転生したらセブルス・スネイプだった   作:ねば

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オリジナルキャラクターが登場しますが、ノーネームキャラクターです。


面倒臭がり屋でも15は青春

ホグワーツ行きの特急の車両。僕はコンパートメントを一人占領して窓際で景色を眺める。

 

若干巻き毛の入った黒い髪は試しに伸ばしていて今は結んでいる。前髪も長くてセンター分け。かなり伸びた身長の成長の度に新しくしたホグワーツの制服の寮章は蛇で、ネクタイはスリザリンカラー。もうすっかり暗くなった時分のせいで映っているのは自分自身で、見る気もなくそんな姿を見ていた。

 

生まれ変わって早くも15年か。僕だってちょっくらアイデンティティに悩む年頃になった。最近殆ど忘れていたんだけど、僕はもともと前世らしきものが残ってるんだった。これまでの15年は決して短い年月では無いけれど早くも感じる一方で、以前の自分が遠い物に思えてくるほどだ。

 

……っていうか、アレは本当に僕の前世だよね?

 

何だかめんどくさくなって手の中の物を指で弾いてはキャッチする。冷たい鉄製であるそれは、もう手の温度に馴染んでしまった。そんなとき、コンパートメントの扉がノックされた。

 

「やあ、セブルス。こんなところにいたのかい?」

 

入ってきたのは茶髪で、ちょっと冴えないけれど人当たりのよさそうな顔の友人だ。僕は手遊びをするのをやめた。

 

「よう、リーマス。見つかっちゃったな」

 

言った僕はチラリとリーマスの胸元にあるバッジに目をやる。

 

「グリフィンドールの新しい監督生は君なんだ。さすが優等生。」

 

リーマスは照れ臭そうに、可笑しそうに笑った。

 

「言っておくけど、君もそうなんだよ。スリザリンの監督生さん」

 

「…………」

 

僕は手の中に握っていた物を仕方なく見る。無駄にツヤツヤした表面のバッジは間違いなく監督生達がつけていたそれだ。なぜか夏休み中に送られてきた何かである。

 

「スリザリンっていつから象徴が『めんどくさがりや』になったんだ」

 

「監督生は不満かい?」

 

「面倒臭い。」

 

「それを聞いたら同学年のスリザリン生からリンチされそうだね」

 

自分から聞いてきたくせに僕の回答にリーマスは苦笑した。

 

まあ、彼の言葉は分かる。うちの寮の奴等はちょっとでも権限を持つことが好きな連中が多い。多分命令したりするのが好きな気質なんだろうなぁ。

 

「『さあ、ひざまづくがいい。さもなくば罰則だ』とかやったらシリウスとジェームズあたり良い反応するかもね」

 

「そして始まる取っ組み合いを僕に止めさせる気?」

 

「別に僕は減点されないからいいよ」

 

監督生同士の減点は出来ないし。

 

さあ、これでこの話は仕舞いかなと思っていたのにリーマスは相変わらず突っ立っている。「どうしたの」と聞けばがっしり腕を捕まれた。

 

「なにか御用ですか?」

 

「セブルス…君は僕たちと寮が違うしジェームズとシリウスみたいに無茶はしないから自由にしていてもなにも言わなかったけど…」

 

濁される言葉に凄くいやーな予感がした。

 

「こういう役割から逃げるのはどうかと思うよ」

 

「ええー…リーマスなら大丈夫だと信じてたのにな」

 

「どういう意味だよ」

 

「君はとっても優しい僕たちの狼人間さんってことだよ」

 

「…あまり外で言わないで」

 

リーマスは声を落としてボソボソと言う。ついでにテンションも少し落ちていた。

 

「気にさわること言ったのは謝るよ。だけど、僕がめんどくさいことに自分から動くわけ無いってこと知ってるだろ?ってことで、ここは見なかったことに」

 

「………」

 

両手を合わせる僕に、リーマスは少し怒ったように腰に手をあてた。あきれてため息を付く姿に、僕はてっきり諦めたものだと理解する。

 

「仕方ないな。僕はこれでも君の為に呼びに来てあげたのに…。こうなったらうちの寮のもう一人の監督生を呼んでくるよ。……リリーは僕みたいに優しくないけど」

 

