転生したらセブルス・スネイプだった   作:ねば

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無気力マイペース過ぎるセブルス・スネイプとかかかわる、四人の同級生たちのそれぞれの思いで話。




無気力なスリザリン生の同級生

【リリー・エバンズ】

 

 

「おやすみ、リリー」

 

「おやすみセブ」

 

いつものようにグリフィンドール寮の前まで送ってくれたセブルスと手を振って別れた。

 

寮の合言葉を聞いちゃいけないからセブは直ぐに立ち去ってしまう。ちょっとだけそれを寂しく思いながら、彼の背中が見えなくなったら私は寮の大広間に入った。

 

「おかえり、リリー。今日も図書館?」

 

「うん、セブルスと宿題をしてたの」

 

「そっかー」

 

大広間の暖炉でお喋りしてた子達に声を掛けられて、そんなふうに答えた。

 

「前から思ってたんだけど、なんでリリーってスネイプと仲が良いの?」

 

「え?」

 

「だって、スリザリンとグリフィンドールってあんまり良い関係じゃないでしょ?珍しいよ」

 

「私たちは幼馴染みなの」

 

興味本意な質問は構わないけれど、言葉の裏の雰囲気に私はちょっとムッとする。確かに、グリフィンドールとスリザリンの仲はあんまりよくないしお互いに酷い事をしたりする人がいる。だからって、皆がみんなそうじゃないんだから。

 

「セブルスはとっても優しいし、紳士よ」

 

『えぇ~~?』

 

失礼ね。私が頬を膨らますと、ちょっと苦笑された。

 

「リリーに優しいのは知ってるけど、スネイプって喋らないし、他のスリザリン生みたいに気難しそうじゃない?」

 

「それに、体力無さそうだし。いつも寝てるか本読んでるじゃない」

 

ねーと声を合わせる子達を前に私は腰に手あてた。彼女たちはセブルスをぜんっぜん分かってない。少し自慢気に胸を反らす。だって、私にとって彼は自慢の友達なんだもの。

 

「残念でした。セブルスはとっても身軽で体力もあるのよ。」

 

それを聞いて皆、意外そうな顔をしていた。

 

ふっふーん。小さい頃から大変な家庭で育っていたセブルスは自分で色んな仕事していたんだから。毎日毎日歩いて広告を配って、屋根や木によじ登って掃除や剪定、それに、小さい子共達の世話。体力つくわよ。

 

暴力が嫌いだから分からないだろうけど、昔、彼は木の棒片手で近所の年上たちにも勝っている。 小さい子達を庇ってのことだったけど、本人はそれを良いことじゃないって思ってる所も優しいでしょ?

 

「セブルスは面倒臭がり屋で分かり辛いだけで素敵な人よ」

 

「へぇー」

 

「信じられないならいいわ!」

 

私は彼女達から顔を背向けた。自分の部屋に戻ろうとしたのに、呼び止められる。

 

「なに?」と振り返ったら「怒らないで」とまた苦笑。

 

「スネイプだけどさ。最近、ジェームズたちと仲がいいみたいよ。前まであんなに相性悪そうだったのに」

 

「セブルスは相手にもしてなかったけどね」

 

多分、犬に吠えられた程度にしか思ってない気もする。

 

「でもさ、おかしいと思わない?」

 

「思わないわ。男の子同士だもん。友達になりやすいだろうし」

 

納得できなさそうな顔に、私は悪戯そうに笑う。

 

「それに、セブルスはとっても優しいって言ったじゃない」

 

その声は、自分でもとても自信に溢れていることがわかるものだった。

 

 

 

【リーマス・ルーピン】

 

 

 

よく晴れた休日。とても良い日なのに、体調と気分は最悪だ。

 

仕方ないと分かっていても嫌なものは嫌だし、満月も大嫌いだ。最近、マグルは月に行く技術を得たらしいけど、ついでに爆破してきてくれないだろうか。この時期のイライラのせいか、つい物騒な事を考えてしまう。自分に呆れながら湖に向かうと、見馴れたシルエットがあった。

 

