転生したらセブルス・スネイプだった   作:ねば

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回る回る、運命は回る

さてさて、忘れちゃいけないのはホグワーツは学校ということ。そして、学生の本分は勉強でしょ。なんというか、原作のスネイプ君って頑張り屋だよね。だって、ホグワーツにいきなりペイって教職として入れられたような感じなのに、それに相応しいぐらい優秀な魔法使いだったじゃん。

 

はっきり言おう。僕には無理だ。

 

机の上には大量の宿題の山。変身術、魔法生物学、魔法史、魔法薬学、古代ルーン語、数占い、呪文学、薬草学……古代ルーン語ってなにさ!

 

僕は勉強に努力出来ない質なんだよ。アウトドア派って分かるでしょ!分かんないか、そうだよな!

 

「なにこの翻訳量。僕に死ねって言いたいの?殺す気でしょ、コレ。いっそ殺せ」

 

ブツブツと暗いことを薄暗い部屋で呟く僕。多分、いま若干目がイッている。五年生になるとフクロウ試験を年度末に受けるために授業の難易度は上がり、宿題の量は膨大になる。

正直自由の中でしか生きることが出来ない僕は酸素不足な水槽の魚状態。水槽から跳び跳ねて外に出て干からびても知らないよ!

 

「とりあえず、これとこれはシリウスとジェームズ……ルーン語……ルーン語……クィリナスはマグル学終わったかな…」

 

持つべきものは優秀な友達だよね。

 

いや、だってさぁ。苦手な内容を自分一人でやるなんて効率悪いし時間もったいない。人間にとって「時間」は限られたもので浪費される一方なんだよ。僕はできるだけのんびりすることに使いたいんだもの。穏やかな人生愛してる。

 

「そういうわけで、変身術の宿題教えるか見せて」

 

「お前、基本『そういうわけで』の中身を言わねーよな」

 

「僕さえ理解していたら問題ないからね」

 

面と向って呆れるシリウスに僕はいつものように返す。彼ははぁーとため息をつきながら大人ぶった雰囲気で僕を見る。中身はただの男子高校生なのにね。いろんな意味で。

 

「羊皮紙とかすっげー綺麗だな、オイ。少しは自分でもやろうとしろよ」

 

「えー、意味ないことしたくないじゃん。若さってものは大事なんだよ。自分が本当にやりたいことに時間を使うのが当たり前だし、やりたくないことのために時間割かれるなんてまっぴらごめんだ。な、ジェームズ」

 

「全面同意だね」

 

「ほらこう言ってる」

 

「気持ちはわかるが納得させるな、納得するな!」

 

「リーマス~シリウスが勉強手伝ってくれないんだけど」

 

「それは監督生として見過ごせない問題だよ。罰則でも言い渡したら?」

 

「まさかのリーマスからの職権乱用教唆だ」

 

思わぬびっくり発言に僕はいたく感心したのだった。

 

空き教室を自分たちの城にして僕らは好き勝手に過ごす。部屋の中には椅子や机の他にあちこちから拝借してきたいろいろなものがそろっていた。第一ジェームズは簡易なベッドに寝転がっているし、ピーターは大きなクッションに埋もれている。明らかに誰かあの有名な「必要の部屋」に行きついたな。

 

「ったく。お前も一緒にアニメ―ガスになればよかったんじゃねえか?少なくとも今の変身術の授業ぐらい余裕になるぞ」

 

「やだよ。第一僕が何に化けるんだよ」

 

「「「「蛇」」」」

 

なぜか全員で言ってきやがった。

 

「あのさ、それ呼び名考えるときも言ってきたよね。一発ずつ殴っていい?」

 

「どう考えても君の名前から蛇だろ」

 

「一字違いだもんね」

 

「黙れ犬と鼠。そして僕だけ哺乳類じゃないとか差別だろ」

 

「『蛇っておいしそうだよね』ってセブルス言ってなかったっけ?」

 

「それは了承する理由にはなりえないよ、プロングス。おいしそうだけど」

 

「鼠以外には簡単に齧られたり咥えられたりしそうだしね」

 

「甘いね。齧歯類は弱った蛇見つけると頭齧りに行くんだよ」

 

「何それ怖い」

 

ちなみに実話だ。他にも、エサ用のネズミが蛇をかみ殺したって報告もあるしね。案外蛇って、いろんな動物に食べられるよね。だからスリザリンとか死喰い人とか盛大に噛ませ役なんじゃない?ヤダ、愚痴が出た。

 

