多重転生、7人目   作:強炭酸。

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思い出す

「…………」

 

 

相変わらず"記憶を取り戻す瞬間"というのは好きになれそうにない。

ドロドロと私の頭の中に別の人の記憶が雪崩の如く流れ込んでくるあの不快な感覚。だが、流れ込んでくる記憶は間違いなく"前の私"の記憶であるから、正確には別の人の記憶ではない。

私は転生というものを繰り返している。しかも記憶を保有したままで。最も、その記憶を取り戻すのには少々時間がかかるけれど。だけどそれは必ず10歳になるまでには私の元にかえってくる。

 

それなのにどうして今回は10歳を過ぎてから思い出したのだろう……?

 

 

「はあああ……」

 

 

私は恐らく今世の中で一番大きく、そして長いため息を吐いただろう。記憶を思い出したことはさほど大きな問題ではないのだ、だってもう慣れてしまっているから。

問題は、今私がいる世界のことだ。この世界はとある漫画の世界。どこかの世界では2次元、アニメの世界だったところだ。

 

まだ学校に行くまでに30分ほど……まだ、じゃなかった。中々に時間がない状況だった。

ちょっとの焦りを胸に、ぱたぱたと家の中を小走りで移動しながら学校へ行く準備をする。

 

 

「ふう。そろそろ行こ」

 

 

家を出るとき、カーディガンなど何か制服の上に1枚羽織ろうとしたが、テレビから流れる天気予報と、試しに開けた窓からわかる気温から、そこまで寒くなかったことがわかったので、上には何も着ずに、玄関の方へ向かい履きなれたローファーを履いて外に出る。

そろそろ肌寒くなり、1ヶ月もしないうちに雪がちらつき、完全に冬になる今日この頃。私はやっぱりカイロくらいは持ってくるべきだったかなとちょっと後悔しながら学校に向かっていた。

 

 

「キャー!」

 

 

朝から悲鳴、ではなく女の子の黄色い声が無数に飛び交っていた。それは私の背後からで、そこには195センチもある大柄で、改造した学ランに身を包んだ男がいて、たった今黄色い声を上げる女の子たちに向かって怒鳴っているところだった。男は私に気づくと、少々早歩き……いや、ただちょっと大股で歩いて私の方に向かってくる。この男……足が長いから一瞬で私に追いつきやがったわ。

 

 

「おはよう、承太郎」

 

「…はよ」

 

 

私が承太郎、と呼んだこの男こそ、何を隠そう今この時代の"ジョジョ"である。

…ジョジョの奇妙な冒険、そこそこに危なくて、人が死ぬ漫画である。何ておっかないところに転生してしまったんだ。きっと神様がいるのならかなりの享楽主義なんだろうな。会ったことはないので知らないけど。

 

まあ、そんな世界に転生してもひっそりと暮らせばいいし、うっかり主人公と仲良くなってしまっても必要以上に関わらなければ少なくとも私の命は保証されたことだろう。

だけど、だけどね? 私は主人公である承太郎の幼馴染として今の今まで過ごしてきたし、私は生まれつきのスタンド使いだ。

トドメは私がツェペリの血筋であることだ。……いや、ちょっと設定盛りすぎじゃない? いくら私が100や200の回数転生を繰り返した多重転生者で痛覚がほとんど死んでるとはいえ、流石に死ぬのは嫌。

 

でもなぁ……、ツェペリ家って巻き込まれ体質だったよね。波紋に関しては身近な親族に会得している人間がいないことに加えて教えてくれそうな人も知らないから現時点では完全独学のポンコツ波紋しか使えないんだよね……見様見真似というか、ちゃんと学びたいなぁ。ジョセフさんに言ったら教えてくれるかな……でも私がツェペリの血筋って教えるのがなんだか酷というか、すでに知っているならいいけどもし知らないのなら…知らないままの方が……

 

 

「ハル?」

 

「んっ、なに?」

 

「いや、話しかけても返事がねぇからどうしたのかと思っただけだぜ」

 

「少しぼうっとしてただけだから。カイロ持ってくればよかったな、とか。それだけだよ」

 

「ならいいが……」

 

 

あれ、そういや承太郎ってもうスタンド能力身に付けてるんだっけ……? 不良ブチのめして数日拘置所に入れられるからまだ、かな? まだギリギリ原作、3部は始まってないのか。

 

 

「おい、本当に大丈夫か? 具合が悪いんなら大人しく家に帰った方がいいんじゃあねぇのか」

 

「大丈夫だってば。心配なら私のでこにでも触って熱があるか確かめてみたら?」

 

 

と言ってみると、承太郎はすぐにぴとりと私の額に触れ、熱がないことを確認する。

 

 

「……なんかあれば言えよ」

 

「わかってる」

 

 

記憶を取り戻す前からどうも私はお転婆、というかもはや無茶しすぎるただのアホだったようでこのように承太郎が過保護になってしまっている始末である。著しいキャラ崩壊が起こってるがまあ、もう私という一人のスタンド使いが空条承太郎の幼馴染なのだからそんなことは知らん。これからも様々なフラグをブチ折っていくつもりである。

 

余談だが、記憶を取り戻したことにより途端に高校の授業が色々ヌルゲーになってしまったので留年しない程度にサボるようになった。あ、流石に授業をフケるのはまだ片手で数えられるくらいしかしてない。授業中の居眠りとかが増えたって話。

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