「ポルナレフ!」
「遥花!?」
「はぁ、はぁ……やっと追いついた……」
「何故来た、戻りな。俺は奴と一騎打ちで戦いたいんだよ」
「わかってる。もちろん邪魔はしない。でも心配くらいするよ。後ろから見守るくらい、いいでしょ?」
「余計な手出しはすんなよ」
「誓うよ」
ポルナレフと私とで拳をコツン、と合わせて両手とも右手の男、J・ガイルの情報を人に聞きながら集めていく。
しばらくしてから、1人の男が両右手の男を見たと言った。
「何ッ! 見ただと? 両手とも右手の男を確かに見たのか?」
「ああ、今ぁさっきなぁ」
「どこでだ?!」
ポルナレフと私は辺りを見回しながら両右手の男を探す。
「どいつだっ、どの野郎だ!?」
「あれぇ? おかしいな……ひ、1人見失っただ……。今そこにいたのに…」
西部のガンマンのような格好をした男、ホル・ホースが私たちの方へと歩み寄ってくる。
「あの男ではない、ってことだよね」
「そういうことだな」
ポルナレフがホル・ホースの手を見て、普通の手だということを知って舌打ちをする。
「銃は剣よりも強し」
「ああ?」
「ンッン~~。名言だな、これは」
「あっ? ああ? 何だてめえは」
「ふん。ホル・ホース、俺の名前だぜ。エンペラーのカードを暗示するスタンド使いってわけよ。あんたらを始末して来いとDIO様に金で雇われたってことさ」
「おい田舎もん、テメエの自己紹介は必要ないぜ。両右手の男を知っているのか?」
「勝手な野郎だ。あんたが聞いたから答えたんだ」
ここからだ。ここから気を引き締めなければ、しくじれば死ぬ。
「奴とは一緒に来た。近くにいるぜ」
「何、どいつだ!?」
「それこそ言う必要のねえことだぜ。このホル・ホースがあんさんを始末するからな」
「ちょっと待ってよ」
「うん?」
「人のこと除け者にしないでくれる? 結構イラッと来ちゃうんだけど」
「おい遥花っ、邪魔はしねぇって」
「邪魔はしない、確かにそう言った。でもそれはあくまでポルナレフと、両右手の男との一騎打ちに手を出さないってだけ。目の前の彼は違うでしょ」
ポルナレフにそう言うと、仕方ねぇな、とでも言わんばかりに肩をすくめた。
「貴様を先に倒さなきゃ"奴"に会えねえんならそうしてやる……かかってこい」
「ふふふ。ところであんさんら、軍人将棋って知ってるかい? 戦車は兵隊より強いし、戦車は地雷に弱いんだ。ま、戦いの原則ってやつよ。このホル・ホースのエンペラーはあんさんより強いから俺のスタンドの能力を戦う前に教えといてやるぜ。『銃は剣よりも強し』名言だなこれは」
「さっきから何が言いてえんだ」
「俺のスタンドは拳銃はじきだ。拳銃に剣では勝てねえ」
「なに? おハジキだあ~~??」
2人がゲラゲラと笑いはじめ、また私を除け者にする。
「テメエ! ぶっ殺す! 甘く見たな、ポルナレフ! やはりテメエの負けだッ!」
ホル・ホースの右手の中に拳銃が現れ、弾丸がこちら側へ発射される。
すかさずポルナレフのシルバーチャリオッツは甲冑を脱ぎ捨て、弾丸を叩き切ろうとするが、不意に弾丸が軌道を変え、また私たちの方目掛けて飛んでくる。
いや…だからさ…私のことを……
「除け者にすんなって、言ってんのッ!! エスケイプッ!」
エスケイプの異空間が、エンペラーの弾丸を呑む。
「!?」
「こんなことばっかりだったらアヴドゥルさんにああやって啖呵きったのが恥ずかしく思えるね、ポルナレフ。迂闊すぎるんだよ、敵はあんたのことをよく知ってる。性格はもとより、弱点さえも」
「アヴドゥルみたいに説教臭いこと言いやがって!」
「説教臭い…? 誰も説教なんか言ってない。私は今事実を述べている。現に今私がいなかったらどうなってた? 言ってみなさいよ」
少し語気が強くなってしまったが、私が言いたいことは伝わったようだった。
「私が聞きたい言葉、わかるでしょ」
「……メルシー、遥花。助かったぜ」
「そう、それでいいの」
ホル・ホースの方へと向くと、何かを思い出すように私の顔をまじまじと見る。
これまで散々暴れてきたし、今のも含めて私のスタンドの能力はバレているだろうな。
「ん~? そういやお前のスタンドは…」
「エスケイプ。あんたの不規則な弾丸をも呑み込む異空間のスタンド」
「威勢がある女も俺は好きだがね。お嬢ちゃん、怪我しないうちに帰りな。俺は女は傷つけない主義なんだ」
「ふふ、優しいのね。それなら私は安心して戦えるわ」
「やれやれ、こりゃとんだじゃじゃ馬娘だね。ならちょっと気絶させてやるか!」
「先に言っておこうかな、私の攻撃手段がスタンドだけだと思ったら大間違いだからね」
そういって私は異空間内からメリケンサックを取り出し、両拳に装備する。
「お、おい遥花。そんな物騒なモンどこで買ったんだよ」
「香港でちょっとね」
もう一度エンペラーの銃口から弾丸が射出される。
「何度来たところで全て呑めば無意味ッ! エスケイッ…!?」
私の視界の端に映る地面の水たまりの中で、J・ガイルのスタンド、包帯まみれの怪人のような像のハングドマンが私の背中をナイフで刺し、体勢を崩す。
「水たまりに、スタンド…でもまだッ、エスケイプ! 私をッ」
その瞬間だった。私がハングドマンに気を取られたほんの一瞬のうちに、エンペラーの弾丸が私の額に撃ち込まれる。
ウソ、ウソウソウソ! しくじった……しくじったッ!!!
体が宙に浮き、そのまま地面に叩きつけられ、目の前が霞んでいく。
視界にはいつの間にか嫌な赤が広がり始めていた。
もっと、もっとうまくやるはずだったのに。
はは、現実は非情である、ってわけ…? はは、あーあ……情けない。
ほんとうに、なさけない。