カモメの鳴き声と、照り付ける太陽、ジョースター一行はとある孤島に上陸していた。
「ジョースターさん……なんか小さい島だし、無人島のように思えますが……」
「ああ、確かに無人島だ。人目を避ける為、ここで待ち合わせをしている。彼女に直接連絡をして呼び出したのだ」
「え? 誰ですって!? 彼女って誰ですか?」
「おいおい、そこの影から誰かが俺たちを見てるぜ」
「えっ、あっ、逃げるぞ!」
「はっ、あ、あの後ろ姿は……見たことがある!」
一行は逃げた女性らしき後姿を追う。
「いたぞ! あそこだ!」
「………………」
「何者なんだっ!」
「あの後ろ姿は! まさかっ、あの人は!」
「待て! わしが話をする、みんなはここにいてくれ……」
そう言ってジョセフは女性の方へ一歩近づく。
「私の名はジョセフ・ジョースター。この4人と共にエジプトへの旅をしているものです」
「……話は電話で伺いました。本当に、死んだんですか? 旅行に行くというのは、本人の口から確かに聞きました。いくら昔から交流のある幼馴染と、その祖父がついているからとはいえ、何の連絡も取れないから家族はみんな心配していました」
一呼吸おいてから、女は振り返る。
「納得のいく説明をしていただけますか? ジョースターさん」
「あっ……あぁ……」
「遥花っ!」
「……いや、ハルの姉だ」
「あぁ。承太郎の言う通り、彼女は遥花の姉だ。日本の遥花の家に電話をした際に、我々と会いたいと言われたんじゃ。会えばDIOに狙われる可能性もある。何度も断ったのだが、つい口が滑ってしまって、"スタンド使いに殺された"と言ってしまった。それで、敵の目を避ける為にこの孤島で会うことにしたんじゃよ」
「遥花の、お姉さん……」
「だが…妹の死を事細やかに説明して伝えるのは……辛いことだ」
「……」
ポルナレフが辛そうに俯くと、ジョセフがポルナレフの肩を叩き、遥花の死はポルナレフのせいではないと優しい声音で言った。
「……いいや、俺の責任。俺はそれを背負っているんだ」
「まさか、あの人もスタンド使いなのですか?」
「ああ、自分もDIOの刺客に狙われたらしく、わしの説明に疑問を持ったのもスタンドのことを知っていたからのようじゃの。遥花は生まれ持ってのスタンド使いじゃし、その姉もスタンドを持っていても不思議ではない」
「共に戦ってくれると?」
「そう言っておるが、これ以上無関係な者の命を危険に晒すべきか悩んでおるんじゃ」
「ジョースターさん、これからのことも踏まえて詳しいお話をしたいのですが」
「ええ、わかってます。もう日も暮れてきたことだし、詳しい話はそこの小屋の中ででもしましょう」
ジョセフと遥花の姉だというその女性が中に入ると、2人は小屋の中にあった椅子に腰を掛ける。
「それで、潜水艦は上手く手に入ったんじゃな?」
「はい。かなり大変でしたけど、手に入りましたよ」
「そうか。すまんかったのう…。こちらも新手のスタンド使いが毎日のように現れてかなり苦しめられたわい」
「財団の方からその話は軽くですが聞きました」
「そうか。しかし、潜水艦で海底からエジプトに向かえば敵も襲いようがないじゃろう」
「そう…ですね。出発は夜明け前ですか?」
「ああ。こっそりと出発することにしよう」
「わかりました。ところで他のみんなは?」
「承太郎と花京院はわしらが出てくるのを待つフリをして周りを見張っておる。アヴドゥルは潜水艦の運転マニュアルを再確認して練習中じゃ」
「真面目なアヴドゥルさんらしい。……ん、ポルナレフは?」
「ポルナレフは、お前が死んだときのことを思い出したのか、浜辺の方へ1人でトボトボ歩いて行ったようじゃ」
「少し悪いことをしてしまったかもしれませんね……」
眉を下げて申し訳なさそうな表情をする遥花の頭を、ジョセフは優しく撫でた。
「まあ、暗くなるまでには戻るじゃろう」
「そういうことなら、元気な顔を見せて安心させてあげてきます。これ以上ポルナレフに余計な罪悪感を背負わせたくはないですから」
「それがいいかもしれんな。敵に見つかっては台無しじゃ、身を隠しながら行くんじゃぞ」
「わかっています」
遥花はニコリと微笑んで、変装を解いて元のセーラー服姿に戻って浜辺の方へと向かった。
「やっぱりポルナレフ浜辺の方にはいなかった。もうジャッジメントに出会っちゃったかな……」
焦りながら孤島にある、草原の方へと向かうと、どこからか声が聞こえてきた。
「まだわからんのかッ! ポルナレフーッ! このカメオは『審判』のカードの暗示を持つスタンドさ! 能力はッ! その人間の心からの願いを土に投影して願いを作ってやること! お前は自分の心で自分の妹と遥花の土人形を作ったのだ!」
「マズイ……早くポルナレフの元に行かないと……」
「さあ、土人形に食われて死ぬがいいッ! HAIL 2U!」
「ぎゃあああああっ!!!!」
「ポルナレフの悲鳴…」
遥花は早く鳴る心臓を落ち着かせるように深呼吸をしてから、声のする方へと走った。背の高い草むらをかき分けて、遥花はやっと草のない開けた土地を見つける。
「見つけた!」