僕らの年代からしたら大人びている雰囲気と表情の男の子。案の定、友達になったばかりのセブルスだ。彼はどうみても手作りの釣りざおを手に、のんびりと湖で釣りをしている。側には野生の小鳥や小動物等がいて、彼は時折近くに置いたパンを千切っては投げやっていた。中には図々しい奴がいて、そのままパンをついばんでいるが。

 

なんというか、どこまでも平和な光景だ。近寄りがたいセブルスの無表情がミスマッチだし。とにかく近付いてみると一斉に小動物が逃げ出した。セブルスがこちらを見上げる。

 

「こんにちはセブルス。なにか釣れたかい?」

 

「釣れたけど一匹目は猫に取られたよ」

 

動物達が逃げたことは全く気にしていないようだ。示された場所を見てみると、セブルスの斜め後ろに手製の水溜まりがあった。相当浅いが、きっと生け簀にしているんだろう。ただ、今はなにも入っていない。

 

セブルスと並んで湖の縁に座る。眺めた湖はキラキラ光っていて、僕は目を細めた。そう言えば、セブルスがここにいるときは大抵景色が綺麗な日だ。

 

そのうちに逃げていた小動物達が戻ってくる。許可を貰って僕が餌をあげると、積極的になった鳥の何匹かはセブルスの頭や肩に停まっている。やっぱり本人は全く気になっていないようで、放っておいている。

 

……ちょっとしたいたずら心でセブルスの両肩に餌を置いたりして動物を誘導してみた。頭にはリス、右肩に雀3匹(しかもケンカ中)、左肩と腕に鳩が合計三匹。あっというまにセブルスの小動物盛りが出来上がった。

 

…………僕はいったいなにをしているのだろ…。

 

動物に埋もれたセブルスの腕が突然素早く動いた。不動の頭と肩以外の鳩二匹が驚いて飛び立つ。いつものマイペースからは想像できない機敏さを見せた彼は魚をつり上げていた。

 

キラキラと水滴を飛ばして暴れながらも軌跡を描いてセブルスの手に収まった魚は、直ぐに口から針を外されて生け簀に入れられた。

 

「リーマス、良かったら見ていて」

 

そう言った彼はまた釣りざおを湖に投げた。どうやら餌は使ってないようだ。

 

「ところで、今日はリーマスだけなの?」

 

だいたい一緒になって10分以上過ぎてからの質問だった。

 

「ジェームズとシリウスは朝から学校の廊下を素敵にデコレイトして先生に引き摺られていったよ」

 

「ああ、またバレたんだ」

 

「悪戯はバレないようにやらないと」、と言う。でも、あの二人は反対にそれだと意味ないと言いそうだ。こんなところにグリフィンドールとスリザリンの悪戯観の違いがでるけど、別に嫌なものではない。

 

「で、リーマスは参加しなかったの」

 

「体調が悪かったんだ」

 

「そう」

 

そこでセブルスがなぜか薄い色の昼の月を見上げたからドキリとした。

 

もしかしたらたまたまかも知れないと自分で自分を落ち着ける。気付けはセブルスが振り返っていた。

 

「じゃ、これはお見舞い?」

 

ブンッと腕を振り上げて釣りざおを引く。先端にはやはり元気な魚。しかも、さっきのよりも大きかった。

 

こういうのを見るたびに思うんだけどさぁ。セブルスって変に逞しいよ。

 

学校内で唯一釣りを楽しむ一年生の友人に、僕は素直にそう思った。

 

 

 

 

 

 

【シリウス・ブラック】

 

 

 

いつものように授業はつまらない。

教師たちは分かりきったことをクダクダ説明しているし、その間こっちはちゃんと聞いていないといけないのだ。

 

隣を見たらリーマスは真面目にノートを取り、ジェームズは何だか目を爛々と輝かせながら、絶対に授業に関係の無いことを書いている。

 

早く終わらねぇかな。そしたら、悪戯でもなんでも面白いことが出来るのに。

 

そう考えながらおもむろに振り替えると、スリザリンの最後尾のセブルスが見えた。しかも学年の中でも理解力が早いあいつには珍しく、相当真剣な表情だ。それに多少の違和感を覚えながら、俺は右手を顎に添えた。

 

 

「セブルス、随分熱心だな」

 

「わ、シリウス。残るなんて珍しい」

 