「おいまてリーマス、早まるのは良くないよ。まてって!」

 

さっさと踵を返すリーマスに、僕はコンパートメントの扉を全開にして追いかけた。

 

ホグワーツに入学してはや五年。そう、僕は未だにリリーにちょっと弱かった。

 

 

 

「リーマス、いったいどこに行ってたの?」

 

嫌嫌監督生車両に連れていかれた僕がまず始めに聞いたのは幼馴染みの声だ。気が強そうな彼女にリーマスは苦笑した。

 

「ごめん、ちょっと探し物をしていて…」

 

その探し物って僕のことじゃないよね?

 

「これから説明も受けなきゃいけないのにいきなりいなくなったらダメじゃない。まだ挨拶もしてないのよ――あら」

 

突然リリーは何かを見つけて文句を言うのをやめた。ふーむ、僕を隠していたリーマスがついさっき、多分わざと左に寄ったことと、なんだか視線を感じることから見つけられたのは僕なんだろう。リーマス、いい度胸してるよ。ほんと

 

「どうしたの、セブルス。席を私の分も取りにいくって物凄い勢いで走っていったのに」

 

不思議そうに見てくるリリーに、僕は言葉に困る。だからといって困って黙っていても仕方ないな、とコンマ3秒で思い返してポケットに手を突っ込んだ。

 

ま、このバッジ見せるのが一番手っ取り早いし。めんどくさがりやな僕の意外な出世が明らかになるまでさんにーいちーと手を引っ張り出そうとする。だけど、そこでとんだ邪魔が入った。

 

「スネイプ、一体どれだけ待たせたら気がすむんだ!」

 

ガッツリ──と掴まれる感覚が肩に。ガッシリじゃなくてガッツリ。確実に何かが食い込んでいるや。

 

妙な恐怖心と肩の痛さから予想がつくように振り返れば般若の顔が…と思ってたけどただの若い人間の顔だった。スリザリンカラーのネクタイまではチェックした。

 

「校長直筆の手紙で手綱を握れと書いてあったけれど、ホントにサボろうとするなんて…」

 

般若ではないがめんどくさい人間のようだ。うだうだ言い出したみたいだから、僕は何事も無かったかのようにリリーに監督生バッジを見せた。

 

「セブ、それって…」

 

「手違いな気がすごくするし、現実味無いけど僕も監督生かもしれない」

 

正直迷惑なことだ。…と思っていたのにバッチを持っていた手はリリーの両手に掴まった。少し視線を下げるとキラキラした顔の美少女が。めっちゃすべすべした白い手が…。

 

「すごいわセブ!私たち二人とも監督生になれていたなんて!早く教えてくれていたら家でパーティを開いたのに。セブったらずっとロンドンでアルバイトばっかりだったじゃない」

 

「ごめんね、リリー。僕が稼がないとスネイプ家は階級上がんないから…」

 

僕たちは両手を握りあって(僕が暇してたもう片方の手を参加させただけ)こんな会話。このときばかりは僕は最大限に優しい表情と声を心がける。

 

空気を読まないけど、別に読めない訳じゃない僕には各寮三学年×二人いるはずの監督生たちの視線は感じていた。やっぱり気にしないけれどね。たとえ周りがどんなに吹雪状態でも。

 

「無視していちゃつき始めるな!!」

 

突然割り込む声と人間に僕の至福の時間は邪魔された。リリーと引き離された僕はむっとしてお邪魔虫を見た。うん、どっかで見たことあるような顔だ。

 

「いきなり失礼だな。君がどこの誰だか知らないけどもっと空気読んだ方がいいよ」

 

「お前に言われたくない!!仕事ほっぽって現れないだけじゃなく、来たら来たでどんだけマイペースなんだ」

 

「自分らしく生きられることは素敵だよ」

 

「お前は自分の王国に帰れ!!」

 

どこだよそれは。ぎゃんぎゃん言う例の般若相手に僕はめんどくさく思いながらも問答していたら、いつの間にかスリザリン連中に囲まれていた。リリーはグリフィンドールに囲まれているし…。多分、僕を放置したらそれぞれの寮の仕事が終わらないということで一致したんだな。

