しばらく屋敷内を探索しているけどそこら中にゾンビと死体でそろそろ鼻がおかしくなりそうだ。
「オーバードライブッ! ……ふう、ゾンビ相手だと手加減なしに使えるし、練習にもなる。最悪だと思ってたものも考えようには気持ちが楽になるかもね」
なんて言いながら、拳の返り血を振り払う。この屋敷から出たら真っ先にお風呂に入りたい……。
「なあ、さっきから気になっていたんだがよ、そのオーバードライブってのはなんだ?」
「これはね、波紋っていって特別な呼吸法で体を流れる血液の流れをコントロールして血液に波紋を起こす秘法なの」
「血液に波紋? それを起こして何になる?」
「その波紋は太陽光の波と同じ波長の生命エネルギーを生み出すことが出来る。つまり、普通では倒せないゾンビと吸血鬼を浄化させることが出来るんだ」
「そりゃおっかねぇな」
「まあ誰でも簡単に使えるわけじゃないけどね。素質のあるものが過酷な修行を経て使えるようになるものなわけ。最も私は、素質が高い家系に生まれたおかげで生まれつきそれっぽい真似が出来ていたんだよね。応用すれば攻撃以外にも色々多彩なことが出来るんだけど、生憎師匠的な人はいなくって」
「なるほど、それであんさんはゾンビ特攻のバーサーカーになってるってことか」
「そう。でも丁度いいでしょ、私が近距離、ホル・ホースが遠距離。バランス取れてると思うけど?」
それもそうだな、と言いながらホル・ホースはゾンビの脳天に真っすぐ弾丸を打ち込む。いやあ、さすがだなあ……。
波紋の説明をしてからまた私たちは辺りを警戒しながらも屋敷内を散策し、とある両開きの扉の部屋に入る。
そこには本棚と本が大量にあった。そこで私は、1つの本…というより日記帳のようなノートを1冊手に取り、ページをめくる。
「ねえホル・ホース、これ見て」
「なんだ?」
開いたページには、この屋敷にはセキュリティーが張られているということ、そしてそれを解除するには各所に設置されたパソコンから解除コードを入力しなければならないということが書かれていた。
「なるほどなァ…そういやさっきパソコンがあったな」
「それにパスワードを打ち込めばいいのね。で、どうする? ここでパスワードになりそうなものをあらかたメモしてからパソコンに入力しに行く?」
「そうだな、手分けして探すか」
数十分ほど手分けして使えそうな単語を私の持っていたメモ帳に書いていく。
私たちは屋敷に張られたセキュリティーを解除するために、各所に設置されたパソコンに探索の末に見つけた解除コードを入力していく。
途中で地下に繋がる階段を見つけてそこに潜水艦があったけれど潜水艦に電源? が入っていないようでまだ解いていないセキュリティーがあったのだろう。ホル・ホースとため息をつきながら再びパソコンを探し始めた。
「あ、ハシゴのロックが解除されてる」
「俺が先に行くからあんさんは俺の後から来な」
「オッケー」
そう返事をしてホル・ホースの後にハシゴを上り、天井裏へと入る。天井裏はかなり物が雑多に、というかバリケードのように置いてあり、まるで屋敷内をうろついているゾンビの侵入を拒むようだった。
「誰かいるな」
「誰かって、誰が?」
「く、来るなッ! 近寄るんじゃない、ゾンビ共めっ!!」
銀髪、もしかして本物の屋敷の主の……なんだっけ、シルバー・フォックス?