教室に残ってスラグホーン先生に質問をしていたらしいセブルスは、俺を見てそれなりに驚いた様子だった。といっても、エバンズがいなければほとんどの表情が変わらないこいつの感情の表れなんて言葉に出た「わ」以外には全くない。しかも、声色に気配もなし。

 

「授業終わったらジェームズとかと一目散に走り去る君が、止まれたなんて…」

 

「どういう意味だそれは」

 

「そのまま。ところでジェームズは?」

 

「いつものように走り去った」

 

即答したら「ああ、やっぱり」というような目が向けられた。

 

「あれはアレで素晴らしい瞬発力だよ」

 

普通なら皮肉にとる言葉なんだろうが、コイツが言うとただの正直な感想のような気がする。ちっくしょ。だからコイツといるとちょっとやりにくい所があるんだよな。

 

一通り会話が終わってしまうとセブルスはしゃべらなくなるため無言のまま歩く。わざわざ話を提供するのも柄ではなく、気まずい空気だ。

 

セブルスはそれについては全く気にならないらしく、魔法薬学のノートを取り出しては読み返していた。やはり珍しい姿が気になった。そう言うわけで、結局俺が話しかけていた。

 

「さっきから思っていたが、お前にしては真面目過ぎないか?」

 

俺の質問にセブルスは顔をあげた。小柄な体は少し俺より背が低い。

 

「いつもはもっと適当でめんどくさそうじゃないか」

 

「正解」

 

何故かキリッとした顔で、まるで授業中の教師のように言った。パタンとノートを閉じたセブルスは、考えるような間を持ったが、直ぐにそれを放棄した。こいつは真面目そうな見た目のくせに、その実はあまり深く考えないタイプだ。

 

「将来、魔法薬学関係の仕事につきたいと思ったんだ」

 

その返答には少なからず驚いた。俺たちはまだ一年生で、将来について漠然とした考えしか持っていない。それなのに、セブルスの答え方は何だかしっかりと先を見据えている気がした。確かに、リーマスが言うように大人びているのかも知れないと思う。

 

「ふーん。前から思ってたのか?」

 

「ううん。昨日思いついた」

 

昨日かよっ!?思わず突っ込みそうになって何とか耐える。

 

危ない、俺のイメージを壊すところだった。さすがにノリツッコミはクールじゃない。こういうのは、ジェームスの担当だ。

 

どういうわけか俺が疲れてきた。もういい、この会話で何とか持たそうと「なんでいきなり魔法薬学関連なんだ?」と冷静に聞いてみる。

 

「え?普通に魔法薬が好きだからだけど」

 

「…普通、そうだな」

 

我ながらつまらない質問をしてしまった。遠い目になり後悔していると、隣でセブルスは気になる言葉を吐いた。

 

「魔法薬と言わず毒とか薬が好きなだけだけどね」

 

………………。

……いま、もの凄く飛んでもない発言を聞いたような気がする。

 

小柄なセブルスを軽く見下ろしてみた表情は、いつものように涼しげなものだ。特に問題はない。だが、さっきの言葉は……。

 

「……薬草学とかが好きなのか?」

 

「それも好きだけどやっぱり毒かな」

 

あえて一番ハードルが低そうなものにしたにも関わらず一番触れたくないものをピックアップしてきやがった。それまではいいとするが、本当に恐ろしいのはセブルスが話しながら少し嬉しそうな顔をしていることだ。

 

はっきり言おう。エバンズ無しでスネイプの表情が変わるのはまず天変地異だ。

 

以前最後にあったのは俺たちとセブルスが仲良くなった革命ともいうべき日に一度ぐらいだろうか。それでも若干目尻がさがって口角上がった程度である。

 

そんな俺の心の恐れもいざ知らず、セブルスは生き生きと自らの趣味を熱く語る。

 

「だって、凄いじゃないか。ほんのちょっとの量で人の体に影響及ぼしたりするんだよ?触ったってなんたってないきのこ一本が、口に入ったら五臓六腑を焼きただらせて人を殺してしまうんだ。すっごく怖いよね」

 

言っていることはエグいのに本人の顔は輝いていた。

 

ここまで来ると俺は曖昧に相槌を打つしかない。わかってくれ、この状況を。目の前に闇の深い人間がいるんだぞ。入学直後に闇の魔術並べまくった件について俺たちは真相を聞いているからそれがこいつの母コレクションだったことはもう知っている。その時にセブルスは「母さんの闇を見た」とか呟いていたくせにこいつも相当じゃないか。