それからずっと駄々をこねていたら最終的にはシリウスは手伝ってくれた。なんだかんだ言って彼は不真面目な生徒の味方だ。あらためて周りの優しさに助けられて生きているってつくづく感じたよ。ただ、僕は自分みたいな友人とかぜっっったいごめんだね。

 

「ありがと、シリウス。今度なんかで埋め合わするよ」

 

「ホグズミードでバタービール一本」

 

「いいよ。僕が休暇中にバイトを掛け持ちして一生懸命働いてコツコツためたお金で買ってあげる」

 

「…ワザとだろ?お前それ絶対ワザとだろ?」

 

「もちのロンさ」

 

「もういい、お前を相手にした俺が馬鹿だった……」

 

「限界を知るにはまだ若すぎるよ、シリウス……」

 

げんなりするシリウスに僕が言うと、周りで残りの三人もからかい始めている。最近シリウスはなんだかすかしてきたからちょっとからかうのが面白い時期になっている。本人、あまり遊ばれている自覚ないんだろうな。だが、それがいい。

 

そのうちまたのんびりしだすと、僕らは自然に一緒にいる相手が分かれた。無駄に頭いいジェームズとシリウスはなんか次の悪戯考えはじめ、ピーターがそれにくっついている。普段から落ち着いているリーマスは僕と分担してルーン語の訳。授業同じだとこういうのがありがたい。

 

「リーマス、この単語調べた?」

 

「うん。でも見つからなかった」

 

「あぁ、また古い辞書じゃないと出ないノリか…図書館に残ってるかなぁ」

 

めんどくさ…と項垂れる僕にリーマスは苦笑する。だけど、その表情が突然険しいものになった。

 

「どうかした?リーマス」

 

「ん、ちょっと、ね……」

 

何か眉間にしわを寄せて固まってしまった友人を、僕は眺める。何かちょっと顔色悪いかもなーと思って首を傾げた。

 

「もしかして、そろそろ満月とか?」

 

「…そうみたい」

 

体調が悪そうなリーマスに、僕は大変だねーと頷いた。ホント、毎月具合が悪くなるなんてかなりきついだろう。そのまま黙り込んだリーマスを見て、僕は自分の鞄を引き寄せてあさった。

 

「リーマス、これ試してみて?」

 

「なんだい、コレ?」

 

「僕なりに人狼病の苦しみが軽減したらいいな~と思って作った薬」

 

「ええ!?」

 

リーマスはそれなりにびっくりしたみたいだ。ま、僕はこれまで全然そんなこと言わなかったし、そぶりも見せなかったから当然だろう。フムフム。なかなか味のある光景だ。

 

大体二年生のころにジェームズとシリウスがリーマスの人狼病に気付いて、少しでも病気の彼の助けになるためにアニメ―ガスの勉強を始めた。やっぱり誘われたけど、僕はそれに参加しなかった。

 

悪いけど、魔法も行動もなにもかもリスク冒しすぎのジェームズの提案は僕には無理だった。代わりに、魔法薬学関係の勉強にさらに力を入れたぐらいかな?

 

「アニメ―ガスになって満月の日の君を助ける役割はジェームズたち三人がいたら十分でしょ。だから、僕は僕なりの方法で友達を助けるよ」

 

あまりないことだけど、僕は頬杖をついてニコリと笑った。

 

 

正直な話、転生した僕はこの世界では少し浮いている。そして、転生する前の世界のほうが好きだし、機会さえあれば迷いなく戻るだろう。

 

だけど、僕はこの世界で友達になった彼らがそれなりに好きだ。前世が捨てきれない。現世で精一杯生きる気力もない。知っている『スネイプ』に成る気も毛頭ない。だけど、ここにいるのもなかなか居心地がいい。

 

だから、好き勝手生きている僕の人生がどう転ぶかがさっぱりわからないんだ。

 

「じゃあ、ちょっと試してみるよ」

 

「まだ無難な作り方だから危険性は少ないよ」

 

「それなら安心だ」

 

「うん。まぁ、小麦粉も思い込んだら万病の薬っていうじゃない」

 

「これ薬?本当に薬なの?」

 

「それは効果が出てからのお楽しみ。」

 

ただ、信じないと効能でないかもしれないよ。というとリーマスは突っ込みを入れたいが、突っ込みを入れる気力もなくなったような顔をしていた。つまり、ものすごーく嫌な顔で見られた。

 

僕はそんな友人の前で素知らぬ顔をする。

 

 

そう、彼に渡した薬は効果が出るかどうかはお楽しみなんだ。

 

 

 

 

 

素晴らしいスキルの友人たちのおかげで僕の課題もスッキリ終わり、気分も同じく軽いステップで寮に帰る。開いた扉の先の談話室ではいつものようにテロリストかぶれの思想わっほいな盛り上がりを見せているけど気にしない。