あ、奥の方にパソコンがある。あれが最後の解除コードを入力するパソコン、かな。でもまあ、入力するのはこの男と話をしてからでもいいかな。
「やっと見つけたぜ。チャーリー…いや、シルバー・フォックス。よくも俺をハメやがったな」
「!? あ、あんたは……呼ばれてきた"スタンド使い"かい!?」
「ホル・ホースだ。よろしくな……と言うはずだったが、共闘の件は"なし"だ」
「待ってくれッ! 違うんだッ! この騒ぎは私が計画した者じゃあないっ! 私もハメられたんだ。この館から脱出させてくれッ、報酬はいくらでも払う! だから頼む!」
「えっ、いきなり……え~……」
シルバー・フォックスのことはあまり気に入ることはできないけど、だからと言って見殺しにするのも気が引けるというか、罪悪感が生じるというか……。
「助けてあげ……」
言い切る前にホル・ホースが自身のスタンド、エンペラーでシルバー・フォックスを撃ち抜いた。
「ウグ……」
「ち、ちょっとホル・ホース!? 何してるの!?」
「馬鹿野郎、こいつはこの惨状を引き起こした張本人だ。仮に警察に引き渡したところで、金の力を使って出てきて同じことを繰り返す」
「で、でも……」
「こいつには善悪の判断力がねぇんだよ。なんでも助けりゃいいってもんじゃあねえぞ。それにこいつさえ始末すりゃあこの館に張られたスタンドも解除されるはずだ。さっさとずらかるぜ」
「わかった」
「ちくしょう……お前ら……誰1人として、逃がさないぞ……」
そう言ってシルバー・フォックスは息絶えた。
ガタンガタンと私たちが上ってきたハシゴの方がうるさい。ゾンビがこちら側に入ってこようとしてるのだろうか?
「早くパスワードを解いて潜水艦の方に行かねぇと」
「うん、最後のパスワードは…『石像が壊れた日』だって、ホル・ホース、メモ見して、メモ」
「へいへい、あーっと…『5月25日』だな」
「『5・2・5』…と。うんセキュリティー解除、これでエネルギーポンプが動くようになった。……それにしても、ゾンビがいなきゃこういうのも体験型の脱出ゲームっぽくて楽しめたのになぁ…」
「気を抜いたらこっちが食い殺されるか同族にされるかだもんな。悪趣味にもほどがあるぜ」
「やっぱり私と組んでいたほうがいいでしょ、これからもそうしない?」
「素敵な申し出だが一応俺はDIOの旦那の部下なんでね」
「ちぇ、それじゃあ私がDIOをぶっ飛ばすからその後はちゃんとした友人になろうね。ホル・ホース」
「エラく自信があるなぁ…そうだな、もしも仮にそうなったとしたら、な」
「言ったからね。あとでやっぱナシは私聞かないよ?」
「わかったわかった」
私はパスワードに使えそうな単語をあらかたメモしたメモ帳を改めて見る。
恐らくこの屋敷の主人が独自に調べて、書いたであろうノートに書かれていた情報は本当に奇妙というか、知りすぎている気がする。
「遥花? どうしたんだ?」
「……ううん、なんでもない。早く潜水艦の方に行こうか」
ハシゴの方へ向かうと、かなりゾンビが蔓延っていた。
「ホル・ホース」
「おうよ」
エンペラーで下にいたゾンビを倒してからホル・ホースがハシゴを一気に降りた。私もハシゴを降りようとした時下でホル・ホースが両手を広げていた。え、なに、どうしたの。
「遥花、飛び降りてこい」
「えっ!? わ、私1人で降りられるよ!?」
「時間が惜しいんだ、そっちの方が早いだろ」
「それはそうだけど、ちゃ、ちゃんとキャッチしてよね!」
ホル・ホースを信じてひょいと飛び降りると、しっかりとキャッチして抱き留めてくれた。
「ありがとう、ホル・ホース。もう下ろして……ホル・ホース?」
「よいせっと」
私をキャッチしたホル・ホースはそのまま私を抱き上げたまま、地下の方へと走っていく。こっちの方が早いって、いや、そうかな!? どさくさに紛れて太ももとか触ってないよね!? ホル・ホースの意図的なラッキースケベとかじゃないよね!?
地下に行くとゾンビは追って来ていないらしく、やっと私を地面に下ろしてくれる。
「びっくりした…いきなり走り出すんだもん」
「悪い悪い、で、ここに潜水艦にエネルギーを供給する装置があるぜ」
「おぉ、早くオンにして潜水艦の方へ行こうよ」
ホル・ホースが端末を操作すると、すぐに液晶画面にエネルギーが供給され始めたことが表示される。
「よし、これで潜水艦に入れる。さあ脱出しようぜ、グズグズしてたら俺たちも死んじまう」
「うん」
道中もゾンビたちは私たちを追ってくる。なんだか数が増えているような、気のせいかな。隠れていたり別の部屋にいたゾンビが脱出しようとしている私たちを確実に殺そうと押し寄せてきている、のかな?