 

「それでさ、魔法薬学の専門職とったらなかなかお目にかかれない薬とか、材料とか手に入るだろ」

 

極めつけにセブルスはにっこりと笑った。普段は無愛想なやつにしては妙に人懐っこいような人が良いような高得点の笑顔は、俺の気持ちをより複雑にしたことは言うまでもない。

 

そして俺はこの日、そんなことをするやつではないとはわかっているが、この先セブルスを敵に回したり迂闊に口に入るものを受け取ったりしないようにしようと固く心に誓ったのだった。

 

 

 

【ジェームズ・ポッター】

 

 

 

「ほら、早く行こうぜ!」

 

「分かったから落ち着け、ジェームズ」

 

僕が振り返って促してもシリウスとリーマスは苦笑をしながら呑気なものだ。まったく。次の授業をなんだと思ってるんだ。

 

「早く行ったら先に箒に乗れるかもしれないだろ!」

 

僕の言葉に何故か二人は肩をすくめた。なんか、最近あいつらセブルスの反応に似てきてないか?

 

今向かっているのはクィディッチ競技場で、行われるのは一年生がやっと箒に乗れる飛行訓練の授業だ。一年は箒の持ち込みを禁止されているから、どれほど僕が心待ちにしていたことか!

 

ゆっくりな二人に焦れながらも外に向かっていると、適当な角でバッタリ二人組にであった。

 

「あれ、次の授業ってグリフィンドールと合同だっけ?」

 

グリフィンドールの美少女を連れながらもそんなことを言うのは我らがホグワーツの謎の存在セブルス・スネイプ。リーマスは七不思議に丁寧に突っ込んだ。

 

「そう言ってるわりにリリーと一緒じゃないか」

 

「リリーだから」

 

誰かあいつが省略してる言葉を補足してくれ。僕はだれかが願いを叶えてくれないか数秒黙っていたけど無駄だった。その間でもみんなは会話をしているし。

 

「それにしても、飛行ってどんな感じなのかしら。私もセブルスも初めてだから全然知らないの」

 

「え?そうなの?」

 

「マグル育ちだからね。皆は乗ったことあるの?」

 

「結構小さい頃に練習したりもするぞ」

 

シリウスの言葉にリリーは目を丸くした。「僕たちで言う自転車みたいなものかな」とのセブルスの言葉に彼女は少し納得したような顔もする。自転車ってなんなんだろう。

 

「でも、まあセブルスなら上手くやるかもね。高いところも平気で登ったりするし」

 

「そうね」

 

「よっぽどセンスがないとかじゃなかったら大丈夫なんじゃないか?」

 

気付けば三人がやけにセブルスを持ち上げる。本人はいつも通りの様子だけど、それはそれで逆にむっとした。

 

「セブルス・スネイプ!!」

 

僕はズビシッとセブルスに人差し指の先を向ける。

 

「人を指差しちゃだめだよ」

 

ちくしょう。とりあえず指先は曲げたけど、僕は続きをやめない。

 

「次の飛行訓練、僕と勝負だ!!」

 

「却下」

 

それは、たったコンマ数秒程度の即答だった。ちっくしょう!!

 

 

そして滞りなく始まり進行した飛行訓練も終りまであと10数分。僕とセブルスは今、それぞれ箒を持って並んで立っていた。

 

「あっはっは。どれだけ君が拒んでも神は僕たちを戦わせたかったみたいだね」

 

「神様って暇なんだね」

 

僕の勝ち誇った言葉にもセブルスはしれっと答えた。ちくしょう。

 

「いいな、二人とも。ルールは簡単。グランドを箒飛行で二周。先に言っとくが、ポッターははしゃぎ過ぎて怪我すんなよ。スネイプは飽きたからって離脱するな。頼むから」

 

僕たち二人を並べて言うのは、金髪で背が高くて若くてイケメンな飛行訓練の教員だ。

 

なんでこんなことになってるかっていえば、簡単な話、それぞれの寮で一番うまく飛べた僕たちが代表で競争することになった。

 