 

まあ、これが寮の特色ってやつなんだろうね。噂によるとグリフィンドールはリア充わっほいでレイブンクローは議論わっほいらしいから。ハッフルパフに入りたかったなぁ……。

 

僕はもう数年そんなわっほいには関わらずにいたからわざわざ声をかけられるなんてことは滅多にない。1年生の時に全力回避した自分偉い。おっしゃ今日も心は平和に自室に帰るぜわはは…──こんな時に限ってがっしり肩が掴まれる。

 

「ホグワーツホグワーツホグホグワツワツホグワーツ~♪」

 

「こっちが話をはじめる前に聞く気の無さを前面に出すのをやめろ!!」

 

「毎回飽きずにツッコミご苦労様」

 

我らが愛するホグワーツ校校歌を歌い出した僕に、スリザリン五年の女子監督生の顔は極めて冷たい。なんか悪いことしたっけ?心当たりしかないけど。

 

さすがの僕もちょっぴり居心地が悪くて涙がちょちょ切れるよ。全く涙腺は反応していないのはご愛嬌。

 

「それじゃ、僕はこれで……」

 

何かこのままめんどくさいことが起こってしまわないようにとそそくさと逃げようとする。だけど、そんな機転にも関わらずその後の僕は彼女に腕を取られてどこかにつれていかれていた。

 

「ちょっと来い。話がある」

 

うん、もう連行されてるよね。

 

さっき通ってきたばかりのドアをまた後ろ向きにくぐりなおす。廊下まで連れ出すと彼女は談話室への扉を閉めた。中の雑談が完全に遮られてシンとした地下牢の雰囲気が包んでいる。さっき僕が寮に戻った時と順番が逆の変化だ。

 

もともと寮の入口は辺鄙なところにあるんだけど、消灯近くの時間のせいか誰もいない。扉挟めば何十人もいるんだけど。

 

「スネイプ。ポッターたちのことをどう思う?」

 

腕を組んで茶色い目で鋭く睨んでくる彼女。うーん。どうみてもやっぱり男性だ。しかもイケメン分類。そんなこと言うわけにもいかず僕は少し視線を動かす。だいたい相手の片耳ぐらいに。

 

「そうだね、答えるならば…勉強に使ってよし、ふざけてよし、なんかやらかす時に教師たちからの目線ずらしによし、そんな素晴らしき友人たちかな」

 

嘘ではない。酷い回答ということも知っている。それでも愛にあふれた答えを返した僕を彼女は相変わらず睨んでいた。そして、もったいぶって口を開く。

 

「お前はスリザリンで監督生なのにあんな罰則常習犯の馬鹿たちと馴れ合って恥ずかしいとは思わないのか?」

 

「………いや。別に」

 

少しだけ間をあけて答えた僕に、彼女は少しだけ目を細めた。それに、笑ったようにも見える。

 

「僕はもともと誰がどの寮かとか、先生の評価とか関係ないよ。ただ気に入った人と友達になるだけだし」

 

これでこの話はいいよね、というつもりで立ち去ろうとする僕。だが、彼女はちょっと待てというようにまた僕を掴んできた。やはり肩。

 

「…どうしたの?」

 

「リーマス・ルーピンは怪しいと思わないか」

 

…なんだろう、この質問の響き…。ムズかゆいっていうか、なんか…。それでも僕はなんでもなさそうな様子で「なんで?」と聞いていた。

 

「あいつは毎月決まった時期に監督生の仕事を休むんだ。しかも、学校からでているらしい」

 

「………」

 

「ポッターたちも決まった日に揃って夜、寮を抜け出している」

 

かなーり真剣に話してくる彼女。内容はよくわかっている。ただ、なんでこうなったかを僕は面倒臭く感じながらも考えていた。

 

「ああ、僕の代わりのイベント候補者がいる…」

 

「何の話だ?」

 

思わず遠い目で呟いた僕に向けられる訝しげな視線。まあ、だからって本当のことをいうわけにはいかない僕はなんとも言えない…意味深げに見えたらいいな、っというような微笑みを浮かべていた。大丈夫だろう。なんたって外見は若かりしスネイプ教授だし。

 

「彼らがやっていることが僕や僕に関係することに害がない限り、気になんかしないよ。リーマスが出て行っているのって学校の許可降りてるみたいだし、その他も本人達が見つかった時のリスク背負ってやってんならいいんじゃない?」

 

僕はそのリスクが嫌だからやってないんだから。罰則なんてほんとに人生の無駄。

 