潜水艦の登場室の方へと向かうと、先に行ったホル・ホースがハッチを開けてくれる。
「早く乗り込め!!」
中に入り、手際よくエンジンをかけて出発する。
「ゾンビは!? 大丈夫!?」
「あぁ、大丈夫みたいだ。これで一安心だな」
そうして私たちは屋敷から命からがら脱出し、サウジアラビアの西海岸へ辿り着いた。
「それじゃあ、ここでお別れだ。おかげで助かったぜ」
「エジプトまでかなり距離があるけど、大丈夫なの?」
「バカ言え、このまま潜水艦に乗ってお前とDIOの旦那のところまでついてったら俺が殺されちまうよ」
「だから私がDIOをぶっ飛ばすから大丈夫だって」
「はは、それにな、これぐらいの苦労お前を1度殺してしまったふがいない俺には当然だぜ」
「……そっか。肉の芽を植え付けられているわけじゃないんだよね?」
「あぁ。俺は金で雇われているだけさ。むしろ忠誠を誓ってる奴なんて俺たちの中でも一握りよ」
「ふぅん……ねぇホル・ホース、ほんとにこの潜水艦のことをバラさないのよね?」
「そこは安心してくれていいぜ。俺は相棒探しの途中だ。新しい相棒の目星が付くまでは旦那の所へ顔を出すこともねぇぜ」
「そっ、か。約束してくれるのならそれでいいよ」
ホル・ホースは最後に私にハグをしてからウインクをする。
「それじゃあな、ベイビー。せいぜい気を付けるんだぜ」
「ふふっ、うん。ホル・ホースもね」
そうしてホル・ホースは去って行った。
それから私はホル・ホースと話す間潜水艦で待ってもらっていたSPW財団の2人に、これまであったことを所々ぼかしながらも話した。
「なるほど」
「それでなんだけど、ホル・ホースと会ったことはジョセフさんや、SPW財団にはナイショにしておいてほしいんです」
「ですが……」
「お願いします。彼も私と会ったことや、潜水艦のことをDIOに黙っていてくれるって言ったから、だから……」
「あなたはそれを信じたのですか?」
「……ごめんなさい、甘いのは自分でもわかっているんです。だけど彼は本当にDIOには言わないでくれると思ったから……お願いします」
もう一度頭を下げると、SPW財団の2人はため息をつきながら私の頭をポンと叩いた。
「私たちをゾンビから助けていただいたり、ここまでしっかりと傷一つなく送り届けてくれたのですからそれくらいのわがままは聞かないと罰があたるというもの。わかりました、彼と出会ったことは内緒にしておきます。ガラハドもそれでいいかしら」
「はい。報告書も、俺とミリアムでうまい具合にごまかして書いておきます。それはそうと、合流地点の方に行きましょう、ここからは俺たちにも仕事をさせてもらいますよ」
「はいっ、ガラハドさん、ミリアムさん、本当にありがとうございます!」
「いえいえ、あなたたちをバックアップするのが私たちの本来の役目なので、あ、それと先程ジョースター様から合流地点の情報と一緒に倒した敵の情報も送られてきました」
「向こうも結構大変だったみたいですね」
「はい。合流地点は"紅海"にある小さな孤島です。エジプトは海を渡った目の前ですよ」
「そこで変装をしてジョースター様たちを待ちます。潜水艦で移動中に台本によく目を通しておいてください」
「はい……はい? "台本"?」
「ふふっ、はい。ジョースター様の計画です」
「あっ、あ~……もう、ジョセフさん、悪ふざけが好きなんだから……」
私はため息をつきながら潜水艦の方へと戻っていく。
でも、みんなと再会できるのは素直に楽しみだな。そうと決まればジョセフさんの悪ふざけに思いっきり乗っかっちゃおっかな~~!!!