 

うん。そんな残念な理由で、僕とリリーはすぐに引き離されてしまった。

 

 

「それで、なんで僕のパートナーは君なの?」

 

「校長が選んだんだから仕方がないだろ。はっきり言って、それはこっちのセリフだ」

 

説明が一通り終わってパートナーと車内見回り。僕の隣には残念なことに般若がいた。

 

正直リリーやリーマスとまわった方が面白かったし、苦労しなさそうだったから僕の心は残念で仕方がない。それに……

 

「監督生って各寮同学年の男女がなるんじゃなかったの?」

 

「…………」

 

相手は答えない。正直言って僕は女の子の方が男子の数倍は好きだからこの処遇が残念で仕方がない。まあ、いいけどさ…と窓際に目をやる。ガラスには、なぜか僕を横目でにらんでくる般若の顔が映っていた。

 

「私は…これでも女だ」

 

衝撃の言葉に僕はバッと振り返った。なんだか怒りを押し殺すような表情の人間は短い茶髪。うん、やっぱ一見では無茶があるがまぁ、うん。

 

「え、ごめん、スラックス派って珍しいから全然気づかなかった。ごめん、服装で男子かもとおもってよく見てなかった。名前なんていうの?」

 

まくし立てて謝る(でも無表情)に相手はやや怯む。僕の視線は状況判断のために彼女のネクタイのやや下に向いてしまっていた。まあ、たしかにそれはとても悪いことだったし、タイミングが悪くて相手もすぐさま気づいた。

 

この時僕の視線がどこにあったかはセクハラになるから言わないでおく。ただ、隣から男らしい右ストレートが飛んできたのは確かだった。攻撃を受け流したけれど壁に頭をぶつけてしまった僕は、この程度ならば自業自得だろう。

 

そう言えば般若のお面って「鬼女」だから女性か…。なんとなくの連想が一致していたのだから、僕の女性優先の無意識はもしかしたら彼女が女性だと気付いていたのかもしれない。そんなどうでもいいことを考えていたところ、通り過ぎたコンパートメントの扉がガラッと開いた。

 

「セブルスだ!」と二年生のスリザリンの少年が頭を出しながら言ってきた。それから同じコンパートメントからもその子の友人も出てくる。騒がしくなったせいか他のコンパートメントから顔をのぞかせる子が出ると思ったら笑顔を浮かべて出てきた。ただし、おもちゃを見つけた時の顔である。

 

そんなわけで、今の僕と来たら……下級生に大人気だった。

 

「セブルスーなにしてるの?」

 

「これって監督生バッジだよな!」

 

「すっげー!!」

 

「ありえねー!!」

 

「ちょうだーい」

 

……うるせー。

 

「あーはいはい。廊下にでて騒がないで。みんなそれぞれコンパートメントに入りなよ」

 

「えー。久しぶりにセブルス見たのにー。遊んであげるからさー」

 

「ボク、セブルスがロンドンのバーでテーブル拭いてるの見たよー」

 

「ボクもー!酔っ払い投げ出してた」

 

「「「相変わらずシケたとこで働いてるねー」」」

 

「黙れどら息子共」

 

僕がピシャリと言うと、下級生どもは楽しそうに笑う。横からはもう一人の監督生からの冷たい視線を感じていた。うん、「同類……」って聞こえたのは気のせいだろう。

 

とにかく、わーわーぎゃーぎゃー言う年下どもを簡単に人数確認してあしらっていたら、その様子を見かねたのか興味を持ったのか顔を顰めた知り合いが来た。

 

「セブルス、珍しく初っ端から騒いでいるんですか……って、それは監督生バッジ?」

 

「こんにちはレギュラス。ちょうどよかった。彼らの子守り権を君にあげるよ」

 

「いりません」

 

すっぱりと答えたのはイケメンの好青年。黒髪イケメン、スリザリンの彼は知る人ぞ知るブラック家の次男。つまりあのシリウスの弟だ。いや、普通に良家だから有名なんだけど。

 