彼女に言った僕はそのまんまあくびをする。僕は寝るのが大好きな上、昼間は元気に学生やって、夜はさっきまで宿題やっていたんだから。やる気がなさそうに「眠いから戻ってもいい?」と聞くと、彼女はめっちゃしかめた顔で僕を見てた。

 

「君もあんまり気にせず放っておきなよ。関わってグリフィンドールにちょっかい出されても鬱陶しいし、むやみに追いかけて問題起こしたらミイラになったミイラハンターだよ。それこそめんどくさいだろ?」

 

とりあえず気楽にいこうよ、と僕は手をひらひら振って寮に帰ろうとする。でもやっぱりまた引き止められる。

 

「わかってるのか?あいつらはお前に隠れてこそこそ何かやってるんだぞ?…それでも友達面できるっていうのなら………好きにしろ!!」

 

僕の肩をぐいっと後ろに引っ張ってからスタスタと寮に入っていく彼女。勝手に自分でいって勝手に怒っちゃったことに「あらまあ」と呟き、僕は一人になった廊下で肩をすくめた。そして、右手で首の後ろの髪をかきあげた。

 

「……別に、僕は仲間外れにされてるわけじゃないんだけどなぁ」

 

彼女の勘違いではあるけれど、多少は僕のことを気にかけていそうな言葉だった。まあいいかと自分で折り合いを付けると、僕はのんびり自分の寝床を目指して戻っていったのだった。

 

 

 

 

 

 

いつもの朝食の席。僕は今朝見た夢について考えながらシリアルをつついていた。

 

テテッテッテテ テテッテテッ♪(死亡音)が耳に残る、かの名作『スーパーマ●オブラザーズ』。緑のキノコがジャンプして隙間を飛び越えたり、バグでおっさんが地面にめり込んだりするゲームだ。こうやって夢で見てしまったから久々にやってみたいんだけど、大きな問題がひとつある。

 

「…発売…1985年だよなぁ…」

 

ちなみに今は1975年。つまりあと十年は待たなければいけないのだ。そんなバカな…。

やりたいのは10年後じゃなくて今なのに。転生後、今、最も過去の世界にいることに絶望しているかもしれない。

 

「セブルス、さっきからどうして難しい顔をしてるんだい?」

 

「変なもの食って腹でもこわしたか?」

 

心配するピーターにおちょくってくるシリウス。僕はシリウスの言った内容に少し目を細める。

 

「まさか。森で拾ったどんぐりを食べたぐらいさ」

 

「ほんとに食ったのかよ!!」

 

ズビシッと突っ込んでくるシリウスは無視。

 

「確かにリスとかうまそうに食うよな。実際うまいのか?」

 

「灰汁が強い。美味しいって言ったら食べそうな言い方してるけど、ジェームズ。君は一応良家の出身でしょ?」

 

どんぐり食べるのってどうなのさ。

 

今日は自分の寮のテーブルじゃなくてグリフィンドールの席についている。もちろん彼らがスリザリンのテーブルにくるワケなんかないからね。いや、だってさぁ。なんかスリザリン寮ったら今日も今日とてテロリストわっほいなんだもん。誰かあの犯罪者予備軍たち止めてよ。

 

ヴォルデモート卿を崇めても良いことないよ。見た目だってパルパティーンから鼻を消したみたいな感じで嫌な予感しかしないじゃないか。…とか考えながらも本心ではどうでもいいし、スター〇ォーズもまだ公開前である。結果、前世に思いを馳せた僕が勝手にダメージを受けることになった。ちょっとこの負の感情有効活用したくなってきた。

 

「おはようセブルス」

 

後ろ斜め上からかかる声。それは僕が聞き間違えることなんて絶対ありえない、澄んでいて愛らしいものだ。ダークサイドの心棒者の気持ちが分かりかけた心が一瞬でライトサイドに戻ってくる。

 

「おはよう、リリー」

「おはよう、エバンズ」

 

何も僕が二回言ったわけじゃない。単に僕が振り返ってリリーに微笑みかけると同時にジェームズも同じく後ろをむいて挨拶をしたんだ。彼女は元気に挨拶したジェームズにちょっとむっとしたような顔をする。それでも、「おはよ」と挨拶を返した。

 

「セブ、今日はこっちに来てたのね」

 

「なんか寮のほうが騒がしいからね。いやー、みんな今日も元気だよ」

 

遠い目をして言う僕にリリーはクスクス笑う。別に何か狙った訳じゃないんだけど…。ま、問題も全然ないよ!可愛いはジャスティス。

 

「あら、今日はリーマスはいないのね」

 

