罠が張り巡らされている。

 

「ルーモス・マキシマ」

 

強い光の呪文を唱え、間髪入れずに足から穴の中へ飛び込んだ。

 

植物だからきっと痛くない!と思ったが普通に痛い。結構な高さから落ちても無事ではあったが、硬いツルにしたこま打ち付けて唸る。悪魔の罠は私が降ってきた打撃を食らった後、杖の強い光を前にしてするすると部屋の隅に引っ込んでいった。

 

すっかり薄くなったツルの層をまたぎながら、体中の様子を確認する。特に大きな怪我もない。もう少し自分がテンション高ければ、ケルベロスに噛まれた直後みたいにアドレナリンの作用で痛くなかっただろうに。残念だ。

 

急がなければいけないと思いだし、自分に治癒魔法をかけながら部屋の扉をくぐり、次の試練へと向かった。

 

 

 

『セブルスってあんまりリスクのあることをしようとしないよね』

 

いつだろうか。ジェームズが私に対してそんな事を言ってきた気がする。ジェームズやシリウスを筆頭に、悪戯仕掛け人たちはやや度の過ぎた悪戯や危なっかしい冒険などを好んでやっていた。

 

それはリーマスの変身に付き合うことであるし、禁じられた森への侵入、湖のマーピープルの集落に出かけていくといったものだろう。私は自分でも図太いという自覚はあったのだが、確かに楽しんで危険なことをやらかすといったことはなかった。それが彼らグリフィンドールと私たちスリザリンの越えられない壁だと当時は考えていたのだが…今になるとさっぱり分からない。はっきりしているのは、自分はわくわくした心だけでは面倒なことはしたくないのだろう。

 

扉を開け、飛び込んできたのは耳をつんざくような大量の羽ばたき。燭台の光を受けて輝く色とりどりの何千もの鍵が翼を生やして周囲を飛び回っていた。フリットウィック先生の妖精の魔法によって鳥になった鍵。それから本物を捕まえる事が試練だ。

 

動体視力、体力、運動神経はジェームズに劣らない。魔法の腕は彼に負けることはあったかもしれないが、精神力と直観力については勝てる自信があった。それでも、私が無茶をしないと言うことの理由があるとするならば、多分もう一つのせいだ。

 

いかにも使ってくれというかのように壁に立てかけられた箒を手に取る。その途端、バラバラに飛んでいた鍵たちはひとまとまりの群れとなって猛スピードで飛び始めた。それがまるで1匹の龍のように空中をうねる。

 

目的の鍵は大きく、古びた物。翼は二度扱われたせいで随分傷んでいるはずだ。群れをなして飛ぶ鍵の中から該当のものを見つけ出し、さらに正確に捕まえろというのが試練である。

 

ハリーのときもこれでは普通に捕まえることはできなかったであろうから、これは私個人バージョンということだろうか?どちらにせよハリーが無理芸当をできたのは主人公補正と言う名の神からあたえられし運があるからだと思っているのだがな。

 

前世があり、自分の能力を完全に把握していた私は、無茶をする前に運命がどれだけ味方に付くかを理解していた。だからあまり余計なことはしない。

 

鍵の天の川を見上げて組んでいた腕を下す。そもそも箒で酔いやすい私はどちらにせよハリーたちの通過方法では無理だ。それではクィリナスはどうやった?彼は彼でまたパターンが違うのかもしれないし、この鍵には魔法が通じるのかも気になるところだ。フィニートが利かない、または使えば他の鍵が一斉に襲ってくるなどもあり得そうである。

 

鍵ということで相手はすべて金属。一見脅威はなさそうだが、護身術の武器にも使える道具なのだぞ。無理に突っ込めばそれが突き刺さってくる。

 

 

ため息をついて、箒の柄を掴み、振り上げる。そういえば、箒の柄を握り、細かな枝のある先を振り回して川辺を飛ぶ蛍を捕まえる方法があったな。細かな枝に丁度虫が入り込み、傷つけることも無かったのだという。

 

飛び回る鍵の群れを見る。あれほどまとまっていたら虫取りとしてはいい的か。しかも私の近くを通るときまであると来た。

 

該当のものに近そうな鍵に目星をつけ、箒を構えてそれが飛んでくるタイミングでぶんっと振り回し群れに突っ込んでみる。

 

そのまま地面にたたきつけた箒の先には何羽か鍵が引っかかっており、急いで捕まえたものを確認した。

 

……………………………

あー、えー、ごめんなさい。実は、長々と言ってきた事は冗談だ。

 

あまりにも無理ゲーに頭が現実逃避をしてそれらしく淡々と自己ナレーションをしながら…本当はほかの解決法を頑張って同時に考えながら箒虫取りをただ何となく試してみたのだが…。見事、一発でお目当ての鍵らしきものが引っかかっている。ブルーの羽がひん曲がった銀の鍵。嘘だろーと思いながら鍵穴に突っ込んで回すと扉が開き、鍵はそのまま逃れて飛んで行った。

 

「なんというか…主人公の為の脇役の運って怖い」

 

そんなことを呟きながら、私はほぼ運だけで無事試練を通過したのだった。

 

 

 

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