「いつもはうちの馬鹿兄とその取り巻きたちと戯れている君が珍しくスリザリンにいると思ったら」と妙に長ったらしい嫌味なのか思ったままなのかを言うレギュラス。そんな顔は兄の黒犬そっくりだ。

 

さてと。いろいろぶっちゃけた話、上級生になった僕はスリザリン寮の中でそこそこ上手くやっている。というのも僕は協調性が欠片しかなくて、年上の男性は全般的に好きじゃない人間なんだけれど、年下は普通だ。

 

そして、この怠けた雰囲気が年下からすれば付き合いやすいらしくて、のんびりしていたら寄って来るようになっていた。年下になつかれるのは昔からなんだけれどね。

 

「それにしても、よく監督生なんかになれましたね」

 

「ねー」

 

「僕だってびっくりだ。というか、めんどくさい。レギュラス、バッジいらない?」

 

レギュラスに下級生たちが同意する。そんなの放っておいて僕はバッジをブラックにさしだした。レギュラスは少し顔を顰め、すぐに澄ました表情になってやんわり断る。

 

「いりません。そのうち自分で手に入れますから」

 

「そうだろうね。僕よりずっと可能性あるし」

 

その言葉に少しレギュラスは機嫌を良くしたみたいだ。口の端をわずかに持ち上げて笑う。わお、さすがイケメン絵になるな。反応は年頃の男の子だなーと思ったけどシリウスもよくやるからスルーだな、ここは。

 

「セブルス、まだ監督生の仕事あるでしょ?下級生たちは僕に任せてください」

 

スルーした甲斐ある。レギュラスは僕のめんどくさい仕事の一つを受け入れてくれた。やったね。優しい後輩の気分が変わらないうちにパートナーを連れて僕は逃げる。やっぱり呆れられた目で彼女には迎えられたけど気にしない。

 

「なんで無駄に下級生たちに人気があるんだよ、お前は」

 

「そこはやっぱり僕の人徳だとおもうよ」

 

そのときパートナーの顔は……もういうのはよそう。どうせ、わかるだろう。僕が自分で悲しくなるし。表現の感情が薄いからって別に何も感じていないわけじゃない。僕だって、多感な思春期の男の子なお年頃なんだから。

 

やってられんと首を振った彼女は仕事を終わらせるためにさっさと次の場所へ移動する。僕は肩をすくめてそれについて行こうと隣の車両へ入って行った。

 

列車は丁度トンネルを抜けたのだろう。突然、窓から見える風景が開けたものになった。まだホグワーツ城は見えないけれど、二か月ぶりに戻る学校に思いを寄せて目を細める。

 

セブルス・スネイプとして人生の分岐地点ももう少しのはずだ。今のところ原作のスネイプ教授とは僕は行動パターンも友好関係も全然違う。これがどんな風に転ぶかなんてちっともわからない。

 

「どうせなら、いい人生を過ごしたいなぁ」

 

それが全人類の望みだよね。

 

本当は前世に戻りたいんだけど。

 

ちょっぴりアンニュイな気分に浸りながら、僕は誰にも言うわけにもいかない望みをこっそりと心の中で呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

さて、監督生になってアイデンティティにも悩みだした僕だからって日頃やることが変わるわけじゃない。

 

新学期の始まったホグワーツの中庭。相変わらず昼寝を楽しむ僕は適当な木陰で、内心では故郷を懐かしむ歌を歌う。

 

あーあ。さすがに何年も経つと昔過ごした場所が恋しくなる。早く大人になりたいな、などと子供らしいことを考えながら寝返りを打った。キラキラと光を反射する湖も見えるし、やっぱりここの風景は綺麗だ。生まれ育ったすたれた街並みよりもこういう自然がしっくりと来るのは前世の記憶か人間としてのDNA内の記憶か…。

 

「セブルス、破れたり―!!!」

 

いずれにせよ大した違いはないよなぁ。

 

「ぐほぉわ!!!」

 

ドサリ。僕が横に目をやればジェームズが草むらに落ちて悶絶していた。かわいそうに。人が考え事&昼寝しているところに、木の上から木の棒を手に奇襲しようとするからだよ。

 