「月一回の家族面会日だよ」

 

「今回も体調が悪そうにな」

 

ジェームズとシリウスがなれた様子でしゃあしゃあと嘘をついた。リリーは直ぐに心配そうになる。

 

「やっぱりそうなのね…。あまり家族と仲良くないのかしら…」

 

ほんとに気にかかっているらしい。リリーは優しいなぁと頬が弛む。

 

「大丈夫だよ。リーマスの家族関係は良好だから。リーマスもシリウスと違っていい子だし」

 

「悪かったな不良息子で」

 

「だから心配しないで」

 

「聞けよ」

 

「たぶん可愛い従姉とかいて逢うの緊張するんじゃない」

 

わざとシリウスの言葉を無視する為に長くした台詞だと気付いたのだろう。ブラック家の不良息子はガックリと項垂れた。ピーターはそれに困ったように笑っていて、ジェームズはリリーにキメ顔するのに忙しくて相手にしていない。

 

早く帰ってきてあげて、ムーニー。

 

こんな楽しいシーンだけどリリーの顔がちょっとしかめられたものになっている。なんか気になることあるのかな。

 

「ねぇ、前から思ってたんだけど…もしかしてセブは可愛い子が好きなの?」

 

「うん大好きだ」

 

ほぼ即答だ。リリーは難しそうな表情で「そっか」と呟いて女友達の所へといく。

 

その後ろ数歩をジェームズがついていって「僕にとって一番はエバンズだよ!」と「だから今度デートしよう!」って言ってるのが聞こえた。もちろんあしらわれてたけど。そして帰ってきたジェームズは軽く気落ちしていた。

 

「スネイク…。君の幼馴染みが冷たいよ」

 

「興味ないんじゃない?それと蛇やめろ」

 

「追い討ち掛けたらダメだよ、セブルス!」

 

ピーターからの突っ込み。え、止めって刺すもんでしょ?と聞けばジェームズが「慰めろよ!」と半泣きで叫んだ。

 

「えー。だって僕のかわいいリアル天使に手を出そうとするんだもん。異端審問並だよ、これは」

 

「こわっ!」

 

幼馴染みの横暴だ!の叫びに手をヒラヒラ振って冗談だと答える。「まあ、頑張りなよ」と結局は軽い応援を掛けてやった。

 

さて、その間おいてけぼりのシリウスはと言うとテーブルに肘ついた右手の先に顎を乗っけてニヤニヤ笑いながら僕らを見ていた。

 

「どうした、パッドフット?妄想は自室に留めた方がいいぞ」

 

「…最近セブルスの発言うつってないか、ジェームズ」

 

「だって僕らはストッパーをクラッシュするコンビだからな」

 

イェーイとジェームズは楽しそうに、僕は無表情で片手ハイタッチをする。シリウスは崩れた。不良少年破れたり。

 

「もうお前ら好きにしろ……だけど、ジェームズとピーターは後で今夜の計画練るからその時はふざけんなよ」

 

「りょーかい」

 

「いや、セブルス。君は呼ばれてないから」

 

「ノリだけでも参加させてよ」

 

さりげなく寂しい突っ込みをされながらも何だかんだ年頃のバカを朝っぱらからやっている。

 

そんな中、あのスリザリンの女子監督生がこっちをみていることに僕は気付かない振りをしていた。

 

 

 

 

さてと、そう言うわけで満月の夜だ。

 

今日は悪戯仕掛人たちは月一のイベントだから暇な僕は監督生用大浴場を堪能してから早く寝るつもりでいた。

 

監督生になって良いことはのんびりお湯に浸かるお風呂が使えることだよね。寮のは原則シャワーだし、時間制限厳しい。

 

さっぱりした体で寮に戻る。何時ものように雑談がうるさい中、僕は思い立って掲示板を見に行った。

 

「…………あ、やば」

 

適当に見た中の監督生用掲示。今日の見回り担当は僕になっていた。

 

監督生の見回りは寮によって方法は違う。学年によって分けたり、男女で分けたり、一人の交代制だったり、希望の人が毎日回ったり…。スリザリンは多くある学年別方法だったけれど、ほとんど僕のせいで個人順番見回り&希望者になっている。

 

僕だってそこまで不真面目な訳じゃないのにね。お風呂は気に入っているし。だから僕の参加の日は大抵少な目で、誰か都合が付かない日に申し訳ない程度に入っているに過ぎない。

 

さすがにそれは無責任だからパートナーが入っている日に自主参加して、例の男前の女の子も僕が担当の日に一緒に受け持ってくれる。どうせ見回りは一緒に行く訳じゃないし。

 