もともと僕はうまく箒に乗れると自覚はしていたけど、まさか一番だったとは。セブルスは最初こそ箒が反抗的だったけど、授業中には完全に手懐けて初めてとは思えないほどの技術を見せていた。

 

「それじゃあ、いくぞ」

 

教師がホイッスルを手に取り、僕たちは箒をまたぐ。ホイッスルの音が空に響くと同時に地面をけった。途端、耳元で風を切る音が聞こえる。横で僕以外の風の音がするからその方向を見れば、やっぱりセブルスがいた。表情はいつものように無表情だけれど、スピードは出ている。速い。

 

スピードとカーブに注意を払っているうちに一週目が終わる。皆の歓声が近づいて遠ざかって行った。残り半分だ。最後のカーブで内側に入ったのは僕だった。セブルスはぶつかることを避けたのか少し外側に外れる。僕はそのうちに一気に曲がると箒を強く握って最後の最後にスピードを最大にした。

 

わっとみんなの前を通り過ぎて二度目。僕は箒から飛び降りる。振り返ると、グリフィンドールのみんなが迎えに来て、すぐに僕を取り囲む。

 

「ジェームズ、スゲーよ!!すっごい速かったぜ!!」

 

「来年はクィディッチ選手だね!!」

 

皆に褒められて顔が緩む。でも、何人かの頭の向こうにセブルスが見えた。練習の時からやけに急ブレーキがうまかったセブルスは僕より随分手前で箒から降りていた。

 

いつもの無表情だからか、僕と戦ってたのに誰も声を掛けないから無言で僕たちの方まで歩いてくる。

 

「どうだセブルス、参ったか?」

 

僕が勝ち誇って右手をグッと伸ばしたけど、僕を睨んだ黒い目にギクリとする。パシッと僕の手を払ったセブルスはそのまま一人で歩いていく。なんだか心の中がひやりとする。さっきの目はもしかして───

 

「怒っちゃったのかな?」

 

リーマスが不安そうに言った。

 

僕は腹が立ってきてセブルスを追いかける。冗談じゃない。普段僕を小ばかにするセブルスにやっと勝ってぎゃふんと言わせられるところなのに!!それで僕がいい思いをしないなんて馬鹿げてる。文句を言ってやろうとセブルスの方に手を置いた時──

 

「ゲェー──」

 

木陰に立って木の幹に手を触れていたセブルスが嘔吐した。

 

 

 

 

「今回のことで気付いたけれど…僕は箒が苦手だ」

 

中庭の湖の傍。草の上に寝転がるセブルスは青い顔で結論付けた。勝負が終わって不機嫌そうだった彼の様子はとにかく気持ち悪いからだったらしい。

 

「普通に高いところならどうしてたら安全とかわかりやすいけど、箒とか不安定に浮いてるのが嫌だ…」

 

言っておくけど、今はセブルスの希望でリリーはここにはいない。なのになぜかやつが少し饒舌だ。でも、これで最初セブルスが箒になめられていた理由がよくわかった。箒は乗り手の心にすごく敏感なんだ。

 

「でも、よくこんなのであんなに上手にのれたね…。最後だってすごいスピードだったじゃないか」

 

「ああ……」

 

セブルスは空を仰いだ。なにこの穏やかな表情。騎士物語の友情キャラクターが最期を看取られるときの顔みたいじゃないか。

 

「箒から落ちて死ぬのも一興かなって思ったら決心がついて…」

 

「覚悟しすぎだ!!」

 

シリウス。ナイス突込みだ。

 

そこで僕はふと、とあることに気付く。ふーむ。セブルス本人が気づいてない限りこれはすごいことじゃないんだろうか。僕はそのすごい人らしく、厳粛にセブルスに声を掛けた。

 

「君、本当は馬鹿だろう?」

 

僕が言うと、セブルスはじっと僕の顔を見た。そして、軽く右手を挙げて差し出す。

 

「やったねジェームズ、新発見だ。これからもよろしくな、同類」

 

 

こんちくしょう!!

 

決めた、こいついつかギッタンギッタンに負かす。

そう、ホグワーツに入学して一年目のこの日。僕はとあるスリザリン生に対してそんな思いを強くしたのだった。

 

 





一年生までの話は以上で終了。
次回から上級生編です。
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