結果、一番簡単な対応として寝転がったまま僕は降ってきた人間の横っ腹を蹴って、ジェームズは自分の体重+僕の蹴りの勢いを人体の急所に受けて沈没。一歩間違えば僕の脚もタダでは済まないところだったがもの凄く綺麗に決まった。

 

一応は起き上がってジェームズの様子を確認する。返事がない。ただの屍のようだ。

証拠隠滅のために治癒術使っておこう。泡吹いてるし。エピスキー。

 

「くそ、卑怯だぞセブルス」

 

「うん。ソレいったいどっちの話?」

 

先に言っとくけど襲撃したのはジェームズの方だ。とりあえず安全の確保のために彼が手にしていた木の棒をもぎ取って回復したジェームズが再び襲ってこられないようにする。

 

やれやれ、ホグワーツの中も物騒だな。そう思った矢先、再び右の視界の端の草むらがざわついた。

 

「ジェームズの仇、打ち取ったり!!」

 

………………だから、いらんことばっかするからだよ…

 

視界の端から現れて襲いかかってきたシリウスのイケメン顔に、僕は反射的に手に持った木の棒をクリティカルヒットさせてしまったのだった。

 

「……どうしよう。僕の周りが死屍累々。防衛反応だけれど自分の才能が怖い」

 

「「勝手に殺すな」」

 

二人が同時に声を上げる。うん。相変わらず素晴らしい阿吽の呼吸だな。仲がよろしいようで何より。

 

騒がしい僕たちの周りには、なんだなんだと人が集まり始めていた。うわぁ、倒れる人間二人相手に武器を持って立っている僕は明らかに悪役じゃないか。スリザリンの皆さん。僕はようやく自分の寮に似合う人間になったようだよ。

 

あまり嬉しくない上に不名誉なことを考えていると、ものすごいいいタイミングで拍手が聞こえてくるのだった。

 

「お見事、セブルス。相変わらず反応いいなぁ」

 

「すごいや。二人とも一撃でやっちゃった!ジェームズ、シリウス、大丈夫かい?」

 

前者は人がよさそうな顔で案外そうでもないリーマス。後者は…えー初めて紹介します。そのうちジェームズが連れてきたグリフィンドールのピーターだ。

 

「っていうか、君たちも見ていたなら止めなよ。グリフィンドールだろ。騎士道精神どこ行った」

 

「いや、大体君は奇襲に対しての方が強いの知ってるし」

 

「あのセブルスの驚いた顔が見たいだけだから悪意はないんだよ」

 

「悪意がないならどうして僕はこんなに襲われてるの?」

 

物凄く不思議な話である。リーマス苦笑がすると、どこからともなく木の枝三本目を取り出した。そして、周りを見てからにっこりしてジェームズに近寄った。

 

「ちょっとギャラリーが増えてきたからこれからが本番だね。じゃ、頑張ってくれよプロングス」

 

ジェームズはジャンプして起き上がると、木の枝を受け取ってニヤリと笑う。

 

 

 

「ジェームズ、今日こそスネイプのあの透かした面を叩きのめしてやれ!」

 

「自信満々でむかつくポッターの鼻をへし折れよ、セブルス!!」

 

木の棒を持って対峙する僕とジェームズをわらわら集まった観衆たちが円状に取り囲む。慣れたことだけど、僕は深くため息をついた。

 

「相当嫌われているね、ジェームズ…」

 

「お前も言われているぞ」

 

「え?それって君の願望?それならあまり口にしない方がいいと思うけど…」

 

「どこまで自分に都合よく生きれば気が済むんだ、お前は」

 

ちょっと冗談めかしただけなのに、あのジェームズに三白眼で突っ込まれてしまった。悲しくなったけれど、僕は首を軽く振ってあしらう。まあまあ、これから集中しないといけないからね。一見、僕は適当そうに見られているかもしれないけれど、いつだって踏み込める状態だ。無造作に持っているように見える木の棒だって、軸腕で掴んでいてすぐに構えの体勢に入れる。

 

ジェームズが先に木の棒を構える。………うわぁ、大上段だ。あれで上手く打たれると痛いんだよなぁ。防ぐの簡単だけど。そんなに自信はない僕は無難に中段の構えをした。構えから見たら僕の方が弱そうだな。うーんちょっとここは強がってみるか。