それにしても、今日入っていたっけ?と目を細める。大体は張り出される頃に目を通しているし、満月の日は覚えていそうだけど。上級生とかテストでも近いのかな。

 

そう簡単に納得をして取りあえず時間まで自室に戻ることにした。

 

 

 

廊下が暗いよー。幽霊が通るよー。怖いよー

 

…何を言いたいのかと言うと、とにかく暇なんだ。

 

いやー暇。夜の一人校内散歩はまあ、楽しいけど消灯近くは監督生が鬱陶しいから皆いなくなるもんな。腕時計を見ればあと10分位残っている。

 

僕は考えた。考えた。

 

「よし、帰ろう」かなり怠惰を優先にした判断だった。

 

帰ったら~古代ルーン語の単語復習~。実際自室に戻ったらしないかも知れないけれど~。

 

「セブルス!やっと追いついた……」

 

……浮足立ってスキップしかけていたところに声が掛けられちゃったよ……

 

少し悲しい目で振り返ると息を切らしたジェームズがいた。手にはあの無駄に高性能な「忍びの地図」が握られている。言葉通りだとしたらわざわざ僕を探しだしたのかな。

 

「どうしたの?こんな時間に」

 

死にかけている友人を配慮して僕が近寄って前屈み気味のジェームズを見下ろす。ついでにベベベベベベベと背中を連打しておいた。

 

「せ、セブルス。とにかく一緒に来てくれ」

 

「夜中デートは全力拒否」

 

「そうじゃなくて!」

 

「冗談だよ。もちろん説明してくれるんでしょ?」

 

あのジェームズが焦っているんだからなにか大変な事だとはすぐに分かる。彼が来た方向へ向かって僕は早足で歩き、ジェームズも直ぐに体を起こして前に進み出る。

 

「で、結局どうしたの?」

 

「…君の相方の監督生が今日、リーマスをつけて『叫びの屋敷』に来るかも知れない」

 

「なんで?」

 

どうしてそうなった。

 

「最近あいつ、結構しつこくリーマスのこと探っていたんだ。シリウスがついにイラっときて、暴れ柳の通過の仕方を教えたんだ」

 

「あら、どっかで聞き覚えのある話」

 

どこでこんな話あったんだろうね?よりによって僕がいないうちにそんなやりとりをするなんて。

 

「地図を見たら外で隠れてるみたいだ。僕やピーターだけじゃ聞き入れてくれるか分からないから君が連れ戻してくれ」

 

なるほど、そう言うわけで僕が呼ばれたんだね。

 

ジェームズが腕時計を確認する。「今から行けばリーマスが変身する前に間に合う」との言葉に僕は少し引っ掛かった。はて、変身時間、変身時間……。

 

「ジェームズ、まずい、間に合わないかも知れない」

 

「は?」

 

「いいからBダッシュだ!」

 

なんだよそれ!と後ろから声が聞こえるか知ったことか。一応ジェームズの走ってる足音は聞こえているから問題ない。このとき僕はただ、思い当たったことが悪い結果を起こさないことを珍しく神に祈っていた。

 

さて、正直に言って、僕は人狼病を発症したリーマスを見たことはない。ジェームズたちのアニメーガスに付き合わない僕にとってそんなことは危険だと分かり切っているからだ。それでもリーマスの変身の過程やその他もろもろについてはみんなから聞いていたからよく知っているつもりだ。

 

そうだ、それで僕は僕なりにリーマスの病気の助けになるようにした。リーマスの病気の一番の辛さは満月から隠されているせいで長くなる変身の苦しみによる。だから僕は考えた──変身時間短くなれば緩和されるんじゃね?

 

「何やってんだぁぁあほー!!」

 

「僕がやったこと単体は別にそこまでいわれることじゃないよね?」

 

悪いのはそれを悪い方向にもって行こうとしたやつだ。

 

「って、ことはやっぱりリーマス、あれ飲んでくれたんだ」

 

「お前が害はないって言ったから試してもおかしくないだろ?」

 

「シリウスなら絶対口にしないよ」

 

寧ろ問題を引きおこした人間がこれってどうよ。僕が考えるに、シリウスの方が絶対慎重な性格じゃないのに。わかりきったことか。

 

僕とジェームズは走りながら傍から聞いているにはかなり緊張感のない会話をしていた。だけれど、僕たちは別に本当に緊張していないわけじゃない。かなーり、やばい現実に冷や汗たらたらものだ。それでもこんな会話ができているんだから、これはきっと僕たちが度胸の据わった大物だってことだよね。ごめんなさい。

 

