「やっとシンガポールに着いたか」
「今夜はホテルに泊まって、これからのエジプトへの進路を決めるとしよう。よし、あのホテルに泊まろう」
「ジョセフさん、アンちゃんはどうするんですか?」
「む、まだいたのか……おい、オヤジさんに会いにいくんじゃあなかったのか?」
「俺たちにくっついてないで早く行けば?」
「フン! 5日後落ちあうんだよ。どこ歩こうがあたいの勝手だろ」
「…ジョセフさん、どうにかなりませんか?」
「しょうがない、ホテル代を面倒見てやるか。遥花、連れてきてくれ」
「はぁい」
アンちゃんのほうに行き、声をかけると、嬉しそうに表情を変えて私の服を掴んだ。懐いてくれて正直嫌な気はしないかな。
ホテル内に入り、フロントに向かうと今はシーズン真っただ中で、部屋数が限られており、尚且つ全員がばらばらになってしまうと言われる。
「では部屋を……わしとアヴドゥルでまず1部屋」
「僕と承太郎でもう1部屋を、学生は学生同士ということで」
「えぇっなにそれ! 私ハブじゃん! 仲間外れ良くない!」
「そ、そういうつもりは」
別に気にしてないから大丈夫だよ、からかっただけ。と笑うと典明もごめんと同じように少し笑いながら謝る。
「となるとあとは……遥花と彼女で1つ」
「待ってくださいアヴドゥルさん」
「どうした?」
「私たちと一緒のホテルなのはまだしも、部屋まで一緒にすると危ないんじゃないかと……」
「だが私たちが1人になるのは何かあった場合対処が……」
「それはポルナレフと私が同じ部屋でいいんじゃないですか?」
「いやそれは…」
「? 何か問題が……?」
「仕方がないか。キミ、部屋を4つ頼む」
「はい」
これからのことも考えてポルナレフとは一緒に行動したかったんだけなんだけど、私なんか変なこと言ったかな。
「俺もこんなガキより遥花とのほうが楽ってもんだ。行こうぜ、遥花」
「うん、それじゃあお先に失礼します」
ぺこりと礼をしてポルナレフに着いて行く。
「…承太郎、あの子の貞操観念やらはどうなっているんだ?」
「さぁな、長らく一緒にいた幼馴染が男の俺だってのと、ポルナレフくらいならどうとでもできると思ってんだろうな……」
「そういや香港でポルナレフを倒したのは紛れもない彼女でしたね」
「そういうことだ、俺たちも部屋に行って体を休めようぜ」
〇 〇 〇
荷物を置いてからポルナレフに先にシャワーに入っていいと言われる。
「いいの? 別にポルナレフが先でも」
「こういうのはレディーファーストだぜ、遥花」
「じゃあお言葉に甘えて、敵スタンド使いをどうにかしてから浴びることにするね」
小声でポルナレフに話しかけると同じように小声で返してくれる。
「やはり気づいていたか」
「でもシャワーは浴びたいから、悪いけどあの冷蔵庫ごと外に放り投げる。それでいい?」
「あぁ、俺も早く休みてぇからな」
「それじゃあ手っ取り早く…エスケイプ」
異空間を出現させて射程距離内で一番遠くにデーボが入った冷蔵庫を放り投げる。あの敵スタンド使いの名前、デーボだったかな? 彼には悪いけど戦闘スキップさせてもらうね。原作通り戦闘を進めちゃうとホテルのボーイが殺される可能性と、そのせいでこっちが警察に殺人の容疑で事情聴取やらを受けて時間ロスになっちゃうからね。
「冷蔵庫どうなってる?」
「あー、遠くの方でひしゃげてんな」
「じゃあ大丈夫だね。シャワー浴びてくる」
「おう」
シャワーを軽く浴びてから、ポルナレフと交代する。
「眠気が……でも、この後誰かが死ぬイベントは…ない、はず……だから少しの間眠っても罰は当たらないはず……」
だってこれまで私、結構頑張ったはずだもの。
ベッドに体を沈め、私は目を瞑った。
〇 〇 〇
第三者視点
シャワーから上がると、ベッドの上ですやすやと眠っている遥花がいた。
「エスケイプの異空間を使用するのは精神力を使うんだっけか」
ポルナレフは遥花の眠っているベッドに座るとギシ、とベッドのスプリングが軋む。
遥花の肩につかないくらい短く、ふわふわした猫のような髪をポルナレフが撫でると、くすぐったそうに身を捩った。
「寝顔は幼いんだな。……にしても本当肝が据わった嬢ちゃんだこと。とっくに覚悟が決まっている」
気持ちよさそう眠る遥花を見て、ポルナレフにも眠気がうつり、仲良く同じ部屋で眠ることとなった。
しばらくしてから、遥花が目を覚ます。どうやらポルナレフは遥花が目を覚ますよりも少し前に起きていたようだった。
「ん…あれ、ポルナレフ? どこかに行くの…?」
「起きたのか、コンビニにでも買い物に行こうと思ってたんだが、遥花も行くか?」
「……うん、行く。少しお腹空いた」
コンビニでポルナレフが目当てのものを買っている間に、遥花も軽食を手に持ちレジの方へと向かうポルナレフに渡す。
ホテルに戻る最中、遥花が買ってもらったサンドイッチを食べながらそういや明日はどうするのとポルナレフに聞く。
「明日は列車に乗ってインドに向かうらしいぜ」
「…へぇ、列車かぁ」
「苦手か?」
「ううん。むしろ好きな方、かな? 落ち着いたら列車の旅もいいかも」
「いいな。そん時は一緒に回ろうぜ」
「……ふふ、うん。そうだね。イタリアとか、ポルナレフの故郷のフランスとか……他にも行ってみたいところはいろいろあるかな」
「フランスに来たら俺が案内してやるぜ」
行ってみたいところを話しながらホテルへと戻る二人の後姿は、まるで兄妹のようであった。
そしてジョースター一行はチケットを手に入れ、無事にインド行きの列車へ飛び乗った。
「やれやれ、いよいよインドに向かう…か。両手とも右手の男……J・ガイル、か。ところでアンはどうした?」
「列車の出発間際までシンガポール駅にいたんだがなぁ」
「きっとお父さんとの約束の時間が来たので、会いに行ったのでしょう」
「あのガキ、どうも"お父さんに会いに来た"ってのがウソくせえんだよなぁ」
「いないと寂しい気もするけどね」
一行はインド行きの列車に談笑を交えながら、揺られていた。