 

「いつでもどーぞ」

 

口の端を少し上げてちょっとした挑発。ジェームズは気の強そうな笑みを浮かべて足を踏み込んだ。

 

大上段からの振り。思った通りに振りが大きすぎて隙も大きい。得物も軽いものだからスピードも遅いし。狙い放題な中から、反射的に僕は胴を打って右に抜ける。…直後に気付いたけれど、僕がやるとあまり痛くないんだった。すぐに向き直ってもう一回攻撃に入ると、ジェームズが体勢を立て直してきた。

 

はっきり言おう。ぶっちゃけジェームズはアホな奇襲をしない方がずっと強い。なぜか知らないけれど、毎回余計なことして僕の防衛反応に痛い目に遭わされている。

 

何回も打ち込んでいるけれどジェームズはそれを全部上手く防いだりいなしたりとなかなか倒すことができない。反射神経と動体視力がめちゃくちゃいいんだ。打ってこないから多分それ以上は余裕ないんだろうけど、ものすごくストレスがたまる。

 

ただ、僕だって疲れてきた。一度体勢を立て直そうと後ろに下がる。でも、攻撃の手が緩んだのをジェームズは見逃すことなく今度は向こうが攻めてきた。いやいやいやいや、入りすぎだって。

 

「ジェームズ、君こわい」

 

僕の胴体に穴をあける気満々そうな距離と勢いで木の棒を突き出したジェームズに、棒をよけた僕はそれを脇に挟んで捕まえていた。ジェームズは一瞬自由を奪われてぎょっとしてたけど、すぐに殴りかかってきた。怖えぇ。

 

「セブルス、対等にやろうぜ」

 

パンチをよけた僕に、ジェームズがなんだか殴ってきそうな構えで楽しそうに言った。いやはや。僕も乱暴な友人を持ってしまったもんだ。

 

とりあえず、僕もそれなりに動体視力は持っていると一応言っとくよ。動体視力は割と鍛えるの簡単。小さい頃から近所の子供たちとチャンバラやってたから今ではなかなか使える程度に身についていた。

 

だって、面白いじゃないか。木の棒振り回して戦う遊び。

 

「知ってると思うけど、僕は足癖悪いよ。ホントは木の棒の方が痛くないんだけど」

 

「たまには男らしく体張ったっていいだろ」

 

楽しそうに笑ってらっしゃるよ、ジェームズ君。僕も思わず笑って木の棒を放り投げる。観衆たちがさらに興奮して声を上げる。たまに賭け事してるのが聞こえているから、そいつらはあとで減点してやろう。

 

 

 

 

「で、結局今日はどっちが勝ったんだい?」

 

「マクゴナガル先生さ。ちょうど通りがかってね。上級生として、またホグワーツの生徒の模範的な振る舞いがどのようなものかの長時間のお説教が決定打だったよ。僕もジェームズも完全にライフがゼロになった」

 

場所は図書室。目の前で僕の書いた文章を点検してくれている男の子が声を殺して笑った。

彼はどっかで聞いたことある名前だなーというのがきっかけで友人になったクィリナス・クィレル。目立つ容姿ではないけれどなかなか整った顔立ちに好感が持てる。

 

クィリナスはしばらく文章を読んでいたけれど、やがてペンを置いた。「おわったよ」と僕に羊皮紙を返した。

 

「これならたぶん再提出は免れるんじゃないかな」

 

「ありがと。君のおかげで大分反省文の書き方がうまくなった」

 

そう、これはマクゴナガル先生から出された反省文だ。最近、僕はこういった文章の添削はクィリナスに頼んでいた。だって、見るからに優等生そうだったから。

 

他の荷物を鞄に放り込んで戻る準備をする。クィリナスもインク瓶の蓋を閉めて、筆記用具を片した。

 

「それにしても、君はグリフィンドールと騒ぎを起こし過ぎだよ。しかも、あのポッターとブラックたちと仲までいいんだから。…本当にスリザリンらしくないね」

 

「よく言われる」

 

僕は深く頷いた。そして、さっそく書き上げた反省文をマクゴナガル先生に提出しに行ったのだった。

 

 

 

 

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