校庭を横切って暴れ柳の前までくる。柳は僕たちを威嚇するように体を震わしたけれど、慣れたジェームズは寸分違わず例のコブに向かって呪いをぶつけた。柳はまるで急所を突かれたかのようにギクリとすると、そのままへなへなと枝を下ろす。

 

「そんなに簡単に止められるんじゃ、これを植えた意味がなくなるんじゃない?」

 

「今ここで時間を喰うほうがもっと問題だろ!」

 

まあ、そうなんだけどね。僕はつぶやきながら穴に体を滑り込ませた。

 

 

 

「…………………」

 

通路はジェームズを置いて僕だけで進んだ。ジェームズが僕を呼びにきたように、ここからは僕の仕事だからだ。

 

……… と、言えたらカッコいいんだけれど、これが、実はついてきているんだよなー彼は。透明マントに入って。どこに彼女がいるかわからないから、全然話しをしなくなったけれど。

 

こうやって狼リーマスの脅威から助けられるのは本当は僕で、助けるのは後ろのただのストーカーなのに、世の中はどうなっちゃったんだろう。絶対、僕が僕だから余計台無しになってるってことだけはわかるよ。

 

心の中では男性を狼比喩する某歌を思い出しながら心を明るくしながら進む。ほとんど『叫びの屋敷』に到着しているところに彼女はいた。彼女は緊張しているのか、恐る恐る進んでいて僕にも気づいていないようだ。僕は足音を立てないように急いで彼女の後ろを追いかけた。

 

「こんばんは。ご機嫌いかが?」

 

「う、わっ!スネイプ?どうしてここにいるんだ!?」

 

「気分?素敵な散歩コースじゃない、ここ?」

 

はっきり言って嘘である。分かりやすい内容だから驚いていた彼女も既に顔を険しくしてる。

 

「というのは冗談で、とあるところから君が校則違反に乗り出そうとしているって聞いたから、僕の身を犠牲にしてまでストーカーになったんだ。素敵でしょ?」

 

「何がだ!?」

 

「何かが」

 

僕はあまり意識せず微笑んだ。

 

「早く寮に帰ろうよ。今なら少し遅れても見回りをしてたってことでごまかせるしおとがめはないよ」

 

僕の言葉に彼女は顔をしかめる。少し悩んでいるようだ。

 

敵対するグリフィンドールの鼻を明かしてやりたいという気持ちと、僅かに彼女が気づいている、今やっていることのくだらなさについて考えているんだろう。仕方がない、少し選択のお手伝いだ。僕はまた一言、「帰ろ」と呼びかけた。

 

彼女は確かに帰る方に決心が傾いていた。実際、何もなければ僕の言った通りにしてくれていただろう。でも、これがまたタイミング悪くリーマスの変身のうめき声が聞こえてきた。

 

「なんだ、今のは?」

 

「ダメだ!」

 

屋敷の方に行こうとする彼女の手首を僕は掴む。彼女は目を見開いて僕を見たけれど、気づいてしまったようだ。

 

「…お前は知ってたんだな?」

 

「……」

 

「知っていて、私に隠そうとしているのか」

 

「…そうだよ」

 

僕は彼女を掴む手に少し力を入れた。

 

「それが、みんなにとって一番いい選択だから」

 

だから、帰ろう。そんな僕の言葉は聞き入れられなかった。彼女は僕の手を振り払う。

 

「じゃあ、お前も所詮ポッターたちの共犯だったてことだ!?」

 

「僕はなにか犯罪をしたつもりはないけど」

 

「うるさい!」

 

「私は絶対お前たちの秘密を暴いてやる!」と彼女は屋敷への残りの道を走り出す。僕は一度、ジェームズがいるであろう方向に軽く謝ってから彼女を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

あれから数年が経った。

 

 

あの日、彼女は結局変身したリーマスを見てしまった。私が作った薬のためにリーマスはいつもより早く変身してしまったためだ。

 

子供とは言え、十分に危険な狼人間を前に彼女はすくみ、追いかけた私は我ながら意外にも彼女をかばった。彼女は片側のひざ下のズボンが破れて、私は左腕をリーマスに引っ掻かれ、その傷が未だに残っている。

 

幸い、追いかけてきたリーマスをつい蹴飛ばしたために怯ませることができたことと、ついてきていたジェームズと、屋敷にいたシリウスが変身してリーマスを止めてくれたおかげで誰も噛まれることなく大事に至らずに済んだ。

 

正直、今でもこの程度で済んだことは奇跡ではないかと思う。

 

そう、これが私と妻との馴れ初めだ。

 

 

学校を卒業したあと、私はかねてからの希望通り魔法薬を扱う仕事についている。基本は魔法薬を作ることで、時間があれば新しいものを作ってみたりもしている。卒業してすぐはそういった店に勤め、少し早いが最近独立したところだ。

 

リリーはジェームズから長年アプローチを受け続け、最終的にはそれを受け入れた。リーマスとシリウスはしょっちゅう、私が鈍いせいでリリーはジェームズと結婚する羽目になったと言うが、私は二人の方がお似合いだと思う。なんだかんだいって二人はいい夫婦だ。

 

学生時代のグリフィンドールの友人たちは、例のヴォルデモートに対抗する「不死鳥の騎士団」に属した。これのおかげでフラフラしているシリウスがなんとか身を置けているのではないかと思ったのは内緒だ。

 

「あら、こんにちはセブルス」

 

「こんにちは、リリー。相変わらず綺麗だね」

 

すっかり素敵な女性になった幼馴染と軽くハグをして挨拶する。すると、私の声を聞いてか家の奥からジェームズまで出てきた。

 

「セブルス、いい加減人の妻を口説くのやめろよ」

 

「綺麗な人に綺麗だといって何が悪い。心配しなくとも私にももう妻はいる」

 

「でも、君は油断できないよ」とジェームズは肩をすくめた。私たちはそんなことは気にしないが。

 

「さあ、セブルスも中に入って。今日はリーマスとシリウスも来てるのよ。ピーターはちょっと来られないみたいだけど…」

 

「大丈夫。もともとリリー以外は興味ないから。二階に上がっていればいいんだね?」

 

リリーは私の言葉に笑って答える。私は以前は空き部屋だった子供部屋へと向かった。

 

「セブルス、相変わらず君はリリーがいると僕らは眼中にないんだね」

 

「もちろん。男どもに興味はない」

 

先に部屋にいたリーマスとシリウスが迎えてくれる。シリウスは呆れ顔、リーマスは苦笑いを浮かべていた。

 

「まったく、よくそんなので真っ先に君が結婚できたよ」

 

「私と妻は互いに理解者なんだよ。結婚なんてそんなものじゃないか?」

 

「僕には未だに君が彼女と一緒になったことが理解しがたいんだけれど?」

 

「そうか?」と聞き返しながら部屋の奥へと進む。そこにはベビーベッドがあって、何か小さなものがいた。

 

「はじめまして、ハリー。私は君のお母さんの友達だよ」

 

あの物語の小さな英雄に話しかける。まだ外の世界を分かっていない丸い緑の目が見つめていた。その小さな手に人差し指を握らせながら、微笑む。

 

「目がリリーそっくりなんだな。女の子ならなおよかったのに」

 

「目以外はジェームズによく似ているぞ」

 

「女の子ならよかったのに」

 

「セブルス……」

 

考えを譲らない私にリーマスは呆れたように名前を呼ぶ。「本心だけど、冗談ということにしとこうか」と僅かな譲歩をして私は小さなハリー・ポッターを抱き上げた。

 

 

 

その日家に帰ると、妻は少し機嫌がよかった。その理由が私には最初わからなかった。

ただ、ソファーに並んで座って、となりの妻の膝に手を置く。

 

学生時代に女子でありながらスラックスを履いていたために男子とよく間違われた妻。この手の下には彼女の生まれつきの傷がある。今でも隠すようにロングパンツやロングスカートを着用しているが、髪を伸ばした彼女はもう男のようには見えない。

 

「何か嬉しいことがあったのか?」

 

「ああ。多分、セブルスにとってもね」

 

答えて彼女は楽しそうに笑う。そして、彼女は自らの左腕を触った。私は彼女の膝にあった手をその左腕に移す。そこになにがあるのかを知っているが、私は決して見てはいけない。それを見れば私は昔からの友人との関係か妻との関係を絶たなければならなくなるからだ。

 

私の左腕には闇の印はなく、代わりに狼人間の残した傷がある。私は不死鳥の騎士団にも属していない。私には妻がいる。

 

妻の左腕を優しくなでる。私はここに何があるかをしらないことになっている。これは、私と妻との共通の秘密だ。私は妻が何をしているかしらないことで、妻が何をしているか私に隠すことで成り立つ幸せが今だった。

 

そうだ、私はあのセブルス・スネイプとは違う。それが何よりも嬉しい事だった。そして、私はそれから逃げきれると思っていた。

 

後に、私は自分の考えが甘かったのだと思い知ることになる。

 

 

この後まもなく、私はホグワーツの「魔法薬学教授」となるのだから。

 

 

 

 




子ども時代~青春時代編終了です。
次回からスネイプ教授編になります。
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